ヤミ金と弁護士
ここのところ会社法関係のエントリーが続きましたが、今日はビジネス法務ではありませんが、サラ金の金利制限に絡む問題点について触れてみたいと思います。
金融庁の貸金業に関する有識者懇談会は18日にもまとめる中間整理に、利息制限法の上限金利(15―20%)を超えていながら刑事罰に問われない「グレーゾーン(灰色)金利」の廃止を盛り込む方向で調整に入った。懇談会では上限金利を下げるべきだとの意見が多数を占めている。利用者への説明義務の強化や貸し付けへの総額規制の導入検討など消費者保護策の拡充を示すことになりそうだ。(日経ニュースより)
多重債務者の自己破産、債務整理、個人再生などに携わる「ごく一般的な弁護士」として、こういった記事を読んでの感想ですが(ごく一般的な弁護士と注記しましたのは、私は普通に業務のひとつとしてこういった多重債務者事件を扱っているにすぎないからです。専多重債務者救済のために運動をしている、というものではございません)、まず第一印象としましては「またヤミ金から借りる人が増えるだろうなぁ・・・」というものです。おそらく登録消費者金融としましては、グレーゾーン金利がなくなる分、リスク低減のために顧客の選別を始めるでしょうし、だからといってサラ金からお金を借りる人は「借りたい」気持がなくならない限りはグレー業者へと流れることは必至です。先の懇談会では、3月に警察庁生活安全課よりヒヤリング、その前には長野県よりヤミ金対策への取組のヒヤリングを行っておりますが、おそらく今後増えるであろうヤミ金からの借り入れ対策までは十分な検討はなされていないんじゃないでしょうか。
私もこれまでの16年間の弁護士生活におきまして、ヤミ金との対峙で「寿命の縮む思い」をしたことが二度ほどありましたが、「ここでなんかあっても、これは私が弁護士という職業を選択したことによるものであって、本望」と観念したこともありました。さすがに最近は大阪弁護士会でもミンボウ対策がしっかりしていることもあって、ヤバイ状況になる前に警察と連携する工夫も発達しておりますが、弁護士がほとんど「手弁当」で正義感のみに頼ってヤミ金と交渉しなければならない実情は変わっていないと思います。
アイフル騒動などもあって、消費者金融の貸出金利制限が実現する方向に向かうのでしょうが、次に来る事態に備えて万全の心構えをしておかなければいけないのは、警察でもなく、今の多重債務者救済を支える弁護士会そして司法書士会だと思います。こういった仕事を自らの利益ではなく、弁護士、司法書士に与えられた職責(使命)であると自覚して対応しなければいけないことを、大学の法学部やロースクールの学生の皆様には知っていただきたいと思います。法曹の先達が「血と汗と涙による長年の公益活動」によって勝ち取ってきた遺産のうえにぬくぬくと仕事をしているようでは、法曹人口急増のさなか、法曹の社会的信頼は見事に瓦解するものと予想します。
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コメント
この法律群の経緯に見えないところもあるのですが、なぜ整合性が認められない「グレーゾーン」というところが出来た経緯がいまひとつ見えないのです。20%~29%というところですね。出資法云々という話が聞こえてはいるのですが・・・
アイフルはCMを全部とめて、おかげで深夜時間のcmに空きが出たらしく「放送何とか機構」のCMと他の大手サラ金さんのCMが目立って反面教師というか・・・です。
投稿: デハボ1000 | 2006年4月17日 (月) 22時25分
なぜグレーゾーンといわれる領域があるのか、といわれると結構説明するのは難しいですね。出資法による行為規範と利息制限法による私的自治の制限(借り手と貸し手に対して同じ民法という法律の原則の適用を前提に考えてよいか)、そういったところの問題が横たわっているためにグレーゾーンという領域があるわけです。(条文があるから、と単に説明することもできるんですが)
違法な利息はもらった以上は返さなくていいけど、それを払えとまではいえない。これ、法律を学ぶ人以外に説明するのは、なかなかしんどいかもしれません。
投稿: toshi | 2006年4月18日 (火) 11時10分
アメリカからは金利の制限撤廃を求められていると思うのですが、外圧との調整はできたのでしょうか?ヤミ金だけがコワイのではないはずです
投稿: うるとらや | 2006年4月19日 (水) 12時19分