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2007年2月27日 (火)

消費者団体訴権と企業コンプライアンス(その2)

最近は、ちょっといかがわしそうなブログのTBや商業系ブログのTBが多かったために、ずいぶんと管理人の独断で勝手に抹消させていただいておりましたが、本日はこのブログにお越しいただく法務担当者の方にもかなり有益と思われるものを貼っていただいております。(どうもありがとうございます m(_ _)m )日本版SOX法ガイドさんも、TAKE IT EASYさんも、かなりの力作のようでありますので、皆様がたのご参考にもなるのではないでしょうか。また、いつも読ませていただいております「ぴて」さんのエントリー(TBを参考にしてください)では、昨年の夏以来、このブログでもときどき話題になっておりました「社外役員の責任限定契約と会計監査人による求償権行使の可否」につきまして、江頭教授説(Y説とは結論において反対意見)が紹介されておりますので、こちらも(とりわけ会計士の皆様方には)ご参考にされてはいかがでしょうか。

さて、つい先日、消費者団体訴権と企業コンプライアンスというエントリーをアップさせていただきましたが、ちょうど同時期に、金融法務事情の2月5日号(32ページ以下)におきまして、中央大学法科大学院の升田教授が「消費者団体の差止請求権と金融取引の実務(備えあれば憂いなし)」と題する論稿を出されております。金融機関のなかには、消費者契約について法令違反を問われるおそれはないものと安心しているところも多いかもしれませんが、この論稿では、消費者契約法(改正法)は、金融機関に無縁どころか、重要な影響力を持ちうるものであり、金融機関の取引の仕方、対応の仕方次第では、金融機関自身が実際の差止請求権行使の対象とされかねない・・・と警告されております。

この升田先生の論稿を最後まで読ませていただいたところでは、改正消費者契約法の手続面と実体面での概説をされておられ、金融取引上のどういった行動や契約内容について差止のリスクが発生するかを広く検討されておられますが、とりわけ非常に参考になりましたのは「差止請求権の内容」に関する記述であります。認証団体が今後どのような訴訟を提起されるのか、また裁判所によりどのような判決(もしくは仮処分における決定)が出されるのかは、もちろん未知数でありますが、事業者等の行為の差止だけでなく、広い内容の行為を請求できる、ということであります。つまり契約の不当勧誘や不当な条項の効力を差し止めるだけでなく、問題の行為の予防や、物の廃棄、除去、予防のために必要な措置をとることなど、具体的な作為命令を事業者に発令することが可能になるわけであります。さらに、最近は(従来の実務と比較しますと)民事執行法上の間接強制(もし命令に違反した場合には、一日あたり○○円を支払え、という強制手段)が広く認められるようになったために、相当に抽象的な程度の特定で足りることとなりますので、事業者にとりましては、類似の契約を破棄せざるをえない場面も予想されるようであります。これらを読ませていただいたかぎりにおきましては、認証団体の行動次第では、金融機関や一般事業体について、消費者契約法関連のリーガルリスクは相当程度高まるのではないか、と思います。

現実問題としまして、先日ある弁護士さんからお聞きしたところでは、すでに認証団体においては狙い撃ちする会社の選別が検討されているようですので(ただし、先日メールを頂戴してエントリーを訂正させていただいたとおり、選別の検討対象は一般上場会社というものではなく、中小の問題企業への行使が検討されている、とのことであります)金融機関にかぎらず、一般の事業会社におきましても、この消費者団体訴権の使われ方につきましては、定期的にフォローされるほうがいいかもしれませんね。

2月 27, 2007 消費者団体訴権と事業リスク | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年2月26日 (月)

三洋電機粉飾疑惑と会計士の判断(1)

2004年3月期における三洋電機社の決算について「灰色疑惑」が浮上しておりますが、またまた当時の監査法人の適正意見についても問題視されているようであります。(こちらの朝日新聞ニュースが、入手した内部資料などに基づいた記事を掲載しており、参考になります。)先日の日興CGにおけるSPCの「連結はずし」につきましては、私と仕事や研究会などでご一緒させていただいている会計士の方々も、調査委員会の結論が出る前から「あの会計処理だけ取り上げても明確に不当とはいえないのではないか」といった意見が多かったのも事実でありまして、現に特別調査委員会の結果報告におきましても、「会計基準の判断だけみても堂々めぐり」といった結論となっておりました。このたびの三洋電機社(単体決算)の子会社評価の妥当性(減損評価の可否)につきましても、いくら新聞報道で解説がなされましても、監査法人のどういった行動が問題視されるのか、正直申し上げてよくわからないところですし、ここはやはり現実に監査業務の経験を有しておられる現役の公認会計士の方々の解説のようなものが欲しいと思いますね。「いやいや、あのような状況なら、誰でも同じように減損はしない」と考えるのか「明らかにまずい処理であって、三洋電機さんに押し切られたとしかいいようがない」と判断されるのか、そのあたりの感想でもけっこうですから、新聞等でコメントをお出しになる方がいらっしゃったら、もうすこし新聞解説もわかりやすいのに・・・・と思いますね。

