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2006年7月 7日 (金)

コンプライアンス経営はむずかしい・・・

(追記です。 コメント数が多くなりますと、右のコメントツリーにうまく乗っからないみたいです。全部にはコメントをお返しできておりませんが、ちょこちょことお返事させていただいておりますので、よろしければ下のコメントのところをご確認ください。)

世間の景気がよくなってきたせいか、企業のコンプライアンス委員会にも、最近むずかしい対応を迫られるケースが出てきます。いま、私が関与しております件も、どういった結論を出すべきか迷っております。(個別企業が特定されないよう、事案は抽象的にしか紹介できませんので、あしからずご了承ください。)

事案は支店長の使い込み、いわゆる業務上横領事件です。その支店長は社内では非常にやり手で、部下の信頼もかなり厚い方です。しかしながら、この1年ほどで相当程度の金額を流用していたことが判明しました。(判明したのは、財務情報に関する内部統制システム構築の作業によるものです。)

支店長と私が面談をして、流用金員のほぼ全容が解明されたのですが、すべて本社に稟議があがっていたにもかかわらず、「リスクが高い」として却下した取引事案に関するものでして、その取引を独断で進めるべく、接待交際費やリスク低減のための準備調査費用に充当されていました。(つまり、私的流用は一切ありませんでした)。そして、その支店長の努力の甲斐(?)あってか、取引先開拓は順調でして、前年比2,5倍の収益を計上する「最優秀営業店」となり、事実を知らない一般社員はその支店長を尊敬しております。

もちろん、取締役会の意思決定に反して、独断で取引を進め、会社の金員を流用した事実については「領得意思」はないものの、会社に対する害意は認められるでしょうから、刑事告訴の対象にはなるでしょう。(収益を上げていても、使い込みしている以上は、損害が発生していると考えられます)しかし、世間の好景気と支店長の才覚によってこの企業は近年まれに見る好成績を残しました。本人は流用の事実が発覚しないと思っていたようですが、残念ながら会計士の先生と内部監査人の調査によって発覚してしまい、いまは不満はあるものの、退職の準備をしているところであります。

私がいちばんムズカシイなあと思うのは、支店長に対する処分ということよりも、この問題をどう社内で広報すべきか・・・・・というところです。たしかに悪いことをしたが、彼は取締役らの保守的な取引活動に風穴をあけ、会社に好成績をもたらし、若い社員たちに新しいビジネスモデルを提案した。正直、今後の会社にとって「もったいない」んです。しかし、一方で業務執行の適正性確保といった面からみれば、稟議決定違反にもかかわらず、つっぱしった支店長が、いい結果を残したからといって、会社は甘い処分にしていいのだろか。

最後は取締役会の決断に委ねるとして、私はやはり懲戒、刑事告訴相当として報告を上げるしかないのでしょうね。私がワルモノになるのはいいのですが、会社の士気にかかわるのは、どう役員の方々が問題を広報するか、にあると思っています。(それにしても、やっぱり財務報告の信頼性を高めるためのシステム構築って、やってみると現場の「ヤバイ恒常的業務」が出てきたりしますね。これ、現場と闘うのはたいへんですよね。リベート問題なんか、いっぱい出てきたりして・・・)

7月 7, 2006 コンプライアンス経営はむずかしい |

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私がよく拝見させていただいている法務系ブログ「ビジネス法務の部屋」にて、大変興味深い事例が紹介されていました。 コンプライアンス経営はむずかしい・・・(06.07.07のエントリより抜粋) 事案は支店長の使い込み、いわゆる業務上横領事件です。その支店長は社内では非常にやり手で、部下の信頼もかなり厚い方です。しかしながら、この1年ほどで相当程度の金額を流用していたことが判明しました。(判明したのは、財務情報�... [続きを読む]

受信: 2006年7月 7日 (金) 23時09分

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toshiさんがおもろい事例をエントリーされてます。 関係当事者にとっては業務上 [続きを読む]

