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2006年6月30日 (金)

定款変更議案の分割決議

hardwaveさんも取り上げていらっしゃいますが、今年の株主総会でも、定款の一部変更議案が3分の2の賛同を得られずに否決されたり、賛同見込みがなくて事前に提案を取り下げ(修正?)された上場企業が見受けられたようです。以下は毎日ニュースからの抜粋です。

 会社法で、四半期配当など配当を柔軟に行ったり、取締役の解任要件を厳しくする定款変更などが可能になった。  任天堂は、配当を最終的に決める場を株主総会から取締役会にする定款変更が、必要な3分の2の賛成を得られず否決された。「高い配当を実施してきたことなどを訴えたが、少し及ばなかった。次の株主総会で改めて提案したい」と説明する。ミツミ電機も事前の議決権行使状況から可決が難しいと判断し、提案を取り下げた。  企業年金連合会は配当に関する定款変更議案201件のうち、株主が賛否表明する機会がなく、取締役の権限が強くなりすぎると判断した127件に反対。取締役の解任要件を厳しくする議案19件はすべて反対した。

新しい会社法が施行されて、経営の自由度が増したと言われておりますので、今後も株主総会議案として、「定款の一部変更議案」というものはけっこう上程されるケースが多いと思います。しかし、否決された企業の「結果に関するお知らせ」を読んでみますと、たくさんの定款変更箇所を予定していたとしても、そのうちのたった一つの変更予定条項に一部の機関投資家が納得しなければ、すべての変更部分の「否決」につながりますので、結局のところ「なにも定款を変更できなかった」という結果に終わるわけですね。しかし、この結果については、会社側、株主側どちらにとっても不本意なことになるのではないでしょうか。やはり、こういったときは定款変更議案に関する分割決議というものも考えておいたほうがいいかもしれませんね。とりわけ、実質株主がなかなかつかみづらいような企業においては利用する価値もありそうに思います。

今年3月31日に発表されました「企業価値報告書2006」の63ページ以下におきましても、定款変更議案の分割決議を利用することが提案されておりますし(ただし企業価値報告書では、買収防衛策導入に関する定款変更に焦点をあてておりますが)、実際に2003年の東京スタイルの株主総会においても(MACが暴れていたときでしたっけ?)定款変更議案を4分割にして、それぞれの提案について賛否を表明できるようにしていたようです(ただし議案を一つとして扱った、とのこと)理屈で考えてみましても、一つ一つの定款変更部分をひとつの「議案」として上程することは可能なように思えますが、実務上では総会の議事進行に関してはあまり法律で定められておりませし、一括審理的な発想からひとつの議案として運用されていると考えられます。また、定款変更議案については、会社法施行規則66条1項1号(取締役の選任に関する議決権行使書面の作成手続、個々の候補者ごとに賛否を問えるような形式に関する規程)のような規則もありませんので、一括して議案を上程する、というのも法の趣旨ではないか、と思われます。ただ、こういった理由から通常、一括してひとつの議案として審議されるのであれば、積極的に「ひとつの議案にはひとつの決議でなければならない」といった原則に例外を許さない理由はないわけでして、決議自体を分割して、否決された部分と可決された部分で決議の効力を分けることも、総会の議事運営の裁量の範囲内にあるものとして、法的に可能ではないかと思います。ただし、定款は会社の根本規範として、いろいろな部分で条項が相互に関連しているところもありますので、分割の方法としては、相互に関連性をもたないような箇所で分断しておいて、さらに会社側から株主に対して分割決議を行うことの承認を得た上で、採用すべきではないか、と考えております。

まぁ、そもそもこういったことを考えないで済むように、企業としては総会前に株主の皆様方に十分説明をすることがもっとも重要なことであるのでしょうが。。。

6月 30, 2006 定款変更議案の分割決議について | | コメント (10) | トラックバック (3)

2006年6月29日 (木)

「事前警告型」買収防衛策の承認決議

株主総会シーズンもあと一日(29日)を残すのみとなりまして、定款変更議案や、総会決議案として、事前警告型の買収防衛策を総会の決議にはかる企業も飛躍的に増えたようです。以下は新聞報道からの抜粋です。

