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2007年1月31日 (水)

日興CG特別調査委員会報告書(速報版)

ざっと資料も含めて120ページほどの日興コーディアルグループ特別調査委員会報告書を読ませていただきました。(しかし、ある程度の興味もしくは関心をもってフォローしておかないと、これはザッと読むのもシンドイですよね・・・)すでに前のエントリーにおきまして、この調査委員会の「プロによる事実認定と事実分析が大いに楽しみ」と書いておりましたが、予想をはるかに超えた内容で、ひさしぶりにドキドキさせていただきました。あまりにも多くのことを感想として抱きましたので、またきちんと読ませていただいたうえで、考えをまとめていきたいと思っております。また、いろいろな方と議論しながら今後の不正検査の実務の参考にさせていただこうかと思っております。本来、こういった調査報告書といいますのは、これで「自己完結型」を目指そうとするわけでありますが、詳細な事実調査のうえで、不正関与が疑われている役職員の方々に対して反論の余地をきちんと残しているところが「スゴイ」ですね。逆に、ここできちんとした反論ができない場合には、そのこと自体が不正行為への関与を決定付ける(つまり事実とその責任が確定する)といった流れになるんじゃないでしょうか。

各新聞やニュースの報道では、この報告書が「組織的関与を認定した」と書いておられるようですが、どこを読んだら「組織的関与が認定された」と理解できるのでしょうかね?私の理解ではそもそも「組織」というのはNPIのことなのか、NCC(報告書では、日興CG本体をNCCと表示)まで含めてのことなのか、というところもよくわかりませんし、なにぶん「ドレッシング」(粉飾)の動機がどこにあったのかすら、よく理解できておりません。おそらく組織的関与があった(組織ぐるみ)といえるためには、これに関与した人たちの不正行為に対する動機がどこにあったのか、といったところに結論を出さないと断定はできないのではないでしょうか?(調査委員の方の記者会見での発言によれば、業績連動報酬による個人的利益の問題ではないか・・・とのことでありますが、そういった記載は報告書には見当たらないようであります)ただ、報告書のなかで示されている「会議メモ」(全文が掲載されております)が「何を語るのか」、このあたりも関心のあるところですし、忽然とサーバーから消えたNPI元社長のメールの内容が、じつはもっとも「組織的関与」にとって重要な事項が含まれていたのではないか、などと考えますと「ITと内部統制の重要性」に思い至るところでもあります。また、組織的関与というところが(私的には)もうひとつはっきりしておりませんので、旧中央青山の関与、といったところも不明なままになっているように読めますが、いかがでしょうか。

また法律家や会計士さんのブログなどで、いろいろと話題になると思いますが、国税OB、公認会計士、証券業務に精通された著名な弁護士の方々を含めて構成されている監査委員会の本件に関する対応(監査委員会の活動状況)は実に興味深いところであります。社外役員の身の処し方について、大いに参考になるところであり、これも今後の検討課題になろうかと思われます。あと、監査法人のセカンドオピニオンの問題とか、企業情報の開示のあり方とか、そのあたりの企業会計にまつわる問題点もありそうです。(とりあえず、第一印象のみ記しておきます)

1月 31, 2007 日興CG特別調査委員会報告書 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年1月30日 (火)

皆様方へ諸々のお願いです。。

いつも拙ブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧いただき、ありがとうございます。すこしばかりお願いがございます。

ひとつは、最近学生の方や法務ご担当の方々より、メールにて質問を受けることが多くなりました。本来ならば、きちんと質問に対応するのがブログ開設者として、ご愛顧いただいている方への礼儀なのではありますが、なんとも本業を抱えている身ですので、深夜にブログをしたためるのが精一杯の状況であります。お返ししたい気持ちはヤマヤマなのですが、現状としましては、すべてに対応できない状況にありまして、そのあたりご理解いただければと思っております(こちらのブログにコメントいただけますと、すこしお返事は遅れますが、また私を含めて、いろいろな方がご意見を返していただけると思いますので、よろしければコメントをご利用ください)

