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2007年1月18日 (木)

食品会社の不祥事と証券会社の不祥事

年末年始の疲れが出たのか、体調を崩してしまいまして、フラフラの状態であります。ココログのメンテ明けということもありまして、アップしたい話題がいろいろとあるのですが、今後の展開のための備忘録程度のみ、記しておきます。

不二家社の騒動につきましては、前のエントリーにも書かせていただきましたとおり、予想をはるかに超えるヤバイ事態(不二家側からみて)になってきたようであります。公表しなかった経営陣の対応や、事件発覚後のマスコミ対応のまずさなどが「コンプライアンス的」な問題点としてよく指摘されているようですが、それもさることながら、「騒動」に発展してきた大きな原因としましては、大規模小売店舗による「販売自粛」を挙げることができるのではないでしょうか。これは不二家騒動における大きな転換点になっているものと認識しております。一般消費者の不買運動よりも、おそらくこっちのほうが食品会社にとっては大きな痛手だと思われます。スーパーにおきましても、やはり自社のコンプライアンス対応として、食品衛生上問題のある製品については、その安全性が確保されるまで販売しない、という対応は「一般消費者向け」のものとしては十分理解できるところでありますし、(当分の間の措置として)やむをえないものと考えられます。しかし、どの小売店も同様の対処方法を採用するとなると、もはや販売ルートが限定されてきますし、また不二家チェーン店についても、そういったスーパーの対応を消費者が知れば知るほど、販売不振に陥っていくことは目に見えております。もうこうなりますと「負のスパイラル現象」に歯止めがかからないようになってしまいそうです。

さて、いっぽう証券会社の不正経理騒動については、こういった転換点は訪れるのでしょうか?食品会社と同様、株価が低迷する(下落する)といった現象は考えられますし、また現にそういった株価の動向が認められたわけでありますが、食品会社の痛手となったスーパー的存在をひとつ挙げるとすれば、やはり「証券取引所」や「証券取引業協会」の存在ではないでしょうか。ただし証券取引業協会の会長さんの記者会見によりますと、日興の責任の取り方は妥当なものであり、今後は内部統制システムの整備を進めて頑張ってほしい、といった趣旨のコメントを残しておられるので、今後の非常に厳格な対応といったものはおそらくないんじゃないかと思えます。あと残るは、証券取引所が、監理ポストにある日興コーディアルに対してどういった対応で臨むのか、といったところでしょうか。さっきの食品会社の不祥事と比較してみますと、この証券取引所の対処方法自体が、どれほど一般投資家の視点から妥当(もしくは不当)な判断と評価されるか、というところを今後検討してみたいと思います。証券取引所も、その判断を誤ると、(判断結果よりも判断にい至る過程と思うのですが)一部の証券会社の不正問題をきっかけとして、その信用性を貶めることになってしまうのではないかと危惧します。(以下つづく・・・・・)

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コメント

今回の「不二家」の件、私は「大手スーパーで販売を差し止める」という判断が許されるのかどうか、もしかして債務不履行にあたルカ脳性はないだろうかと言う点についてやや疑問に感じています。

直接その工場で生産されたものならまだしも、全く別の種類の製品であり、かつ全く別の工程にて生産されている商品を、単に「報道ベースの情報で、信頼性が確認できない」の一言で見合わせるには信義則の観点からいって「問題なし」とは言いがたい部分もあるかと存じます。