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買収防衛策導入141社  「事前警告型」が95%

 今年に入り買収防衛策を導入したり導入を表明したりする企業が相次ぎ、既に昨年1年間の5倍を超える141社に達したことが、野村証券金融経済研究所の調査で24日、分かった。うち敵対的買収者の出方を見て対抗策の発動を決める「事前警告型」と呼ばれる防衛策が95%を占め、主流になっている。

 会社法施行に伴い、外資による国内企業買収を容易にする「三角合併」が来年5月に解禁されることなどを背景に防衛策導入企業が続出。経営者の自己保身につながるような防衛策に対する株主の目は一段と厳しくなっており、開催が本格化した株主総会で防衛策導入の是非をめぐる議論が焦点になっている。
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敵対的(と思われる)に買収をかけてきた企業の買収提案と、対象企業の現経営陣が提示する対抗案をじっくり株主が検討する時間を確保する、といった防衛策導入目的はよく承知しているのですが、いまでも、この「事前警告型」のプランへの疑問というのが拭いきれません。東京地裁決定(平成17年7月29日決定、夢真・日本技術開発事件)の存在や、会社法施行規則127条の存在(防衛策の事前開示)から、なんらかの買収防衛策の導入や、それが平時になされることにつきましては、おそらく適法と判断される場合があることは理解できるのですが、「敵対的買収者とのルールを一方的に事前に決める」ということが、果たして株主総会の決議になじむものかどうか、といったあたりがどうも釈然としません。たしかに、企業年金連合会や外国の機関投資家の要望によって、あるいはこれまでの裁判例にしたがって、買収防衛策の導入に株主意思による承認が必要ではないか、との意味合いから総会決議事項として、株主意思を問うことをよしとする判断があるのかもしれません。しかしながら、果たして事前警告型の防衛策導入という事項が株主総会の決議事項たりうるか、といった問題をクリアできたとしましても、そういった決議事項が「公正な決議」といえるかどうか、まだまだ議論の余地があるのではないか、と思っております。

まず、「ルール」というものは、本来、相手方を拘束するものである以上は法律によって決められるものか、契約によって決められるべきものであるはずです。事前警告型の防衛策が、相手のルール違反によってなんらかの相手方に対する権利侵害を正当化するものであるわけですから、法によってそのような権利侵害が正当化されるか、もしくは相手方の事前の承認を必要とするとみるのが正論ではないでしょうか。(事前警告の存在を知りつつ、あえて買収手段に入った相手方の行為を「ルールの承認」とみなすのはちょっと暴論でしょう)そうであるならば、対象企業の株主総会の決議によって、そういった相手方のサンクションを伴うルールを決めて、そのルールに従うことを強要する正当性などあるはずもなく、そのような決議(もしくは定款変更)は公正とはいえないと思われます。また、一歩譲って、総会で承認しているのは「他社を拘束するルール」ではなく、「自社の行動ルール」にすぎない、と解釈できるとしましても、相手方といいましても、その相手方が問題となるのは、たとえば20%の対象企業の株式を取得した場面でありまして、れっきとした「株主」なわけです。対象企業の現時点における多数派株主が、将来登場するかもしれない少数派株主の権利を一方的に制限する(もしくは制限することを承認する)、ということは果たして現時点の多数派株主に許される行為なのでしょうか。これは明らかに株主平等原則に反する行為であって、会社法にいくつか規定されている少数株主の排除規定のように、明文で例外が認められる場合以外には認められないのではないか・・・とも思えますし、「自社の行動ルール」と解釈した場合であってもやはり「公正な決議内容」とは言えないように思います。本来、株主総会で否決されたとしましても、こういった事前警告型の買収防衛策を導入することは可能でしょうが、株主総会で承認を得たことが、発動時における適法性を高めることにはならないだけでなく、そもそもそういった承認決議というものは無効になる可能性もあるんではないでしょうかね?私はこういったM&A関連の専門家でもなく、まったくの素人考えではありますが、どうもそんな気がしてしかたありません。