ただ、よく考えてみますと、会計基準の適用に関する判断というのは、前後にわたる会計年度の数値を詳細に比較したり、「収益見込み」といった定性的情報(その企業が秘密として公表できないような資産や情報を含めて)を相当長期にわたって分析するなど、当該企業を知悉していなければ判断できない前提条件も含まれているように思われますので、おそらく社外の会計士さんからみれば、到底「セカンドオピニオン」を発信できる立場にはない、といった認識をされているのかもしれません。このたびの三洋電機粉飾疑惑につきましても、私がよく参考にさせていただいております、いくつかの会計士さん方のブログを拝見しますと、いずれも旧中央青山監査法人さんの監査対応については「やむをえないものだったのではないか」「粉飾加担とまではいえないのではないか」といった同情に近いご意見が多く聞かれるところのようです。

しかし、私のような会計専門家ではない者からすれば(これまた、まったくの素人考えかもしれませんが)「収益見込み」というかなり曖昧な判断を要する事項に関わる問題であるからといって監査法人にはやむをえない事情がある、としてそれ以上の議論を放棄するのでは、積極的に粉飾に加担した場合と、そうでない場合との境界線をどこに引くべきか、という問題の解決策を見つけることができないために、今後ますます監査法人の監督などを含めた事前規制を容易にしたり、課徴金や刑事罰などの厳格化などの事後規制の増加を招く原因になってしまうのではないでしょうか。素朴な意見で恐縮でありますが、会計原則からすれば、なぜ2004年3月期になって、はじめて子会社の減損が問題になったのか(つまり、別の会計基準を適用しなければならなくなった原因事実がはっきりとしているのかどうか、はっきりしているとすれば、それはどういった事実を根拠としているのか、はっきりしていないとしたら、その前年度から監査法人は減損の必要性を十分認識していたのか、このあたりが明確でなければ、監査担当者としては、継続性の原則にしたがって、合理的理由がないかぎりは前年度と同様の扱いをすることが好ましいのではないでしょうか)、またかりに2004年3月期における子会社株式の評価を、これまでとは別の会計基準を適用すべきであったと評価される場合、それでは「会計保守の原則」があるにもかかわらず、どうして監査法人さんは三洋電機社側の主張にしたがった意見を表明するに至ったのか。どういった「収益見込みの急速な回復」を基礎つける資料が提出されたために、回復が見込まれることへの合理的判断が可能になったのか、そのあたりの説明はそもそも「会計保守主義の原則」がある以上は、監査法人さんのほうが主体的に立証しなければならないのではないでしょうか。(といいますか、立証できなければ、株主や投資家に対する説明責任を尽くすことができなくなり、結果として監査の信頼性を失わせてしまう結果になってしまわないでしょうかね)

なお、新聞報道におきましては、2005年3月期には、三洋電機社側で1500億円の評価損を処理しているので、いまごろなぜ2004年3月期の不正が問題とされるのか、といった解説が聞かれるところでありますが、これは理由にはならないと思います。本件がたまたま2007年になって問題視されるに至っておりますが、もしこれが2005年のうちに発覚したとしましたら、先の日興CGの場合と同様、三洋電機社さんにおいて隠蔽していたものと一般的には評価されると思われます。「会計の継続性の原則」や「保守主義の原則」など、会計学の基礎からすれば、言葉の適用場面が異なるかもしれませんが、もし誤りなどございましたら、またご指摘いただけますと幸いです。なお、議論の進化(といえるかどうかはわかりませんが)を目的としまして、過年度の決算に関する調査の持つ意味や、収益見込みに関する被監査企業の(監査法人に対する)説得のあり方など、また詳細なところにつきましては、別のエントリーで続編とさせていただきます。

