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2006年12月30日 (土)

内部統制(実施基準)パブコメへの感想その2(予告編)

昨日は日本監査役協会の意見書について採り上げてみましたが、つぎに是非検討させていただきたいのが(どなたかが、コメントで書いていらっしゃった)CIAフォーラムガバナンス研究会 内部統制監査制度分科会による意見書であります。(経営法友会による意見書も興味あるところでありますが、話題性という点からすると、やはりこっちが先ではないかと・・・・・)いゃいゃ♪、この意見書は私の魂を揺さぶるものでありまして(笑)、私と同業の方にはぜひ、この監査制度分科会の意見書をご一読いただきたいお勧めの一本であります。(CIAフォーラムからはガバナンス研究会J-SOX分科会からも意見書が公表されておりますが、そちらは非常に実務的な内容への要望が中心となっております)

この監査制度分科会による意見書、公開草案のどこがおかしい、どこを修正せよ、といった普通の体裁ではございません。問題点を多数含んでおり、本来の財務報告の信頼性確保のための内部統制としては機能しない、とバッサリと切り捨てて、代替案を提示する、といった大胆な(?)構成になっております。まさに内部統制に精通していらっしゃる座長さまの自信に満ち溢れた内容であり、読んでいてまことに「ごもっとも」であります。(新会社法の解説セミナー華やかななりし頃の、あの気骨ある発言をされておられた稲葉威雄教授を想い起こしました・・・・・って、失礼があれば謝ります・・・・・(^^;))もし、今後内部統制評価報告制度が実務として定着するとなると、こういった視点から我々弁護士は、内部統制評価や内部統制監査の違法性につきまして、訴訟の場に持ち込むことができる・・・といったヒントをたくさん与えてくださってます。(ただし「監査証明」のレベルが、「監査」→「レビュー」に変更されてしまいますと、そういった可能性も薄れてきてしまうのですが・・・・)この意見書につきまして、金融庁内部統制部会としましては、真正面から反論は可能なのでしょうかね?どんなコメントがこの意見書の内容に対して付せられるのか、いまから非常に楽しみにしております。私の公開草案に対する疑問の数々も、この意見書のなかに含まれておりまして、年明けにでも、きちんと内容をフォローしてみたいと思っております。(ということで、本日は予告編のみとさせていただきます。)

12月 30, 2006 内部統制実施基準パブコメの感想 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月29日 (金)

内部統制(実施基準)パブコメへの感想その1

(12月29日午後 内容を若干修正、追加しました)

「財務報告の信頼性に係る内部統制報告制度実施基準」の公開草案につきまして、各団体より、意見書が提出されているようでして、「意見書の内容について先生のご意見をお聞かせください」といったご要望がいくつかございました。そもそも意見書への対応は金融庁が行うものでありますので、私なんぞが意見書への賛否を申し上げることはたいへん畏れ多いのですが、ちょっと「年末年始スペシャル」といたしまして、日本監査役協会さんや、その他の著名団体さんのお出しになった意見書の内容について考えてみることも、私自身の考えの整理に有益と思い、採り上げてみることといたしました。(内部統制モノは、どちらかといいますと、普段の業務に関連するところでありますが、普段は具体的な対策を検討することが多いわけでありまして、あまり理論を詰めて考えることもありませんが、ともかく今回はいろいろと理屈について考えてみたいと思います)とりあえず、最初は日本監査役協会さんの意見書(PDF形式)についてであります。(実は日本監査役協会さんからは12月27日に「内部統制に関する社長アンケート結果」(PDF形式)も公表されておりまして、こちらもたいへんおもしろいですよ。)