雑誌「ビジネス法務」(中央経済社)の1月号で、事前警告型買収防衛プランの考案者でいらっしゃる藤縄弁護士のインタビュー記事が掲載されておりますが、そのなかで(14ページ)、「しかし、より率直に言えば、個別企業が防衛策を入れるよりは、代替案が提示される機会を確保するような工夫を公開買付ルールに盛り込む方向に改正するほうが、本来あるべき方向性だと思います。弁護士の仕事は減りますが、立法で手当てしたほうが社会的コストもはるかに安いはずです」、(17ページ)「たとえば、公開買付規制などは、税法と同じくらい頻繁にかわってもかまわない、やってみてダメだったら変えればよい、と私は思っています」と述べておられます。そもそもルールを事前に決めるのが事前警告型の核心部分でしょうが、そういったルールというものは、証券取引法あたりで、きっちりTOBルールのひとつとして規制すべきでなければ、その正当性は認められないのではないかなぁと思うのですが、いかがでしょうかね。

6月 29, 2006 事前警告型買収防衛策の承認決議 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月28日 (水)

刑事裁判における民事賠償額判断

とりあえず無事総会も終わりましたので、あまりビジネスに関係のない話題をひとつ。

何日か前の報道(日経ニュース)ですが、傷害事件や横領事件などを中心に、刑事被告人の被害者(被害会社)に対する民事上の損害賠償判決を、刑事事件の裁判の中でやりましょう(付帯私訴)ということで、法務省が導入を検討されているそうです。岡口裁判官もすこし疑問をお持ちのようですが、これって損害額に関する争いがあるケースでは、一般の民事事件で審理する機会は保障されているのでしょうかね?そうでないと、せっかくの迅速な刑事裁判が、民事上の紛争のために長期化してしまわないか、との危惧があります。

また、被害者側、被告人側からの問題点をあげますと、まず被告人側からみると、情状をよくするために示談の努力をするわけですが、こういった損害額確定手続がありますと、被害者側がむやみに示談に応じてくれなくなるおそれがあるのではないか、と思います。とりあえずの示談というのは、刑事事件の判決が出るまでに行うことが、現実の被害救済のためにも有意義な面がありますが、もし被害者側が損害額確定までは民事上の話し合いはしない、と決めたとなりますと、高額の賠償判決は出ても現実には一銭も被害賠償金を手にすることができない、といった事態も考えられます。そのあたりを、実務の運用でどう考えていくか、これからの課題ではないでしょうか。

被害者側からの問題点をあげますと、余罪の被害者の取扱です。傷害事件や財産的犯罪の起訴といったものは、直近の1件を起訴して、それまでの多くの犯罪行為については余罪として情状の点で斟酌するケースが圧倒的ですよね。そういった場合、その直近の1件の被害者については民事的な救済を受けられても、ほかの余罪の被害者については救済は無視される、ということになるのでしょうか。これでは、事件によって、あまりにも被害者に不公平な結果になりはしないでしょうかね。

6月 28, 2006 刑事系 | | コメント (2) | トラックバック (1)

お世話になったT監査役とK監査役

K監査役、T監査役殿

明日(28日)、そろって退任されますが、この2年間、本当にお世話になりました。会社勤めの経験もない世間知らずの私を、いろいろとご指導いただきまして、本当に感謝しております。Tさんは、某都市銀行出身でこの会社には先代社長時代から16年在籍されました。資本政策や財務、取引先対策など、この2年間に教わったことはたくさんあります。とりわけ人的ネットワークの活用の大切さを教えていただいたことは貴重な経験でした。話し好きなTさんが会社を離れることに少し不安を覚えておりましたが、なんと出身銀行OB会の副支部長になって、またちょこちょこ大阪の中心部に顔を出されるんですね。やっと最近になってTさんから認めてもらえるようになった、と思っていましたが、そんな頃にお別れするのは寂しいかぎりです。