そしてもうひとつは、コメントを付されるときに、ご自身のメールアドレスの書き込みはなるべくお控えいただいたほうがよろしいのではないか、ということであります。拙ブログは、名前さえお書きいただきますと、メールアドレスを付さずともコメントをお受けするような設定にしております。なかには会社名などが判明してしまうようなアドレスも散見されますので、皆様方にご迷惑をおかけすることにもなりかねません。(なお、名前もお書きになっておられませんと、こちらでいちおう「unknownさん」として登録させていただいておりますが、今後のお返事のやりとりのためにも、お名前だけは付しておいていただきたいと思っております)どうか、今後とも、マニアックなブログとして、さまざまな情報、意見の発信に努めてまいりますので、どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします。

PS

天満橋の松坂屋5階の「ミドリ電化」でマイクロSDを購入したのですが、かたわらにWINDOWS ビスタのいろんなバージョンが山積みになっていましたけど、あれって特別に並ばなくても買えるのですかね?今朝の新聞では、秋葉原のフィーバーが記事になっていましたが・・・・・

1月 30, 2007 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月29日 (月)

企業の不作為と刑事犯罪の成立(パロマ事件)

すでに皆様ご承知のとおり、1月27日にパロマ工業およびその親会社であるパロマ社に対して警察庁による強制捜査が行われまして、相当数の資料が押収された、とのことであります。28日の読売新聞の報道によりますと、経営陣の不作為の立件を視野にいれているとのことでありまして、再建計画にも大きな影響が出る可能性が出てくるかもしれません。2005年11月に発生した18歳の大学生の方の死亡事故のみが、業務上過失致死被告事件の公訴時効期間(5年)を経過しておりませんので、この最後の1件が、警察庁にとりましては、刑事責任追及のためのヨリドコロになるものと思われます。(もちろん、今後、5年以内の被害発生の事実が判明すれば別でありますが・・・)

1 不作為による業務上過失致死罪成立の可能性

ところで、このパロマの強制捜査の件でありますが、最近のいろいろな企業不祥事発生の報道ニュースに気をとられてしまいまして、「いまごろ、パロマの強制捜査?ずいぶんと遅いのではないか?」といったイメージを持って受け止められてしまいそうでありますが、今後の企業コンプライアンスを考えるにあたって大きな意味を持つかもしれません。といいますのも、経営陣の刑事責任を問うために、経営陣の「不作為」に対して業務上過失致死罪の適用が考えられているからであります。普通は交通事故や医療ミスなどでも連想できますように、被疑者による何らかの「作為」があり、これが「本来要求される注意義務を尽くさずに、漫然と作為に至った」ことを構成要件該当事実と認定するわけでありますが、先の読売新聞のニュースにもありますとおり、今回は一企業の経営陣の「不作為」を問題にするわけであります。「なにもしなかった」ということが果たして業務上過失致死事件の構成要件に該当するのでしょうか。「不作為」をもって刑事事件で有罪となるためには、パロマの経営陣の作為義務、つまり被害者を出さないための行動が容易にとれた状況にあり、また死に至るような被害者が出ることが容易に予想できた状況であったために、経営陣がこの当時、具体的にこのような行動に出なければならなかった(具体的な作為義務の特定)にもかかわらず、経営陣はあえてそのような行動に出なかった、というところまでを警察検察が立証できなければ立件は困難なはずであります。さらにやっかいなのは、「作為」が存在するのであれば、被害者の死亡との間に因果関係が比較的容易に認定できるはずでありますが、「不作為」となりますと、目に見える行動が存在しないために相当な因果関係の有無がかなり曖昧であります。たとえばパロマの件におきまして、修理業者による「不正改造」というものが中間に介在していることが予想されますが、もし不正改造が被害者の死亡と関係している場合には、「たとえパロマの経営陣がきちんと作為義務を尽くしていたとしても、被害者が死亡していた可能性がある」ということになり、因果関係が認められず、業務上過失致死の構成要件該当性は否定されることとなります。

