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2006年8月31日 (木)

コンプライアンス体制構築と社外監査役の役割

日本監査役協会関西支部の定例講演会(全日空ホテル)で、表記の演題で1時間半、講演をさせていただきました。(正確には「コンプライアンス体制構築と社外監査役・社外取締役」)今年5月に大阪弁護士会の研修で講演させていただいたときもたいそう緊張いたしましたが、650名の先輩監査役の方々の前で講演をさせていただくということで、今年一番の「緊張状態」となってしましました。それにしましても、「コンプライアンス」という表題は集客力がありますね。お越しいただいた監査役の皆様や日本監査役協会の方々のお蔭をもちまして、私もほぼお話させていただきたかったことの90%程度はご理解いただけだのではないか・・・・・と、思っておりまして、ここに厚くお礼申し上げます。

なお、演題の内容につきましては、コンプライアンス経営と内部統制との関係(全社的リスク管理の一貫としてのコンプライアンス経営と監査役の関与)というものが中心でありましたが、私がもっとも申し上げたかったことは「コンプライアンス」の意味の理解につきましては、語る人によってマチマチかとは思いますが、せめてそれぞれの企業で「うちの会社では、なにかコンプライアンス問題になるのか」共通認識をもってもらいたい、といったことでございました。お話のなかでは、平時と有事に分けてコンプライアンス対処法などを紹介いたしましたが、コンプライアンス経営がリスク管理の一貫である以上は、何をもって「リスク」と考えるのか、企業内における「共通認識」は不可欠であります。現代社会においては、法律違反によるペナルティ以外にも、会社の信用を毀損してしまうおそれのある「社会的制裁」といったものはそこらじゅうにゴロゴロしております。うちの企業は、それらの制裁をすべて気にしながら対処して会社の信用を守ろうとするのか、それとも法令違反には慎重に対応するけれども、それ以外の社会的なペナルティに対しては「断固、うちの企業のほうが正しい」と毅然として、株主以下利害関係者には自社行動の正当性につき説明責任を尽くす方針をとるのか、このあたりの企業としての対応方針を十分検討していただきたい、というのが私がもっとも申し上げたいところでありました。

コンプライアンスを曖昧に議論することの弊害→→萎縮的効果

私の講演をお聞きいただいた方はお話申し上げた内容と重複いたしますが、8月31日の日経新聞の朝刊には 証券会社の経営、厳格監視へ(金融庁) や 通信・放送の法体系見直しへ(総務省) といった記事が掲載されていると思われます。いずれもこの「コンプライアンス」を曖昧に理解することによって、企業に萎縮的効果が発生してしまい、企業経営の競争力を阻害することに関係しております。たとえば金融庁の証券会社に対する監視が厳しくなりますと、それに引きづられて証券会社の証券発行企業に対する審査基準も厳しくなるはずでありましょう。もし証券会社から指導を受けたことに反する行動に出たとした場合、発行企業としてはどんな制裁が待ち受けているのでしょうか。その制裁は異議申し立てによって取り消されるものなのでしょうか。抵抗することだけで社会的信用を毀損してしまうものなのでしょうか。「相手の行動に応じて対応する」、これがまさにコンプライアンスの真の意味でしょうし、リスクごとにその評価とその回避策を全社的に検討をしておくことは、いわゆる「コンプライアンス問題」に直面した企業が、必要以上に相手の行動に屈してしまったり、萎縮的になってしまうことを防止するためには不可欠な企業行動だと私は考えております。(なお、本日はこの6月に提訴されました住友金属の株主代表訴訟につきまして、「コンプライアンスと内部統制論との関係」を解説する具体例として掲げさせていただきましたが、株主オンブズマンのHPにその訴状が公開されております。おそらく経営判断の法理との関係や、内部統制構築義務の具体的内容の釈明の関係などから、もっと詳細な主張が追って出されることとなるものと予想されますが、勉強熱心な方は、いちおうご参考にされてはいかがでしょうか)

8月 31, 2006 コンプライアンス体制の構築と社外監査役の役割 |

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受信: 2006年9月20日 (水) 13時23分

コメント

こんにちは。
昨日の講演でお世話になった監査役でございます。(最後にすこしばかりご挨拶させていただきましが)
90分、とても貴重なお話しを拝聴いたしました。資料も豊富で社内の監査スタッフにも読んでもらおうかと考えております。
こういったブログというものは初めて読みましたし、コメントもこれでよいのかどうか不安でありますが、どうか今後ともよろしくお願いいたします。
昨日の話は後半ですこしお時間がなくなってしまったようでしたので、ぜひまた続きをお聞かせください。
益々のご発展を祈念しております。