受信: 2006年7月 8日 (土) 06時30分

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受信: 2006年7月 8日 (土) 06時33分

コメント

はじめて投稿させていただきます。
私も同じような事案に遭遇して、経営陣に
進言することがありました。

いくら好成績を上げたといっても、ルールに
反して売上(収益)を向上させたのは「ずるい」
と思います。
そんなずるい方法で成績を上げた人が
懲戒対象となるのは当然であり、コンプラ対応
としては懲戒相当、賠償請求すべし、と
の判断が妥当であります。

私は社外の人間ですが、社内の人間であっても
同じ対応をすべきです。今の世の中、社内でも
内々の処理は誰かによって内部告発されるんで
はないかと。
公表も毅然とした対応をすべきだと思います。

投稿: 田舎税理士 | 2006年7月 7日 (金) 13時37分

>公表
これは難しい問題ですね。
弊社もいわゆる「営業停止(指名停止)処分」が下されることがあるのですが、じゃ、関係者にどのような処罰が下されたのか、という点は全くの未公開です。
ただ、「指名停止なので、~はしないように」との話だけです。
これでは、いくらコンプライアンス重視、とか言われても、一社員には全くピンと来ない話です。
社内処分をどこまで公表するのか、というのは悩ましい問題ではあると思いますが、処分は処分として公表すべきだと、考えます。

投稿: かず | 2006年7月 7日 (金) 15時17分

今、ビジネスにおいては公正である事が今まで以上に求められています。
支店長のオーバーランについて、上司は全く感じる事もなかったでしょうか。上司を騙しきって、良い業績を出してくれれば、目をつぶるような社内風土はなかったのでしょうか。もし、そういうことが少しでもあれば、上司や会社はずるいと思います。このあたりの事も十分に調べた上で、懲罰は下すべきと思います。
公表の仕方で社員のモラールとモラルは大きく影響されますが、正確かつ上司の責任の重さを考慮された公表が重要と思います。でなければ、経営責任を果たしているとは誰も考えません。

投稿: 濡れ衣と戦う会社員 | 2006年7月 7日 (金) 17時05分

企業経営のみにとどまらない、組織と個人に関する示唆に富んだ事例だと思い、興味深く拝読しました。こうした違反がなくなるとは思えませんで、事後の賢い対応が必要なところですね。

拝読した限りでは、私が取締役なら、事後、調査が入る前に自ら報告しなかったことについてのみ軽微な処分をし、稟議決定違反については私的流用がなかったことや、支店長が出した結果がよかったこと、そもそも所与の支店長権限が必要な権限に比べて小さすぎた可能性があること、に鑑みて不問にし、違反に関する事後報告のインセンティブを高める(隠蔽のインセンティブを低める)ために事実とそれに対する処分を詳細めに公表し、支店長権限に関する現状を見直します。ファーストリテイリングではありませんが、まず店長や支店長が主役の時代ですから。

資質としてこの支店長は「(平)取締役体質」であるように思いますので、早めに取締役にしてしまった方がいいのではないかと思います。リスクに関する判断力に優れているようですし。支店長というだけでは役不足なのでしょう。

こうした人物を徹底的に叩くだけでは必要なリスクすら取らない縮小均衡の会社になり、誰も悪くないままつぶれる、ということになると思っています。

投稿: bun | 2006年7月 7日 (金) 22時05分

最初はコメントとして書かせていただこうと思っておりましたが、大変長くなってしまいましたので、僭越ながら私のブログでのエントリに意見をまとめて、トラックバックさせていただきました。

本日のエントリに触れ、大変深く真剣に悩まれているご様子が目に浮かんできます。今回のケースは「コンプライアンス経営の悩み」について大変勉強になりました。

恐らく「マネジメントの現場」にはこのような事案がゴロゴロと転がっているのだと思いますが、もし可能であれば、また“差しさわり”の無い範囲で「現場で起こっている事案」をご紹介頂ければ大変幸いです。

