定款変更議案の分割決議
hardwaveさんも取り上げていらっしゃいますが、今年の株主総会でも、定款の一部変更議案が3分の2の賛同を得られずに否決されたり、賛同見込みがなくて事前に提案を取り下げ(修正?)された上場企業が見受けられたようです。以下は毎日ニュースからの抜粋です。
会社法で、四半期配当など配当を柔軟に行ったり、取締役の解任要件を厳しくする定款変更などが可能になった。 任天堂は、配当を最終的に決める場を株主総会から取締役会にする定款変更が、必要な3分の2の賛成を得られず否決された。「高い配当を実施してきたことなどを訴えたが、少し及ばなかった。次の株主総会で改めて提案したい」と説明する。ミツミ電機も事前の議決権行使状況から可決が難しいと判断し、提案を取り下げた。 企業年金連合会は配当に関する定款変更議案201件のうち、株主が賛否表明する機会がなく、取締役の権限が強くなりすぎると判断した127件に反対。取締役の解任要件を厳しくする議案19件はすべて反対した。 |
新しい会社法が施行されて、経営の自由度が増したと言われておりますので、今後も株主総会議案として、「定款の一部変更議案」というものはけっこう上程されるケースが多いと思います。しかし、否決された企業の「結果に関するお知らせ」を読んでみますと、たくさんの定款変更箇所を予定していたとしても、そのうちのたった一つの変更予定条項に一部の機関投資家が納得しなければ、すべての変更部分の「否決」につながりますので、結局のところ「なにも定款を変更できなかった」という結果に終わるわけですね。しかし、この結果については、会社側、株主側どちらにとっても不本意なことになるのではないでしょうか。やはり、こういったときは定款変更議案に関する分割決議というものも考えておいたほうがいいかもしれませんね。とりわけ、実質株主がなかなかつかみづらいような企業においては利用する価値もありそうに思います。
今年3月31日に発表されました「企業価値報告書2006」の63ページ以下におきましても、定款変更議案の分割決議を利用することが提案されておりますし(ただし企業価値報告書では、買収防衛策導入に関する定款変更に焦点をあてておりますが)、実際に2003年の東京スタイルの株主総会においても(MACが暴れていたときでしたっけ?)定款変更議案を4分割にして、それぞれの提案について賛否を表明できるようにしていたようです(ただし議案を一つとして扱った、とのこと)理屈で考えてみましても、一つ一つの定款変更部分をひとつの「議案」として上程することは可能なように思えますが、実務上では総会の議事進行に関してはあまり法律で定められておりませし、一括審理的な発想からひとつの議案として運用されていると考えられます。また、定款変更議案については、会社法施行規則66条1項1号(取締役の選任に関する議決権行使書面の作成手続、個々の候補者ごとに賛否を問えるような形式に関する規程)のような規則もありませんので、一括して議案を上程する、というのも法の趣旨ではないか、と思われます。ただ、こういった理由から通常、一括してひとつの議案として審議されるのであれば、積極的に「ひとつの議案にはひとつの決議でなければならない」といった原則に例外を許さない理由はないわけでして、決議自体を分割して、否決された部分と可決された部分で決議の効力を分けることも、総会の議事運営の裁量の範囲内にあるものとして、法的に可能ではないかと思います。ただし、定款は会社の根本規範として、いろいろな部分で条項が相互に関連しているところもありますので、分割の方法としては、相互に関連性をもたないような箇所で分断しておいて、さらに会社側から株主に対して分割決議を行うことの承認を得た上で、採用すべきではないか、と考えております。
まぁ、そもそもこういったことを考えないで済むように、企業としては総会前に株主の皆様方に十分説明をすることがもっとも重要なことであるのでしょうが。。。
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