A4で4ページの比較的短めの意見書でありますが、中身はいつもの日本監査役協会さんの意見書と同様、委員の方々が「あれこれ」と議論をされて、十分推敲されて提出されたものであろうと推測されます。金融庁内部統制実施基準への総括的な意見内容としましては、その3ページ下のほうに記載されておりますように、「監査役又は監査委員会はモニタリングを行う立場にないばかりか、監査役又は監査委員会が内部統制に関して及ぼしている影響等について、監査人から「考慮」される立場にもありません」というところに集約されているかと思われます。要はこの内部統制報告制度の実施基準は、内部統制に関係を有する各会社機関等の役割と責任について、経営者にやや力点を置きすぎているといった批判が妥当するのではないか、というものであります。以前、「酔狂さん」のご質問にお答えする形で、監査役と内部統制監査への相当性判断の可否についていろいろと検討いたしましたが、会社法上の権限分配の理論と内部統制制度との関連性という論点につきましても、以前からけっこう難問だなぁと私も感じておりました。私はこの日本監査役協会さんの意見書を読みまして、監査役さんと金融庁内部統制ルールとの接点として、以下のようなアプローチがあるのではないか、と考えております。本日はその視点だけを適示するにとどめておきます。(以下はあくまでも、私自身の個人的見解であります)なお、日本監査役協会さんの意見書の内容は、監査役監査基準の条文(現在公開草案が出されているものも含めて)との整合性にも留意して検討する必要があろうかと思われますので、本格的に検討したい方には、そちらもきちんと把握されることをお勧めいたします。

1 会計基準の「法規性」と監査役の違法性監査

会計基準というものが、果たして「法」としての強制力をもちうるのかどうか、という論点につきましては、以前からこのブログでも何度か続きモノで検討してきましたが、このたびの内部統制報告制度におきましても、この実施基準というものは「一般に公正妥当と認められる会計の基準」に該当するわけですから、他の会計基準と同様のレベルで「法規範」性を有するものかどうか、そのあたりを議論する必要があるのではないでしょうか。法規範性を有するものであるならば、経営者による評価基準や内部統制監査人による監査基準の適用につきまして、監査役による監査対象に含まれるでしょうし、たとえ違法性監査の内容に含まれないとしましても、その基準の適用が著しく基準の趣旨と異なる場合にはやはり監査の範囲に含まれてくるのではないか、と思われます。(このあたりは会社法監査の場合は「監査役の会計監査」の範囲内の問題でしょうが、証券取引法上の監査については別途検討されるべき問題だと思います)こういった監査役の監査の範囲と会計基準の法規範性の関係については検討されたのかどうか、というところがまず気になります。(なお、会計基準の法規範性の論点につきましては、江頭先生の「株式会社法」560ページ以下が詳しくて参考になります)

2 COSOフレームの位置づけ

監査役の「内部統制に関する独立的評価」というものが、全社的内部統制の評価要素のひとつとなることは理解できても、その監査役の内部統制に関する独立的評価そのものが、モニタリングの担い手と評価されることについて、疑問が呈されています。ここで検討すべきなのは、内部統制報告制度の実施基準におきまして、COSOフレームはいかなる役割を与えてくれているのか、ということであります。「監査人がモニタリングの担い手として位置づけられている」との表現からしますと、COSOフレーム自体を目に見える形でイメージされているのではないでしょうか。そもそも私の理解では、COSOフレームは経営者評価のための概念であって、あくまでも「モノサシ」にすぎないというものであります(COSOフレームとコーポレート・ガバナンスのあり方とは無関係であります)。したがいまして、もし経営者や監査人が監査役の内部統制評価へのかかわり方を「考慮」したとしましても、その後COSOフレームの構成要素を「いじる」、つまり監査役の独立的評価方法に経営者が変更を加えるような作業ができるかどうか、といったこととは別問題だと思います。つまり「いじる」ことが可能なのは、監査役(監査委員会)自身であるわけですから、監査役による内部統制の独立的評価とCOSOフレームを構成要素とした経営者評価、監査人監査とは会社法等の既存の法制度(つまり監査役の権限の問題)とは矛盾しないものと思うのですが、このあたりはいかがでしょうか。私自身は、監査役が独自の観点から「内部統制」を監査したり、その権限と職責をまっとうしている姿を、投資家保護という目的のために「モニタリング」という構成要素を通じて援用するにすぎないのであって、監査役の権限、職責を制限したり、そのあり方を変容させたりすることを意味するものではないと解しております。