投稿: Swind@立石智工 | 2006年7月 7日 (金) 23時22分

この問題は、取締役会の各役員の度量そのものでしょうね。支店長から上がっていた稟議を判断する能力がなかった。経営能力が無かったということ。これは会社のオーナーである株主が判断すべきことがらですね。
支店長の行為は、欧米流に従えば、内規というものを知りながら行動しているわけで、アウトです。あえて、bunさんや、Swindさんのような日本的配慮を行っても人間関係で問題を先延ばしするだけ。支店長はさっさと会社を辞めて(toshi先生の配慮--刑事告訴を避けて)、独立する手が一番でしょう。で、部下など、どんどんこの会社から引き抜いて、この手の稟議を決済できない会社のコンペティタと、うまく下請け的なポジションからスタートして、なるべきではないでしょうか。当然退社時点で、和解でしょうから、後々つまらない訴訟にならない配慮は必要ですが。
昔ですが、某社のトップがユダヤ系、技術トップがインド系の他国の企業の内紛をみたことありますが、まさにドライな今日の友は明日の敵という関係でした。これもビジネスだと思いますが。

投稿: 胡桃 | 2006年7月 8日 (土) 00時27分

toshiさんへ
大変ですねえ、ホントに。
でも、こういうところで悩むというのがtoshiさんの良心的なところなのかもしれませんね。
ある規範についての評価を与えることで、その後の集団内部においてその評価が与える影響を考えた上で、アドバイスの内容を考える・・。
当たり前のはずのことなのですが、なかなかこれがねえ・・・(^^;)。
企業の顧問弁護士としての注意義務を十二分に尽くしておられると思います。
エントリーの性格上、具体的事実を開陳できない以上、コメントつける方も一般論を超えて断定的にいいづらいところもある問題っすから、コメントつける方も結構むずかしいっす。
ろじゃあもコメント欄では書ききれなくなったので(^^;)、後で自分のブログにエントリーしときます。
ではでは。

投稿: ろじゃあ | 2006年7月 8日 (土) 06時04分

これは処分は避けられないと思うんですが。

こういった独断専行をきちんと止められないようでは、早晩破綻するんじゃないですか?
経営判断原則が手続を履践していれば結果が悪くとも責任が問われないのと同様に、いくら結果が良くても手続無視をしていれば責任は免れないものと私は考えます。
今回はたまたま結果が良かったからいいですが、いつもいつもそうだとは限りませんし、こんなことを認めているようではチェック機構が骨抜きになってしまうんじゃないですか?

>支店長はさっさと会社を辞めて(toshi先生の配慮--刑事告訴を避けて)、独立する手が一番でしょう。

いい考えだと思いますね。
経営のトップに立てば自分の行為の問題性も理解できるようになるでしょう。
ただ、
>部下など、どんどんこの会社から引き抜いて、
は、忠実義務違反の可能性があるのでお勧めしませんが。

投稿: とーりすがり | 2006年7月 8日 (土) 06時38分

toshiさん、すいません。
ダブルでTBしちまいました。
一個、消しといていただければと。
申し訳ございません。
ココログ最近調子悪いなあ・・・(TT)。

投稿: ろじゃあ | 2006年7月 8日 (土) 06時41分

あ、この支店長さんは取締役じゃないんですね。
忠実義務違反は無いですね。
(雇用契約上何かあるんでしょうか?)

投稿: とーりすがり | 2006年7月 8日 (土) 07時49分

(たくさんコメントを頂戴しましたので、何度かに分けてお返事させていただきます。回答に際しましても、守秘義務があるために、ご納得できるような内容になっていないところもあろうかと思いますが、ご容赦ください。。m(__)m)
>田舎税理士さん

 はじめまして。コメント、ありがとうございます。そうですよね。こういった問題に最初にぶつかるのは税理士さんとか、会計士さんのほうが多いですよね。実は私は顧問弁護士ではなく、会社の組織(外部専門家による委員会)の委員のひとりでして、委員会を代表して、この支店長さんと面談をしました。面談のまえには、内部統制導入のためのコンサルをされている会計士さんや、内部監査人の方と「証拠一覧表」「説明用の入出金明細票」などを作成して、「どう釈明されても逃げられない」程度の書類を作成しました。この証拠検討のなかで、支店長の周辺の人たちから聞き取りを行うわけですが(もちろん、聞き取りを行う段階で支店長にも調査がわかってしまうことは承知のうえで)、田舎税理士さんの主張されているような考え方が出てこなかったんです。つまり、こういったケース、支店長の周辺の人たちは「うすうすわかっていて何も言わない」ことがあるんですね。内部通報(ホットライン)はもちろん2年ほど前からこの会社にも存在しておりまして、それなりにセクハラ対策などには有効に機能しているわけですが、支店長が非常に人望が厚いので、みんな黙認といいますか、(そこまでは私も証拠はありませんが)内部告発など到底期待できる雰囲気ではないのです。
今回は取引先の協力がなく、支店長の決済裁量や販促割引制度、というあたりを悪用しただけだったので、内部統制システム構築手続のなかで、(普段の会計監査とは無関係の)会計士さんによって「あやしい」と思われて判明した次第ですが、内部告発というのも、「あいつは嫌いだ」とか昇進に対する嫉妬、妬みのような感情が存在しないと、けっこう日本の会社では機能しにくいんじゃないか・・・などとも思います。