きちんと調べたわけではございませんので、すこし誤解があるかもしれませんが、エイズ薬害刑事事件(厚生省ルート)の裁判において、厚生省の担当課長さんが「不作為による業務上過失致死罪」によって有罪判決を受けたことがあったと記憶しております。あのときも不作為の業務上過失致死というものが認められるのだろうか、といった議論があったかと思いますが、国民の生命の安全を守ることに高度の職責を有する行政官であったことや、行政庁という立場上、作為義務の根拠となる「被害状況に関する事実の認定およびその情報分析の機会および能力」があること、そしてどのような被害回避措置をとるべきか指揮監督できる能力を具備していたことなどが、刑事責任を基礎付ける理由になったのではないかと推測いたします。果たして、このたびのパロマの経営陣につきましては、このエイズ薬害刑事事件のときの行政官と同じように、作為義務を基礎付ける根拠がそろっているといえるかどうかは、まだまだ未知数ではないでしょうかね。もちろん強制捜査がなされているわけでありますから、裁判所の令状が発令されているわけでして、ある程度の根拠もあるかもしれませんが、令状が出るのと、刑事事件で関係者が有罪となるのは、その立証の程度において大きな違いが出てまいりますので、押収された資料等から、非常にハードルの高いところを飛び越えることができるような証拠を見つけ出さないといけないのが現状ではないか、と思ったりしています。

2 企業法務への投影

ただ、パロマの事件におきまして、本当に「不作為による業務上過失致死事件」が立件され、有罪と認定されるような場合には、企業法務的にはかなり大きな影響が出ることが予想されますので、今後も本件についてはフォローしておくほうがいいのではないでしょうか。先に述べましたとおり、もし「作為義務」というのが企業トップに課されるのであれば、それはどのような業種の経営者に課されるのか、その企業の取締役会でどのような議論がなされるべきなのか、情報収集はどのようにしなければいけないのか、収集された情報をもとに、経営陣はどのような事実確認を行い、そしてどのような行動に出なければいけないのか、といったことが公権的解釈として示されることになるはずであります。とりわけ、自社製品によって人的被害が出た可能性が高まった場合などには、その企業の経営者はいったいどういった内部統制システムを構築して、更なる被害拡大を未然に防止すべきなのか、企業の自立的規範のあり方を考えるうえでの重要な指針を与えるかもしれません。

そしてもうひとつ、企業法務的に重要でありますのは、こういったパロマの事件に業務上過失致死罪が立件されるといたしますと、おそらく今後、企業不祥事がマスコミ等で騒がれた場合には、被害者や一般の方による告訴、告発が増えるのではないか、という企業リスクの問題であります。被害拡大を抑止するための対策を企業が怠ったようなケース、たとえば組織ぐるみで公表を差し控えていたとか、被害事実をまったく分析していなかったようなケースにおきまして、被害者や一般市民にとりましては、損害賠償請求や代表訴訟などの民事的救済措置を検討するだけでなく刑事訴追を要求するために、もしくは民事賠償のために必要な事実認定の資料を確保するために、まずは告訴告発を利用して捜査機関に動いてもらう、といった戦略がとりやすくなるのでは・・・とも思えます。これは企業のリスクとしても大きなものとなりますが、経済刑法の分野において、捜査機関にとりましても、大きな負担になってくると思われます。ただ、そういった時代が到来することが、今後の企業不祥事防止にとって、ひとつの有効な手段になるのかもしれませんし、それが当然の時代背景となりつつあるのかもしれません。もし、こういった問題の整理のために、「不作為による業務上過失致死罪適用」に関する有益な先例などをご存知の方がいらっしゃいましたら、またご教示いただけますと幸いです。

1月 29, 2007 刑事系 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年1月27日 (土)

