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2006年6月27日 (火)

会計監査人の内部統制(4)

中央青山監査法人の行政処分問題も、カネボウ事件調査委員会の調査報告書(骨子)が出され、そして中央青山監査法人が金融庁へ報告書を提出した段階となったことで、監査法人としての内部統制問題も輪郭がつかめてきたのではないでしょうか。基本的には金融庁から指摘を受けたレビューパートナー制度(パートナーレビュー制度?)のあり方を重点的に改善することや、内部通報制度を充実させることなど、いわゆる組織における「性悪説」に立った組織改革が中心になっているように思われます。カネボウ事件調査委員会報告(骨子)にも、「性善説」に立った審査体制は、こういった大きな組織になるとリスクが大きいと評価されておりまして、その監査体制の甘さが指摘されているところであります。

ただ、いつもこういった管理体制の調査報告や見直しが公表されるときに思うのですが、今回のような事件が発生した場合に、「あるべき体制」が整備されれば、事件は防止できるのでしょうか?(かりに防止できる、と断言できたとして)どのようなシステムの機能によって事件が防止されるのでしょうか?あらかじめ、あるべき体制を整えても防ぎきれない「内部統制の限界」はある、そして、それはどういった場合なのか、といったことは留意点として指摘しなくてもよいのでしょうか?そういった諸点をきちんと押さえておかないと、いくら立派なことが書かれておりましても、調査報告書にせよ、体制改善報告書にせよ、あまり説得力がないように思いますが、いっこうにそういった今回の事件と改善策による防止可能性との因果関係については触れられておりません。監査法人の内部統制というのは、ある意味、公認会計士協会が祈念してやまない「自主規制による不正防止の強化」の要であるはずですよね。もしこれが有効に機能しなければ、現在検討中の「監査法人への刑罰適用(両罰規定)」が実現してしまうことも視野にいれておかないといけないのではないでしょうか。とりわけ、このカネボウ事件調査委員会報告書では、平成14年3月期から同16年3月期のレビューパートナーについては、関与社員がカネボウとあまりにも親密に粉飾の計画を立てていたから、巧妙な虚偽の説明を看破し、カネボウの問題点を的確に把握することは相当に困難だったと結論付けていますが、この結論からすれば、「性悪説」によるレビューパートナー制度に改善したところで、きちんと見抜けるようになるのかどうかはまったく疑わしいところではないでしょうか。ともかく会計のプロであり、またレビューパートナーのプロでもある会計監査人本人が事件に関与した場合、そういった制度の穴をうまく抜けて企業と共謀してまた不正経理に加担する、といった事態は容易に予想できるところでして、この改善策がなぜカネボウ事件再発防止に役立つのか、私にはまったく理解できないところであります。また、そもそも会計士さんの集団組織に「性悪説」を前提としたシステムはタテマエのうえで妥当しますかね?会計士さんには不正摘発といった職責はなかったんじゃないでしょうか。現在の法律を前提とするならば、審査をするのは、監査の品質管理のためであって、タテマエのうえでも「何か悪いことに関与しているのではないか」といった疑いを前提とした制度は許容されないんじゃないのかなぁと思ったりもしております。

先週、公認会計士協会近畿支部の方とお話をしていたときに、会計監査人の内部統制について、上場企業の監査役はどうやって、その相当性を判断したらいいのか、実務はどうなるのか、とお聞きしてみましたが、「おそらく企業向けに配布予定の内部統制に関する説明書を監査役に渡して、そのとおりにやってますから、と説明する。監査役もよくわからないうちに、そうですか・・・と言って相当性あり、と判断する、といった流れになるんじゃないでしょうか」との説明でした。そりゃ、ご自分が監査役を務める企業が粉飾決算をしているのであれば、責任を会計監査人に転嫁するよりも真っ先に監査役の責任を問われてもしかたないかもしれませんが、他社で同じ監査法人の会計監査人に不祥事が発生した、といった場合、その内部統制が問題になることもあるわけですし、「おたくはあの会社と同じ監査法人に監査をお願いしているはずですが、なんで監査役はその内部統制を相当と判断したの?」と問われたら、結構困りますよね。どう答えましょうか。それこそ「内部統制の限界論」とか「専門家集団における信頼の権利」でも持ち出しましょうかね?いろんな意見があってもいいとは思うのですが、上場企業の監査役たる者、会計監査人(監査法人)の内部統制の相当性判断はかくあるべし、といった個々の哲学は持っておいたほうがいいのではないでしょうか。(そこまで悩む監査役が出てくると思って会社法施行規則が出来たかどうかは不明ではありますが)

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