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2006年11月21日 (火)

社外取締役の辞任と適時開示

きょうは皆様方より、いろいろなご異論を頂戴しております。(どうもありがとうございます)とりわけコンプライアンス・プロフェッショナルさんのご意見につきましては、「マスコミの反応、もしくはマスコミの誘導と企業のレピュテーションリスク」といった新たなクライシスマネジメントに関連するものですし、問題の性質上、報道機関はあえて論点としては採り上げないものでありましょうし、これは私もかなり興味のあるところですので、また別の機会にきちんと検討したいと思います。(たしかに先日の郷原教授の講演におきましても、この点を教授が問題にされていましたよね)

さて、先週来、ちょっと気になっておりましたのはカタログ販売で有名な株式会社ニッセンの社外取締役2名が(来年2月9日付けにて)辞任する、といった開示情報が11月17日に公表されたわけでありますが、この情報を受けて、かなりニッセンの株価が下落しております(11月20日現在)。ニッセンの公表情報によるとおふたりとも「一身上の都合により」辞任する、というものでありますが、日経ニュースなどによりますと、ニッセンの子会社である信販会社の引当金問題(過払い金訴訟へ備える)や、業績不透明な時期における自己株買い推進への意見対立などが噂されているようです。(日経関西ニュースその1 その2)今年に入って「社外役員」がニュースとして話題になりましたのは、太陽誘電の社長追及、村上ファンドによる阪神電鉄社外取締役の続投指名、北越製紙社外監査役らによるポイズンピル発動勧告などございましたが、それらに次ぐ話題かと思われます。おひとりは投資ファンドの代表者の方ですし、もうおひとりは企業法務で著名な法曹でいらっしゃいますから、上場企業における社外取締役の役割というものは私なんかより、よほど精通していらっしゃると思いますが、あえて同じ「社外役員」としての立場から申し上げれば、たとえ「一身上の都合」であったとしましても、株主、一般投資家への説明責任というものは果たす必要はないのでしょうか?これは適時開示ですよね?適時開示の性格上、巷で辞任に関する憶測が流れたり、株価が急に動き出したような場合には、せめて憶測を否定したり、ノーコメントを貫く理由を説明したり、といった対応は必要ないのでしょうか。(ちなみに東証の適時開示に関するガイドラインによれば、社外取締役が辞任する場合の対応というものは掲載されていないようですが)このブログでは過去にも社外取締役の説明責任ということを検討いたしましたが、おおむね①経営者のアドバイザーとしての役割②専門家としての株主への説明責任を果たす役割③株主意思の代弁者としての役割、といったところでして、この経営アドバイザーという立場を重視するものでありましたら、「一身上の都合」程度の説明で辞任する、というのもごくあたりまえのようですが、②もしくは③の役割を重視する立場からしますと、おふたり一緒にお辞めになる、ということもあわせ考えますと、なんらかの説明が必要になるのでは・・・と(すくなくとも私は)考えてしまいます。

ニッセンの業績の急上昇を支えた功労者である方がお辞めになること、将来の収益向上が不透明な時期に自社株買いを続けること、引当金計上に関する経営陣の意見対立が生じたこと、10月19日に元従業員らが大阪地裁に「売上不足を理由に呉服を買わされた」としてニッセンと子会社である信販会社を提訴したこと等、株価に影響を与えそうな事実がいくつも存在するわけでして、こういった時期に社外取締役を辞任される場合には、なるべく株価に影響を与えないように「沈黙を守る」べきなのか、それとも様々な憶測によって株価が乱高下しないようになんらかのメッセージを公表すべきなのか、そのあたりはどう考えるべきなのでしょうか?(そもそも、功労者退任という事実以外の情報からすれば、社外取締役が辞任するといった事実とは関係なくニッセンの株価が動いている、ということも考えられますが)今後も社外役員は日本の上場企業には増加することが予想されますし、社内の経営陣と意見対立した場合の社外取締役の会社に対する善管注意義務、もしくは忠実義務の履行方法としては何が正しいものなのか、(辞任という方法も含めて)考えるべき問題ではないか、と思います。以前、ある社外取締役に関する研究会に参加した折、私が「企業不祥事を発見して、その不祥事の処理方針で経営陣と対立した場合、その会社と長くお付き合いしてしまったら、辞任はするけれども、不祥事を自ら世間に公表するのはちょっとなあ」と意見を申し上げたところ、現任の社外取締役のおひとりから「キミ、そんなこと言うなら社外役員になる資格はないよ!」とエラク怒られた経験がございます。というわけで、私個人の意見としましては、せめて「ノーコメント」を貫く理由もしくは、どういった一身上の都合なのか、もう少し説明が必要なのかな、たとえ会社側の適時開示だとしても、辞任する社外取締役の意向を盛り込んだ情報開示が必要なのではないか、と思いますがいかがでしょうか。(現にこれだけ株価が急落しているわけですから。)もう少し、適時開示に関するルールが進んでいくと、逆にノーコメント自体が、なにかのサインとして受け取られる時代が来るような予感もしますが。

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コメント

:ノーコメントを貫く理由を説明したり
それって、ノーコメントじゃないですから(笑)

「企業不祥事を発見して」ならわかるのですが、「なんかこのCEO、胡散臭いけど尻尾がつかめない、早めに手をひいておこう」というレベルの場合はどうすればいいのですかね。この時点で理由を話すことは訴訟リスクを抱えますし、実際に発覚してからでは手遅れですし。

