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2006年3月17日 (金)

保釈請求・・悲喜こもごも・・・

(3月17日午後 訂正あります)

ライブドア事件によって逮捕勾留されたまま、起訴されている方は合計5名ですが、そのうち岡本氏(LDM元代表者 保釈金1000万)、中村氏(LDF元代表者 同2000万)、宮内氏(LD元取締役 同5000万)の3名が保釈を許可され、堀江氏と熊谷氏は保釈申請却下、そして中村氏と宮内氏は検察庁から準抗告が出されて釈放はされなかったため、結局16日に釈放されたのは岡本氏のみという結果となりました。準抗告というのも、私も経験はありますが、たいへん弁護人にとってもつらいものであります。(読売ニュースはこちらです

さて、こういった状況から何が読み取れるでしょうか?粉飾を一部認める供述を始めたものの、これまでの堀江氏の態度からして、とりあえず現状での保釈申請却下はやむをえないところかもしれませんが、熊谷氏が却下されたのは堀江氏の貸し株管理や本体の経理操作に深く関与しており、釈放してしまうと証拠隠滅のおそれが大きいと判断されたのかもしれません。(たしか、まだ証券取引等監視委員会の担当者が利益還流の解明のためにケイマン諸島などに調査に行っているはずですよね。そのあたりの裏づけを熊谷氏からとりたいのではないでしょうか)

天国から地獄へ落ちた気分を味わっているであろう中村氏と宮内氏については、なぜ検察庁は準抗告までして保釈を阻んだんでしょうか?考えられるところは、①この2名については、いまでこそ事実を認めたものの、取調べ当初は否認をしたために、第一回公判において供述を変遷させて無罪を主張するおそれがあると考えたこと、(つまりは、第一回公判において被告人らが事実を認めるまでは釈放されるべきではない、との検察庁の強い抗議)②まだ本体の粉飾決算の可能性があり、追起訴を予定しているため、③まだ本体の粉飾決算関連の事件については、逮捕を予定している者がおり、その予定者との接触によって証拠隠滅のおそれが認められること、といったところでしょうか。このうち、②につきましては、新聞報道ではすでに立件はほぼ終了とありましたので、可能性は薄いでしょうし、①につきましても、準抗告までして保釈を阻止する動機にはなりえないように思います。したがいまして、検察庁はいまだこの事件での「逮捕予定者」、つまりは宮内氏、熊谷氏、中村氏らと共謀して、ライブドア本体への利益操作を画策していた者が他にもいる、ということを考えているのかもしれません。来週あたり、検察庁の準抗告が却下されて、宮内氏、中村氏も釈放されるかもしれませんが、そのときは保釈の条件として、弁護人を通す場合以外は、○○氏と接触してはならない、といった条件が付されているのかもしれませんね。

なお、このエントリーの内容はあくまでも私ひとりの勝手な推測に基づくものでありまして、特定個人を中傷したり、名誉を毀損する意図はまったくございません。また、弁護士の立場からみた「正しい保釈制度のありかた」に関する私個人の意見表明もなく、ただ現実の保釈制度の運用からの推測にすぎないことを申述べておきます。(保釈制度に関する弁護士の意見を表明するのであれば、おそらくエントリーが5つくらい必要です)

(追記)宮内、中村両氏は18日、準抗告が棄却されたため、釈放される模様です。

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コメント

保釈・・・って大変ですね。
 噂で検察側がもの凄く脅しているとかってありますが・・これって問題には成らないのですか?自白させる為に色々言うらしいですけど

投稿: いく | 2006年3月18日 (土) 22時22分

いくさん、こんにちは。

保釈は弁護人にとってもたいへんな仕事です。とりわけ第一回公判前の保釈率というのは、かなり低いわけでして、捜査継続中からの検察官との交渉、保釈認容のための下準備、そして裁判官との粘り強い面接などなど、私選弁護の真髄のひとつではないでしょうか。たしかに「強要」ということも問題になるケースがありますが、私の経験からすると、被告人は脅されることよりも、調書もまかずに「ほったらかしにされる」ことや、共犯者の供述内容を知らされることのほうが、自白に向けての動機付けになるケースが多いようです。中にいると、いろんなことを考えて不安になるのかもしれません。

投稿: toshi | 2006年3月19日 (日) 11時28分

結構大変なんですね・・・・。

堀江さんは保釈される可能性は低いですか?

投稿: いく | 2006年3月19日 (日) 22時57分

管理人さま はじめまして、
私も過去にある事案で刑事裁判になり
保釈を経験した事があります。

検察は基本的に全ての事件で頑ななまでに
保釈を認めたがらない様に思います。

これは、限りなく公訴=有罪の不文律を保全したいが為かと思えます。被告人は既に拘置所に在って有罪(囚人)に等しい扱いを受けるのが
現状ですね。

ある社会学者が『行刑施設を見ればその国の本質が分かる』と語っておりましたが保釈の在り方一つを推してみてもアメリカ等と比べ日本は未だ
先進国ではないのかも知れません。

投稿: ダニエルさん、ワックスオン、ワックスオフ・・ | 2006年12月 9日 (土) 04時08分

>ダニエルさん

はじめまして。コメントありがとうございます。
保釈は刑事弁護にとってはたいへん「きつい」仕事であります。
私もかなり保釈申請はやりましたし、準抗告も何度もやりました。
被告人が「保釈」に対する期待するところは、私が想像するところ
以上のものがあります。私はどうしても、保釈が却下されるときの
ことを考えて「控えめ」の予想しか言わないのですが、それでも
却下という結果を在監場所へ伝えに行くときはツライです。

保釈は弁護士にとっては「理想と現実」の間で悩む仕事です。
理想からすれば堂々と被告人の人権を主張して検察と戦うのが筋
です。しかし、眼の前の被告人を早く出したいと思うのであれば
検察と裁判所と被害者の間を汗して、行ったりきたりして
「上申書」を提出して、検察と裁判所が保釈を出しやすい環境作り
に尽力するのが確実であります。これも弁護士の実力のひとつだと
思います。

投稿: toshi | 2006年12月 9日 (土) 11時15分

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