2月 26, 2007 三洋電機の粉飾疑惑と会計士の判断 | | コメント (3) | トラックバック (2)

2007年2月23日 (金)

IXI社の粉飾決算疑惑

ろじゃあさんがフォローされているアイ・エックス・アイ社(民事再生中)の粉飾決算のお話でありますが、これは私が関係会社に近い立場におりますので、詳細はお話できませんが、一般論としてひとことだけ付言させていただきます。

朝日新聞ニュースが詳しく報道されておられますが、この事件を全体的に考えますと、架空循環取引(宇宙遊泳よりももっとすごいかも。モノがそもそも存在したのかどうかすら不明)から脱退声明を出す「勇気のある企業」の存在もさることながら、「これはおかしいのではないか」と声を上げた監査法人の存在も特筆すべきだと思います。(これは、たとえば・・・のお話ですが)協力企業間の決算期のズレを利用して、納品、買戻しを繰り返している実態を監査法人間で積極的に協力して解明したり、エンドユーザーに対して、納品の確認を求めて、モノの存在を検証したりと、監査法人が徹底した「独立第三者」ぶりを発揮したことで、(にっちもさっちもいかなくなった循環取引参加企業のひとつにおきまして)問題が表面化したものでありまして、監査法人の「あるべき姿」が垣間見えた特徴的な事例であります。なお、ここでいう「あるべき姿」といいますのは、なにも刑事事件の捜査活動をする、という意味ではなく、内部管理体制に裏付けられたお金の流れが明確にならないかぎりは「適正意見」を出さないといった断固たる対応のことを意味しております。たしかに、監査法人がこれまでの架空循環取引の継続を「見抜けなかったのか」と非難することは簡単かもしれませんし、途中で監査法人が交替していることから、なにか特別な事情もあったのかもしれませんが、時代が変わり、みすず監査法人さんが解体移管、というところまで来てしまった現在、「監査法人が(守秘義務に悩みつつも)その気になれば、公開企業も変われる」ことを実務において示した貴重なケースではないか、と思います。(ただ、監査法人さんが事の重大性を指摘してもなお、「バレなければいいのでは?」と呑気なことをおっしゃる役員さんがいらっしゃいますと、これも困り者であるわけですが。。。)以前「粉飾の論理」という新刊をご紹介させていただきましたが、このケースにつきましても、あと何年か先に事件が落ち着いてから、どこかの記者さんが、その一部始終をドキュメントとして公表することには大きな意義があると考えております。(もちろん、私は守秘義務がございますので、お話はできませんが)

2月 23, 2007 粉飾決算に加担する動機とは? | | コメント (16) | トラックバック (6)

2007年2月22日 (木)

いちご白紙をもう一度

すでにご承知のとおり、大阪製鐵による東京鋼鐵の完全子会社化に向けての株式交換契約が、本日の東京鋼鐵側株主総会により否決されたようです。(日経ニュースはこちら。否決ラインは出席株主の3分の1超でして、40パーセント以上の否決票が投じられたとのこと)いちごアセット・マネジメントによる委任状集めが奏効されたようで、東京鋼鐵側の開示情報によりますと、株式交換契約は白紙となり、今後も統合比率の見直しに向けた動きはしない、とのことだそうです。(なお、大阪製鐵側は、簡易株式交換となるため、総会決議は不要であります)しかし、東京鋼鐵側株主にしてみれば、もう一回大阪製鐵側と統合比率の変更に向けた努力を東京鋼鐵側経営陣に希望するところではないでしょうかね?(まあ、最善を尽くして10月26日付けの統合比率発表に至ったとする手前、そう簡単に変更することはできない、との姿勢も理解できるところでありますが)

