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2006年8月26日 (土)

不正会計の予防に向けて(1)

著名な弁護士の先生方のご推薦をいただき、日本取締役協会の内部統制部会に入会させていただきました。(いろいろとご配慮いただき、厚く御礼申し上げます)さっそく研究会に参加させていただきまして、これまた日本を代表する商社の内部統制システム構築の進捗状況などといろいろと研究させていただき、非常に有意義な時間を過ごすことができました。また、研究会の内容等につきましては、関連エントリーの際にでも、お話できる範囲でご報告申し上げます。

さて、約2週間ほど前に「不正会計の予防に向けて(序)」と題して、企業における全社的リスク管理の一貫として不正会計予防を真剣に考えてみたいと申し上げておりましたが、その続編をすこし検討してみたいと考えております。この問題について本格的に検討する前に、いくつかの問題整理が必要ではないか、と思っております。その一つは、金融商品取引法における内部統制報告実務と監査役との役割関係というものであります。まだ月刊監査役8月号は読んでおりませんが、この月刊誌に森濱田松本法律事務所の著名な先生が金融商品取引法と監査役との役割ということを主たるテーマとして論稿を発表していらっしゃいます。このテーマ、実はいままであまり議論されてこなかったのではないか、と思います。このあたりのテーマについて、私自身が考えている問題整理をこの週末にでも、きちんとエントリーをしておきたいと思います。議論のポイントは、①会社法上の会計監査人と金融商品取引法上の内部統制報告実務に出てくる監査法人(公認会計士)とは基本的に別人である、(たまたま内部統制報告実務のうえでは同一の会計士もしくは監査法人が担当してもいい、ということになっているだけのこと)ということと、②内部統制監査というものは、結果の監査ではなく、基本的にはプロセスの監査であるため、内部統制報告実務において、経営者の有効性評価の内容を監査する人間は「原則としては毎日のプロセスを会社にへばりついて観察していなければいけないのであって」、それが困難ということであれば、誰かの力を必要とすること、③もし、会計監査人である会計士(監査法人)が、会社法からみて「非監査業務」であるはずの「内部統制監査」を同じ人間がやってもいい、ということになれば、これは会社法サイドからすれば異例の事態を認めることになるのであって、もしそういった非監査業務を会計監査人がやってもいいのであれば、監査法人改革の主題ともいえる「不正監査発見業務」というものも会計監査人に求めてもいいのではないか、といった問題が出てくること、こういったあたりでしょうか。

前回のエントリーで今後の内部統制報告実務を議論するにあたり、「統制環境」「全社的統制システム」といった用語がキーワードになるのではないかと申し上げましたが、ここにもそういったキーワードが登場してまいります。もし、ご紹介しました「月刊監査役」8月号でも、私と同じ問題意識のもとで、役割論が整理されておりましたら、「マネしとんちゃうか?」と言われるのも問題でありますので、続編を中止することもありますが・・(笑)

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コメント

M・Eです。先生が東京で日本監査役協会の内部統制研究会に参加しておられたころ、私は、大阪で内部統制の講演をさせていただいておりました。栄えある研究会に参加され、益々のご活躍を期待しております。
ところで、先生のブログは監査・会計の観点からのテーマが多く取り上げられ、今回のテーマも法廷会計(フォレンジック・アカウンティングというそうですが)の観点から取り上げられたとお見受けしますが、CFEの知見がバックボーンにおありなるからでしょうか。私も後からですが、徐々に研鑽を積んでゆきたいと思います。
 24日に実務指針の公表時期が遅れるとの追記情報を書かれていますが、ページ数も当初200頁を越えるものが予定されていたのに、僅かに数十頁程度のものとなり、具体例の記載もないものになるそうですよ。委員内部ですり合わせができずに結局、事なかれ主義から、間違いのない範囲のものに限定することになったのでしょうかね。内部統制報告実務は、まだまだ制度設計が確定せず、ダッチロールが続きそうですね。
 

投稿: M・E | 2006年8月26日 (土) 18時01分

どうも、コメントありがとうございます。
CFEは不正会計の疑いのあるところから始まるわけでして、会計監査、内部監査とは根本のところが異なるわけですね。
いまの時期、アメリカの資格が日本でもいろいろと話題になってきましたのは、このたびのエントリーとも大いに関係のあるところです。不正会計というものは、極論するとどこの企業にも多かれ少なかれあると思うのですが、そこに緊張関係をもたらして一般投資家保護をはかるためには、国家権力を強大化するか、国家権力に代替する機能を会計監査人に付与するか、といったあたりが有力な策ではないかと思います。おそらくこれから会計士さんの不正発見義務というのは、証券取引等監視委員会の権限強化と並んで、いろいろなところで議論されていくのではないでしょうか。
何度も申し上げますが、私は今後20年は「会計の時代」と捉えているものですから、どうしてもこういった話題になりますと、関心が高くなってしまいます。どうも最近は国際会計基準が喫緊の課題になってしまったみたいですね。

実施基準につきましては、私が言いにくかったところをフォローしていただき、ありがとうございました。

投稿: toshi | 2006年8月28日 (月) 02時37分

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