そもそも、この会社法上の監査役の権限と責任の問題をここで取り上げるのであれば、金融商品取引法上の内部統制報告制度とコーポレート・ガバナンスの関係についても議論する必要があると思います。投資家保護のための企業情報開示制度の一貫である内部統制報告制度は、これまで会社法上のコーポレート・ガバナンスの議論とどういった関係に立つのでしょうか?企業の内部管理体制自体を株主に開示するものであればガバナンスの議論とは関係が深くなると思いますが、そもそも私は「経営者確認書制度」と同様、内部統制報告制度はあくまでも財務情報の信頼性担保のための制度と解釈しておりますので、コーポレート・ガバナンスの議論とはあまり関係がないと考えております。そもそもネーミングを「内部統制評価報告制度」と称すべきだと思っておりますが、ここでの議論におきましては、あまり会社法上の監査役の権限や責任との関係を重視する必要はないように思うのですが。たしかに、「モニタリング」の担い手として、取締役会や監査役(監査委員会)の監視機能が経営者評価の対象となる、ということは、経営者と監査役、取締役会との「上下関係」を連想させるものであることは否めないところですし、ここに監査役協会さんが異議を述べるのも「もっとも」のように思えます。しかしながら全上場企業への一斉適用を前提として、かつ、経営者不正防止を最大の目的とする制度設計を施し、そしてダイレクトレポーティングを採用しない監査制度を前提とした「内部統制報告制度」である以上は、実務的に内部統制監査人と、内部監査人、監査役、取締役会との情報共有を促進して、監査の実効性を高めるためには「やむをえないもの」として工夫されたところではないかのかなぁと。(ホンネのところでいえば)ただ、私はCOSOフレームの捉え方や、内部統制報告制度とコーポレート・ガバナンスの関係などからみて、かろうじて論理破綻は解消できるのではないかとみております。

3 会社法施行規則との関係は?

上場企業の場合を念頭に置きますが、会社法上の内部統制システムの構築(業務の適正を確保するための体制構築)にあたりましては、取締役会は監査役の職務の実効性を確保するための体制整備についても、会社法施行規則のなかで規定しております。(規則100条3項)一般に内部統制システムの整備と申しますのは、そのなかには、監査役の職務の実効性を確保するための環境整備もありますし、そういった体制がうまく運用されるような仕組みや運用状況を検証する仕組みも「システム構築」のなかに含まれるものと思われます。そのあたりも取締役会の専決事項でありますが、それは監査役の内部統制に関する独立的評価と矛盾しないのでしょうか、しないとすれば、金融商品取引法上の内部統制ルールとどこが違うのでしょうか、そのあたりも興味深いところでありますし、議論の整理が必要なところではないか、と考えております。

つい先日、監査役協会より監査基準の改訂(公開草案)がリリースされておりまして、そのなかに「監査役による内部統制監査指針」なるものの存在が明らかにされております。その監査指針というものの詳細はまだリリースされておりませんので、おそらくこのあたりの整理と、今後の内部統制実施基準の確定をまってリリースされるのではないか、と思われます(つづく)

12月 29, 2006 内部統制実施基準パブコメの感想 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2006年12月28日 (木)

ブログの1年を振り返る(少し早いですが・・)

私のブログは、アクセス数がほとんど午前8時から午後6時に集中しておりますので、おそらく皆様方は28日にご覧になるのが今年最後・・・・ということになろうかと思われます。そこで今年1年の私のブログを少しばかり振り返ってみます。

