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2006年11月 4日 (土)

企業法務で「戦う弁護士」雑感

(土曜の深夜 追記あります)

ネット情報による新聞離れ・・・と言われる昨今ですが、今週の日経新聞は、私的には非常に面白い特集がてんこもりでした。ネットニュースのような速報性がないぶん、やはり特集記事はじっくり読めます。とくに記事の紹介というものではありませんが、火曜日から金曜日までの「経済教室(企業価値を考える)」と、三宅伸吾記者の連載「法化社会(日本を創る)」は新聞紙に穴があくほどに何度も読み直したりしておりました。

こういった記事を読んでおりまして、そこに登場してくる日本の著名な弁護士さん方の姿や思想というものは、非常に迫力があります。(北越製紙側についた)牛島先生がクレディスイスの大楠さんを説得するために「哲学の話を朝までしよう」と誘って口説いたこと、藤縄先生の敵対的買収防衛策に関する基本的な考え方などは、日本の経済立国としての将来への長期的ビジョンに裏付けられていることなど、とても粋(いき)に感じました。(もちろん、おそれながら疑問に思うところもいくつかあるのですが)牛島先生と大楠さんは、以前社外取締役ネットワークのご講演のときに、いろいろとご意見を拝聴いたしましたが、おふたりとも非常に論理的な物言いが印象的でして、このおふたりが朝まで「哲学の話」を交わされた、というのは、いったいどんな話だったんだろうか・・・とまた興味も湧いてまいります。

弁護士という商売は、たしかに法律的センスというものが必要でしょうし、また交渉に動じない(ケンカに動じない)胆力も必要でしょうが、もうひとつ勝負に欠かせないものがあります。それは「勝ちたいと思う動機」ですね。有体(ありてい)に言えば「ぶらさげられたニンジン」です。「べんべんネット」(弁護士専用の会員制BBS)のほうでは、よく書かせていただきましたが、この「ニンジン」によって、弁護士の頭の回転も速くなり、また思いもよらないような奇策も浮かんでくるから不思議です。たとえば刑事弁護ですと、その「ニンジン」は高額な成功報酬のこともありますし、「この被告人をなんとか救ってやりたい」という衝動的な正義感の場合もあります。刑事裁判の法廷で、ときどき「私は(バカじゃないんで)有罪だと思っていますが、どうしてもこの被告人が無罪を主張してくれっていうんで、しかたなく、この主張を維持しているんですよ」と裁判官や検察官に態度で表明する同業者の方をみかけます。私にもプライドがありますので、そういった態度を表明したくなる気持は理解できます。しかしながら、そういった態度が少しでも裁判官に見えた瞬間、もはや無罪の可能性はゼロです。刑事弁護の鉄則は「バカになれる胆力」だと思いますね。(まぁ、もちろん「この人のためにバカになってやろう」と思えるほどの信頼関係がないと、なかなかムズカシイ面もあるのですが)過去の著名な「違法捜査に基づく無罪事件」の記録を見れば明らかなとおり、その弁護人の態度やすさまじいものがあります。そういったバカになれるところから、捜査の矛盾点や、自白の信用性の欠如というものが垣間見えたり、被告人に有利な証言をしてもらえる証人への説得が可能になったりします。また、バカになって「失敗」するからこそ、そこで得た経験が「知識」ではなく「知恵」になって蓄えられますね。「やっつけ仕事」と思って国選事件をやるのと、私選と変わらぬ情熱をもって国選事件をやるのとでは、5年も経過しますと刑事弁護のセンスに雲泥の差が出てきます。

私は企業法務の世界に足を突っ込んで、それほど年月を経ているわけではありませんし、またこの企業法務の世界はとても優秀な先生方が集まっているところでしょうから、テクニカルな法律的素養によって、その「仕事の出来、不出来」の優劣が決まるのではないか・・・・と認識しておりましたが、こういった日経記事を読んでおりますと、あまり刑事弁護人とは?といったところと変わらない世界なのではないかな、と思い直したりしております。ご自身方の資本主義に対する考え方、経済立国日本の将来像、会社は誰のものか、司法は経済社会とどう向き合うべきか等々、法律家としての素養のほかに、ひとりの経済人としてのバックボーンと、社会を変えたいと思う熱情(パッション)を持ち合わせていなければ、ケンカに勝つための知恵も、法律的見解も生まれてこないのではないだろうか・・・と思いますね。とくに詳しい金融工学や、会計知識というものとは違うでしょうが、この日本の企業社会がどこへ行こうとしているのか、どんな力学が作用することで大きく変容してしまうのか等、その根元の部分を探す興味といいますか、探究心といいますか、そんなところを常に持ち合わせながら、日々法律ビジネスと向き合っていかなければ、「知識は増えても知恵はない」弁護士のままでいつづけるような、そんな気がいたします。来年3月までは、弁護士団体の役職に就いている関係から、なかなか外の世界の方と「朝まで」お話をする機会もありませんが、「任期明け」となれば、私もそういった探求心をもって外の世界に飛び出してみたいですね。(あっ、今は今で楽しいですよ>○○先生)もちろん、自戒をこめての「つぶやき」であります。

(11月4日深夜 追記)

上記のような思いにかられたから・・・というわけではなく、以前から少しお話があったのですが、来年早々から「経営者のためのコーポレート・ファイナンス」なる個人レッスン(みたいなもの)が少人数制で開講されることとなりましたので、1月10日ころより参加させていただくことになりました。また開講後にはエントリーのなかでいろいろとご紹介いたしますが、某著名教授のもと、ロースクールよりももっと少人数(受講生は年齢40才くらいから65歳くらいまで・・・かな?)での英才教育(?)になるんじゃないでしょうかね。経営学的な発想で企業価値を考えることが主たる目的のようですから、また会社法の理解などに参考になれば・・・と非常に楽しみにしております。

11月 4, 2006 未完成にひとしいエントリー記事 |

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検察側が提出した証拠を検討し、それらのうち、どれを証拠として同意し、どれを不同 [続きを読む]

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