ご見識をお聞かせ頂ければ幸いです。

投稿: Swind@立石智工 | 2007年1月18日 (木) 20時42分

>立石さん

いつもコメントありがとうございます。今年もよろしくお願いいたします。企業コンプライアンスを考えるときに、どういったサンクションがあるのかを検討しておくことは非常に大切だと思っております。食品会社にとっては、スーパーの取引停止ということもありましょうし、また中間介在の商社との取引停止ということもあろうかと思われます。現在の流通を念頭に置いた場合、こういった最終ユーザーとつながりのある大規模小売店の力というのは、おそらく食品業界にとっては脅威となりつつあると同時に、やはりコンプライアンス違反への抑止力にもなろうかと思います。
なお、債務不履行のおそれ、という点につきましては、正当な理由がないとすれば継続的取引における信頼関係違背が認められないということにもなるかもしれませんが、小売店自身にも一般消費者から「おまえのところは不二家の製品を堂々と売っているのか?」といった社会的信用を毀損しかねない評価を付与されるおそれもあるわけでして、このあたりの自衛手段を考えますと、取引停止(安全性を確保するまでのいったん休止)も正当な理由があるとされるのではないでしょうか。

投稿: toshi | 2007年1月20日 (土) 17時18分

山口先生

食品に関して、あまり経験がないですが、ちょっと気づいた点をコメントさせていただきます。
スーパーなどの自主的判断での商品撤収の点は、契約法の視点からどう考えるか、いい問題提起がされていると思います。個別の取引契約の形態を知らないので、あくまで一般的に、という前提で考えて見ますが、基本契約を締結(すなわち取引条件の基本条項をまず合意)したうえで、売買については個々に数量を随時通知して納入し、すなわち個別に売買契約がその都度成立しているような事例もあるのではないかと思います。
スーパーが数量を確定のうえである一定の期間はその確定数量の商品の納入が行われるような場合で、あらかじめ売買契約が一定の期間の納入分について事前に成立している場合もあるかもしれません。その場合は山口先生のご検討の場面かな、と。事案の類型がいくつかありそうに思われます。
それ以外に、小売店の側としては、商品の売れ行きを見ながら次の買付けの数量を通知(買付けの申込み)して製造業者が納入(承諾=売買成立)していくという取引類型も多いのではないか、と思われます。どうでしょうか。そうすると、個別の買付け申入れの数量は、その時々の判断といえますので、その変更、一時出荷見合わせは、ありうべき対応策といえそうです。
もちろん優越的地位の濫用というような別の考慮が働くべき場面であれば、別の問題があるわけですが、現在問題となっているような事案ではこの論点は関連性が薄いのが一般であろうと思われます。
買い切りのような場合、賞味期限、消費期限が切れた商品は当然廃棄ですから、そのリスクはスーパーなどが負担するわけですが、委託販売的なパターン、在庫リスクが製造業者にある形態もあると思われます。在庫リスクの所在の問題も上記とあわせて検討するとよさそうです。買い切りの場合は、その在庫リスクをどれだけ負担するか、の点も当然スーパー等の小売店では考えて発注するわけですし、後者であっても、廃棄につながるものを大量に店内に陳列し続けることに伴う問題もあるでしょうし、店内の販売スペースについては小売側の権限の問題ですから、このような問題については、いろいろと考慮すべきポイントがありそうです。
あまり横から口出しをすることは適切ではないと思っていますが、面白い論点なので、少しだけ追加考慮要素を提示させていただきました。

投稿: 辰のお年ご | 2007年1月21日 (日) 09時46分

>辰のお年ごさん

こんばんは。
このブログは横レス大歓迎ですので、どうか法曹として、いろいろな視点からご指摘いただけますと幸いです。リスクをできるだけ回避しようとする小売店側の思惑や、最近の小売店とメーカー、商社との力関係からしますと、辰のお年ごさんのいわれているような法律関係(契約関係)のほうが現実に沿ったものであるように思えますね。POSシステムや、ダイエーオーエムシーカードのように、「何が売れ筋か」「○○代の女性に売れる商品はなにか」といった資産価値の高い情報が小売店に偏在するようになってから、小売店の力が本当に流通では大きくなったように思います。
レックスの話題に戻りますが、そういった意味で「ampm」というコンビニチェーンは、外資にとっては流通を牛耳るうえでたいへん価値のある事業部門だと思っております。また、この話題については少数株主保護の続きのなかで触れていきたいと思っております。

投稿: toshi | 2007年1月23日 (火) 01時44分

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