今年もアクセス数が異常に増えたネタがいくつかございました。第1位は「王子・北越事件」でした。「小僧さん」お元気にされているでしょうか?現役の王子社員の方のご登場は、やはりブログの「リアル感」を増幅させていただけたと思います。私自身も小僧さんのコメント登場に期待するところもありました。第2位は堀江氏逮捕、ライブドア強制捜査に関するエントリーでした。著名ブロガーの方々とのコラボを通して、ずいぶんといろいろな方に閲覧していただけるようになる「きっかけ」となりました。生まれて初めて生放送のラジオ番組に出演させていただいたのもこの頃でした。第3位は阪神阪急統合問題でした。連日、自論をブログで展開いたしましたが、少数派意見にとどまっておりました。私はいまでもこの統合は「?」と思っております。結論が出るのはいつになるのかはわかりませんが。

その他にも、村上氏逮捕関連のエントリー、内部統制解説セミナーに関連するエントリーなど、ずいぶんとたくさんの方にお読みいただきました。地方弁護士による「場末のマニアックなブログ」と自ら認識して、言いたいことを自由に書いてきたつもりでありますが、先日「みつたか」さんからご指摘のありましたように、どうも最近はそうも言っていられない状況になりつつあります。「弁護士」という肩書きと実名で記述していることから、その社会的な反響は自分で考える以上に大きなものになるときがございます。本当にいい加減なことを書きづらくなってきたように思います。ブログを修正することも多くなりました。しかし、だからといって、「書くのが億劫になる」ことは(私の場合)ほとんどございませんよ。もうすでに1年以上、このブログを書き続けてきまして、実力は閲覧されている方々に見切ってもらっておりますので(笑)、あまり「ええカッコ」する必要はございませんし、真剣にご批判や異論を唱えていただける温かい閲覧者の方との楽しい交流は、なによりもエントリーをアップするところから始まるわけですので、本当に刺激のある毎日でございます。

さて来年のトレンド予想でありますが、私のブログのテーマと関連するところでは、「課徴金制度の行方、行政処分と企業のレピュテーションリスク」「友好的M&Aの一貫としてのMBO(少数株主の締め出し)」「監査法人改革制度は、企業不正を防止できるか」「企業が自己申告する社会(公表義務と報告義務)」「内部統制の議論の更なる進展」あたりではないか、と予想しております。証券市場や一般事業会社を巻き込んで、これらのテーマが具体化する事例がいろいろと発生するのではないか、と考えておりますが、皆様方はいかがでしょうか。弁護士団体の役員の任期が切れる3月以降は、また本格的な訴訟事件が増えそうな気配ですし、ロースクールの教員にも就任が決定いたしましたので、果たして今年と同じようにエントリーをアップできるかどうかは未定でありますが、関心の高い分野を中心に、できるだけ議論の場をご提供していきたいと思っておりますので、またよろしくお願いいたします。

12月 28, 2006 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2006年12月27日 (水)

弁護士と「内部統制」の関係(1)

今年の日経新聞社「弁護士」に関する調査結果が26日朝刊の一面に出ておりました。企業アンケートで「今後弁護士への依頼が増えそうな分野」として「訴訟などの紛争解決」に続いて「内部統制・コンプライアンス」(61%)とありまして、いっぽう弁護士からみて企業の依頼が今後増えそうな分野としましては「内部統制・コンプライアンス」がトップ(68%)とのこと。第2位の「友好的M&A」(52%)につきましては、そもそも法務DDがこれまでの弁護士の業務と密接に関連しておりますので、とても納得できるところなのですが、「内部統制・コンプライアンス」分野が、同業者からみても「今後依頼が増えそうな分野」としての共通認識が出来上がっている、というのはとても意外であります。(ひょっとすると、「内部統制」なる言葉よりも「コンプライアンス」なる言葉のほうに、企業担当者や経営者の方は敏感に反応なさったのかもしれませんが。なお、アンケート対象とされている「弁護士」とは、主に企業法務に従事されている弁護士のことだそうであります)東京の大型法律事務所では、それぞれの事務所におきまして、内部統制分野に関する著名な論文や書物を出されている弁護士の方もいらっしゃいますが、あまり関西では「私は内部統制、コンプライアンスに特に関心があります」とおっしゃる先生は、ほとんどお見受けしないようです。