投稿: toshi | 2006年7月 8日 (土) 11時49分

>かずさん 濡れ衣と戦う会社員さん

「公表」の重要性をご理解いただき、ありがとうございます。皆様がたのご意見をお聴きして、なるほど、私の立場(外部のコンプラ委員)からすると、取締役会側の「リスク管理」の妥当性についても検討したうえで当事者の処分や公表内容を決定するほうがいいように思えてきました。日本人的解決を勧めるかどうかはそれから先の話のようですね。
支店長の稟議申請にあたって、取締役はどういった資料をもとに「却下」したのか、却下の判断過程に問題はなかったのか、取締役会に他事考慮はなかったのかなど検討したほうがいいのかもしれません。社内決定違反ということも、その決定に合理性があるかどうか、外部第三者だからこそ、これを判断したうえで支店長の処遇に意見を述べることも可能かもしれません。

投稿: toshi | 2006年7月 8日 (土) 13時10分

守秘義務の範囲でなかなか巧みな設例、考えさせられました。
具体的な処分がどの程度がいいのかというのは、まさに個別事情の判断だと思いますが、公表については会社がこの支店長の行為をどう評価してそういう処分をしたのか、を明らかにすべきだと思います。
公表は現実的には難しい部分もあるわけですが、収益を上げる方法として何が許されて何が許されないのかを従業員に明示するのが経営者としての義務だと思います。
そもそも(福井総裁が運用益を寄付するのとは異なり)会社という組織はこの支配人の内部統制に反した行為に基づく収益であっても収受してしまう、という「業の深さ」があるわけで、経営者としてはそういう業の深さに正面から向き合って経営をしていかないと、コンプライアンス経営(その会社なりの企業文化)は根付かないと思います。

投稿: go2c | 2006年7月 8日 (土) 22時28分

こんばんは。
いつもながら、考えさせられるエントリーです。
先生が顧問ではなく、社内(ですよね?)の人間という立場ですから難問ですよね。その支店長さんがどんなに人望が厚い方であっても、先生の職責は毅然とした態度で調査結果をまとめ上げて、取締役の善管注意義務を尽くすための資料と専門家としての意見を述べるのが適切ではないか、と僭越ながら考えておりました。
私はbunさんのご意見に賛成する立場ですが、それは取締役の判断としてであり、先生のお立場としては、会社との(コンプライアンス委員としての)契約から逸脱してはいけないのではないかと思います。こういった問題が発生した後に、先生がその会社からコンサル的な立場で相談を受けた場合には、また違った考え方も成り立つのでしょうか?
長々と失礼しました。

投稿: unknown | 2006年7月 9日 (日) 02時02分

コンプライアンス・プロフェショナルですが、長いので、名前を先生がやっていただいた形に略して投稿させていただきました。

この問題、非常に難しい問題ですが、企業の現場では意外と直面する問題ではないかと思います。

書き込みの内容を見ても、処罰については、厳罰派と柔軟派に分かれているようですが、私も、外部の人間としてこのようなケースに遭遇したら、自分ならどういう助言をするかという観点から考えてみましたので、少しコメントをさせていただきます。


1.以前、イーホームーズの内部告発の是非をめぐり、私は、コンプライアンス担保の絶対要件である信賞必罰の問題については、信賞の問題と必罰の問題は分けるべきであると書かせていただきましたが、ここでもその判断基準は変わらないと思います。

