コンプライアンス体制構築と社外監査役の役割
日本監査役協会関西支部の定例講演会(全日空ホテル)で、表記の演題で1時間半、講演をさせていただきました。(正確には「コンプライアンス体制構築と社外監査役・社外取締役」)今年5月に大阪弁護士会の研修で講演させていただいたときもたいそう緊張いたしましたが、650名の先輩監査役の方々の前で講演をさせていただくということで、今年一番の「緊張状態」となってしましました。それにしましても、「コンプライアンス」という表題は集客力がありますね。お越しいただいた監査役の皆様や日本監査役協会の方々のお蔭をもちまして、私もほぼお話させていただきたかったことの90%程度はご理解いただけだのではないか・・・・・と、思っておりまして、ここに厚くお礼申し上げます。
なお、演題の内容につきましては、コンプライアンス経営と内部統制との関係(全社的リスク管理の一貫としてのコンプライアンス経営と監査役の関与)というものが中心でありましたが、私がもっとも申し上げたかったことは「コンプライアンス」の意味の理解につきましては、語る人によってマチマチかとは思いますが、せめてそれぞれの企業で「うちの会社では、なにかコンプライアンス問題になるのか」共通認識をもってもらいたい、といったことでございました。お話のなかでは、平時と有事に分けてコンプライアンス対処法などを紹介いたしましたが、コンプライアンス経営がリスク管理の一貫である以上は、何をもって「リスク」と考えるのか、企業内における「共通認識」は不可欠であります。現代社会においては、法律違反によるペナルティ以外にも、会社の信用を毀損してしまうおそれのある「社会的制裁」といったものはそこらじゅうにゴロゴロしております。うちの企業は、それらの制裁をすべて気にしながら対処して会社の信用を守ろうとするのか、それとも法令違反には慎重に対応するけれども、それ以外の社会的なペナルティに対しては「断固、うちの企業のほうが正しい」と毅然として、株主以下利害関係者には自社行動の正当性につき説明責任を尽くす方針をとるのか、このあたりの企業としての対応方針を十分検討していただきたい、というのが私がもっとも申し上げたいところでありました。
コンプライアンスを曖昧に議論することの弊害→→萎縮的効果
私の講演をお聞きいただいた方はお話申し上げた内容と重複いたしますが、8月31日の日経新聞の朝刊には 証券会社の経営、厳格監視へ(金融庁) や 通信・放送の法体系見直しへ(総務省) といった記事が掲載されていると思われます。いずれもこの「コンプライアンス」を曖昧に理解することによって、企業に萎縮的効果が発生してしまい、企業経営の競争力を阻害することに関係しております。たとえば金融庁の証券会社に対する監視が厳しくなりますと、それに引きづられて証券会社の証券発行企業に対する審査基準も厳しくなるはずでありましょう。もし証券会社から指導を受けたことに反する行動に出たとした場合、発行企業としてはどんな制裁が待ち受けているのでしょうか。その制裁は異議申し立てによって取り消されるものなのでしょうか。抵抗することだけで社会的信用を毀損してしまうものなのでしょうか。「相手の行動に応じて対応する」、これがまさにコンプライアンスの真の意味でしょうし、リスクごとにその評価とその回避策を全社的に検討をしておくことは、いわゆる「コンプライアンス問題」に直面した企業が、必要以上に相手の行動に屈してしまったり、萎縮的になってしまうことを防止するためには不可欠な企業行動だと私は考えております。(なお、本日はこの6月に提訴されました住友金属の株主代表訴訟につきまして、「コンプライアンスと内部統制論との関係」を解説する具体例として掲げさせていただきましたが、株主オンブズマンのHPにその訴状が公開されております。おそらく経営判断の法理との関係や、内部統制構築義務の具体的内容の釈明の関係などから、もっと詳細な主張が追って出されることとなるものと予想されますが、勉強熱心な方は、いちおうご参考にされてはいかがでしょうか)
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