知的財産の客観的評価の必要性
PS3が発売と同時に売り切れてしまったというニュースがにぎわっておりますし、12月2日には任天堂のWiiが発売予定ということでありまして、ゲーム市場は相変わらずのブームのようですね。私はPS2と少しばかりの「F1ソフト」くらいしか持っておりませんので、ゲーム業界のことを語る資格はございませんが、ゲームソフトの開発から販売に関連する契約に若干携わっておりますので(もちろん、内容につきましては高度な守秘義務がございますので、ここでは申し上げられませんが)、この業界における開発には「スピードが命」ということはよく存じ上げております。
昨年8月のエントリーで「無形資産の時代」というものをアップしましたが、そのときに京大と大和證券さんが、産学連携で無形資産の市場価値に関する共同研究を開始した、との報道について書かせていただきましたが、その後どうなってるんでしょうか?実はこういったソフト開発に関する契約(開発から広告、製造、販売に至る契約関係)というのは、ずいぶんと最先端の法律関係で組み立てられていると思いきや、実は旧態依然なんですね。なかなか金融機関から開発費用がおりない。過去にヒット作をとばした企業であっても、その会社の信用力というものが乏しい場合には、融資がおりないのです。そこで中間に大手企業の関連会社をかませて(つまりゲーム業界に関する素人集団)、信用力を補完したり、金主(ファンド)を別に用意して共同開発に近い形にして開発にとりかかる。ところで、スピードが命である一方で、ゲームソフト開発というのは非常に世に出るまで時間がかかるものなんですね。α版、β版を経て約1年、つまりこういった法律関係が形成されるのは、実際に1年先を見越してとりかかる必要があるわけです。PS2の人気ソフトがイタリアでは(その残虐性のために)発売中止になるとの報道(毎日新聞ニュース)がなされておりますが、そういった問題が開発途中で発生した場合には、開発サイドとしては大きな痛手を被ることになりますし、ましては似たようなソフトが先に発売されてしまいますと、大きな損失を受ける可能性もあるわけです。
ということで、スピードこそ命ではありますが、先のとおり中間に大手企業の関連会社などが入っておりますと、役員会で承認を得るまでに1ヶ月待たなければいけないとか、(私と同様)素人なもんですから、開発会社側にへんな要求が返ってきたり、ということでなかなか先に進まないということになってしまいます。こういった現実にぶつかりますと、やはり「無形資産の客観的評価」という世界ができないかなぁと痛感しますね。そういった世界があったら、金融機関からの融資も現状よりはもうすこしスムーズになりますし、信用補完のための中間会社は不要になりますから値段も下がりますし、なんといっても開発のスピードが上がるでしょうし。ただ、昨年の関連エントリーの際に、数名の方からご指摘を受けましたように、税務上の問題や、市場形成の要素がそもそも欠落している、といったことから、こういった市場形成のムズカシサはなんとも容易にクリアできないところだと思いますし、産学連携の共同研究というものが、どういった進展をみせているのか、なんとも将来の知財取引の可能性のために気になるところであります。とりわけ開発作業の近くでみておりますと、ゲーム素材を見つけてくる天才や、ゲーム化のための天才達が存在していたとしても、それを商品化するまでのチームスタッフの共同作業がなければ完成版に至らないわけでして、この「共同作業」もおそらく大きな企業価値を構成する部分だと思います。こういったところが無形資産のなかでどう評価されるのか、そういった関心もございます。
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