Kさんは、ずっとこの会社で勤務され、最後の数年間を常勤監査役として頑張ってこられました。まさに私がこの会社の社外監査役として「会社に興味を持つ」きっかけを作っていただいたのはKさんです。監査役と経営陣とのスタンスを教えていただいたのは、Kさんであり、会社を愛するがゆえに、社長に苦言を呈する(だいたい、監査役から要求する内容は社長にとっていつも億劫なことですよね)姿は凛としていて、そういったなかで「顧問弁護士」としてでなく、「社外監査役」として法曹が企業に関与するおもしろさを見出しました。Kさんも、私に影響されてか、公認コンプライアンス・オフィサーの試験を受験され、みごと合格されました。Kさんのお歳で、それほどの情熱をお持ちであることは畏敬の念すらおぼえます。7月からは京都の会社でまたお勤めになる、とのことですが、どうかオフィサーの資格を次のお仕事に役立てていただければ・・・と期待しております。

この会社も、明日の総会で株主の皆様から信認を得ることができましたら、いよいよ弁護士と公認会計士という社外監査役2名と、部長上がりの常勤監査役1名という、一気に平均年齢が40代となるフレッシュな監査役会を構成することになります。私が理想とする企業会計新時代に期待される監査役像に近いイメージで、企業経営を側面から支える役割を考えていきたいと思っております。

7月には、私が自信をもってお勧めします南堀江の日本料理のお店でご慰労申し上げますので、どうか明日は最後のお役目、頑張ってください。そして、会社を離れた後も、ときどき叱咤激励をお願いしますね。本当にありがとうございました。

6月 28, 2006 商事系 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月27日 (火)

会計監査人の内部統制(4)

中央青山監査法人の行政処分問題も、カネボウ事件調査委員会の調査報告書(骨子)が出され、そして中央青山監査法人が金融庁へ報告書を提出した段階となったことで、監査法人としての内部統制問題も輪郭がつかめてきたのではないでしょうか。基本的には金融庁から指摘を受けたレビューパートナー制度(パートナーレビュー制度?)のあり方を重点的に改善することや、内部通報制度を充実させることなど、いわゆる組織における「性悪説」に立った組織改革が中心になっているように思われます。カネボウ事件調査委員会報告(骨子)にも、「性善説」に立った審査体制は、こういった大きな組織になるとリスクが大きいと評価されておりまして、その監査体制の甘さが指摘されているところであります。

ただ、いつもこういった管理体制の調査報告や見直しが公表されるときに思うのですが、今回のような事件が発生した場合に、「あるべき体制」が整備されれば、事件は防止できるのでしょうか?(かりに防止できる、と断言できたとして)どのようなシステムの機能によって事件が防止されるのでしょうか?あらかじめ、あるべき体制を整えても防ぎきれない「内部統制の限界」はある、そして、それはどういった場合なのか、といったことは留意点として指摘しなくてもよいのでしょうか?そういった諸点をきちんと押さえておかないと、いくら立派なことが書かれておりましても、調査報告書にせよ、体制改善報告書にせよ、あまり説得力がないように思いますが、いっこうにそういった今回の事件と改善策による防止可能性との因果関係については触れられておりません。監査法人の内部統制というのは、ある意味、公認会計士協会が祈念してやまない「自主規制による不正防止の強化」の要であるはずですよね。もしこれが有効に機能しなければ、現在検討中の「監査法人への刑罰適用(両罰規定)」が実現してしまうことも視野にいれておかないといけないのではないでしょうか。とりわけ、このカネボウ事件調査委員会報告書では、平成14年3月期から同16年3月期のレビューパートナーについては、関与社員がカネボウとあまりにも親密に粉飾の計画を立てていたから、巧妙な虚偽の説明を看破し、カネボウの問題点を的確に把握することは相当に困難だったと結論付けていますが、この結論からすれば、「性悪説」によるレビューパートナー制度に改善したところで、きちんと見抜けるようになるのかどうかはまったく疑わしいところではないでしょうか。ともかく会計のプロであり、またレビューパートナーのプロでもある会計監査人本人が事件に関与した場合、そういった制度の穴をうまく抜けて企業と共謀してまた不正経理に加担する、といった事態は容易に予想できるところでして、この改善策がなぜカネボウ事件再発防止に役立つのか、私にはまったく理解できないところであります。また、そもそも会計士さんの集団組織に「性悪説」を前提としたシステムはタテマエのうえで妥当しますかね?会計士さんには不正摘発といった職責はなかったんじゃないでしょうか。現在の法律を前提とするならば、審査をするのは、監査の品質管理のためであって、タテマエのうえでも「何か悪いことに関与しているのではないか」といった疑いを前提とした制度は許容されないんじゃないのかなぁと思ったりもしております。