財務諸表監査において、常にこれまで「内部統制監査」に親しんでこられた会計士の先生方と違って、弁護士の場合、この「内部統制」との「出会い」といいますか、「なれそめ」といいますか、そういった出会うキッカケそのものがあまり存在しないのではないか、と思います。私の場合もいまから約5年ほど前に、総合病院のM&Aに何度か関与しておりましたが、たまたま経理担当者や理事長の業務上横領の「証拠固め」を依頼され、いわゆる「不正検査」の仕事に従事することがキッカケとなり、コンプライアンスや内部統制に関連するお仕事に関心を持つようになりました。「よし!これから内部統制を専門にするぞ」と宣言をして、専門知識を習得して、といったことではまったくありません。いまでも体系的に勉強した経験がないものですから、ときどき大きな誤解をしているのではないか、と不安になることもあります。そもそも「何を勉強したら内部統制の専門家になれるのか」よくわからない分野だと思いますし、非常に企業法務にとって大切な分野であることは理解しておりますが、地味でそれほど儲からない(^^;商売だと考えておりましたので、同業者の方々が「今後依頼される可能性のある分野のトップ」と評価されていることにつきましては、「ホンマかいな?」といった印象が素直なところであります。いろんなところで「内部統制」に関連するテーマの講演を今年一年させていただきましたが、会計士さんの視点、内部監査担当者の視点、監査役さんの視点、企業企画部の視点と、それぞれが共通認識のもとで一致しているというわけではありませんので、やはり弁護士からみた内部統制というものも、少し他業種の方からみたものとは異なるのも「あたりまえ」なのかもしれません。また、本来「内部統制」という用語そのものがはっきりとした外縁がなく、ぼやっとしたモノを表現していることは間違いなく、将来的にはもう少し細かく区分できるような体裁に変わっていくことも考えられます。

いずれにしましても、私的には「もっと内部統制に関心を持つ弁護士が増えてもいいのではないか」と感じておりましたので、関西において「企業価値向上を目的として内部統制を語れる弁護士」を育成しよう(もちろん私自身も含めて)との意識のもとで、大阪で研究会を立ち上げて、効率性向上やIPO支援、コンプライアンス経営に関する具体策の社内浸透などを図るための業務活動(単なる研究ではなく、金融機関さんや会計士さん、財務アドバイザーさん、ベンチャーキャピタリストさんなどのお力をお借りしてのお仕事の場)を準備しております。(といいましても、私は代表ではなく、副代表でありますが。。。)来年はいよいよ本格的な活動に入ることと思われますので、またこのブログでも、そういった活動を(もちろん守秘義務に反しない範囲で)ご紹介していきたいと思っております。本当にこういった分野に興味を抱いてくれる若手の弁護士さんが集まってくれるのかどうか、一抹の不安を抱いていたところでありますが、きょうの日経アンケートの結果をみて、すこしだけ明るい気分になりました。

「内部統制」と言われるものは、なにも「日本版SOX法」に限られるものではございません。弁護士の視点からの「内部統制」、企業にとって役立つリーガルサービスのあり方というものも、私なりにいろいろと検討しているところでありますので、またこのシリーズの次回以降、少しずつではありますが、オリジナルな見解としてご紹介していきたいと思っております。

12月 27, 2006 弁護士と内部統制 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2006年12月25日 (月)

日興コーディアルの役員会と内部統制

(12月25日深夜追記あり)

