スティール対日清食品はあるのか?
スティール・パートナーズの明星食品に対するTOBが不成立に終わり、明星社もホワイトナイトの日清食品社もとりあえず一息・・・と思ったところに、スティール社による日清食品株の買い増し。スティール社が日清食品の筆頭株主となった模様、とのことであります(朝日新聞ニュース)スティール社が日清食品の大株主であったことは、私も存じ上げておりましたが、こういった展開になることは、正直予想もしておりませんでした。ただ、当事会社には財務アドバイザーがおつきになっておられるでしょうから、このような展開もいちおうは「想定の範囲内」ということになるのでしょうかね。いや、まだ日清食品のTOB期間(12月14日まで)でありますから、TOBの帰趨のほうに留意されていて、想定外、ということもあったかもしれませんね。
ホワイトナイトとしてTOBをかけた企業が直後に敵対的買収のターゲットになる、というのは、現経営陣にとっては厳しいところがありますね。たとえば日清食品社の経営陣は、明星食品社の株価に30%の支配権プレミアム(30%の株式取得を目指すときにも、このような高額の支配権プレミアムをつけるのが通常なのでしょうか?そこのあたりも株主への説明を要すると思うのですが)をつけてTOBをかけるわけですから、明星との企業提携が日清の企業価値を高めることになる、と説明をされているわけであります。つまり企業文化が異なっていても、同業者が手を結んで規模を大きくすることは、食品業界にとっては大きなメリットがあることを公言したことになります。ということは、もし日清社が同業他社から買収提案を受けたときには、現経営陣は同じ姿勢で臨まなければならない、ということになりますよね。手のひらを返したように「いやいや、わが社は従業員を大切にしているから、従業員の意向を無視して企業価値を考えることはできない」と言いながら、買収防衛策を導入することはできないように思います。独禁法の競争制限の関係で、日本の同業他社がホワイトナイトとして出現することはないと思いますが、外国企業が救済の手を差し伸べる・・・ということは考えられるでしょうし、三角合併解禁を前にして、そのあたりまでスティールパートナーズが考えているということも十分にあり得るのではないでしょうか。870円という金額でTOBが成立した後の日清食品社に、いわゆる時価総額が含み資産との関係で「割安」とは考えられませんから、さらに大きな再編を期待しての買い増し、とみることも十分予想されると思いますが、いかがでしょうか。
しかし、日清食品社の大株主に三菱商事社が控えています。先日の王子製紙・北越製紙の買収騒動のときと同様、三菱商事社がなんらかの動きをすることも予想されますね。事業再編型の買収問題が浮上したときには、それが友好的であろうと敵対的であろうと(短期的利益に大きな影響力を有する事業効率化のカギを握っているであろう)大手商社の役割というものが今後ますます大きくなるのではないでしょうか。今後の商社さんの動きに一番注目したいと思っております。
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コメント
おひさしぶりです。
あいかわらず、先生は精力的に更新されているようですね。
私は日記風のブログですら、へこたれてしまいまして、
続けることの困難さを痛感しております。
とりあえず、先生のサービス精神に敬意を表します。
スティールが大株主であるサッポロHDも敵対的買収防衛
策の手続を進める(新株予約権の発行登録手続)ことが
報道されています。アデランスも買収防衛に動く気配が
みられます。今回の日清買い増しに関する各社の動きが本格化
するのではないでしょうか。
私も、このままスティールが両社の経営を見守る、といった
ことは考えられないと思います(日本法人の社長さんも交代
されたことですし・・・)
投稿: halcome2005 | 2006年12月 1日 (金) 13時55分
halcome2005さん、おひさりぶりです。
その後、そちらの業界は金融庁やマスコミからいろいろと槍玉に挙げられてたいへんではないでしょうか。とりわけ管理部門の方々の心中お察し申し上げますし、ブログどころの話ではないとご推察申し上げます。
最近、いろいろなお仕事をさせていただいて思うところは、「上場企業というものは・・・」と、とても一くくりにはできないほど、それぞれの企業の管理部門は違いますね。「よくこんなんで上場企業と言えるなあ」と嘆くこともあります。コンプライアンス・オフィサーという資格も、そのコンプライアンス経営重視というトップの意向が本気のものでなければ、画餅に帰すだけだなぁとすこし落胆しかけております。
スティールの影響ということですが、各社が防衛を真剣に考え出しているのは、なにもスティールの行動だけではないと思います。先日のエントリーでも触れましたが、アメリカあたりのファンドや投資銀行の戦略がアジアに向いていることや、景気回復の状況が株価に反映していない現実などが最も企業行動に影響を及ぼしているのではないか・・・というのが私の考えです。
またときどき遊びに来てくださいね
投稿: toshi | 2006年12月 2日 (土) 02時24分