投稿: シンマイ監査役 | 2006年8月31日 (木) 11時22分

はじめまして。
私も昨日の監査役協会の講演を拝聴した者です。
とある上場企業の常任監査役をしております。
斬新な切り口でコンプライアンス経営の考え方を整理されておられ、遠方から大阪へ参りました甲斐がございました。厚く御礼申し上げます。
私はダスキン事件の判決文を読んでおりませんので、少し誤解もあろうかと存じますが、一般的に取締役にはああいった場面での「公表義務」というものは認めてもいいのではないか、と思っております。
先生は昨日のご講演のなかで「リスク管理の一貫であって、あの状況では外部に不祥事が発覚するリスクが極めて高かった、だから公表すべきかどうかリスク管理をきちんとすべきだった」との見解だったように理解いたしました。私はたとえうまくばれずに済むような場面であっても、過去にあのような重大な不祥事を行い、それを社内調査で全役員が知った以上は、社長が率先して公表し、過去の不祥事を謝罪する責務が取締役全員にあると考えました。たしかに先生のおっしゃったように役員は株主の利益のために行動すべきであって、倒産のリスクを背負ってまで公表すべきかどうか、そのあたりは今でも若干逡巡はしております。ただ、もし私が役員であって、あのような調査結果を聞いたとしたら、真っ先に社長に公表を進言しますし、もし社長が公表しないのであれば、私が公表すると思います。隠蔽するよりも、公表するほうが少なくとも消費者や投資家に対して信用毀損の度合いは少ないでしょうし、そういった信用毀損を最低限度に抑止することは、役員の株主に対する善管注意義務違反にはならないと考えておりますが、いかがなものでしょうか。
私はあのような重大な不祥事をただ先送りしながら役員を続けるほうが、よっぽど苦痛ですし、公表することでもし倒産するということであれば、それは隠蔽して経営活動を継続するよりもまだ役員としての対応としては真っ当な態度だと思います。
長々と意見を書かせていただきましたが、私のような監査役も世間にはいることをご承知おきいただければ幸いです。いろいろと考えさせられる講演内容でたいへん興味深いものでした。また、先生が講演されるのを楽しみにしております。乱文、失礼いたしました。

投稿: unknown | 2006年9月 1日 (金) 01時56分

>シンマイ監査役さん

コメントありがとうございました。
緊張しすぎてまた時間配分を間違えてしまいました。申し訳ありません。また、次回がありましたら、もうすこし時間の最適配分に留意したいと思います。このブログは私の能力をはるかに超えている方のコメントも有益ですよ。またよろしかったら遊びに来てください。

>unknownさん
はじめまして。できましたら、なんでもけっこうですのでお名前をお書きいただきますと、次回から特定できますので、よろしくお願いします。
公表義務の点につきましては、そういった立場もありうるかもしれません。私が申し上げましたのは、あくまでもこの6月9日の高裁判決の立場であります。判決文をよく読みますと、たとえば違法な利益供与に関する不祥事の公表につきましては、「ことの当否は別として」しなくてもよかったかもしれない、との文言が出てまいります。私はなんでもかんでも公表せよ、といった立場ではなく、この判決はそもそもこの不祥事が高い確率をもって発覚するからこそ、そのリスク管理をもうすこし経営判断としてきちっと検討すべきだったとの立場だと理解しております。損害との因果関係の認定場面におきましても、そういった理解のうえで判断されたものだと考えられます。
講演の際にも述べましたが、おそらくこのダスキン高裁判決は今後いろんな先生方によって分析されるものと思いますので、またそういった解説もご参考にされてはいかがでしょうか。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2006年9月 2日 (土) 02時55分

はじめまして。
株主オンブズマンについて検索しておりましたら、このブログにたどり着きました。
大変失礼かと思いますが、私のブログ、
http://consumer.seesaa.net/
で紹介させていただきました。
私のブログは事情があって、コメントを受け付けない設定になっております。
もし紹介等ご迷惑でしたら、このコメント欄でその旨お知らせいただきたく存じます。
ご活躍をお祈りしております。

投稿: consumer | 2006年10月14日 (土) 16時40分

はじめまして。ご紹介いただき、ありがとうございます。
立場はかなり違いますが(笑)、こういった見方がご参考になれば幸いです。今後とも忌憚のないご意見をお待ちしております。

投稿: toshi | 2006年10月15日 (日) 22時57分

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