またまた、おバカな疑問でたいへん恐縮ですし、どっちの味方なのか不明な立場で安閑としているように見えるかもしれませんが、この委任状争奪戦に関するニュースやブログなどを拝読していてよくわからないところがございます。まず、ひとつめは、本日否決された株式交換契約でありますが、否決されたとはいえ、55%程度の株主は大阪製鐵側の株主として今後も東京鋼鐵の傍に残ることに同意をされたわけであります。つまり、ある程度の少数株主の人たちも、これだけ話題となった「いぢごアセット」の言い分をいちおうは聞きながらも、最終的には経営者サイドの意見に与した、ということであります。これはどう解釈すればいいのでしょうか?(以前から時折、TOBに関する疑問として、このブログでも書いてきたことでありますが)東京鋼鐵は大阪製鐵と比較して、長い歴史を持つ会社でありまして、おそらく株式を長期保有されている株主さんも多いのではないでしょうか。また経営陣も長期保有を勧めるようなIR活動を行ってきたのではないでしょうか。そういった株主さん方に対して、東京鋼鐵の経営者としましては、プレミアムをつけてのTOBに賛同すること(つまり、TOBということになりますと、通常は金銭で買付価格が決定されますから、お金で精算して皆様、さようなら、ということになりますが)を勧誘するよりも、これまでどおり、子会社にはなりますが、今後も一生懸命、企業価値を上げていきます、と決意を表明して、だからこそ我々についてきてください、と長期で株式を保有してもらうことを勧めることにも一理あるのではないか、と思う次第であります。(私だって、本当に事業統合が企業価値を上げるのであれば、機会コストを考慮しても、その株式を保有したいと考えると思いますし)そうしますと、MBOとは異なり、そのまま統合企業の株主として残るわけでありますから、支配権プレミアムの移動という概念も異なってくるのではないでしょうか。(このあたりは、私の勉強不足でありますが、統合比率を検討する場合に、プレミアムは発生するとしましても、それが、株主が権利を放棄する場合、つまりTOBと同じような基準で上乗せしなければいけないものなのでしょうか。また、おそらく交換契約時を基礎とした理論株価を中心に比較しなければならないでしょうから、プレミアムの考え方についても、いろいろと意見が異なるところかもしれませんが。ただ株式交換契約の発表と一緒に、業績の上方修正をしたことにつきまして、一見すると一般株主を甘くみているようにも思えますが、うーーん、これはすこし理解に苦しむところです)

もうひとつの疑問でありますが、おそらく東京鋼鐵社としましては、いちごアセットが委任状争奪に至った時期以降、一般株主に対しましては「統合は今後の企業価値を上げるものであるから、ぜひわれわれ経営陣の意向に賛同してください」とのお願いをされていたと推測いたします。そして、それに賛同した一般株主も多数いたものと推測いたします。そうだといたしますと、株式交換契約は相手方(大阪製鐵)のあるものとはいえ、その賛同していただいた株主の皆様に対して、もうすこしきちんとした説明責任を果たしてもいいのではないでしょうかね?否決の趣旨を表明した株主の方々も、統合自体を否定しているのではなく、比率を問題にされているわけでありますし、統合が正しいとして、経営陣に賛同した株主の方々には、なおさら、白紙しか方法がない旨の説明を必要とするものと思うのですが、いかがでしょうか。株主が正しいと思うところを、経営陣がもう一度、統合相手にぶつけてみて、それでもダメなら仕方ないかもしれませんが、そういった行動に出ることもなく、白紙撤回ですんなり決まるというのは、よほど第三者機関による統合比率算定に自信があったものと思われます。ただ、企業の再編は企業価値が絶対のものでないことは自明のことでしょうし、それ以外の要因で成功もすれば失敗もするわけでしょうから、そういった努力はなぜされないのか、そのあたりの説明はぜひとも欲しいところではないでしょうか。おそらく、この東京鋼鐵、大阪製鐵の事例は、今後数ヶ月は法律雑誌でいろいろな議論がなされるところでしょうから、高尚な議論の前座としまして、ぜひとも、私のような素人疑問を解消させたく、恥をしのんでエントリーさせていただきました。

2月 22, 2007 東京鋼鐵・大阪製鐵 委任状争奪戦 | | コメント (0) | トラックバック (0)

弁護士と企業との期待ギャップ

江頭先生の還暦記念論文集「企業法の理論」のなかに、全部取得条項付種類株式の利用制限に関する論文が掲載されておりまして、目下、読むのに苦労しております。スーっと、頭に入る人と入らない人がいるとすれば、私は間違いなく後者に属します。面白くなくて難解であればあきらめもつくのですが、かなり面白い内容でありながら、疑問が解消できないところが悔しい・・・・。学者の先生方でしたら、この上巻と下巻を一読されて、「やっぱり○○君のはおもしろいな」「そうだね、でも○○先生の発想も斬新だよね」などと会話が成り立つのでしょうが、ともかく実務に役立ちそうなところを最優先で頭にいれようともがいております私のような者にとりましては、とりあえず通読して評価する、といったところまではとてもムズカシイようであります。