内部通報制度の実質を考える

昨日仕事の関係で、大阪に本社を置く内部通報コンサルタント会社の社長さんといろんな話をする機会がございました。資本金5億円以上の企業(上場、非上場問わず)に対するホットライン(ヘルプライン)の管理や、整備に関する相談業務などをやっておられるのですが、やはり内部通報に関する現場で毎日悩んでいらっしゃる方のお話は机上の理論とはかなり違いまして、我々の業務にもかなり参考になりました。あたりまえのことかもしれませんが、やはり「公益通報者保護法」や「内部統制システム整備」などが話題になる前から社内ホットラインを整備されておられる会社は有効に機能しているケースが多く、「法律で決まったから」「内部統制が問題になってきたから」ということで導入されている企業では、ほとんど有効に機能していない、という実態がはっきりと認識できました。先行しているから進歩している、ということではなく、やはり法律以前の問題として、内部通報のメリットを十分認識している企業では、自社特有のシステム(有効に機能しているかどうかを検証するシステムにいたるまで)というものを工夫しておられるようで、それが不祥事の早期発見、社内処理による早期対処を実現しているようであります。

不二家事件に関するエントリーは、このブログでは2つほどしかアップしておらず、その続報もフォローしておりませんでしたが、埼玉工場においては食品衛生法違反まで疑われる状況になっており、本当に「いもづる式」に不祥事が発覚しているようで、ついに事業再編の話まで現実化してきたようであります。言葉は適切でないかもしれませんが「たった一日遅れの消費期限切れの牛乳プリン販売」という事実が、より大きな不祥事発覚の誘因となり、企業の存続問題に発展するという、まさに企業にとりましては、背筋の凍るような話であります。これが内部通報を発端としたものである、とまでは断言できませんが、こういった不二家の事件経過をみていきますと、素人疑問として、ふたつのことがまず頭に浮かんできます。ひとつはなぜ不二家はここまで不祥事が話題となり、TDL(東京ディズニーランド、オリエンタルランド社)は、2年3ヶ月も消費期限が過ぎたチョコレートを販売したのに叩かれないのか、ということであり、もうひとつは、不二家でここまで食品衛生面で大きな問題となるような過去の不祥事が発覚したにもかかわらず、なぜその「過去の時点」において内部通報とか社外告発といったことが発生しなかったのか、というものです。ひとつめの疑問につきましては、また別の機会に考えるとしまして、ふたつめの疑問について、「内部通報制度の実質的な効果」を考えてみたいと思います。

上記の事実から推測されることは、①内部通報制度が社内において整備されていないか、もしくは整備されていても事業所、支店に至るまで広く周知されていなかったのではないか、②整備され周知徹底されていたとしても、従業員は内部通報制度を利用する気持ちはなかったのではないか、というものであります。企業コンプライアンスのお手本からすれば、①の方向に力点を置いて、今後の対策を検討したいところでありますが、じつは②のほうが本当の意味で改善策を検討しなければいけないところのようであります。なぜ、内部通報制度を整備して、これを社員に広く周知して、なおかつ社長が訓示として「なにかあれば社内通報制度を利用してください」と広報しても、内部通報制度は機能しないのでしょうか?

1 「内部通報システム」に対する従業員のイメージは?

企業がヘルプラインを広報すればするほど、その窓口は、どうも従業員には「特別の窓口」というイメージを抱く場合が多いのだそうです。窓口が監査役だったり外部の弁護士だったりすると、もうそれだけで「違法行為」を頭に描き、告発をためらうケースが実に多いとのこと。たしかに、よく考えてみると、なにが食品衛生法違反で、なにが違法でないか、など一般の従業員にはあまり理解できないところでありますから、躊躇するのも当然のような気がいたします。そこで、内部通報制度が有効に機能している企業では、内部通報制度とは別にかならず「よろず相談窓口」のようなものを設置して、そこに心理カウンセラーや産業カウンセラーのような方を置き、「直接ヘルプラインへの申告はためらわれるけれども、よろずお悩みコーナーだったら・・・」という気持ちで、そちらへ違法行為の告発をされるケースが多いのだそうです。また、内部通報を発信する従業員だけではなく、従業員から相談を持ちかけられる上司のための「お悩み窓口」というのも有効だそうであります。上司のストレスの一番の原因が「部下の悩みに長時間付き合わなければいけない」ということでありまして、この上司のよろずお悩み相談は、企業活動の効率性を向上させるだけでなく、そこから違法行為発生の端緒を把握することもよくある、とのことのようです。(この発想も、昔からヘルプラインを設置している企業のアイデアのひとつだそうであります)

