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2007年2月20日 (火)

公開会社法への道標(その2)

きょうは、意見ではなく、情報のご提供のみで失礼いたします。

(その1)は、昨年5月12日に「公開会社法への道しるべ」といったエントリーをアップしておりましたので、約9ヶ月ぶりの続編アップということです。(そんなエントリーあったのかな?と 笑)(その1)の内容は、いわゆる上場企業におきましては、市場資本主義の興隆とともに「会計士さんの時代」がやってきまして、そのうち会社法と証券取引法が逆転してしまうんではないか、上場企業に法の支配は貫かれるのだろうか・・・といった趣旨のエントリーです。ちょうど、私が大阪弁護士会におきまして会社法研修講座の講演準備をしているときに感じたことをツラツラと書いたものです。そしてひさしぶりに(その2)をアップしようと思いましたのは、会計士さん向け雑誌の3月号に、著名な商法学者の方々の興味深いご意見が掲載されていたからであります。

「会計・監査ジャーナル」3月号の緊急企画「監査不信に立ち向かう公認会計士業界シリーズ第六回 識者に聞く 資本市場における公認会計士の役割とその責任」では、藤沼会長さんと上村教授の対談が実現しているわけでありますが、早稲田大学法学部長の上村先生は上場企業における証券取引法の会社法に対する優越性を強調され、さらに(資本市場をとりまくルールとしては)自主規制のほうが法律よりも重要である、有価証券報告書よりも適時開示のほうが重要である、会計基準はまさにトップクラスの重みがあり、資本市場の中心に公認会計士が存在する時代になる、だからこそその責任も重いのだ、といったお話をされております。現在、上村先生は、日本取締役協会の「公開会社法要綱案」の制定に向けてご尽力されていらっしゃるそうですが、この対談におけるご見解は、おそらくこれまでの上村先生のものとまったくブレがないものと拝察いたします。

いっぽうたいへん気になりましたのが、神田教授の「企業会計」3月号「論壇」における最後のまとめの部分であります。実は、これは立ち読みしかしておらず、前後の文脈まで精読していないのですが、この「まとめ」の部分におきまして、神田先生は上村先生とほぼ同じ趣旨のことをおっしゃってます。(と、私には理解できました。いや、それほど強く、というわけではないと思いますが)公開会社においては、会社法は企業会計基準の前では後退せざるをえない、(法律でいうなら)証券取引法の優越を認めざるを得ない、といった趣旨のことを申されて締めくくっておられます。(もしお手元に企業会計3月号がございましたらご確認ください。)

私はてっきり、いままで神田先生は、こういった考え方をお持ちでないものと勝手に思い込んでおりましたが、やっぱりそのようにお考えになっておられたのでしょうか?昨年のベストセラー「会社法入門」のなかで、神田先生は「会社法はどこへ行こうとしているのか」(第五章)と自問自答されて、コーポレート・ガバナンスに関しては、新会社法は公開会社が日本の資本市場において興隆していくための支援(いわゆる国策法としての会社法)を志向するであろう、といったお考えを開示されておられます。このたびの会社法につきまして、神田先生は、まさに中小企業、ベンチャー企業における株式会社の使い勝手の促進とともに、資本市場を活性化させたり、事業再編を容易化させることによる「公開会社のための会社法」というものを念頭に置かれていたのではないかと思いますので、やはり公開会社におきましても会社法の占める位置はたいへん重要ではないか、すくなくとも会社法>証券取引法とお考えになっているものとばかり理解しておりました。もちろん、証券取引法(金融商品取引法)と会社法との優先関係を議論することが、公開会社にとってどのような実益があるのか、といったことも検証しなければなりませんが、会社法ももうすぐ施行後1年となり、こういった構想も具体的に高名な学者の方々によって議論されるころになってきたのでしょうか。とりあえず、もし上記論稿などお読みの方がいらっしゃいましたら、私の認識の間違い等も含めて、ご感想などお寄せいただけますと幸いです。

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コメント

こちらも単なる情報としてお伝えします。
上村教授と神田教授は共同して「公開会社法要綱案」を作成中です。近々、公表されるでしょう。

投稿: 紀尾井町 | 2007年2月20日 (火) 18時20分

>紀尾井町さん

そうだったんですか(笑)
情報どうもありがとうございます。
では「公開会社法要綱案」楽しみにしております。
私もとりあえず会員(ちょっと年会費高いですけど(^^;))
ですので、また解説会等ありましたら、東京まで
伺いたいと思います。

投稿: toshi | 2007年2月20日 (火) 23時01分

エントリーの内容とは関係ありませんが、「資本市場の中心に公認会計士が存在する時代になる、だからこそその責任も重いのだ。」のフレーズをみたら、今日の某監査法人のニュースが妙に気になりました。

それにしても、「移管」って一体何でしょうか? 自主解散するっていうのなら判るんですが。公認会計士法をよく見ていないので判らないんですが、監査法人って分割とか事業譲渡みたいなことができるんでしょうか(確か合併の規定はありますよね)?

J-SOXなどもあったりする中、どこも人手不足なのか、人材引抜きが横行しているとか。「こんなことでは、3月期決算の監査に支障が出る」「クライアントに迷惑が掛かる」、果ては「証券市場の信頼を損なう」という大義名分を掲げているようですが、ひねくれモノの私には体のいい「業界秩序の維持」にしか思えません。

昨年のC監査法人事件のときもそうでしたが、JICPAが他のビッグ・ファームに対し、「顧客争奪を自粛せよ」との信じられない声明を出しています。この業界には、公取委行政が入り込む余地はないんでしょうか(ないんでしょうね)。

また、同監査法人に見切りをつけ、一刻もはやく他法人に移りたい(あるいは、自ら監査法人を設立したい)公認会計士の先生方も少なくないでしょう(監査法人が業務停止処分を受けると、その所属社員は一定期間監査法人の社員になれない、という規定が公認会計士法にありますしね)、そういった方々の職業選択の自由はどうなるんでしょう?

