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2006年3月27日 (月)

法律家の知名度

日曜日の深夜、NHKテレビの「アーカイブ」という番組を視ておりまして、前半は「ヤング101」(1974年。なつかしですねぇ。デビュー前の太田裕美さんの歌って踊る姿がまぶしかったです)、そして後半は1962年の「それは私です」というクイズ番組を再放送しておりました。で、このクイズ番組なんですが、3人の出演者のなかから、ホンモノの職業人を4人のゲストがいろいろな質問をして、当てるという番組。ゲストも池部良さんや、曽野綾子さんなど、とんでもなくスゴい方達が出演されておりまして、そんな中、アナウンサーの司会者が3人の○○さんを紹介しました。3人とも「門上千恵子です」と自己紹介をして、本当の門上さんという人は日本で初の女性検事さんです、とアナウンサーから紹介をされます。で、ゲストの方々はといいますと、この3人の出演者に対しまして、「新しく出来た検察庁の背後にある官庁はなんですか?」とか「未必の故意って何ですか?」など、露骨な質問を浴びせ倒すもんですから、あっというまにホンモノの門上千恵子さんがばれてしまう・・・・というまったくもってヤラセなしの番組でした。(笑)

この番組を視ておりまして、ふと思いましたのが、いまから40年以上前の時代、法律家というものの知名度というものは皆無に等しかったんじゃないでしょうか?今の感覚で申しますと「日本で初の女性検事」といったレベルの方でしたら、新聞や雑誌で大きく取り上げられるでしょうし、それこそ「ウーマンオブザイヤー」みたいなどっかの受賞ノミネートにも上ってくるんじゃないかと思うのですが、後に司法改革推進委員会の委員までなさった曽野綾子さんさえ、「女性検事」の名前すら知らないわけですから、「司法」に対する一般国民の認知度は相当に低かったのかもしれません。(しかし日本初の女性検事さんがNHKのクイズ番組に出演したり、また騙し役のお二人の女性も、ひとりが女性消費者団体の会長、もうひとりが大学の心理学の教授、ということでしたから、なんとも「のどかな時代」だったのかもしれません・・・・)

ちなみにこの「門上千恵子さん(かどがみ ちえこ)」、50前後のステキな方でしたので、ちょっとグーグルで検索しましたところ、なんと大正3年生まれの91歳で、現在も弁護士として活躍されていらっしゃるとのこと。(九州大学経済学部同窓会のブログに掲載されていらっしゃいます)元気を頂戴いたしました。

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コメント

九州大学の法学部出身の女性といえば、門上さんのほかにも、旧労働省女性局長のあの方なども著名かと・・・よく九大OB会でご挨拶いただいております。

たしか先生のご親戚だったような。(もし勘違いでしたら失礼ですが)

投稿: oups | 2006年3月27日 (月) 10時59分

通りすがりのものです。件のかばんやさんの件を調べていてここにたどり着きました。私自体は技術屋ですが、会社員時代、特許法務の社内規定の構築に関わったことがあり、IR担当者とはこういう話をしておりました。もともと京都出身ですから。(ハンドルネームを見ればわかるという話も)
自分の今の仕事は、たぶん誰も継ぐ事がないですが、可愛さ余って憎さ百倍状態の事例は京都という閉鎖的な土地柄、ありうるだけに、「くれぐれもうかつな遺言書は書いてくれるな」と実家の父にメールしたところです。
さて、私も件のNHKアーガイブスを見てましたが、「未必の故意」を出されたらわかっちゃうな。と回答者の知識のほうに関心が行ってしまいました。
現在、耐震偽装の一件から技術者倫理に関心が行ってまして、かくゆう当方もその文献を研究中ですが、どうしても企業コンプライアンスに触れなくてはならず、工業系の学生にわかる範囲で説明できる手法に腐心しております。今後御BLOGの中身を読んで勉強させていただきます。

投稿: デハボ1000 | 2006年4月 7日 (金) 19時08分

>デハボ1000さん

はじめまして。どうもコメントありがとうございました。(一澤帆布→信三郎帆布事件は、いよいよ佳境に入ってしまいましたね。道をはさんで開店した信三郎帆布商店に、開店早々3000人が押し寄せたとありました。叔父さんが出てきて「和解はありえない」ってコメントしてしまって、もうどうしようもない状況ですね・・・)
おっしゃるとおり、工学系の方のコンプライアンスの重要性というのは大きな問題だと思っております。ただ、同じく京都地裁で問題となっております例の情報ソフトの事件につきましても、開発したご本人は「社会のため」だと思っていても、その周辺の人たちが悪用してしまう、ということもあって、そのあたりが工学系のコンプライアンスの難しさではないか、などと考えております。
こんなブログですが、なにかのお役に立ちましたら望外の幸せです。また、ときどき遊びにきてください。

