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2007年3月31日 (土)

新生銀行に排除命令(その3)

エディオンとビッグカメラの統合計画が白紙撤回された・・・というニュースもたいへん驚きましたが、やはりこのブログでしつこく採り上げてきました「新生銀行の広告問題」の続きをアップしておきたいと思います。(なお、「新生銀行の金融派生商品のチラシについて、いったい何が景表法違反として問題なのか?」といったところは、金融法務のご専門家でいらっしゃる行方先生のブログで詳細なご解説がございますので、そちらをご参照ください。しかし行方先生のブログは更新頻度が高いですね。。。)

前回のエントリー(新生銀行に排除命令2)におきまして、私は景表法違反(不当表示)と銀行法に基づく説明義務の関係について大いに悩んでおりました。

もし、チラシが一般顧客を誘引するための媒体であったとしましても、それで結果的にみて一般顧客が取引条件の有利さを誤認したとすれば、それはチラシによるというよりも、銀行の説明義務に重大な問題があったからではないのでしょうか。(前回のエントリーより)

今日(3月30日)に金融庁から、さっそく「広告表示を含めた顧客説明に係る取組について」と題するリリースがなされておりまして、仕組預金の顧客説明態勢に係る監督指針のなかで、デリバティブ商品を組み込んだ預金商品(つまり元本割れのおそれのある預金商品)を顧客に販売する際の説明のあり方が指導対象とされております。(「日経ニュースはこちらです)なお、仕組預金につきましては、金融商品取引法において「適合性の原則」や;「契約締結前の書面交付義務」「広告規制」などの法律上の義務が発生することになります。この金融庁によるリリースを読む限りにおきましては、金融庁は「チラシによる商品説明を含めた一連の説明義務」といった概念を念頭に置いているようにも思えますし、そうだとしますと、やはり金融庁としましては、このたびの新生銀行の景表法違反(公正取引委員会による排除命令)については省庁の立場をかなり意識しているのではないか、と推測されます。

前回のエントリーでは、私はチラシと口頭による説明をひっくるめて「表示」に該当するのではないか・・・といった発想を考えておりましたが、金融庁は逆にチラシによる表示を含めて「法律上の義務としての顧客説明」といった発想で監督指導していく、といった考え方のようであります。リスクを伴う預金については、金融商品取引法では「金融商品」の定義にあてはまります。したがいまして、たしかに銀行としても、このデリバティブ預金商品を販売するにあたっては法律上の書面交付義務が発生するわけですから、この書面とチラシを一体のものと捉えまして、不適切なチラシ頒布についても規制されるべき「説明義務」に取り込んでしまおう、との発想はなるほど・・・と思います。(私の考え方を前提としますと、事前の書面交付、といった概念が説明しきれないこととなってしまいそうですね。金融庁の発想のほうがスッキリしていると思われます)

これは曲解とご指摘を受けるところもあるかもしれませんが、やはり前回エントリーでも少し疑問を呈したところでありますが、とりわけ銀行の場合、この商品チラシと銀行の顧客説明態勢の規制を別々に議論することは、どうも「すわりがよくない」気がします。やるんだったら徹底的に(不当表示規制に関する専門家集団である)公正取引委員会の活動に任せるべきでしょうし、金融庁の監督があくまでも主たる立場であるならば、(監査役サポーターさんがご指摘のように、その法目的に若干の差があるとしましても)金融庁の監督規制のなかで「公正な金融機関の競争制限」も議論すべきではないか、と考えます。これは内部統制システムの構築場面にも通じることでありますが、一般顧客との接し方について、別々の省庁による別々の視点からの規制に対応することは、かなりしんどい作業でしょうし、非効率な管理を強いられる結果になると思います。できれば純粋な独禁法違反項目(たとえば優越的地位の濫用事例など)でもないかぎりは、金融庁による監督指針のなかで、こういった不当表示問題も議論されるほうが、現場の対応としてはスムーズではないでしょうか。ただし、仕組預金販売の誘引として行われるチラシ頒布につきましては、そのチラシが一般消費者の目にとまるものである以上は、たとえ適合性原則が存在しているといいましても、その説明のレベルは一般消費者の理解を前提とする必要はあると思いますし、そのあたりは金融庁における規制が優先すべきではないか・・・とも思われます。(なお、3月30日には、金融検査評定制度に関するQ&Aも金融庁よりリリースされています。とりわけ会社法上の内部統制システム構築を検討するにあたりましては、こういったQ&Aの中身は一般事業会社にも参考になるところが多いと思われます。もしご興味のある方は、参照されてみてはいかがでしょうか)

3月 31, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2007年3月30日 (金)

またまた、皆様にお知らせがございます。

いつも「ビジネス法務の部屋」をご覧いただき、ありがとうございます。管理人からのお知らせがございます。(早く「架空循環取引と内部統制の効用」の続きを書けよぉ!といったお声が聞こえてきそうでありますが、すんまへん・・・)

