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2006年4月28日 (金)

だまされる弁護士

ひさしぶりの耐震強度偽装事件関連ですが、このブログで耐震強度偽装を自主申告したものとして、情状酌量の余地があるのではないか、と私見を述べておりましたイーホームズの藤田社長が先日逮捕されました。逮捕当初は、耐震強度偽装とは無関係な虚偽増資(いわゆる見せ金)に絡む逮捕事実(電磁的公正証書原本不実記載罪)ということでしたから、「これで逮捕されるんだったら、世間の中小企業の社長さんは、ヒヤヒヤしてるんじゃないかなぁ」との印象を持ちました。でも、これまでの報道されている事実関係が真実だとしますと、けっこうこの虚偽増資はタチが悪いようですし、ヒヤヒヤしてる中小企業の社長さんの例とはかなり異質なものではないか・・・といった印象に変わってきました。

増資の1年後にイーホームズの上場準備のために過去の経理関係を調べていた会計コンサルタント会社から、「見せ金ではないか」と指摘を受けたらしいのですが、そのときにイーホームズの社長は弁護士と相談をして、「実際に貸付が行われているのだから増資は適法である」との弁護士名による意見書を提出したそうです。その意見書をもらった会計コンサル会社は、あとは何も言わずに、そのまま調査が続行されたようです。昨日あたりに報道されたところによりますと、そもそも共犯とされている司法書士から2700万円を借りた後、増資登記がなされ、直後に関連会社へ貸付がなされたそうですが、すぐにその金員は藤田社長の個人口座へ振り込まれ、その後すぐに同額が司法書士へ交付されたとのことです。おそらく、相談を受けた弁護士は、この関連会社への融資関連書類と、その後藤田個人へ返済されたことを証明する書類だけを確認したのではないか、と推測されます。個人口座からすぐに司法書士へ還流したわけですから、これを秘匿して弁護士に意見書を書かせるという手口を使ったとしますと、弁護士の社会的信用を悪用したものとしてかなり違法性は高いものと考えられます。

私は同業者であるこの弁護士の方について、「だまされた」立場だと思っておりますので、同情申し上げるところもあるのですが、さてなぜこうも簡単に騙されてしまったのか、すこし解せないところがあります。増資分である2700万円は会社資金ということですから、関連企業に貸し付けられたものであったとすれば、イーホームズ社へ融資金の返還がなされるべきでしょうが、そのあたりの確認はなぜしなかったのでしょうか。同額が個人口座へ振り込まれた、ということでしたら、それだけで不自然ではないでしょうか。さらに、この2700万円を利用して資本金が5000万円になったことで、このイーホームズ社は確認指定機関としての資格を有することになります。実際に増資登記を行った直後に資格が認定されたことと、会計コンサルタント会社が「見せ金ではないか」と疑念を抱いた後に調査をしていることと考えあわせますと、「見せ金」でないということを確信するためには相当に資金の流れを確認しておく必要があったのではないでしょうか。そういったことを考えますと、この弁護士の方にも全く落ち度がなかった、とは言えないようにも思えます。

2年ほどの間に7回もの増資を繰り返し、その増資のたびに大きな仕事を受注できる資格を取得していき、上場できるだけの体力をつけていった、ということですから、その構造についてはライブドアの株式分割にも共通するところがあるように思われ、これが見せ金の繰り返しであったとすれば、順法精神の欠如として、逮捕も当然のことのように思えます。耐震偽装事件の本丸に向けて、検査機関がどのような役割を果たしていたのかといった実体に興味が集まるものと思いますが、私はどっちかといいますと、この見せ金疑惑の進展のほうに興味を抱いております。

4月 28, 2006 刑事系 |

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コメント

先生のおっしゃられることはごもっともなのですが、最後のフレーズにおいて、ひっかかる部分があります。世の中の制度として資本金の規模によって、受注できる事業資格が異なるということの経済制度の方がおかしいとおもいませんか?本来、建築物の検査機関としての能力と資本金とはどのような関係があるのでしょうか?知的ノウハウとか知的能力が主力の場合、工場等設備を必要とする事業体と異なって、資本金というのはそれほど必要がないものでしょう。逆に、藤田社長を弁護するわけじゃありませんが、資格に資本金の制約があるために、ぎりぎりの線で増資を行いながら資格を得ていくというのは、経営能力として高いと思いますが。
資本金ばかりでっかくてコンプライアンスや経済性のなかった某自動車会社の経営者に比べれば数段経営手腕として有能だと思うのですが。