 コンプライアンスというと必罰の問題だけがクローズアップされますが、実際の刑事裁判においても、情状酌量があるように、信賞の問題と必罰の問題は区別した上で、総合的に判断していくことが、コンプライアンスの推進には必要だと思います。
 特に企業に置けるコンプライアンスの問題を考える場合、必罰の側面のみで突っ走った場合の社内への影響を考えなければいけません。よく、処罰がゆるいと組織的に違法行為が蔓延するという方もいますが、必ずしもそうではないというのが、少なくとも私の企業実務における結論です。むしろ、有無を言わさずに、内規違反だからと処罰のみを行う場合の方が、その後の反動は大きくなるケースが多いのも企業実務における結論です。
 どのような反動があるか、それは、①内規違反だから処罰するというやり方は、その内規が十分に従業員間で共通認識、賛同を得ている場合は別として、高圧的な印象を現場に与え、却って現場の反発を強くする(これは結果として、連鎖的な複数の退職者を生み企業の競争力を低下させたり、ノウハウの流失を生みます)か、②触らぬ神に祟りなしの発想になり、リスクを取れない組織体質、事なかれ主義、前例主義、指示待ち体質を生みます。そして何よりも③独善的な体質を生みかねないという危険があります(これは、「これを守らなければいけない」が「これさえ守ればいい」になり、「これを守っているから正しい」という思考パターンになることです。)。この「これ」が、内規や業務マニュアルの場合は、内規を守ることがコンプライアンスになってしまい、「企業の常識、世間の非常識」の状態になってしまいます。
 このような反動があるからこそ内規違反=必罰的な発想は危険であり、信賞の問題と必罰の必罰の問題はわけ、評価すべきところは評価し、罰すべきところは罰していく方が、社内のモチベーションコントロールもしやすくなり、結果的にコンプライアンスを推進する動機付けが可能になると考えます。

2.そして、コンプライアンスの問題を考える際は、決まりだから守らなければいけないという前提はそうなのですが、決まりの合理性や効率性を無視してはいけないと思います。要は、現行の体制や決まり、職務分掌などにも問題がある場合は、その見直し、改善もしていかなければならないということです。
 現場でコンプライアンス違反がある場合、現場でコンプライアンス違反をする当事者は、多くの場合、会社の体制や決まり、職務分掌の問題点を認識している場合が多くあります。そして、それを守っていたのでは、お客様からの要望にこたえられない、社会的使命が果たせない、売上が上がらないというジレンマを抱えています。
 このような現象は、多くの会社で見られる場合がありますが、これなどはコンプライアンスの本来の趣旨から外れて、目的と手段が逆転した法令遵守・内規遵守お題目型(規程や法律を守ること、言い換えれば、規程や法律の趣旨を踏まえずに額面どおり、文字通りの運用を押し付けること)のコンプライアンスになってしまいます。こうなると、真のコンプライアンスの達成は難しくなります。

3.したがって、今回の事象の場合は、私は、bunさんと同じ立場を取りたいと思います。

>事後、調査が入る前に自ら報告しなかったことについてのみ軽微な処分をし、稟議決定違反については私的流用がなかったことや、支店長が出した結果がよかったこと、そもそも所与の支店長権限が必要な権限に比べて小さすぎた可能性があること、に鑑みて不問にし、違反に関する事後報告のインセンティブを高める(隠蔽のインセンティブを低める)ために事実とそれに対する処分を詳細めに公表し、支店長権限に関する現状を見直します。

というbunさんの結論は、落としどころとしては(総論としては)適切ではないかと私も考えます。各論的に考えた場合は、社内への影響やコンプライアンス推進への強い意思表示の観点からは、支店長から降格させるべきだと考えます(再起のチャンスを与える)。
 この点、各論としての解決方法には、確かに優れたリスクセンスとリスク管理能力を買って取締役にという声も傾聴に値しますが、このまま役員にしてしまうと、それこそ、内規違反が公然と認められたことになり、他のリスク管理能力のない従業員のコンプライアンス違反を誘発してしまう可能性があります。
 したがって、支店長を降格させて、内規違反や報告がなかった部分は咎めつつも、そのリスク回避方法などは属人的な能力とはいえ、合理的かつ効率的なものがあり、今後会社として、内規の見直しや社内稟議の判断基準の見直しを図るに値するものである点を考慮して、再起のチャンスを与えるべきだと思うのです。