投稿: toshi | 2006年4月 8日 (土) 22時26分

工学の分野からのコンプライアンスの捉え方、意識付けと言うのは非常に難しいのかも知れませんが、私は、逆にコンプライアンスの本質を突いたコメントを工学の分野から頂きました。

失敗学の大家でもあります、畑村洋太郎氏は工学分野の教授でいらっしゃいますが、畑村教授が、以下のようなことを述べておりました。

「コンプライアンス」の本質について、畑村洋太郎教授は、『季刊コーポレートコンプライアンス創刊号』(桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター著・株式会社アスコム刊)の巻頭の挨拶(『Corporate Compliance』創刊によせて「コンプライアンスということば」)で以下のうような内容のことを書いておりました。
 内容を要約・引用すると、①「コンプライアンス」という言葉は、工学では『「柔らかさ」「柔軟性」』を表し、『一定の力を加えたときにどれだけの変形が起こるかを表(す)』指標である。②この意味から(企業経営における)「コンプライアンス」という言葉を考えると、『何らかの物や人がどの程度柔軟にそして感度よく外からの要求や規範に応じた動きをするのか』という意味になる。③『外部の要求に柔軟に応じた動きをすることは、社会的に見れば法律に正しく従うという現象となって現れてくるため、コンプライアンスが「遵法精神」または「法令遵守」という言葉で表される』ことになるとしています。

 この言葉は、まさにコンプライアンスの核心をついているのではないかと思います。

・外部の要求に柔軟に対応するのがコンプライアンス
・そして外部の要求の最たるものが他社・公共の利益調整を図っている「法律」
・さらに上げれば、消費者の意向やニーズ、社会情勢なども外部の要求に当たるでしょう。
・これらに柔軟に対応することがコンプライアンス

というロジックは非常にわかりやすいです。

要は、自分自身の立場からコンプライアンスを考えた場合は、研究者や組織・会社の人間としての立場らではなく、利用者・消費者の立場で考えると言うことだと思います。
そして、現実に一歩会社や仕事を離れれれば、消費者あるいは利用者として様々なものを利用し、社会の恩恵を受けているわけですから、この利用者・消費者の立場からの判断と言うのは、誰にでもできるような気がします。

参考になったかどうかは分かりませんが、同じ工学関係の畑村教授が上記のようにおっしゃっていますので、ぜひ、工学あるいは理系の方へのコンプライアンスの理念の教育・落とし込みを頑張っていただけたらと思います。

投稿: コンプライアンス・プロフェショナル | 2006年4月12日 (水) 13時26分

>コンプライアンス・プロフェッショナルさん

こんばんは。
コメントどうも、ありがとうございます。相変わらずこの分野の話にはたいへん精通されていらっしゃるので、フォローしていただき感謝しております。いつも金銭にからむ企業不祥事ばかりに目がいきますので、こういった分野のことを意識しておりませんでした。経営者不正といったところとは少し離れるかもしれませんが、企業イメージを大きく損なう可能性については変わりありませんし、私ももうすこし勉強したいと思います。(工学系と聞いただけで拒絶反応が出てしまうところはありますが・・・・)

投稿: toshi | 2006年4月13日 (木) 02時44分

>コンプライアンス・プロフェッショナルさん

なるほど、実は直弟子である中尾東大教授の著作にも同じような文章があります。けどこれまとまってますね。技術者倫理学に多少関連する案件があるのですが、特に倫理関係はケーススタディーなどを行わせると、うっかり他国の事例を持ってきたなら実情に合わないという問題があります。
ただ、
>研究者や組織・会社の人間としての立場らではなく、利用者・消費者の立場で考える
という表現は、実務担当の初期の人物にとっては実態が見えないという問題点がありまして、結果的に思考を放棄する傾向があります。なんのことない基礎研究をされてる現役の教師さえこの概念を持たせるのは難しいと、最近感じました。いかに噛み砕くかが重要です。
そこを経由して最終的に金銭の問題も出てくるというストーリーつくりに腐心しております。
では。
(PS)畑村先生も 中尾先生も企業勤務経験があります。じつはそこがこの言葉のトリガーではないかと考えております。

投稿: デハボ1000 | 2006年4月17日 (月) 14時56分

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