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2006年11月28日 (火)

証券犯罪とペナルティの実効性

「貯蓄から投資へ」を合言葉に、市場の活性化策をいろいろな機関が検討しているところでありますが、どんなに健全化をはかってみましても、(私を含めまして)「証券投資に関する知ったかぶりのできる素人連中」がどんどん参画してくるわけですから、今後は当然のごとく証券犯罪は増えるでしょうし、証券被害者も増えるはずです。自己責任を負担できる一般投資家の数が飛躍的に増えるということは、そういった「知識と経験のある素人」を騙す人達も出てくるでしょうし、また「知識と経験のある素人」さんだからこそ、今度は騙す側、法律を犯す側に回る人も増えることは間違いないと考えます。国策としての「貯蓄から投資へ」という世界が実現された暁には、おそらくインサイダー取引や不正な手段による相場操縦、証券詐欺事件など、いまでは想像もできないほどたくさんの証券犯罪事件が(摘発されるかどうかにかかわらず)増えることは確実だと思われます。さて、そういった犯罪増加を抑止する方法というものが、まさに刑事罰や課徴金制度に期待されているところでありますが、果たしてその実効性はどうやって確保されていくのでしょうか。これまで同様、証券取引等監視委員会によるピンポイント作戦で摘発する、といった方向性は変わらないとは思いますが、ただそれだけですと一件あたりの摘発までの証券取引等監視委員会の労力を考えますと、増え続ける証券犯罪への抑止力というのも限定的なものにならざるをえず、「捕まったほうが運が悪かっただけ」という風潮になってしまって、そもそも証券犯罪を思い留めさせる動機付けにはならないのではないでしょうか。

おそらくこのへんの事情につきましては、有識者の方々も十分承知されていると思いますので、最近の報道されているニュースなどを総合してみますと、増え続ける証券犯罪に対して、ペナルティの実効性をどう確保するか、という点に関する基礎作りが始まっているように感じています。たとえばいつも愛読させていただいているKOHさんのブログで「東日本ハウスに課徴金、虚偽記載で、証券監視委員会」というニュースに触れておられますが、KOHさんがご指摘のとおり、それほど悪質とは思えない事例においても監視委員会は積極的に課徴金処分の勧告を出す風潮が今後は目だってくるのではないでしょうか。これはまず、先日私がブログで申し上げましたように、大きな犯罪を適時的確に調査できるように、「広く浅く、グレーゾーンを敷く」ことにつながります。大きな犯罪の匂いがする場合に、その立証は困難でも、比較的容易に軽微な違法状態が存在すれば、まずその軽微なほうで強制的に調査をして中身を精査して、首尾よく主目的の犯罪証拠を探索する、といった手法であります。こういった手法が健全かどうかは別として、「巨悪は逃がさない」という取締側の有効な手段であることは間違いないものと思います。

また、昨日、インサイダー取引の取次ぎ行為を対象に、監視委員会が大和證券に対する処分勧告を行ったというニュースが報じられておりますが、取次ぎ行為への処分勧告は初めて、ということのようです。東証におきましては、インサイダー取引への監視を強めている、とのニュースが報じられておりました。こういった報道で興味深いのは、刑事罰もしくは行政処分という「ハードロー」の世界のルールの実効性を確保するために、「ソフトロー」の世界を利用するところであります。普通、ソフトローといいますと、自主ルールや社会規範としての「法に強要されない」ルールをいかに実行させるか、といった点が論点になるはずですし、そこに「事実上の強制力」なる概念が用いられることになりますが、ここでは国家権力による強制にもソフトローの世界が利用されることがおもしろいところですね。おそらく証券取引等監視委員会としましては、証券取引所や証券会社による自主的な監視活動の結果を情報として取り込むことで、効率的に犯罪情報を入手したり、また犯罪立件に不可欠な証拠を収集することを検討しているのではないでしょうか。おそらく、今後証券市場における犯罪捜査のための土壌つくりがすこしずつではありますが進むものと予想しておりますし、これは何年もかけて構築されていくものだと思われます。

ただ、業界団体の自主ルールや民間企業の取引マニュアルなどの民間規制に刑事罰や課徴金賦課の対象行為の特定を期待することは、証券市場という特殊な世界のことであるために非常に効果的である反面、その適用場面は曖昧となるために、市場参加者の証券市場活性化のための行動を萎縮させてしまうことも確かだと思います。(事なかれ主義といいましょうか)とりわけエンロン、ワールドコム事件においても揺らがなかったアメリカにおける証券取引所の信頼感と、日本の証券取引所のそれとは大きく異なるものがあるでしょうし、その自主規制部門による判断が果たして刑罰の実効性を高めるために有用なものとなりうるのかどうか、そのあたりはまた続編にて検討してみたいと思っております。

11月 28, 2006 ペナルティの実効性を考える |

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