先週、公認会計士協会近畿支部の方とお話をしていたときに、会計監査人の内部統制について、上場企業の監査役はどうやって、その相当性を判断したらいいのか、実務はどうなるのか、とお聞きしてみましたが、「おそらく企業向けに配布予定の内部統制に関する説明書を監査役に渡して、そのとおりにやってますから、と説明する。監査役もよくわからないうちに、そうですか・・・と言って相当性あり、と判断する、といった流れになるんじゃないでしょうか」との説明でした。そりゃ、ご自分が監査役を務める企業が粉飾決算をしているのであれば、責任を会計監査人に転嫁するよりも真っ先に監査役の責任を問われてもしかたないかもしれませんが、他社で同じ監査法人の会計監査人に不祥事が発生した、といった場合、その内部統制が問題になることもあるわけですし、「おたくはあの会社と同じ監査法人に監査をお願いしているはずですが、なんで監査役はその内部統制を相当と判断したの?」と問われたら、結構困りますよね。どう答えましょうか。それこそ「内部統制の限界論」とか「専門家集団における信頼の権利」でも持ち出しましょうかね?いろんな意見があってもいいとは思うのですが、上場企業の監査役たる者、会計監査人(監査法人)の内部統制の相当性判断はかくあるべし、といった個々の哲学は持っておいたほうがいいのではないでしょうか。(そこまで悩む監査役が出てくると思って会社法施行規則が出来たかどうかは不明ではありますが)

6月 27, 2006 会計監査人の内部統制 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月26日 (月)

特別取締役制度

企業価値というものを、社外役員の立場からマニアックに考えてみようと思って始めたこのブログも、気がつくとすでに14ヶ月目に突入しようとしておりまして、(以前のドリコムの時代を含めるともすこし長いのですが)これからもマニアックな視点というものは忘れないようにしたいと思いながら、今日は会社法373条の「特別取締役制度」についてすこしばかり備忘録として書き留めておきます。

6月19日の日経新聞では上場企業720社の回答をもとに、会社法対応調査結果が掲載されておりまして、同日の日経産業新聞では、詳細な回答集計表も掲載されています。定款変更議案との関係から、事業報告のネット開示や取締役会決議省略制度を多くの上場企業が導入予定であることは予想どおりでしたが、ほとんど関心がないとされているのが「特別取締役制度」の導入です。ちなみに、上記集計結果によりますと、「今後導入を検討している」を含めても1,3%、「当面、導入する考えはない」は96%ですから、ほとんどの企業で「特別取締役制度」は検討の対象にすらなっていない、ということのようです。以前、このブログでは「会計参与」の制度について深くツッコんでみましたが、「特別取締役制度」についても本当に重要財産委員会制度の後継制度として不人気のまま、終わってしまうものなんでしょうかね。ただ、鉄道事業会社のなかで、2006年3月度の不動産事業のROA(総資産利益率)がダントツのトップであり、資産の有効活用において優秀な成績を残している京王電鉄は、この5月における内部統制システムの整備に関する基本方針のなかで、取締役の職務執行の効率性を確保するために、この特別取締役制度を活用することを明言されておられますし、「意外とコーポレートガバナンス研究の先端をいく企業においては、特別取締役制度に注目しているのではないか」とも考えたりしております。