:ノーコメント自体が、なにかのサイン
会計監査人の場合、ノーコメントの辞任自体が何らかのサインとして受け取られることもありますね。

投稿: KOH | 2006年11月21日 (火) 05時22分

オーナー・社長に抗して社内問題を公表できるサラリーマン役員は殆ど存在しないと思います。企業への忠誠心と、明日から無任所になるリスク、海外に比してホワイトカラー・経営層の収入は必ずしも良いといえない状況下で、身の保身を図ります。ですからいつやめても困らない社外役員の守備範囲は広いと思うのですが。でも社外役員の報酬と情報へのアクセスの可能性をあげる事には抵抗があると思います。それから京都のような狭い社会でノーコメント以上に発言すると、息苦しくなるかもしれませんね。

投稿: serateru | 2006年11月21日 (火) 10時33分

toshi先生、おはようございます。
ニッセンは元々京都の呉服屋さんだったんですよね。
中高年の女性のパートの方にノルマと歩合給制度でたくさん呉服を購入させた事例は山ほどありますから、toshiさんが言われる大阪の裁判は一件で終わるものではないと思いますね。その裁判の影響は大きいのではないかでしょうかね。
あと、狭い社会でノーコメント以上の発言をすると息苦しいとのことですが、じつは社外役員のブラックリストっていうものがあると聞いております。(真偽は定かではありませんが)一生懸命社外取締役としての職務を果たす人ほどブラックだったりして。。。

投稿: sara.onji | 2006年11月21日 (火) 10時53分

こんばんは。

いつも疑問ばかり呈して恐縮ですが・・・(突っ込むつもりは毛頭ありません)。

①一部報道や同社プレスリリースによると、同社には「取締役規程」というものがあって、その中に「事前届出条項」があるとのこと。「取締役の辞任は3ヶ月前までに申し出ることが必要」という内容らしいのですが、こんな内規、通常存在するものなのでしょうか?継続的契約における解約(契約不更新)条項みたいですね。さすがに「本日限りで辞めます」というわけにはいかないでしょうが、3ヶ月前というのはちょっと長すぎるのでは?また、東証CG報告書によると、同社の取締役会開催回数は年間40回(!)を超えるようですので、単純計算でも3ヶ月で10回ほど開催されることになります。辞任を表明し、かつそれが公表・報道されたあとも、淡々と出席されるのでしょうか(それとも全部欠席)?

②この会社、12月決算会社ですが、2/6付の辞任というは、何とも意味深なものを感じます。公開情報からすると、この会社の定時総会は3/中旬であり、そして取締役は来年定時総会で改選期を迎えるようです。とすると、何も2/6という中途半端な時期に辞めなくても、あと1ヶ月強辛抱して任期を全うしてもよさそうに思えるのですが。①の「事前届出条項」とも関連があるのかもしれませんが、決算・総会(2/6というのは、計算上、決算取締役会開催時期との関係でギリギリのタイミングのように思われます)にだけは関わりたくない、という意思表示にも見えてしまう、といったら穿ち過ぎでしょうか?

③そもそも論ですが、監査役(会)設置会社における「社外取締役」っていうのは、位置付けがどうも曖昧ですよね?米国流コーポレート・ガバナンス的な「見栄え」以外に、何か具体的な狙いとか効果はあるんでしょうか?旧商法下では、何ら狙いがなくても定義上要件を満たせば「社外取締役」になってしまった訳ですが、会社法下では狙いがないのであれば、要件充足しても「社外取締役」にしないこともできる訳ですから、私に言わせれば、そういった辺りこそきちっと説明してほしいなぁ、と思ったりします。

あと、余談ですが、今年の「社外役員(監査役)の"活躍"振り」として、忘れてならないのはJALの件です(例の総会開催直後の増資決定の一件です)。当事者が高名な財界人であるということもありますが、野次馬的な私などは、同社の来年の事業報告は一体どういう記述になるのだろうか、とワクワクしてしまいます(尤も、うち1名の方はその後逝去されましたが)。

投稿: 監査役サポーター | 2006年11月21日 (火) 22時33分

>kohさん
こんばんは。
「ノーコメント」と沈黙を守ることとの区別は難しそうですね。
たとえば敵対的買収の際、「ホワイトナイトの噂がたったとき」
など、なんらかの適時開示が要請されると思うのですが、
そんなとき、ノーコメントというのは、適時開示情報を流さない
ことなのか、「ノーコメントとさせてもらう」という開示情報を
出すべきなのか、そこのところが問題になるのかなぁと。

会計監査人の反論というものも、たしか最近は議論されていますね。
開示制度が進むにつれて、いろいろとテーマが増えてきたように
感じています。

>serateruさん
おひさしぶりです。
おっしゃるとおりですね。社外取締役、社外監査役の制度が懐疑的に語られるところはそういったところに由来しているのではないでしょうか。とりわけオーナー社長さんの場合「会社」への思いというのは、アメリカ流のガバナンスの意識とは相当かけはなれているのも当然のような気がしますし。
また、ご意見お待ちしております。

>saraさん
こんばんは。いつもありがとうございます。
うーーーん、私はそのようなものの存在は知りません。
もし本当だとしますと、これも本末転倒なきがいたしますが。

>監査役サポーターさん

>あと、余談ですが、今年の「社外役員(監査役)の"活躍"振り」として、忘れてならないのはJALの件です(例の総会開催直後の増資決定の一件です)。当事者が高名な財界人であるということもありますが、野次馬的な私などは、同社の来年の事業報告は一体どういう記述になるのだろうか、とワクワクしてしまいます

 そうでしたね。補足ありがとうございます。
 忘れていました。次回の講演で、これ使わせていただきます(笑)
 
 最近は私のエントリーよりも午後11時以降に書き下ろされる監査役サポーターさんのコメントを楽しみにされている方もいらっしゃるそうな・・・
 まぁ、管理人=監査役サポーター説が囁かれるよりはいいかも。。。

投稿: toshi | 2006年11月22日 (水) 02時50分

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