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2006年8月29日 (火)

内部統制における退職給付債務問題

8月25日の日経情報ストラテジーニュースによりますと、(電通国際情報サービスが)日本版SOX法への対応整備を検討している上場企業300社への調査により、その32%の企業が「SOX法の求める最低限度の要件に合わせた対応」を検討しており、「業務改革や基幹システムの再構築をめざす」と答えた企業はその半分の16%しか存在しないということのようです。(50%程度の企業は対応未定とのこと)やはり内部統制システム整備への費用対効果といった面での一般企業の関心から考えますと、担当者レベルとしましては、どうしても「実施基準が示す最低限度の要件をクリアできる程度の対応でよい」との回答になってしまうのも、なんとなく理解できる気もします。しかし、これはちょっと一般企業の方々が、まだまだ内部統制報告実務の目的を十分理解されていないのではないか、との感想を抱いてしまいます。おそらく、こういった雰囲気が世間に蔓延してしまったことから、「これはマズイ」と実施基準の策定責任者の方々もお思いになったのではないでしょうか。それで、実施基準の作り直しという事態に至ってしまったのではないか、と私はひそかに推測しておりますが。(いえ、これは本当に私の単なる推測ですが・・・)私もこのあたりは講演で何度も申し上げている留意点であります。

そもそも、私の金融商品取引法上の内部統制報告実務に関する理解からしますと、こういった「最低限度の要件クリアでよい」という選択肢と「業務改革をめざす」という選択肢を二者択一に回答を求めること自体が疑問であります。すでに何度かエントリーでも述べておりますが、おそらく「統制環境」「全社的内部統制システム」といった概念は、今後の日本版SOX法の運用場面において大きな役割を演じるはずです。誤解をおそれずに申し上げますと、監査法人さんから「経営者が評価した統制内容は無限定に適切である」との証明をもらえるのは、企業が業務改革に取り組む姿勢が真摯であることが「統制環境」として評価されるためである、と考えられます。したがいまして、この「統制環境作り」といいますのは、なにも実施基準が公表されていないと対応困難、というわけではなく、現段階であっても、十分対策を練ることができますし、なによりも経営陣の方々の認識こそ「統制環境」の要件をクリアする第一歩だと思います。

きょう郵便で届きました「経営財務2784号」の24ページ以下で、会計コンサルティングファームの山口光男氏が「内部統制における退職給付債務問題(上)」のなかで、内部統制システム構築の原点についてお書きになっておられますが、これ、たいへん素晴らしい内容です。いまの日本企業がおかれている現状を認識して、内部統制報告実務がなんのために導入されるのか、その目的をまず第一に明確にされています。そして、その目的達成のために、内部統制の有効性評価方法はどうあるべきかを検討され、その評価分析としての具体的な問題のひとつに表題の「退職給付債務問題」を掲げておられ、非常に説得的であり、また応用のきく方法論を提案されておられます。ひさしぶりに内部統制に関連する論稿として、レベルの高いものを拝読した気分であります。また、私もこの山口氏の見解は大いに賛同するところであります。ちょっと会計士や税理士の先生方以外には、すぐに読める雑誌ではありませんが、もしどなたかお知り合いに「経営財務」をおとりになっていらっしゃる先生方がいらっしゃいましたら、その論稿だけでもお借りしてお読みいただくことをお勧めいたします。

8月 29, 2006 内部統制における退職給付債務問題 |

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コメント

ご賛同頂きました、山口光男です。
金融商品取引法は純粋に経済活動に関わるものですが、統制環境は夢、志、知的公正、意志といった極めて人間的な要素を含んでいると思います。従って、内部統制に関する現在の状況が、企業トップ、会計監査人、更に金融庁といった社会の指導者的人々の関与にも拘わらず一般的となっているとしたら、日本は一体どういう国ということになるのでしょうか。“尊敬される日本”などとても想像できません。 同じ思いの人が国中に沢山居ることを信じたいと思います。

投稿: 山口光男 | 2006年8月30日 (水) 12時35分

>山口光男さん

はじめまして。執筆者直々にコメント頂戴いたしまして、たいへん恐縮です。おっしゃるとおりだと思います。八田先生ご自身が、そのあたりを痛切に感じとられたのではないでしょうか。(実施基準のドラフトが、もともと複数名の担当者の方によって作成され、その統一性がなかなかとれない、という問題もあったように聞いておりますが)「内部統制」という問題が社会で一人歩きしてしまっています。私はこれが「したほうがいい」議論であれば、一人歩きでもいいかな、とも思いますが「しなければいけない」(監査証明を受ける、代表者が確認書を出す、など)議論と密接に関連している概念であるがゆえに、一人歩きは危険だと思います。「統制環境」という言葉は、私はとても都合のよいマジックのようなものだと認識しておりましたが、山口さんは「夢、志」などずいぶんとロマンたっぷりの概念と捉えていらっしゃるんですね。人間的要素という捉え方では一致しておりますが、なんだか前向きな捉え方で清清しさを覚えました。参考にさせていただきます。
法律家の私には、(下)のほうはちょっと内容がムズカシイかもしれませんが、ぜひ続編も期待をしております。今後もまた遊びに来てください。

投稿: toshi | 2006年8月31日 (木) 02時47分

内部統制が上場企業において関心事になっているようですが。
現在の、その方向性はともかくも、ふと思ったのが、自治体、独立行政法人、特殊法人、政府といった所では、どうなのだろうか?
金融証券取引法や会社法が関与しない組織や機関ではあるが、例えば、ふじみの市プール事故などは、内部統制が実施されていれば、防げたのではないかと思ったのです。

投稿: 売れない経営コンサルタント | 2006年9月 1日 (金) 15時44分

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