さて、法曹人口の急増(司法試験合格者の増加)に伴って、「ノキ弁」が増えるであろう、といったニュースが最近よく流れておりますが、今度は「インハウスローヤーは、9割以上の企業が採用予定なし」といった調査結果が報道されております。(日経ニュース、どうも日弁連によるアンケート結果のようです)「企業人」として、弁護士資格者は当面必要ない、といった企業サイドのご判断であります。法曹人口増加の受け皿を一般企業に求めようといった日弁連サイドの思惑からすると、この調査結果はかなりショックかもしれません。でも現在の弁護士サイドの営業活動や、企業が求める弁護士像に鑑みますと、これは当然の結果だと思います。私もここ5年ほど、弁護士協同組合の業務改革委員会の委員長や副委員長をやってきまして、「企業と弁護士のお見合い会」みたいなものを開催したり、「弁護士はこんなことができますよ」といったパンフレットを作って、いろんな商工会議所を回ったりしてきましたが、反応は「いまひとつ」どころか「まだみっつ」ぐらいでありまして、マッチングの難しさを痛感しております。そりゃそうですよね。コンプライアンスに限って申しましても、そもそも企業コンプライアンスというのは「人を動かす仕事」でありまして、人を動かした経験のない弁護士にとりましては、果たして役に立つ仕事ができるかどうかは、たいへん心もとないところであります。

先のニュースにもありますが、単に「弁護士は企業コンプライアンスの強化に役立ちますよ」などと宣伝してみましても、「じゃあ、なんで企業のなかに弁護士を抱えなきゃいけないの?外からのアドバイスでもいいんじゃないの?」といった質問を受けることになりますし、そりゃ反応はほとんどないと思われます。ほかの人よりも少しだけ、コンプラに関するお仕事をさせてもらっていたり、3年ほど社外監査役をさせてもらっている立場からしますと、(企業内弁護士としての素養として)企業が知りたいのは、単に弁護士の資格というよりも普通に「人柄半分、能力半分」だと思います。人柄のなかには、性格も社会常識も含まれますが、能力というのは、司法試験で高い点を取る能力とは違うように思います。(そのような能力であれば、高いフィーを支払ってコンサルとして法律業務を委託したほうがいいわけでして)あえていえば、「なんかおかしいんじゃないの?」といった問題をみつけだす「勘」とか、人を説得できるだけの事実を確定したり分析したりできる技術だとか、紛争解決策を自ら提案できるようなプレゼン能力みたいなものではないでしょうか。何年間か弁護士として真剣に代理人をやっておりますと、ほかの業種の方よりも、やはり経験上、知恵のつくところがありまして、意外と企業の方は、そういった能力に秀でた弁護士が存在することに気づいておられない。これまで企業内弁護士を雇用した経験のない企業や自治体さんの場合、どうしても、弁護士のイメージが固定化してしまっておりまして、それまでの弁護士のストックに期待しているところが多いように思います。しかし、そういったストックは外部委託で足りるわけでして、企業内部で生かされる弁護士の能力はまったく別のところにあると思います。

結論的には、私はいきなり新人弁護士を採用することにはリスクがありますが、5年程度、相手方弁護士や裁判官や検察官にイジメラれ、これに真剣に闘ってきた弁護士というのは、そこそこ企業内で価値の高い仕事ができる人もいるのではないか、と思っております。(あっでも、そんな弁護士さんだったら、きっと仕事も面白いと思っているでしょうし、転職するかどうかはまた別問題ですが。最近はパートタイム裁判官になっている弁護士もいますので、パートで勤務する、という時代も来るかもしれませんね。でも、以前のエントリーでは、「パートで仕事したい、などといわれる弁護士さんはいらない」と厳しいご意見もいただいたような・・・・・)

2月 22, 2007 商事系 | | コメント (18) | トラックバック (1)

2007年2月20日 (火)

公開会社法への道標(その2)

きょうは、意見ではなく、情報のご提供のみで失礼いたします。

(その1)は、昨年5月12日に「公開会社法への道しるべ」といったエントリーをアップしておりましたので、約9ヶ月ぶりの続編アップということです。(そんなエントリーあったのかな?と 笑)(その1)の内容は、いわゆる上場企業におきましては、市場資本主義の興隆とともに「会計士さんの時代」がやってきまして、そのうち会社法と証券取引法が逆転してしまうんではないか、上場企業に法の支配は貫かれるのだろうか・・・といった趣旨のエントリーです。ちょうど、私が大阪弁護士会におきまして会社法研修講座の講演準備をしているときに感じたことをツラツラと書いたものです。そしてひさしぶりに(その2)をアップしようと思いましたのは、会計士さん向け雑誌の3月号に、著名な商法学者の方々の興味深いご意見が掲載されていたからであります。