ブログの更新が進まなかったこの2週間ほどに、金融審議会から「監査法人制度改革報告書」がまとめられたニュースや、日興コーディアルグループによる(とされている)不正な会計処理に関する一連のニュースなど、このブログをお読みの方には関心のある話題が世間で賑わっておりました。なかでも、23日の日経朝刊では、社外役員による反対意見を押し切る形で2005年3月期の利益水増しに関する決算書が作成されていた、というニュースは、「社外取締役、社外監査役と企業コンプライアンス」をテーマの一つにしている当ブログとしても、たいへん関心のある記事でした。日興側が課徴金納付に応じる、ということのようですので、果たしてどこまで証券取引等監視委員会の把握している情報がオモテに出るのかは不明でありますが、これだけ「内部統制」に関する社会的な関心が高まっている時代ですので、ぜひとももうすこし内容が明らかになってほしいなぁと思っております。たとえばダスキン(大肉まん違法添加物混入に関する)株主代表訴訟におきましては、違法添加物混入の事実が調査委員会の把握するところとなった時点におきまして、おひとりの社外取締役の方が「いまならまだダスキンの信用低下を食い止めることができるから、ともかくも早く世間に公表すべきである」として当時の社長に書簡を送っておられたのでありますが、この方は代表訴訟の被告からははずれておりました。たとえば、今回の日興の事件におきまして、もし「企業ぐるみ」の不正会計処理、といった認識が正しいのでありましたら、取締役会における意思決定についても今後議論の対象になってくるものと思われますが、「粉飾ではないか」と疑義を表明していた役員の方々の責任というものについてはどのように考えればいいのでしょうか。軽々に意見を述べることもできないかもしれませんが、基本的には取締役会議事録に、その意見表明(最後まで反対の意思をもっていたことを示す)が記入されていない限りは、賛成されていた役員方と同様、「消極的ではあるにせよ、賛成の意思を表明していた」と評価されることもありうるのではないか、と考えます。

ただ、上記の取締役会におきましては、すでに監査法人による適正意見が述べられている、という事情があったようですね。社外役員の方々にどこまで財務会計的知見がおありだったのかは存じ上げませんが、公正妥当な会計基準の適用に関する問題点に関する意見の相違があったのでしょうから、ある程度は監査法人の意見にしたがって「やむをえず賛成した」ということが真実でありましたら、免責される可能性も高まるかもしれません。(このあたり、まだ真実がどのようなものであったのかは、報道されているところからは判明していないようですが)しかし、こういった重大な問題が、あいかわらず企業トップだけが責任をとって決着される、ということでありますと、内部統制ルールを導入したり、経営者による確認書制度が法制化されたり、といった制度改革も、これから先、どこまで有効性を持つのか、すこし不安になってしまうのではないでしょうか。とりわけ今回のように、証券取引等監視委員会が課徴金を課すための前提として、さまざまな調査をして、結論として対象企業の内部統制に問題あり、とした場合に、その企業の(経営者による)内部統制評価を適正とした監査法人は、その適正意見になんらかの責任が発生しないのでしょうか。金融商品取引法の成立に当たり、衆参両議院から附帯決議がなされておりますが、その決議によりますと、課徴金制度については、その運用をみて2年ほどで見直しをする、とあります。したがいまして、ここ2年ほどは、(運用実績を作る必要がありますので)積極的に課徴金賦課を前提とした調査や報告の徴求、さらには金融庁への勧告、建議がなされることは間違いないと思いますが、そういった活動のなかで、経営者の内部統制評価や内部統制監査人の評価と食い違う場面というものがいくつも出てくることが予想されます。「内部統制の限界」論で逃げてしまうことや、内部統制報告制度と課徴金賦課制度とは、その制度目的が異なるから、評価が異なることもあたりまえ、と主張することなども考えられますが、こういった場面で、内部統制報告制度が有効に機能しないことをはじめから認めてしまうといたしますと、ずいぶんと財務報告の信頼性確保という制度趣旨からすれば、魅力が半減してしまうようにも思います。

