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2006年5月 1日 (月)

監査役の財務会計的知見(その1)

みなさま、GWをいかがお過ごしでしょうか。いよいよ新しい会社法が施行されました。このブログでも人気シリーズ(と勝手に解釈しておりますが・・)である内部統制モノについて、また適宜エントリーを追加していく所存ですので、またよろしくお願いいたします。

ということで、内部統制モノではありませんが、新会社法施行記念ということで、すこしばかり会社法ネタを考えてみたいと思います。今年の株主総会では旧法手続でも新法手続でも、経過措置がありますので、あまり関係はありませんが、来年度以降の事業報告書におきましては、公開会社の場合ですと「監査役又は監査委員が財務及び会計に関する相当程度の知見を有しているものであるときは、その事実」を記載することが義務付けられております。(会社法施行規則118条、119条2号、121条8号)この規程の真意について、すこしばかり考えてみたい、というのが主たるテーマであります。監査役の監査対象は「違法性監査」に限られるのか、「妥当性監査」にも及ぶのか、といった神学的論争を検討する、といった高尚なものではありませんが、すくなくとも、この会社法施行規則が定めるところからすれば、公開企業における監査役は(常勤、非常勤とも)財務会計に関する知見を有するほうが株主にとっては望ましい・・・といった価値判断があると捉えることができそうです。(ここまでは間違いないですよね?)そもそも「財務及び会計に関する相当程度の知見」といったものが何を示すものなのか、議論の必要もあろうかと思いますが、すくなくとも「法務」に関する知見は開示する必要はなくて、財務および会計に関する知見は開示する価値があるというのは、「日本版SOX法」ならともかく、「会社法」の制度趣旨からどう判断すべきなのでしょうか。法務に関する相当程度の知見が監査役に必要なことは最低限度の要件であるから記載するまでもないことで、それ以上に会計的知見があればプラスポイントだと認識するのか、それとも法務に関する知見はどうでもいいが、会計的知見についてはプラスポイントだと認識すべきなのか、そのあたりはどうなんでしょうか。とりあえず会社法施行規則の条文からすれば、私が社外監査役を務める上場企業も、この6月に株主様方からの信認を得られるならば公認会計士の資格を有する方を社外監査役として迎える予定にしておりますが、そうしますと、私の知見については開示される必要はなく、新任の会計士さんの知見については事業報告書に記載され、株主様からの企業価値判断に資する情報となるはずです。公開企業との「資格の密着度」といった視点からすれば、会計士の資格と弁護士の資格では「密着度」が異なる、といった考え方もできそうですが・・・。

会社法の要綱試案の際には、まったく検討もされていなかった「内部統制システム構築」といったテーマが、自民党の商法に関する委員会からの提言(正確には中間とりまとめ案)が出されたことによって、法制審議会ではほとんど何の反対も出されずに「要綱案」には導入されたわけですが、この自民党の委員会提言では、「監査役は会計的知見を有するものでなければならない」といったところまで踏み込んだ書き方がされておりまして、そのソフトランディング(妥協策)として、このたびの規則案が策定されたのではないか、と私は勝手に推測をしております。そういった政治的問題はともかくとして、それではこの新会社法における監査役の役割と「財務会計的知見」について理論的実務的な観点から考えてみたいと思います。なお、昨年5月にブログを開設して以来、私は何度も「これからの20年間は企業会計の時代」と宣言しておりますが、そういった視点での考えですので法曹としてのヒガミとか無関係に冷静沈着に考えていく予定であります。(と、問題点を指摘するのみで今日はつづく・・・・・)

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