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2007年1月16日 (火)

日興コーディアル不正会計と事実認定(その2)

昨日のエントリーにおきまして、「そろそろまた日興コーディアルの不正経理(といいますか、もはや虚偽記載といったほうがいいかもしれまえんが)に関する報道が増えてくるのではないか・・・」と書きましたが、さっそく日興CG(コーディアルグループ)の特別調査委員会が当初の予定どおり、今月の末日までに調査報告書をまとめること、報告書の内容は事実と原因、そして内部統制システムの提言に関するものであること、報告書は取締役会に提出すると同時に、その内容を公表することを明らかにした、という報道がなされております。(朝日新聞ニュース)この報道内容からしますと、特別調査委員会に付託された使命といいますのは、①事実の確定②事実の評価(「虚偽記載かどうか」とか「組織ぐるみかどうか」といった会計的法律的評価③再発防止のための政策提言、という非常に重要な使命のすべてを含むものになるようです。

ところで、たとえば私が委員をさせていただいております某上場企業のコンプライアンス委員会などでも、こういった使命を帯びて事実確認、事実評価、再発防止の施策提言という作業を行うことがございますが、それぞれの分野に強い委員の方がいらっしゃいまして、事実確認についてはなんといいましても元裁判官の弁護士、事実の評価については監査に強い公認会計士、再発防止の施策提言というところは私や社外のアドバイザーの方といったような役割分担がございます。今回の日興CGの特別調査委員の方々といいますのも、私はそういったいくつもの使命を短時間に果たすにふさわしい方々が選任されていらっしゃるのかと思いましたが、たいへん著名な企業コンプライアンス関連の法律家の方々(構成された4名のメンバーの方々はこちらのフジサンケイビジネスアイのニュースでおわかりいただけると思います。)ばかりでありまして、その役割分担というところが少しわかりづらくなっているような気がいたします。

元裁判官の法曹の方と、こういったコンプライアンス関連のお仕事をごいっしょさせていただき痛感いたしますのは、やはり「事実認定のプロ」として、その実力は他者を大きく凌駕しており、経験則の使用においてほぼ「穴」がなく、またバイアスがほとんどかからない、ということであります。人証、物証含め、「事実認定」を30年もプロとして続けてきた職業人の判断には、ちょっと「一介の弁護士」には能力的にはかなうはずもなく、まぁほとんどの場面におきまして説得されてしまうことが多いようです。また、当時の会計処理が「異常な」ものであったのかどうか、その処理がごく一部の会計専門家(もしくは経理、財務担当者)でないとなしえないものかどうか、といった「認定された事実の評価」に関する論点につきましては、たしかに最終的には法律上の問題となるのかもしれませんが、どうしても監査実務に強い公認会計士さんの意見を必要とする場面が出てまいります。おそらくこのたびの日興CGの特別調査につきましては、訂正報告書の作成にあらた監査法人が中心メンバーとなって調査を継続していることを考えましても、そういった役割分担的な委員選任が必要なのではなかろうか、そういった分担が考えられているのだろうか、といった素朴な疑問がわいておりました。

加えて、ちょっと危惧されますのは、このメンバーの方々の「外観的独立性」というものは確保されているのかどうか、といったところであります。報道されているところによりますと、この特別調査委員会の委員長の方(私が司法試験の口述試験のときの面接官だった方です。ちょっとコワカッタかも・・・・(^^;))は、もと日興CGの監査委員会の顧問をされていたとのことですし、また委員のおひとりの方は日興の法務アドバイザーを務めていらっしゃった方とのことであります。もちろん弁護士にはその職責としまして、自ら客観的な判断がなしうるように、独立した立場に務めるよう配慮すべき倫理上の義務もございますが、果たして元来の日興との関係からみまして、バイアスがかからずに事実確定、事実評価、政策提言がなされるのかどうか、この「外観的独立性」といったところからは疑問を抱かざるをえないところもございます。このあたりもたいへん気になるところでありますし、今後提出が予定されている報告書の結論にすこしばかりは影響しないだろうか、という不安を覚えてしまいます。(しかしながら、特別調査委員会の成果品が公表される、とのことですから、とりわけ内部統制システムの具体策として何を提言するのか等、今後各社にも関連性のある部分につきましては、調査委員会による公表の内容とされているところによりまして、今後の特別調査委員会による報告内容に大いに期待したいところであります。)

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