このたびの不正会計処理に関する事案におきましては、当時の監査担当法人の方々が、「どのように訂正報告書をまとめるか」苦渋されているとお聞きしておりますが、今後も課徴金制度と内部統制報告書制度や確認書制度との関係で、監査法人さんが苦労される場面というものがしばしば起きるのではないでしょうか。そういった意味で、金融審議会で話題になっておりました「監査役による監査人選任権、報酬決定権」など、会社法上の監査役の権限強化によって、監査人の独立性を強化する、ということも十分検討されるべきではありましょうが、そうなりますと今度は監査役の責任も現状よりも重いものになるような気もしますし、ここでもムズカシイ問題が発生してしまうことになりそうです。この論点につきましては、もう少し日興コーディアル問題の帰趨をみてからまた検討してみたいと思っております。

(追記)

日興コーディアルの会長、社長辞任会見の席で、特別調査委員会による解明がなされる予定であることが明らかになったようです。(毎日ニュース)記者会見では組織的関与があったことは認めるものの「利益かさ上げを目的としたものではない」と弁明されておられます。では、何のために監査法人と協議のうえ、SPCの連結はずしが行われたのでしょうか。

12月 25, 2006 日興コーディアルの役員会と内部統制 | | コメント (1) | トラックバック (2)

2006年12月23日 (土)

いよいよ本業復帰・・・

本来ならば、この時期「メリークリスマス」バージョンでありますが、今週私の父が逝去いたしましたので、今年はクリスマスも年始のご挨拶もご遠慮させていただきます。ブログをご覧の方はご承知のとおり、先週からほとんど新しいエントリーをアップすることができませんでした。すでに期日が入っていた裁判と、きょう(22日)を含め2本の講演をなんとかこなしましたが、ともかくタイトで厳しい毎日でした。2年半の父の闘病生活、そして私達家族にとりましては2年半の看病生活、病院の談話室で深夜ブログを更新していた時期もありましたが、悔いのない最後の数ヶ月を父とともに送れたことは、なによりも感無量であります。昨日の告別式も、泣かずに挨拶できましたし、無事、父を来世に送ることができました。

さて、いよいよまた元気に本業に復帰いたします。このブログも平常どおり更新していきたいと思っております。(本日はめずらしく私事を書かせていただきました。メリークリスマスとは申しませんが、皆様方におかれましては、どうか楽しい休日をお過ごしくださいませ。。。)

12月 23, 2006 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (12) | トラックバック (1)

2006年12月20日 (水)

レックスHDのMBOと少数株主保護(4)

前回の(その3)には、皆様方より、たいへん示唆に富むご意見、本当にありがとうございました。みつたかさんや、カネボウ株主さんのご要望のお応えしまして・・・というわけではなく、やはり私自身もこのテーマには非常に関心がございますので、まだまだ続きモノとして議論の材料をご提供してまいりたいと思っております。ずいぶんと過分なお褒めの言葉を頂戴しながら、またご期待に添えないものかもしれませんが、お付き合いのほど宜しくお願いします。

弁護士であれば、もう少し高尚な議論を展開したほうがいいんじゃないの?といった自問自答もあるんですが、なにせ素直に考えて、そっから疑問点を浮かび上がらせることのほうがブログ的には面白いでしょうし、お読みになっている方と一緒に考えるほうが社会的意義はあるでしょうから、以下のお話はレックス問題のみならず「上場廃止に伴うTOB」一般に通じるものとしてお考えください。そもそも、unknownさんがおっしゃるとおり、MBOにおける少数株主保護の論点というのはかなり以前から米国でもドイツでも議論されているところのようで、それなりに明解な結論が出ているものでもなさそうですんで、簡単に回答が出るものでもないのかもしれません。ただ考えるのがムズカシイのは、会社法と証券取引法とが交錯するところに位置する論点であるところに起因すると思われますが、日本の会社法と証券取引法の解釈次第では、米国ともドイツとも違った考え方というのもアリ、のような気がします。

1 なぜ少数株主は保護されなければいけないのか?