「会計・監査ジャーナル」3月号の緊急企画「監査不信に立ち向かう公認会計士業界シリーズ第六回 識者に聞く 資本市場における公認会計士の役割とその責任」では、藤沼会長さんと上村教授の対談が実現しているわけでありますが、早稲田大学法学部長の上村先生は上場企業における証券取引法の会社法に対する優越性を強調され、さらに(資本市場をとりまくルールとしては)自主規制のほうが法律よりも重要である、有価証券報告書よりも適時開示のほうが重要である、会計基準はまさにトップクラスの重みがあり、資本市場の中心に公認会計士が存在する時代になる、だからこそその責任も重いのだ、といったお話をされております。現在、上村先生は、日本取締役協会の「公開会社法要綱案」の制定に向けてご尽力されていらっしゃるそうですが、この対談におけるご見解は、おそらくこれまでの上村先生のものとまったくブレがないものと拝察いたします。

いっぽうたいへん気になりましたのが、神田教授の「企業会計」3月号「論壇」における最後のまとめの部分であります。実は、これは立ち読みしかしておらず、前後の文脈まで精読していないのですが、この「まとめ」の部分におきまして、神田先生は上村先生とほぼ同じ趣旨のことをおっしゃってます。(と、私には理解できました。いや、それほど強く、というわけではないと思いますが)公開会社においては、会社法は企業会計基準の前では後退せざるをえない、(法律でいうなら)証券取引法の優越を認めざるを得ない、といった趣旨のことを申されて締めくくっておられます。(もしお手元に企業会計3月号がございましたらご確認ください。)

私はてっきり、いままで神田先生は、こういった考え方をお持ちでないものと勝手に思い込んでおりましたが、やっぱりそのようにお考えになっておられたのでしょうか?昨年のベストセラー「会社法入門」のなかで、神田先生は「会社法はどこへ行こうとしているのか」(第五章)と自問自答されて、コーポレート・ガバナンスに関しては、新会社法は公開会社が日本の資本市場において興隆していくための支援(いわゆる国策法としての会社法)を志向するであろう、といったお考えを開示されておられます。このたびの会社法につきまして、神田先生は、まさに中小企業、ベンチャー企業における株式会社の使い勝手の促進とともに、資本市場を活性化させたり、事業再編を容易化させることによる「公開会社のための会社法」というものを念頭に置かれていたのではないかと思いますので、やはり公開会社におきましても会社法の占める位置はたいへん重要ではないか、すくなくとも会社法>証券取引法とお考えになっているものとばかり理解しておりました。もちろん、証券取引法(金融商品取引法)と会社法との優先関係を議論することが、公開会社にとってどのような実益があるのか、といったことも検証しなければなりませんが、会社法ももうすぐ施行後1年となり、こういった構想も具体的に高名な学者の方々によって議論されるころになってきたのでしょうか。とりあえず、もし上記論稿などお読みの方がいらっしゃいましたら、私の認識の間違い等も含めて、ご感想などお寄せいただけますと幸いです。

2月 20, 2007 「公開会社法」への道しるべ | | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年2月18日 (日)

ヘッジファンドと企業コンプライアンス

2月16日の夕方、2時間ほどフィノウェイブ・インベストメンツ株式会社の社長でいらっしゃる若林秀樹さんと(ある方のご紹介にて)大阪でお話をさせていただきました。若林さんはご存知の方も多いかと思いますが、日経の人気証券アナリスト1位(5度)、2006年にファンドマネージャーに転身されてからは、日本株ショートロングヘッジファンドにおいて52本中1位の運用成績を上げておられ、現在も日経ビジネスオンラインにて連載記事(辛口市場主義)を寄稿されておられます。以前よりお会いするのを楽しみにしておりましたので、本当にあっという間の2時間でした。