 処分の理由としては、支店長としては、稟議が却下されたとしても、自己のリスクセンス、リスク管理をきちんと社内で説明・説得に努める必要があったのに(実際はやっていたかも知れませんが・・・)それをやらずに、内規に違反して独断専行したという点に求められるかと思います(内規が問題なのであれば、内規を改善・修正するように問題提起や行動を行うのが、マネジメントとしての役割であり、それを怠った)。


公表の是非については、当然に行うべきだと思いますが、きちんと理由も付して行うことが、重要かと思います。

以上、長くなりましたが、私見をコメントさせていただきました。

投稿: コンプロ | 2006年7月 9日 (日) 23時12分

皆様

私は特に自分の意見であるとして著作権?を主張するつもりは全然ありませんので、たたき台として自由に、ご自身の意見のように使っていただければと思っておりますが、丁寧な引用をしていただいたばかりか、稚拙な意見に寛大な理解をいただきまして、ありがとうございます。総括で失礼ですが、この場をお借りしてお礼申し上げます。

unknown様ご指摘の通り、私見は「取締役の判断」について述べさせていただいたものでして、その点言葉足らずでした。また的確に補足説明をしてくださいまして、ありがとうございました。

大変考えさせられかつ勉強になる事例を提供してくださった管理人toshi様に改めてお礼申し上げます。

投稿: bun | 2006年7月10日 (月) 00時37分

あれ?bunさんのコメントが消えていますね。
おそらくココログの不調によるものだと思います。たいへん失礼しました。
しかし、こうたびたび支障を来たすようでは、本当に困りものです。。。

投稿: toshi | 2006年7月10日 (月) 01時35分

>bunさん
コメント、消えてませんでした。(単に、アップされるまでの時間が遅くなっているだけのようでした。)
>立石さん 胡桃さん

いつもコメントありがとうございます。立石さんの懲戒権に関するご意見、また胡桃さんの刑事告訴へのご意見、参考にさせていただきます。たしかに刑事告訴の件につきましては、犯罪の成立そのものにも疑問点はありますし、背任を含めて、そんなに簡単に検察もしくは警察が受理(本格的捜査)をしてくれるものではないことは事実だと思います。懲戒処分や刑事告訴につきまして、本当に慎重な対応が必要であることがよく理解できました。
ただここで検討しておかなければいけないと思いますのは、「公表」の意味だと思うんです。今回はたまたま支店長が金員の流用をしながらも、会社に利益をもたらしたのですが、行為自体は決して許されるものではありませんし、多くの社員は処分対象となっていることを承知しています。そういったなかで、全社員にはどう公表することが「全社的なコンプライアンス経営の周知徹底」の浸透と整合性をもつのか。また、「公表」は一般第三者との関係でも問題となります。それこそ、もし誰かが会社の処分決定後に内部告発を行った場合に、「どういった経緯で、どういった処分を行ったのか、その処分は公正、透明性をもったものか」といったあたりの説明を求められることも視野に置かなければならないと思います。依願退職という形ならどうか、懲戒処分だけを行い刑事告訴は見送った、とする場合はどうか、民事に関する示談のみを成立させた場合はどうか、会社に利益をもたらした以上、不処分とした場合はどうか、それぞれ取締役会としては選択の余地はあるかもしれませんが、それぞれの判断ごとに第三者への説明責任は尽くせるのかどうか、そのあたりが非常にむずかしいと思いますし、おそらくコンプラ委員の意見は事実上、取締役らは尊重すると思いますので、また私自身も悩むところであります。ただ、取締役らの監視義務違反の事実があれば、これも(単に内部的に支店長の処分検討材料として用いるだけでなく)毅然と公表の範囲に含めるべきではないか、とも思います。「会社内部での処分問題」であっても、こういった社外に向けた対策との観点から、みなさまはどういった対応が妥当と考えられるでしょうか。