2 社員から「経営陣」の顔は見えるか?

これは、その内部通報コンサルの社長さんが、社外告発をしようと悩んでおられる従業員の方々との相談業務から感じることだそうですが、社外告発は、本社従業員よりも支社、事業所の社員さんのほうが圧倒的に多く、また上司の対応におおいに不満を抱いているが、社長や監査役などが「尊敬できる人」であるがゆえに、告発をためらっている、ということが多いそうであります。つまり、従業員から経営トップの顔が見えないとか、従業員にとって経営陣が尊敬に値しない、といったところが、内部通報の利用ではなく、社外告発に影響を与えるというものであります。直接の社外告発も有効な場合がありますので、いちがいには申し上げられませんが、やはり社員から「顔がみえる経営者」であるかどうか、というところは内部通報制度の有効性に影響を与えることは間違いないようです。経営者が内部通報制度の普及をはかる段階におきまして、「ぜひこの制度を利用して、あなたがこの企業を変えてほしい」といった趣旨の表現を誠実に表明しなければいけないのかもしれません。

内部統制システムの構築の一貫として「内部通報」をとりあげますと、どうも先の①のほうばかりに注意がいきますが、これは経営者サイドにたって、経営者がどうすれば自分の責任を免れるか、といった視点に偏って物事を考えているからかもしれません。今回の不二家の事件の経過を追ってみて、もし事件の端緒が内部通報によるものだとすれば、どうしていままで有効に機能しなかったのか、もし機能していたら、経営者の積極的な不祥事公表の必要性まで含めて検討できたわけでありまして、そうだとすれば事業再編の話まで持ち上がるような事態にはならなかったのではないか、とも思います。いずれにせよ、いつも申し上げますとおり、事前規制から事後規制へと社会のサンクションのあり方が変容するなかで、企業不祥事の公表のあり方や、内部通報制度のあり方、企業内における事実認定のあり方など、その企業価値に大きな影響を与える管理行為について、もっと議論を深めていくべき時期にきているのではないでしょうか。(なお、内部通報制度と監査役との関係につきましても、昨日はいろいろと興味深いお話をお聞きしましたが、その内容はまた別の機会にエントリーさせていただきます)

1月 27, 2007 内部通報の実質を考える | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月25日 (木)

内部統制(実施基準)パブコメへの感想(その5)

本日は上京して日本取締役協会の内部統制研究会に参加してまいりました。(たいへん有益なコメントをいただいておりますが、ちょっと明日の用意がございますので、帰りの新幹線のなかでとりまとめた下記のエントリーをアップするだけで、また明日にでもコメントにはお返しをさせていただこうかと思っております>七條権米さん、胡桃さん、監査役サポーターさん)

これまでは規模の大きな企業のご担当者の方をお招きして、米国SOX法やJ-SOX法に基づく内部統制システムの構築運用状況をお聞きする機会が多かったのですが、きょうは企業会計審議会内部統制部会作業部会の専門委員でもいらっしゃるA監査法人のH先生の「J-SOXにおける実施基準」の解説を2時間拝聴させていただきました。(実際には解説の途中でも、いろいろとご意見をください・・・とのことでしたので、私も4回ほど質問させていただきましたが)なかなかユニークだったのは、本日の解説のために仮想の「公開草案に対する意見書(とりわけ監査基準に関する意見)」といったものをお作りになってこられまして、その意見書のなかに「私見」として今後の実施基準を読み解くヒントとなる考え方も表明されていたところであります。また、実際に監査法人においてかなりの数の企業について「内部統制システムの整備運用」を支援されてきただけに、正直にJ-SOXの「よくわからないところ」への悩みも吐露されておられまして、東京まで寄せていただいた甲斐はございました。

