検察官の不当発言に賠償命令
これはすごい判決ですね。(検察官の不当発言で賠償命令)おそらく報道内容から推察しますと、夫が痴漢行為で逮捕、勾留、起訴された事件で、妻が決死の覚悟で検察官との会話内容を録音したものと思います。(失礼しました。典型的な痴漢行為ではないようです。朝日ニュース)ここまで夫を信じきった奥様の執念というか、肝っ玉の太さには涙が出てきそうになります。株主代表訴訟や住民訴訟もそうですが、世を動かす判決というのは、「そろばん」からは生まれませんね。やっぱり正義感とか執念とか、人間の内に秘められたパッションからしか生まれないですし、代理人(弁護人)にもこれと調和する「何か」が求められる気がします。
しかも裁判長は大阪地裁のエース、森部長ですね。9月30日の民事裁判シンポジウムには裁判所代表として登壇されていました。何度か森部長のもとで裁判に関与して、悔しい思いもしましたが、頭脳明晰、バランス感覚抜群の裁判官です。できれば判決文が早期にネットなどで公開されるといいですね。
(10月18日追記)
nobuさんもご指摘のとおり、読売新聞朝刊に録音内容(全てではないと思いますが)が掲載されています。これをもって「取調べの可視化」へ進むのかどうかはわかりませんが、こういった内容が「一部の検事さんの異常行動」とみるべきなのか、「あれ?これくらいなら恒常的ではないの?」とみるかでずいぶんと違ってくるように思います。少なくとも、高松の次席検事さんは「われわれの主張が認められずに残念」といったコメントを残していらっしゃいますので、素直に読めば「検察はこれくらいやって当然と思っている。このやり方が裁判所に認められずに悔しい」といった解釈も成り立つように思いますが、皆様はどう受け止められたでしょうか?
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コメント
今朝の読売新聞には検事と妻との会話記録が公開されていましたが、この内容だと判決は当然なんじゃないでしょうか。
取調べの可視化が弁護士会で議論されていますが、もし今回、妻がテープで証拠を保全していなかったら、絶対に検事の違法行為はオモテに出なかったわけですから、検察側証拠の適正化のためにも可視化は必要という方向に向かいますね。
投稿: nobu | 2006年10月18日 (水) 10時56分
パッションに頼っているだけでは、こういった判決が生まれることも少ないんじゃないでしょうか。せっかくの司法改革なんですから、弁護士さんがきちんと報酬をもらえるなかで「世の中を動かす判決」が誕生することを期待したいです。そういった意味ではなぜ日本に懲罰的損害賠償制度がないのか。濫訴のおそれがあるのなら、そういった弁護士こそ淘汰されるような司法制度を考えるべきだと思う。
投稿: るーべん | 2006年10月18日 (水) 16時40分
今日は結構暇なんで、いろいろ書き込ませていただきます。
(すいません。先生のブログを「ひまつぶし」ネタにしているかのような言い方をしてしまって。)
①今回の裁判、報道は結構少ないようですが、さらっと見る限り、結構複雑な背景がありそうですね(ないのかもしれませんが)。
この事件(本件の刑事事件の方)、結果は無罪ですが、最近世間を騒がせ、一大社会問題の様相を呈している「少女に対する性犯罪」ですよね(程度の軽重はありますが)。もしかしたら、この担当検事さん、正義感のあまり、といった事情もあったのかもしれません。そして、その正義感を背後で支えているのは「世論」(メディア及びそれを通じた識者の論調)なのかもしれませんね。また、一部の報道にある被告国側の主張は、「被害者(及びその家族)を保護する、というのが真意」というもののようです。そうだとすると、この点からもあまり検察を責められないように思います。
②結果論ではありますが、不当逮捕・送検した警察の罪の方がよほど大きいというのが、正常な市民感覚だと思います。そもそも警察がちゃんと捜査をしていれば、こんなことにならない筈で、それに比べれば、その延長上の手続きの中での一検事の一言の罪は遥かに小さいと思います。
③それにしても、この奥さん、なんで録音なんかできたのでしょうかね。普通の人はなかなかできませんよね。只者ではない、という感じがします。それとも検事に呼び出された段階で、弁護士に相談し、アドバイスされたのでしょうか。
③人格権侵害で認容額77万円というのは、2人分としても高くないですか(以前、相場は10万円くらい、と聞いたことがあるのですが)。刑事補償分が入っているのでしょうか。
④閑話休題。この事件、なぜ大阪地裁なのでしょうか?
投稿: 監査役サポーター | 2006年10月18日 (水) 23時43分
たしかになんで大阪地裁なんでしょうね?
検察官の住所地(転勤で)?
有罪認定された高知地裁での審理を拒否?
どなたがご存知の方がいらっしゃったらお教えください。
私も知りたいです。
どうも公判係属中に(ホントは)別の目的で奥様を
呼び出したみたいですね。やっぱりこの検事さんが
やり方がまずかったような。
nobuさんがいわれるような「取調べの可視化」に結びつく
ような事案ではなさそうですね。。。
投稿: toshi | 2006年10月20日 (金) 02時20分
昨日の日経新聞で、本件につき大阪高裁で和解が成立したとの報道がありました。和解内容は90万を国側が支払うという内容で、原告代理人は「一審判決の認容額+利子」相当の金額なので、全面勝訴の和解だとコメントしているようです。
で、原審判決を読んでみたいと思って第一法規のデータベースで検索したところ、
裁判年月日等 平成18年10月17日/大阪地方裁判所/第24民事部/判決/平成16年(ワ)第14254号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 一部認容、一部棄却
裁判官 森宏司 宮本博文 玉野勝則
というのがありましたが、要旨も全文も載っていませんでした。
要旨・全文は公開されていないんでしょうか?
投稿: SM | 2007年3月25日 (日) 15時17分
>smさん
情報どうもありがとうございました。
裁判の公開は憲法で保障されておりますが、訴訟記録の公開については憲法上の要請ではありません。ただ、民事訴訟法91条、92条がありますので、第三者の閲覧(裁判所へ行って、書記官に閲覧申請をする)は基本的に可能でありますが、当事者からの閲覧制限申立があれば訴訟記録も当該箇所において非公開となります。ましてや、WEB上もしくは判例データでの訴訟記録の公開となりますと、おそらく裁判所(司法行政として)の裁量によるものと思いますね。
投稿: toshi | 2007年3月25日 (日) 15時41分