まだいろいろと持論を述べるほどには見解も固まってはいないのでありますが、そもそもなぜ特別取締役制度というのは(取締役会の決議要件の特則といった位置付けでありますし、取締役会決議のみで導入可能なものではありますが)、かならず1名以上の社外取締役が存在することが要件とされているのでしょうか?ここのところがうまく制度趣旨との関係で説明されている基本書というのはあまりみたことがありません。相澤さん、葉玉さんらが著した「論点解説・千問の道標」あたりにも、この特別取締役による取締会決議について5ページにわたって解説がなされておりますが、そのなかでも、「なぜ社外取締役が存在する場合でなければ特別取締役制度を用いることができないのか」については説明がなされておりません。6月20日に経団連から出されました「我が国におけるコーポレートガバナンス制度のあり方について」と題する提言におきまして、経団連は社外取締役制度に関しては否定的な見解をはっきりと示しておりますが、この新しい会社法は、社外取締役がコーポレートガバナンスにおいてどういった役目を期待しているのか、そのあたりを推測するには、この特別取締役制度の趣旨に関する公式な解説が役立つのではないかと思っておりますが、どうも「社外取締役の存在が決議要件とされていることの意味」をきちんと解説されているものがみあたらないのです。これ、素直に制度趣旨を考えますと、会社の重要な業務執行の意思決定にあたっては、社外取締役の存在はジャマな場合もあるから、そういった社外の人間に情報を伝達することなく迅速に意思決定することも可能にしたものである、と解釈してよろしいんでしょうか。でも、それだったら最初から社外取締役を導入しなければいいわけで、どうもすっきりとした考えが浮かびません。また、会計参与のときと同様、企業のパフォーマンスとの関係なども考察しながらじっくり考えていきたいと思っております。

6月 26, 2006 特別取締役制度 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年6月24日 (土)

第2回オフィサーフォーラム

ずいぶんと前から出席通知を出しておりまして、第1回のコンプライアンス・オフィサーフォーラムで出会った方々(このブログにも数名の方が登場しますが・・・)と再会するのを楽しみにしておりましたが、大阪での本業のほうがどうしても抜けられず、第2回のコンプライアンス・オフィサーフォーラムを欠席してしまいました。青山学院の八田教授がゲスト講演をされるだけに、誠に残念、無念。。。。。ACFEの勉強会も東京が中心ですし、こういった会合については地方の人間はつらいです。(泣)

もし、フォーラムに参加された方、もしよろしかったら、どんな雰囲気だったか、どんな講演内容だったのか、コメントでも、メールでも結構ですので、教えていただけますでしょうか?

(6月27日午前追記)

コンプライアンス・オフィサー認定機構のほうから、当日の様子などをお教えいただきました。ご厚意に感謝いたします。ありがとうございました。また、オフィサー仲間であるぐっぱるさんがフォーラムの様子をブログにアップされておられます。

6月 24, 2006 公認コンプライアンス・オフィサーフォーラム | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年6月23日 (金)

奈良の放火殺人少年事件について

(週末ということで、ビジネス法務とは無関係のエントリー、お許しください。)すでに報道でご承知のとおり、奈良県で16才の少年による自宅放火(殺人)事件が発生したようですが、私の周囲には、お子さんをこの少年が通っている中高へ通わせている同業者の方がたくさんいらっしゃいますので、彼の情報というものも、朝からあれこれと聞きました。事件に関する感想などを語る資格はありませんので、詳細にブログに書くことは控えますが、それにしましても今回の事件ほど、男性と女性とで感想にはっきりと差が生じる事件も珍しいのではないでしょうか。試しに、みなさま、男性のブログと女性のブログでこの事件をどう捉えているか、比較してみるとよくおわかりになると思います。

男性はほとんどが、医師である父親との葛藤、進学校で成績が伸びない悩み、父親への尊敬とその反動といった部分に焦点をあてています。これに対して、女性はまずほとんどが「愛」を切り口に語っていらっしゃる。彼の家庭は5人家族であったが、実母と実妹との面会もできない状況での孤独感に焦点をあてています。報道では、どちらかというと、前者のほうが動機に近いとされていますが、私はどちらかといいますと、後者のほうがより動機形成への要因に近いのではないかな・・・と考えております。3年前、私は関西でトップの進学率を誇る私立高校生の傷害事件の付添人をしましたが、そのときも表面上は、医師である父親への反抗といった体裁でしたが、何度も彼と面談するうちに、彼曰く「愛情偏向への蟠り(わだかまり・・・・、私は彼の書いた反省文のこの漢字が読めませんでした・・・)」というところに辿り着きました。これは彼を担当した家裁調査官の意見とも一致しました。推測で物事を判断するのは弁護士としては「はしたない」と思いますが、今回の事件では医師の息子であるとか、進学校に通っているということはほとんど動機とは関係なく、ただただ、16才の高校生としての家庭における「居場所」のほうが動機と強く関連しているのではないか・・・、おそらく既に付添人が選任されていると思われますが、いったい彼の口からどんな真意が語られるのだろうか・・・と思案しているところです。(それにしても、あまりにもショックな事件であり、不幸にしてお亡くなりになったご家族の方々のご冥福をお祈りいたします。)