J-SOXの実施基準の確定版は、本来ならば1月20日前後に公表される予定とのことでしたが、なんと190本もの意見書が届いているとのことで、最終確定版がリリースされるのは2月10日以降にずれこむとのこと。(しかし190となると、いちいちコメントを公表するだけでもたいへんですね。いや、全部吟味されていたら、もっと時間がかかるんじゃないでしょうか)また、これを受けて、3月には公認会計士協会による内部統制監査の実施基準への実務指針が出される見込みのようでありますが、これはまだ流動的とか。エントリーのテーマは「パブコメへの感想」ということにしておりますが、本日の解説をお聞きしての意見をすこしばかり述べてみたいと思います。(以前の多賀谷教授のご解説のときと同様、以下はあくまでも私の個人的見解でありまして、ご趣旨を取り違えている場合もありますので、すべての責任は私にあります。その点のみご了解ください)

1 アメリカの統合監査とは異なるものである(内部統制監査の位置づけ)

財務諸表監査と内部統制監査とは、それぞれが投資家に対して企業情報の正確性を担保するための有力な資料となり、双方が統合されて監査が完了するというのが統合監査のようでありますが、日本はあくまでも「内部統制監査は財務諸表監査のための付随的な監査である」ということが確認されました。このあたりは部会の最初の段階で委員の合意をみたところのようであります。ところで、実施基準の監査に関する解説のなかで、内部統制に重要な欠陥がある場合には、そもそも財務諸表監査はできない、といった説明があったと思うのですが、それはこの「財務諸表監査の付随的なもの」といった前提とは矛盾しないのでしょうか。(付随的なものであれば、重要な欠陥に目をつぶって、財務諸表監査に進むことができそうな気もするのですが、いや、これはあくまでも私個人の単なる理屈のうえでの疑問でありますが)

2 ダイレクトレポーティングとインダイレクトレポーティングは「程度問題」である

(この表題は、私の理解でございまして、H先生がこのように述べたわけではございません。念のため・・・・・)理屈のうえでは、この両者は意見表明への監査なのか、独立した監査なのかというところではっきりと理論上は分かれるところだと思うのですが、このあたりはH先生も悩まれておられたようでして、結局のところインダイレクトレポーティングを採用したといってみても、監査人が「直接証拠」による監査意見形成が認められる以上は、「程度問題」と考えざるをえないと思います。このあたりは、昨年12月の米国SOX法の改定に関するSEC、PCAOBの規則(公開草案)をみてもおわかりのとおり、企業が多大な費用負担を余儀なくされた部分として大きな論点となっておりますので、ダイレクトレポーティングを採用しなかったことの妥当性は理解できるところではありますが、ただ理屈をきちんと詰めて考えますと、やはりCIAフォーラムの眞田先生の意見書にあるようなご批判が正当性を増すのではないか、と私は考えております。
なお、ここでひとつ疑問が出てきますのは、経営者と監査人との「協力関係」のあり方ではないでしょうか。実施基準では非監査業務の提供は原則どおりに監査人が経営者にサービスしてはいけないということを前提としつつも、できるだけ期中からあるべき内部統制システムの構築へ向けて、経営者と監査人が協力していくことを推奨されております。私はこれがダイレクトレポーティングを採用しないことと親和性があるからこそ、このような説明が可能ではないかと思っておりますが、もしダイレクトレポーティングを採用すべき、と言い切ってしまうと、このあたりはどうなんでしょうか?基本的には監査人の監査は財務諸表監査と同様の構造になってしまいますから、実施基準のなかで特別に「協力関係」を持ち出すことについては違和感が出てくるように思えますがいかがでしょうか。