投稿: toshi | 2006年7月10日 (月) 02時21分

toshi先生、コメントされた方へ

貴重なご意見、ありがとうございました。
私はtoshi先生も社外の人間と考えてコメント
しておりましたので、すこしピントがずれて
いたように思います。
失礼しました。
公表の重要性ですか?
この会社は上場企業でしょうか、それとも
非上場でしょうか
そこまでは事案は紹介できませんですね

こういったコンプライアンスの研究会など
ありましたら参加してみたいです。
ただ、このブログのように守秘義務との
兼ね合いで詳細まで十分な検討ができない
ところにストレスがたまりそうな気も
しますが。机上の研究では十分理解できない
ところも勉強できて、非常にありがたいと
思う次第です。

投稿: 田舎税理士 | 2006年7月10日 (月) 02時49分

toshi先生が、「公表」とするかどうかという点でこだわりをもっておられたことは当初の記事から理解しておりました。

が、「公表」という行為には必ず処置が伴う必要があると思います(進行形という形を取るのも実務での手法ですが。)そして、一番大事なのが「公表」を誰に向かって(この誰が大事)出すかというレベルの判断が、コンプラ違反の内容とまさに関連するとおもいます。場合によれば、取引先への影響、取引先から契約秘守義務違反で訴えられる可能性すらあろうかと思います。
社内に向かってであれば、この「公表」は支店従業員にヒアリングを行っている時点で、実質コンプラ違反で某支店長が問題になっているということは、ほぼ今回のコンプラに関連する所には噂として広がっていると思います。あえて、この時点で社内に向かってどういう点でコンプラ違反があったかの再確認周知であれば、処罰の選択肢が決まった時点で、「某支店で、これこれのコンプラ違反に該当する行為があった。これに関しては現在、処罰も含めXXXXの委員会で調査が終了し、処置を検討中である。この社長達で従業員に周知したいことは、具体的に以下のこれこれである。」程度のものでしょう。変な萎縮や各部署での混乱した判断を防ぐ意味としての途中公表以外は、処罰を伴わない限り公表は、社会的規範違反以外は避けるべき行為だと思います。くどいですが、すでに噂という形態で詳細に情報は末端まで流れているのが会社組織ですから。これが何万人、何十万人の組織でも。

投稿: 胡桃 | 2006年7月10日 (月) 08時52分

toshi先生
拙いエントリにも関わらずコメントを頂きまして誠にありがとうございました。

内部処分に関する社内外への「公表」については、私の少ない知恵の中では「胸を張って説明できるだけの検討と意思決定」を尽くすことしか思い浮かびません。

同じ事象であっても公表の方法や範囲によっては異なる「メッセージ」と取られる可能性があることは否定できません。ただ、この部分というのはどのような手当てを行っても“受け手次第”となってしまい、大変コントロールしにくい部分だと感じます。それよりは“発信側”がコントロール可能な「発信する内容」を“本質部分”でしっかりと考えて、その上で「自分で考えたこと」をストレートに説明するしかないんだろうな・・・と感じます。

今回のケースの場合、きっと社内の皆さんは「経営陣の判断」をものすごく見ているのではないかと推察します。ある意味では「経営陣からのメッセージ」を伝える非常に良い機会でもあり、その意味では、少なくとも社内公表においては、変に包み隠すことなく、丁寧かつストレートに公表し、そのために、“経営陣自身”にしっかりと考えてもらうしかないのであろうなと感じます。

このエントリやコメントを通じてtoshi先生がこの支店長や会社のために尽力されている姿が目に浮かんできました。しかし、最後のところで経営陣が「コンプラ委員の先生方がおっしゃっる通りにしました」としてしまったら、たぶんどのようなメッセージも伝わらずに、せっかくの御尽力が水泡に帰してしまうのでないかと感じております。

toshi先生が行い得る業務範囲では「経営陣に複数の選択肢を示し、それぞれの考え方と(公表することを含めて)予期される影響を論理的に整理したうえで、“おススメ度”のサジェッションとともに意思決定を経営陣に委ねる」ということが、結果的には最良の結果をもたらすのではないかと個人的には感じました。(状況が分からないのでこのような形が許されるか分かりませんが・・・)

長文のコメント失礼いたしました。今回は大変良い考察の機会を頂くことができました。

投稿: Swind@立石智工 | 2006年7月10日 (月) 19時55分

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