6月 23, 2006 刑事系 | | コメント (2) | トラックバック (0)

内部統制システム構築と取締役の責任論(後編)

(ブラジル戦を前にして、誰にも読んでいただけないことを知りつつ・・・・)さて、昨日の「内部統制システム構築義務と取締役の責任論」のつづきでありますが、この6月9日に大阪高裁から出されましたダスキン株主代表訴訟控訴審判決によりますと、原審では善管注意義務違反が認められなかった取締役、監査役(つまり、業務担当取締役および早期に異物混入肉まんの販売事実を知った代表者以外の人たち、社外取締役を含みます)にも、ひとり2億円余りの範囲において連帯して損害賠償責任を認めているわけでして、この損害賠償責任の法的根拠はどこにあるのか、といったところが大いに問題となるわけであります。

いかんせん190頁にも及ぶ判決文ですので、短時間に頭の中で整理するのも一苦労なんですが、このあたりの争点につきまして、株主側の代理人弁護士の方々(大阪でも著名な先生ガタが並んでいるのですが)は、内部統制システム構築義務という構成で主張を組み立てておられまして、一言で説明しますと「消費者の信頼を裏切るような重大な問題が発生したことが取締役会で報告された場合には、早期に重大問題発生の事実を公表して、企業としての具体的な対応方針をすみやかに決定できる体制を整備すべき義務があったのに、これを怠ったところに任務懈怠があった」と主張されております。ところが、高裁判決では、この株主側の主張にはほとんど何も回答することはなく、MD(ミスタードーナッツ)調査報告によって、違法添加物混入肉まんが、そのまま継続して販売されていたことや、関係当事者からの脅迫に口止め料を支払っていたことなどをすべての取締役、監査役が知った後の取締役会としての対応(いわゆるクライシスマネジメント、リスク管理「体制」のことではありません)と取締役の善管注意義務の関係を詳細に論じて、最終的には義務違反があったと結論付けております。突発的な会社の重大問題が発生した際に、取締役がいかに行動すべきか、といったことに関しては「経営判断の法理」が適用されるのが常道であって、その際における取締役らの裁量の範囲は広範なものとされておりますし、アメリカほどではないにせよ、日本の裁判所も経営判断については深く審査対象とはしないのが通説的見解かと思われます。そして、この高裁判例もこれまでの判例と同様、リスク管理(クライシスマネジメント)には経営判断法理が適用されることは当然のことである、との前提を崩していないようです。ところがこの判例は、本件では「経営判断の法理」は適用されないと明言されているんですね。なぜかと申しますと、会社の存亡にかかわるほどの「会社ぐるみの不祥事隠蔽工作」が将来発覚してしまうことと、このまま取締役会で何もしないで放置していることを秤にかけて、放置することで将来的な発覚がなかった場合に賭けてみよう、といった判断というのは、一見するとリスク管理のようにも思えるわけですが、この高裁判決は、「将来発覚することは確実に予想されていたことであって、当時の状況からして、発覚しないことに賭けるほどの不確実性はない」と、詳細な証拠認定から結論を導き出すわけです。したがって、経営判断法理が適用される「リスク管理」の概念が妥当するようなものではなくて、この取締役らの放置はいわば「いつ発覚するか、その時期を遅らせるだけの問題の先送りをしたにすぎない」と評価して、取締役らは、大きな傷を受けることになるけれども、一部の取締役の不祥事と口止め料の支払という過去の出来事を公表して、すでに自浄作用