3 内部監査人の評価結果の利用について

内部監査人のJ-SOXにおけるウエイトの高さは、このブログでも何度も申し上げてまいりましたが、やはりH先生も同様のことを強調されておられました。なんといいましても、たとえば有効性評価のためのサンプリング25件のうち、たとえば内部監査人が10件ほどのサンプリングを適正に行っている場合には、監査人はこの内部監査人の評価結果を利用できる、とのことでありまして、経営者(企業)にとりましては、費用負担の点で十分検討しておくべきところであります。ただし、ここにも理屈のうえでは問題が発生しているようであります。内部監査制度自体も、経営者に関する評価の一貫として、監査人の監査対象(全社的な内部統制)になっております。その監査対象である内部監査人による評価結果というものを、そもそもサンプリングの一部として利用できる、というのはちょっと矛盾が生じているのではないでしょうか。理屈はすこし違いますが、これは監査役を内部統制監査のなかでどう扱うか、という問題にも共通するところの「矛盾」でありまして、どうもキッチリとこのあたりを説明できるような理屈というのも、いまのところはよくわからないところです。高い理想は維持しつつも、できるかぎり企業や監査法人の負担を軽くしたい、といった内部統制報告制度全般に流れる課題を実行しようとすれば、こういったところにも疑問点が出てくるのはやむをえないことなのかもしれません。(うーーん、なんだか「産みの苦しみ」のようなものを感じるのは私だけでしょうか・・・・(^^;) )

その他、経理の状況以外の評価対象について、企業はどのような基準をもってその有効性評価を行うのか、持分法適用会社の内部統制というものをどうやって考えたらいいのか、業務プロセス監査と評価項目の選択などなど、非常に大きく、かつ重要な論点についても議論がなされたのでありますが、ちょっと長くなりましたので、また続きとさせていただきます。

1月 25, 2007 内部統制実施基準パブコメの感想 | | コメント (7) | トラックバック (1)

2007年1月24日 (水)

談合決別宣言後の「談合」

昨年12月5日にアメリカ政府から外務副大臣に交付された「年次改革要望書2007」には「競争政策」という一項目が立てられておりまして、談合根絶への政府の積極的な取り組みを評価するとともに、更なる談合摘発に向けて具体的な要望がたくさん出されております。ここのところの公正取引委員会の活発な行動や、各都道府県の警察の動きというものは、おそらくアメリカ政府としても喜ばしい限りではないでしょうか。(ただし、リーニエンシーの適用にあたって、談合申告企業が指名停止を受ける、といった対応には不満のようですが)

名古屋の地下鉄工事の受注をめぐって、スーパーゼネコン3社が名古屋地検特捜部の強制捜査を受けたことにつきましては、すでに報道されているとおりであります。昨年1月の独禁法改正に伴い、どのスーパーゼネコンも「談合決別宣言」をされたようですし、管理職以上の役職者が「談合はしない旨」の誓約書を会社に提出されていたそうですから、今後の捜査次第では、たとえ本社レベルにおいて「まったく知りませんでした」と表明されましても内部統制の欠如を指摘される可能性がありそうです。(刑法上の談合罪というよりも、独占禁止法違反の罪によって法人処罰まで視野に入れて捜査が進んでいるとのことですが)