投稿: 胡桃 | 2006年4月28日 (金) 23時33分

>胡桃さん
どうもおひさしぶりです。
コメント、ありがとうございました。
たしかに胡桃さんのおっしゃるように、注文する側と受注する側との相対で考えた場合、とくに知的ノウハウなどが問題となる仕事の場合ですと、資本金の多少といった問題は直接、仕事の成果とは関係ないかもしれませんね。ただ、これは一般論になってしまうかもしれませんが、いくら知的資産を活用する業種といいましても、受注規模が大きくなりますと、下請業者も従業員もたくさん利用するのが常態ではないでしょうか。それで、規模が小さいけれども、知的資産の価値が大きなところであった場合、受注業者になんらかのトラブルが発生した場合など下請遅延防止法や労働法などによる弱者保護法制の機能が十分果たせないことにつながる可能性は注文する側としては無視できないのではないでしょうか。そう考えますと、資本金だけでなく負債も大きいかもしれませんが、とりあえず大きなお金が流れる企業に対して受注資格を与える、ということもあながち不合理とはいえないように思います。受注金額にしたがって、ぶらさがる人間が増えていくのは、工場等の設備を利用する事業体も、知的ノウハウを利用する事業体もそれほど変わらないと思いますが、いかがでしょうか。
また、よろしかったらご意見お待ちしております。

投稿: toshi | 2006年4月29日 (土) 02時40分

私のような無学な者の質問にお答えいただきありがとうございます。
たしかに一般生産企業においては、松下、トヨタ、古くは日立等の大企業とその下請け企業という生産プロセスの論理から資本規模での企業体質の安定化を計るというのは価値があるかと思いますが、イーホームズ問題は検査機関というあくまで知的というか専門能力に関わる問題ですよね。法曹界をはじめ士法人での能力等をその資本金(弁護士事務所の場合は居弁の数?)で計っていいものか?ということなんです。スタッフを含めた人の数の問題からいえば、資本金には人の数と質は現れないはずで、逆に資本金は少ないけど経営基盤がしっかりしている方が安心ですよね。
イーホームズの藤田氏を弁護するわけではないですが、新興検査機関として既存の業界への進出を図る上で、資本金での資格制限があるがためこれをクリアーする方にトップとしての視点が行き、人等の検査体質の質への投資が出来なかったというのが本質的原因ではないのでしょうか?逆にいえば、資本金での制約が、新興検査機関等の進出の阻害要因であり(これは法曹界でもありませんか?監査法人では明らかに中堅新興監査法人が生き難くなっていますよね。例:港陽)、既存大手企業の温存と談合的体質、天下り体質の温床だと思うのですが。

投稿: 胡桃 | 2006年4月29日 (土) 12時29分

>胡桃さん

おっしゃっておられることは至極正論だと思いますし、私もなるほど資本金は少ないけれども、経営基盤がしっかりしているほうが安心である、といった理屈もよくわかります。
ただ、現実問題として、もし大きなリスクを抱える業務を受注する場合(もちろんそのリスクに見合うだけの収益も期待されるわけですが)、注文する側として、「経営基盤がしっかりしているかどうか」を計る「資本金に代わるモノサシ」を合理的にみつけることができるのでしょうか?もちろんみつける努力はすべきでしょうが、そのリスクは誰が負担するのでしょうか?
法曹界の問題についても、胡桃さんの指摘されているところは大いにあります。ただ、現実問題としては、「あそこの法律事務所に依頼して敗訴したんだから非難されることはない」といったリスク回避として、大きな事務所に依頼することも経営判断としては避難できないところもあるのではないでしょうか。小さな事務所が企業法務といった部門に進出する場合には、やはりハンディはあることが前提でしょうが、それなりのビジネスモデルを検討するなかで頑張っていく必要があるものと認識しております。
真正面からのお答えにはなっていないかもしれませんが、私自身は「資本金」規制というものも、ある程度はやむをえないものかな、と考えております。貴重なご意見ありがとうございました。
次のエントリーへの参考意見とさせていただきます。

投稿: toshi | 2006年5月 1日 (月) 02時52分

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