すでにココログの使い勝手の悪さにつきましては、このブログでも過去2回ほど問題視しておりますが、このたびは、どうも管理人に無断で「スパム防止機能」をコメントの設定に付されたようであります。数名の方から、メールもしくはお電話にて「コメントがつけられないが、なぜか?」とのお問い合わせがありましたが、これはココログを運営するニフティ社(このブログの運営会社です)のスパム防止に関する方針に基づくものでありまして、当管理人の方針によるものではございませんので、悪しからずご了承願います。(実は私がコメントを入れるときにもスパム防止画面が出てきまして、6桁の英数字を入力しないとお返事ができないようになっております。どうにもこうにも信じられないのですが・・・・・)

上記の件につきましては、まだニフティさんが「よかれ」と思って設定されたものと善意に解釈できるのでありますが、もうひとつちょっと気になることがございます。もう、ほとんどお気づきの方はいらっしゃらないと思いますが、このブログに無料版のアクセス解析ツールを設定いたしました。(トップページ左のたいへん長いカテゴリー欄のすぐ下に、小さく「ninja tools」と浮き上がっているものが、その広告であります。解析ツールと申しましても、皆様方の個人情報を云々しよう・・・といったものではございませんので、どうかご安心ください。)このところ、ココログのアクセス解析で検索をしてみますと、驚くほどにこのブログのアクセス数(PV)が減少しておりまして、(平日PVで4000→2500)「あれれ?もう私のブログは飽きられてしまったのかなぁ」と思っておりました。ただ、いただくコメントの数は以前よりも相当増えておりますし、「どうもおかしいな」と疑問も湧いてきましたので、試しに最も普及している(と思料されます)解析ツールを載せてみました。そして29日の午後11時から30日午前0時までの1時間につきまして、両方の解析ツールを比較してみましたところ、ココログ29、忍者95(いずれもPV)という結果となりました。試しに忍者(sinobi)のほうの検索ワードを調べたところ、私のブログに出てきそうなワードやフレーズがずらっと並んでおりましたので、やはり忍者の解析ほうが正しいようです。ココログは、「フリーの解析には障害が出ている」とはリリースしても「有料ブログのほうにも障害が出ている」とは少しも公表しておりません。しかし、メンテナンスブログのほうには、解析ツールがおかしいのではないか、との書き込みが多数寄せられており、また実際に、この結果をみましても明らかに障害が出ているはずです。こういったところは、私のようなITオンチでも、普通に入手できる解析ツールさえ使用すれば容易に判明するところですし、上場企業である以上は、もうすこし問題視されてしかるべき、と思うのでありますが(ほかの運営会社でも、こういったことは大なり小なり発生しているのでしょうかね?)、おそらくニフティ側の説明は「貴殿の使用されているサーバー付近のみになんらかの障害が発生している可能性が高い」と回答されるだけに終わってしまうような気がします。微妙な料金設定と、引越しの面倒さのうえにあぐらを書いて収益を上げているような気がするのは私だけでしょうか。。。

(3月30日 午後追記)現在午後2時40分ですが、昨夜とりつけました解析ツールによりますと、かなりアクセス数が上がっておりますので、やっぱりココログのほうがおかしいようです。少し安心しました。(^^;;ただ、私のブログは自分の興味のある「狭い」分野につきまして、社外監査役の視点からマニアックに考える、というのが本旨でございますので、たとえアクセスが激減しようと、閲覧していただける方がいらっしゃるかぎり、続けていこうと思っておりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。。。

(3月30日 夕刻 追記)きょうは、いろんなところでブログを誉めていただきました。お昼のIPO準備会でも、夕方の某記者さんからも・・・・

「いやいや、先生のブログ、周囲でみんな読んでますよ」

「そうですか。ありがとうございます。」(* ̄∇ ̄*)

「コメントがいいですよね、コメントが(笑)」  (o^^)o

 ( ̄△ ̄;)エッ・・?   ・・・・・・・・・・ ( ̄▽ ̄;)

「そ、そうですよね。コメントが・・・ね。」(^◇^ ;)

こんな話が二度も続きますと、なんだか複雑な気持ちになります。

いやいや、そんな他力本願のブログがあってもいいのかもしれません。とりあえず、25ヶ月目(3年目)に突入する私のブログでありますが、まぁ、こんな感じですので、これからも立派なコメント、しょぼっちいコメント、なんでも大歓迎ですよ。

3月 30, 2007 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年3月29日 (木)

新生銀行に排除命令(その2)

すでに「新生銀行に景表法違反で排除命令(その1)」のエントリーにて若干ご紹介しておりましたが、28日、新生銀行は、銀行としては初めて公正取引委員会より排除命令を発令されました。(日経ニュースはこちら また、公正取引委員会のHPでは処分概要と排除命令本文が掲載されております。本文のほうでは、実際に問題となりましたチラシの表面と裏面も参照できるようになっています)景表法違反ということでありますが、前回エントリーでの予想どおり、4条1項2号(取引条件の有利誤認)のほうでチラシの表示に景表法に抵触するところがある、といった判断のようであります。