コンプライアンス・プログラムルールからしますと、社長が「談合決別宣言」をして、管理職が誓約書を提出する、といったあたりは、適正な行動であって、そういった社内ルールが支店現場末端まで浸透することにより、談合はなくなるのではないか・・・・・などと期待もされていたのですが、見事に裏切られてしまいました。談合はそんな甘いものではなかったようであります。コンプライアンス関連のお仕事をさせていただいて感じますことは、この談合や循環取引(架空取引)のように、競争会社を巻き込んでの違法な企業行動というものは、非常によく似た習性があると思っております。「競争を制限してでも、企業の共倒れを防ぐ必要悪・・・」といった愛社精神に由来するようなものでもなさそうであります。もっと日本人に独特の義理人情の世界であります。「前に仕事を分けてもらったから」「前に情報を横流ししてもらったから」「子供の学校の世話をしてもらったから」といった、たいへん個人的なつながりによって、悪への誘いを断ち切れない・・・といったレベルの話をよく耳にします。また、スーパーゼネコンにしましても、下請けに介在する中堅ゼネコンの面倒をみなければならず、その社員たちの顔が浮かぶ、という話も聞かれます。「以前あんなにお世話になったにもかかわらず、世間の風が厳しくなったからといって断れるだろうか・・・」といった苦悩の末での談合継続の図式が正しいのではないでしょうか。

以前「アットホームな会社と内部統制」というテーマでエントリーを書かせていただき、いろいろなご意見を頂戴いたしましたが、仕事がアットホームな雰囲気で進むということは、日本人的に解釈いたしますと「義理人情」でつながっている会社ということでありまして、会社の雰囲気がいいときには実に楽しく和気藹々としていて活気もあるのですが、いざ問題が発生したり、経営状況が思わしくない状況になりますと、みんなでグレーゾーンに足を踏み込んだり、みんなで悪事をかばいあったり、グレーゾーンへのいざないを断りきれなかったり、ということで負のスパイラルにつながる可能性が高いのでは・・・と思ったりしております。同様のことは談合や循環取引のように、企業をまたいで義理人情でつながっている社会にも言えるのではないでしょうか。たいへん不謹慎で申し訳ありませんが、私でも、一生友達としてお付き合いしたいのは、「今回だけ助けて」とお願いしたときに「いやいや会社が談合決別宣言を発したからもう教えられない」と、なんの恩義も感じずに平静に拒否する人間よりも、「じゃあ、今回だけね。これでこのまえの借りは返したってことで、ね?」あたりで、コソっと「蜜の味」を教えてくれる人のほうではないか、と思いますし、おそらく皆様方もそうではないかと推測いたします。(いえ、もちろん談合自体が必要悪だと申し上げているわけではございませんので、誤解のないようにお願いいたします。といいますか、本当に一生友達でいたい人に対して「今回だけ助けて」といったことは言わないかもしれませんが・・・・・・)

アメリカのローファームで働いたこともございませんし、また留学経験もありませんので、よくは存じ上げませんが、アメリカの在職期間の長い会社役員の方の話などを聞いておりますと、米国人も「義理人情の世界」はあるけれども、仕事のうえでのつながりをドライに構成してチームを結成している場合には「貸し借り」が発生しにくいとのこと。アットホームな雰囲気を職場に持ち込むとなりますと、どうしてもこの「貸し借り」の世界がはびこるわけでして、こういった職場環境のようなものが談合や循環取引、ひょっとすると今後はインサイダー取引なんかも、「構造的な病巣」としてずっとつきまとってしまうんじゃないかと思います。最近の大手のIT企業などで顧客と営業社員の関係を大きく変革させているところが出てきましたが、(たとえば、営業社員は休日に個人的に顧客とゴルフをしてはいけない、冠婚葬祭に出席してはいけない、そのかわり営業社員の売り上げノルマは課さないなど、つまり顧客は人とのつながりでなく、企業そのものとのつながりで対応していくといった思想によるもののようであります)企業体質そのものを大きく変革させる以外には、談合根絶のコンプライアンスは語れないのではないかなぁと感じております。

1月 24, 2007 改正独禁法と企業コンプライアンス | | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年1月23日 (火)

企業コンプライアンス関連のブログ探してます・・・

執務中ですので、簡単ではございますが・・・・・

不二家、関西テレビ、大林組などなど、さまざまな事件が内部統制やコンプライアンス問題として取り上げられていることから