「少数株主の保護」と一口で言いますと、とても耳に心地いい響きでありますが、そもそも「少数株主」とは何を指すんでしょうか?議決権の過半数を握る株主との比較においてでしょうか、それとも3%保有しているだけの支配株主に対比される(数のうえでは多数に属する)一般株主を指すのでしょうか?それと「保護」というのは何を指すんでしょうか?「売却の機会確保」を意味しているのでしょうか、それとも財産的価値の確保を意味するのでしょうか?とりあえず、上場企業の非公開化、という側面において「少数株主の保護」という問題を議論する場合において、この定義が論者の間できちんと共有できているかどうか、そのあたりが私にはよくわからないところです。たとえば今回のレックスHDのMBO事例におきまして、一般株主からみて著しく低いTOB価格が提示されていると仮定した場合、「なに?23万円?じゃあ、うちは25万円で競合TOBをかけましょう」と考えて、競合他社がTOBをかけてきた場合、一般株主の方はMBOに応じるのか、競合者に応じるのか選択の余地が出てまいります。アメリカにおきましても、競合者が出てきたときのMBOの成功率は80%から50%まで落ちる、といった実証研究の結果も公表されておりますが、経営者としても簡単に競合者に反対するわけにはいかなくなるんじゃないでしょうか。こういった場面でも、さらに一般株主は「保護」される必要はあるのでしょうか?閉鎖会社も含めた「会社法マター」の問題として考えるのであれば、株主の財産的利益の確保、という視点を重視することも納得できるのですが、上場企業の非公開化という、証券取引法にも関連する場面を想定しますと、そのあたりの定義をはっきりさせておかないと「少数株主を保護」する必要性といいますか、制度趣旨のようなところが明確はならないものと思っております。また「少数株主は被害者」ということについてでありますが、印象としては3%を保有している支配株主が、強圧的なTOBをかけて一般株主から「シブシブ」株券提供を応じさせる、という図式になろうかと思うのですが、誰がどのような行為によって一般株主の法的利益を侵害した、というのでしょうか?現に、カネボウの役員の方々は特別背任罪で「告発」されているわけでして、被害者から「告訴」されているわけではありませんし、また株主代表訴訟といいますのも「会社に損害が発生しているから、会社に賠償責任を履行せよ」というものでして、一般株主の方々が、第三者責任を追及しているものでもありません。したがいまして、こういった株主の方の行動からは「株主の被害」というものが明確にははってまいりません。会社法上の「株主保護」として考えればいいのか、それとも証券取引法上の「投資家保護」として考えればいいのか、あるいはその両方なのか、そのあたりの考え方次第でも、先の疑問への回答は違ってくるように思われます。

2 会社法における株式買取請求権

最近はレックスのようなMBOが次第に増えてきておりますし、成功例がいくつも誕生すれば、来年あたり上場企業の非公開化(一般株主の締め出しを伴う)が益々さかんに行われるかもしれません。そこで、経営陣やそこに資金を投入するファンドや事業会社のMBOリスクについて考えてみたいと思います。さてどのようなリスクがあるのかな・・・と考えてみますと、先にも書きましたが、同業他社によって競合TOBをかけられる、というリスクとか考えられますよね。経営陣としては、このリスクをどう回避すべきか。この点については、MBOに関する開示情報のなかで、短期的には業績は落ちることが予想されるが、5年10年の長期展望においては企業の将来は明るい、と説明することで、「上場のままで短期のシナジー効果を得ることはできませんよ」という意思表示をハッキリさせて、短期的利益を必要とする競合他社によるTOBを予防する、ということが考えられるでしょう。そしてもうひとつのリスクとしましては、会社法上、少数株主に付与されるべき株式買取請求権の「公正な価格」についてではないでしょうか。興味深いのは、この株式買取請求権の条文が旧商法と新会社法とでは大きく変わったことですよね。以前は「もし合併がなかったならば、得られたであろう株主の利益」と解釈されていたわけですが、新会社法においては「公正な価格」、つまり企業の結合を前提として、そのシナジー効果があった場合に、そのシナジー分もすべての株主に適正に配分されているかどうか、という視点から適正な価格を考える、というものであります。