ちょっと普通とかけ離れた”常識”が支配する(らしい)世界の人たちが「資本市場の中心に」と言われても、にわかには賛同し難いものがあります。

個々の公認会計士の先生方や監査法人がどーのこーのではなく、あくまで業界の構造の問題ということで、暴言をお許し下さい。

投稿: 監査役サポーター | 2007年2月21日 (水) 00時00分

公認会計士問題の矛盾といいますかコンフリクトの問題と捉えるべきなのでしょうか、公認会計士が会社から報酬をもらい株主・投資家のために会計監査を行って監査証明を書いているという点にあると指摘する人が増えているようです。
利益相反に対する感度が日本人は鈍い、あるいは認識が低いという指摘もあります。本件のことではないのですが、例えば、M&Aの場合に投資銀行等の財務アドバイザーがフェアネス・オピニオンを書いていることについて、すでに米国では会社側から成功報酬をもらいながらフェアネス・オピニオンを書くのは利益相反ではないかという議論が長く続き、NASDのルールが新しく作られたように聞いています。米国企業は、すでにフェアネス・オピニオンは独立の第三者機関に依頼する考えが主流となっており、M&Aアドバイザーには依頼しなくなっているようです。この辺りのことも日本では認識されていないようで、フェアネス・オピニオンはM&Aアドバイザーに依頼するものと思い込んでいる人も多いようです。コンフリクトの認識の低さは、公認会計士制度の抱えている問題と共通でしょう。
上村教授と神田教授の「公開会社法要綱案」の中に、以上のような利益相反を強く認識した内容のものが入ってくることを期待しています。

投稿: unknown | 2007年2月21日 (水) 07時48分

監査役サポーターさん、unknownさん、コメントありがとうございます。
今朝の日経社説を読みますと、みすず監査法人の解散(移管?)発表や監査法人改革と関連して「公開会社法の制定に期待する」とありました。しかし、そんなに公開会社法というのは容易に制定できるものではないと考えておりますし、なにか事件が起こったから制定する、というものでもないと思います。法化社会といいながら、上場企業におけるルールが規制によって詳細にはめこまれていくことについては、とても違和感を感じますし、関係者らの利害調整機能のあり方がどうなるのか、かなり不安を感じるところであります。
なお、コンフリクトの問題につきましては、年末年始にもエントリーに書きましたが、今年の企業法務における重要な議論のテーマ(内部統制論の進化と利害相反取引と考えております)になるものと思います。またいろいろとこういった話題については、このブログでも議論の材料をご提供したいと思っておりますので、またご意見をお待ちしております。

投稿: toshi | 2007年2月21日 (水) 17時24分

>toshiさん

反論してすみません。今回の新会社法は、言ってみれば中小企業を主体においた法律改正です。先に中小企業の話しがきて、その後で公開会社の規定がくるという並び方になっています。公開企業の実務家にとっては使いにくいシロモノです。
>(引用)上場企業におけるルールが規制によって詳細にはめこまれていくことについては、とても違和感を感じますし、関係者らの利害調整機能のあり方がどうなるのか、かなり不安を感じるところであります(引用終わり)
toshiさんが感じられている違和感と上村教授や神田教授が考えられていることとは断層がありそうです。公開会社と非公開会社には、一般投資者を相手にするのかしないのか、という点で大きな違いがあり、一般投資者を株主にするのであれば、先ず証券取引法を主体にし一本化した法律にすべきではないかというのが両教授の考え方ではないでしょうか。
誰に対しての責任を持つべきなのか、ということをベースとした法律とするのが自然な流れと思います。証券取引法は金融庁管轄、会社法は法務省管轄ということ自体がおかしな話しだったわけで、これを当たり前の姿の法律にしてもらいたい、というのは我々実務家の希望でもあります。
昔の証取法と商法は非常に乖離したところがあり、商法決算・商法監査、証取法決算・証取法監査と大変煩わしく感じたものです。法律が改正されて段々とよくなってきましたが、さらに進んで公開会社法に一本化した方が投資者・株主にとってもメリットが大きいはずです。
何かおかしいな、何か変だな、と思われるところはどんどん改正すべきです。
まあ、裏話的には、法務省が学界の巨頭を刺激してしまったところもあるとは聞いていますが・・・

投稿: 紀尾井町 | 2007年2月21日 (水) 18時34分

紀尾井町さん、ご意見ありがとうございました。

まだ、公開会社法要綱案の内容がまったく存じ上げませんので、不明なままでの発言、ご容赦ください。
非公開会社への法律と公開会社への法律の「連続性」のようなところはフォローされるのでしょうか?IPOにおける、そういった準備にも影響がでるでしょうし、またMBOに関する問題の扱い方、一般社団法人法との関係、上場ということと認可主義、準則主義との関係などなど、いろいろな「連続性」に関わる問題があるような気もしますし、たいへん興味深いところです。そういったところを検討することが、そもそも会社法を理解することにつながるような気がいたします。
ぜひ、また勉強させていただこうかと思っておりますので、なにか参考となる書籍やウェブがございましたら、またご教示ください。

投稿: toshi | 2007年2月22日 (木) 17時31分

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