村上氏に違法性の認識はあるか(3)
(6月5日午後 村上氏の記者会見に関する追記あり)
あすくるさんや、47thさんのコメントにおきまして、私の基本的な勉強不足の点をご指摘いただき、どうもありがとうございました。167条の構成要件や166条適用の前提問題など、さらに検討しておきたいと思っております。村上氏の事情聴取に関する報道などを読んでおりましても「5%以上のニッポン放送株式を(ライブドアが)大量取得することは聞いていなかったし、またそんな力のある企業(ライブドアのこと)だとも思っていなかった」と容疑を否認しているとのことですから、やはり167条(公開買付者等関係者等による取引規制)違反ということが問題になっている、とみていいのでしょうか。
では、かりに167条違反が問題になるとすると、(一昨日のエントリーでも述べましたが)村上ファンドが行ったニッポン放送株買付行為のいったいどこが犯罪になるのか、根本的な疑問が湧きませんかね。「一緒にニッポン放送株式を大量に取得しよう」と言って、堀江氏と大量購入の約束(合意)をして、購入をしたことのどこに違法性があるのでしょうか?昨日は応援買いを例に出しましたが、ライブドアの取締役決議との関係で、応援買いには該当しないという場合であっても、共同購入、共同支配ということでも違法なんでしょうか?応援買いがインサイダー取引に該当しないのは、そもそも事前に公開買付者は応援者による株取引を認識しているわけですから公開買付者を害することにはなりませんし、一定の要件をかけることによって公開買付者自身の買付と評価できることで、なんら市場の健全性を害することにはならないということからだと思われます。その趣旨からすれば、共同買付といったことも、事前に公開買付者とその関係者の間で、共同支配に関する認識が共通化しているのでしたら、応援買いのケースと同視してもよろしいのではないでしょうか。(→つまり、解釈で違法性判断が分かれるほどに曖昧な要件の問題だとしますと、いくらプロのファンドマネージャーである村上氏もしくはその幹部の方であっても、その違法性の認識を立件するのは困難ではないか、これを政策的な意味合いで要件を緩和することはできないのではないか、といった根本的な問題を含むものであります)
いまになってみましても、私は「感情的には」村上ファンドの灰色疑惑という点は否定しておりませんが、ただ「クロ」といった判断をされるほどの「悪いことっていったいなんだろうか?」とよくわからなくなってしまいました。今週にも、強制捜査が入る予定だそうですが、もしそうなりましたら、一度ゆっくりと捜索差押令状やその他の令状の中身を検討してみたいと思います。
(6月5日午後 追記)
日経朝刊に「きょう逮捕」とあったのもビックリでしたが、いきなり村上氏の記者会見というのもサプライズでした。毎日ニュースが比較的詳しく報道されているようです。これ読んで事件の内容わかる方おられます?投資のプロとしてミスを犯したことは謝罪するし、構成要件に該当するかもしれないから、おそらく起訴されるだろう、起訴されたら甘んじて受ける。だけど「もうけようとして取得した」わけじゃないが、検察からもうけようとして取得したわけでなくても、宮内さんから聞いてますよね、と言われたらそうかもしれない・・・・・・・。これ、インサイダー取引の構成要件該当性は認めるけれども、犯罪は成立しませんよ、と言っておられるに等しいように思えますが。つまり、検察から指摘された客観的事実については争わないけれども、村上氏の主観としては違法性の認識はなかった、との解釈でよろしいんでしょうか。普通「裁判やるには2年かかる」というフレーズを使うのであれば、事実関係を否認する場合であって、法律上の解釈を争う場合には、そんなに時間はかかりませんし、何をおっしゃっておられるのかは、さっぱりわからないのが現実です。(仕事中なので、このへんで。。。)
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コメント
これ・・堀江さんは捕まりませんよね。。
投稿: いく | 2006年6月 5日 (月) 09時30分
僭越ながらTBさせていただきましたm(_ _)m
今回の件、ご紹介の毎日新聞の記事や、会見の様子の放送(日経BBニュースのダイジェスト版ですが・・・)、それに村上氏自身のリリースを見る限りですが、村上氏が言いたかったことは
(1)少なくとも各時点における判断の段階では、私(村上氏)は違法性の認識は持っていなかった
(2)検察から指摘された事実があったことについて争わない
(3)検察がこの事実について「証券取引法に引っかかる」というのだから、それを認める。
ということなのかな?と受け止めています。
個人的には特に(3)の部分が「普通にはない展開」なので驚きを感じています。なかなか私の頭では理解がついていかないのですが、実のところでは「事実は認めるし、検察が言っているからきっとこれはダメなんでしょう?」と受け入れるところを見せて印象を良くしつつ、ココロの中では絶対的な自信を持っていて「裁判官が検察とは異なる判断(=罪にならない)を下す」ことを待っている・・・ということはないでしょうか?(きっとありえないですね・・・)
何はともあれ、この事件はまだまだ余波がありそうに感じます。
投稿: Swind@立石智工 | 2006年6月 5日 (月) 21時36分
Toshiさん,TBさせていただきました。
プロ中のプロだと言えば言うほど,違法性の認識について言い逃れができなくなるように思うのですが,全面降伏でないとしたら何のための記者会見だったのでしょうね。
従前から株を買いつづけてきたとしても,ある時点からその取得の質が違法なものに変容する,その判断を的確にするのが投資のプロだとすれば,正直プロって大変だなと思います。
投稿: kitiomu | 2006年6月 5日 (月) 22時43分
>いくさん
おひさしぶりです。
私は本件では「村上氏はライブドア経営陣をそそのかした」という点の立件は不可欠だと思っています。したがいまして、どちらかといいますと、本件では堀江氏は利用された立場にあるんではないかと。
そういった意味では再逮捕ということはありえない・・・というのが意見です。
>立石さん
いつもコメントありがとうございます。
村上氏は頭のキレのいい方ですから、それなりにコメントには意味があるのかなぁと思っております。
私はきょうのコメントにも書きましたが、あの会見はファンドの存続のための最善の策ではなかったかと。幹部が逮捕を免れたのも、あの会見の成果ではないでしょうかね。
>kitiomuさん
コメントありがとうございます。
さっそく、そちらにもTB、コメントいれさせてもらいました。
おっしゃるとおりでプロ中のプロであればまさに「適合性の原則」によって、「ミス」といった言葉では済まされず、故意の認定は厳格になってしまうでしょうね。
またご意見お待ちしております。
投稿: toshi | 2006年6月 6日 (火) 02時04分