こちらから若林さんにお聞きしたかったことは、ヘッジファンドの概要でありまして、ファンドストラクチャー、および「健全なファンドとはいかに?」といったファンドの運用実態からみた「安心しておつきあいのできるファンド」の選別方法についてでありました。しかしヘッジファンドのストラクチャーというものは、すぐに理解するのが容易ではありませんね。組織自体がどこの国のものかよくわかりません。(ちなみに、若林さんが社長であるフィノ社も投資運用会社ではなく、あくまでも投資顧問助言会社であります)といいますか、組織の基本パーツが日本やアメリカ、スイス、バージン諸島などなど、あっちこっちに分かれておりますので、「会社の形態」は全世界を見回してみないと理解できない仕組みになっております。また、この仕組みに「ファンドオブファンズ」が絡まっておりますので、もひとつややこしい状況になっております。若林さんからしますと、「あたりまえのこと」かもしれませんが、ヘッジファンドを日本法において理解しようと、へんな質問ばかりする私に、嫌な顔ひとつせず、懇切丁寧に解説をしていただき、本当に感謝で一杯であります。(ときどき、「いや、実は私にもそれはよくわからんのです」とホンネでお答えいただきました。)

ちょっと気になりましたのが、若林さんが日本の株式市場の今後の占う意味で「重要項目」としてあげておられたのが、景気、為替、政治、エネルギーを含む環境問題、そして「企業のコンプライアンス」でありました。世界の株式市場との比較において、重要な5項目のうちのひとつにコンプライアンスが挙げられるそうでして、「これはそんなに影響度が高いのでしょうか?」とお聞きしますと、若林さん曰く

「もちろんです。不祥事を起したかどうか、ということも個別の企業には大事ですけど、不祥事を起さない仕組みとか、リスク管理といったことを企業に要求する制度の有無は市場の浮沈に大きく影響しますよ」「たしかにアメリカSOX法はたいへんかもしれませんが、あれを実践できないということは、それだけで不祥事のにおいがします」「そもそも日本の市場に4000社は多すぎるかもしれません。実践できなければいったん退場して、しっかりした組織をつくってからまた上場すればいいんです」

などなど、やはり機関投資家のコンプライアンスへ向ける眼差しには、たいへん厳しいものがあることを実感いたしました。私は、普段の仕事が個々の企業からの依頼というところにあるものですから、不祥事再発防止のためにはどうしたらいいかといった観点からしか「コンプライアンス」を捉えておりません。したがいまして、大きく観点を広げても、「企業集団としてのコンプライアンスのあり方」くらいまでしか語る資格がないように思っております。しかしながら、市場規模の拡大(国策)のため、企業不正を予防ないし低減するための仕組みといったものが、これほど大きく捉えられているというのはちょっと予想外でありました。(会社法改正、金融商品取引法制定は、海外市場との比較でいえば、とても日本に有利な法制度の改変だそうであります)最近SRIの市場規模が拡大したり、自主規制機関が引受審査基準を変更したり、監査体制の環境整備が進められたりしておりますが、これらは主として一般国民に向けられたパフォーマンスの一環ではないかと思っておりましたが、そうではなく、アジアの飛躍的な株式市場の伸長から取り残された日本の株式市場の「復権、再興」をかけた外向けのパフォーマンスの意味のほうが大きいのではないか、と思い直すことにいたしました。

そういえば、2日ほど前の日経ビジネスオンラインの記事におきまして、東京地裁第8民事部(商事専門部)の裁判官の方々が、いつ提訴されてもおかしくないほどの「秒読み」状態になったMBO訴訟のために、いま必死で勉強されている、ということが書かれております。若林さんからヘッジファンドで働く人々のことをお聞きするうちに、日本の会社法における「多数株主支配からの少数株主保護」に関する判例が形成されるためには、どうもファンドが「少数株主」側として登場するようなケースが多発することが条件になるんじゃないでしょうか。(いままでは支配株主として登場することが念頭に置かれておりましたが)どうもそのあたりを、そろそろ裁判所も察知しているのかもしれませんね。

2月 18, 2007 ヘッジファンドとコンプライアンス | | コメント (5) | トラックバック (4)

2007年2月16日 (金)

サッポロHDにスティールPが意向表明書提出

(2月16日午前 追記あります)

一昨日(2月13日)でありますが、私が独立第三者委員会の委員を務めさせていただいている某企業にて、ライツプランによる買収防衛策再導入に関する意見交換会(もちろん、独立第三者委員会の委員によるもの)がありました。(適時開示情報を一生懸命探しますと、某企業からの「ライツプラン再導入のお知らせ」というものが出てまいります)独立第三者委員会3名でいろいろと協議をしたところでは、「もし、大量買付希望者が現れた場合には、どういった対処法をと