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2006年10月19日 (木)

建築設計監理契約の法的性質論(判決)

昨日、平成15年から係属しておりました建築紛争裁判で大阪地裁第20民事部の判決を頂戴いたしました。あしかけ4年での原審判断です。この事件を契機に、私は今非常にトレンディで社会的に注目されております「建築紛争調停制度」への反対意見書を弁護士会、裁判所へ提出したことがございます。建築紛争といいますのは、施主と建築請負業者、施主と設計監理業者、そして設計監理業者と建築請負業者の間において、「旧態依然」の解決方法がまかり通っている世界でありまして、「法の支配」がなかなか浸透していない世界だと思っております。その建築紛争の調停制度といいますのは、そこに弁護士と建築士資格をもったおふたりの調停委員が「裁判の途中から参加」されて、専門家的立場から当事者双方を説得して、円満解決を図る、という制度であります。この「あしかけ4年の判決」のとおり、建築紛争は専門的判断の要素が強いものでして、医療過誤と並び、弁護士にとってもけっこうつらい仕事です。(;´д` ) トホホ したがいまして、調停制度自体は、たしかに早期解決に向けて関係者が努力するわけですから、有意義であることは間違いありません。ただ、こういった調停をあまりに使いすぎますと、マンションやビル建設における法的ルールの開発が遅れてしまい、請負業者や設計監理業者のコンプライアンス経営体制がいつまでたっても構築されません。1年半ほど前に、私の意見を一度真剣に裁判所に申し伝えた経験がございましたが、その後実務が少しは変わったのかどうか、そのあたりは私も検証しておりませんので不明のままであります。

この事件も裁判官の強い説得のもと、私も当事者も「調停回付」を最終的には承服いたしましたが、そこでの手続はあまり効果的なものではありませんでした。結局、こちらが調停委員の最終調停案を承諾しないまま、また裁判に戻りまして、闘い続けたものであります。原審判断は結果的には完全勝訴となりましたが、勝訴の最大の原因は横に置くとしても、その裁判所の判断理由のなかで、非常に画期的な判断が下されました。いわゆる施主と設計監理会社との間における「建築設計監理契約」の法的性質論であります。これは請負契約か、準委任契約か、というところで実務上争いのあるところですが、最後まで判決にこだわったことから、非常に今後の建築紛争、およびマンションやビル建築の際の契約書の法的解釈に有益となる判例が出たものと思われます。

一昨日のエントリーでも少し触れましたが、こういった判決が出るのは、代理人だけの努力ではどうしようもありません。「そろばん」を離れて、将来の建築業界の発展や、建築業者と取引をする施主が安心して建築を依頼できるシステムの構築などを真剣に検討できる当事者の存在が不可欠であります。(注1)先にあげました「裁判所が示した法的性質論」は決してこちらに有利なものばかりではありません。(詳細についての解説は、控訴審が係属する可能性が高いので、ここでは差し控えさせていただきます)しかしながら、こういった判断が裁判所から示されることは、おそらく関係業者全体のインフラになるものと思いますし、おそらく控訴されるでしょうから、また控訴審判決でも、どのように考えられるのか、実務的にたいへん有意義なものになりそうです。

なお、この判決内容につきましては、また法律雑誌等に掲載されるものと思いますので、建築紛争事案にご興味がございましたら、「建築設計監理契約の法的性質」論につきまして、後日ご留意いただければと思います。

(注1)敵対的買収防衛策発動の是非などを問う裁判なども、代理人は「ウハウハ」かもしれませんが(失礼・・)、争っている企業にとっては「そろばん」を離れて社会的インフラ形成に寄与しているところもあるかもしれませんね。

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