買収防衛策導入と全社的リスクマネジメント
紳士服のAOKIインターナショナルが大証2部のフタタに対して公開買付を行うという報道につきましては、いままで全くこのブログでは触れませんでした。といいますのも、本当に敵対的なのかどうか、よくわからないままですし、フタタのHPでも何も公表されておりません(唯一、大証のHPでAOKIより提案を受けた、との1枚のペーパーが公表されているだけです)ので、問題をどのように取り上げてよいのか、ちょっとわからないままでありました。ただ、フタタの代表者(社長)がAOKIと現提携先であるコナカとそれぞれトップ会談をされたことに関する報道をみておりますと、なるほど公表できるほどに社内での合意形成がなされていないということのようですね。
こういった創業者一族が上場後も経営トップに君臨されている企業の場合、全社的なリスク管理というのは難しい場合もありそうですね。私の予想の範囲を超えませんが、創業者である会長さん(代表者のお父様)は、AOKIの100%子会社になるほうがいい、との考えですが、会社を仕切っておられる常務取締役管理本部長の方は、これからも独立経営しかありえない、コナカの提携案についても十分検討する、(会長さんがAOKIとの統合に前向きとの報道陣からの質問には)会長個人の見解を述べられたのでは?との考えのようで、(社長さんはどっちの意見なのかは不明)社内での意見が未だ統一されていないようです。フタタの社員の方々も、一体この先、どうなるのか不安だと思います。こういったときに事前に買収防衛策がきちんと導入されていれば、すくなくとも誰がどのように買収希望企業の提案を受け止めて判断するのか、ひとつの社内指針になりえますから、社内の意思決定の不統一といった事態も起こりにくいのではないでしょうか。(事前に買収防衛策を導入できるだけの資金を準備できるかどうか、といった問題は別にあろうかとは思いますが)事前警告型防衛策の導入とまではいかなくても、こういった創業者一族の影響度の高い上場企業の場合でしたら、せめて全社的リスクマネジメントの一貫として、敵対的買収時における対応マニュアルのような「社内指針」を作っておくことも一考に値するかもしれません。(作るときに、いろいろと揉めたりするかもしれませんが)
しかし青山商事とAOKIとの差はかなり大きいようですね。店舗網の拡大ということだけでAOKIが青山を追撃できるかといいますと、すこし疑問もありそうです。なんといっても青山は「青山カード」を発行していますから、どの年齢にはどのような服装が売れる(売れている)といった情報が瞬時に把握できるのが強みですね。1年に2回購入する顧客から、数年に一回しか購入しない顧客まで、それぞれにターゲットを絞った営業戦略も立てられますし。普通のクレジットカードで購入しても、個人情報保護の関係で、おそらく他社は売れ筋商品のリアルタイムでの把握ができないのではないでしょうか。あと学生さんの取り込みにも青山商事は成功していますよね。紳士服専門店の「土日チラシ大作戦」から一歩も二歩も抜きん出ているように思えるのですが。私はこのAOKIの提携話を聞いたとき、フタタの持っている福岡の一等地のビルを活用して、いわゆる営業戦略の転換を図るための資金源にしたいのではないか、と思ったのですがどうもそうでもないようです。単なる規模の拡大ということでしたら、フタタにとっての企業価値向上というのはいったいどのあたりにあるのか、ひょっとしてコナカとの提携関係を強めるほうが価値向上につながるのではないか、などとも考えるのですが、そのあたりはどうなんでしょうか。
AOKIに対するフタタの回答期限は14日だそうですが、社内の合意がいつできるのか、ということも踏まえ、もう少し先になりそうな雰囲気ですね。
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