銀行につきましては、不当表示に関する自主規制(銀行業の表示に関する公正競争規約、平成18年2月改訂なお、この規約は公正取引委員会による承認を得ておられるようです)もありますので、あえて排除命令に反論するようなこともないと思うのですが、やっぱり景表法は難解な法律のひとつであると思われますし、整理すべき論点がいくつかあるような気もいたします。まだ勉強不足のために、うまく表現できませんので備忘録としてあげてみますと、ひとつめは独禁法19条(不公正な取引方法の禁止)一般指定8項(ぎまん的顧客誘引の禁止)と、この景表法4条1項2号との関係であります。そして、もうひとつは銀行法12条(説明義務)と景表法との関係、あるいは適合性原則と景表法との関係であります。とりわけ後者のほうは、どうも私の頭では整理できずに悩んでおります。このチラシは他の商品ラインナップもあるにもかかわらず、この取引条件の金融派生商品がもっとも取引条件としては有利であると一般消費者に誤認させるおそれが著しく高い、といった判断において景表法違反に該当するものとされております。ただ、銀行で金融商品を購入する場合、銀行側は顧客の商品知識に応じて個別に理解可能な程度に商品説明をしなければならないわけですよね(適合性の原則)。たしかに、ニッセイのがん保険の表示が適切でなかった(つまり保険契約者が誤認するおそれが高い)として、2003年には保険商品について排除命令が出されている前例はありますが、高度の説明義務が銀行には課されているわけですから、チラシと一般顧客の誤認可能性との間に相当な因果関係というものが簡単に認められるかどうかは微妙ではないでしょうかね。もし、チラシが一般顧客を誘引するための媒体であったとしましても、それで結果的にみて一般顧客が取引条件の有利さを誤認したとすれば、それはチラシによるというよりも、銀行の説明義務に重大な問題があったからではないのでしょうか。たとえばネット上で金融商品を購入する、といった取引形態であれば、このようなチラシ広告だけを取り上げて「不当表示」と認定することも可能かとは思うのですが、この事例でもそうでありますが、店頭にチラシが置かれていて、そのチラシをみた一般の顧客の方々は、チラシに誘引されて店頭で商品の説明を受ける・・・といった流れになると思われます。ここで「誤認」ということがいちおう問題になろうかと思いますが、おそらく購買の意思決定を動機付ける情報の錯誤を指すものと解されますので、この錯誤の要因はどこにあるかといいますと、チラシだけでなく、説明のまずさにあるのではないかと思われます。

また、「表示」というものがどんなものを指すか、といいますと、「見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものも含む)および口頭による広告その他の表示(電話によるものも含む)」(昭和37年6月30日公取委告示3号 平成10年12月改正 定義告示2項2号)とあります。ちょっとビックリしたんですが、口頭による説明というのも景表法における「不当表示」に該当する場合があるわけですね。そうしますと、銀行法によって厳しい説明義務(顧客保護管理態勢)が課されている銀行業界におきましては、チラシと口頭による説明を一体と捉えて「表示」に該当するものと考えてみるのが実態に合致しているようにも思われます。(このあたりは、どうなんでしょうか。チラシにつられて、ホイホイと金融デリバティブ商品が買われてしまう、といった実態はありうるんでしょうか。うーーん、少なくとも細かい文字の保険商品の契約書を渡されて、あっという間に保険契約を締結するのとは、すこし事情が異なるような気がいたしますが)この景表法による規制といいますのは、けっこう他の特別法と(目的は異なりますが)規制の面では競合する場合がありまして、特別法による規制が優先適用される場合もあるようです。この景表法を、銀行法によって厚く規制が敷かれている銀行業界に真正面から適用していくことについて、銀行側からの反発というものはないのでしょうか。(先の公正競争規約の条文を眺めてみましても、このあたりはやはりあいまいな条項になっておりまして、よく理解できませんでした)自分では、あまり適当なことを書いているつもりはなく、けっこう真剣に悩んでおりましたので、またご専門の方いらっしゃいましたら、いろいろと教えてくださいませ。

3月 29, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (6) | トラックバック (2)

2007年3月28日 (水)

ノーリツに対する株主提案権行使(その2)

本当は「架空循環取引と内部統制の効用」の続編を記述しようと思っておりましたが、どうしても時期的に、この話題に触れざるを得ないと思いまして、ノーリツに対する株主提案権行使の続編をアップさせていただきました。3月29日といえば、サッポロHDの株主総会において買収防衛策が否決されるかどうかが注目を集めております。ですから、いろいろなブログでもそちらのほうは話題になっているものと思われますが、私の場合は、前回のエントリーにも書かせていただきましたが、3月29日の(給湯器大手の)ノーリツの配当政策が争点とされている株主総会(神戸市)に(やっぱり)注目しております。フルサ・オルタナティブ・ストラテジーズが、前年度28円だった年間配当を、一気に300円に引き上げるよう要求し、またたとえ配当をしないとしても、320億円あまりの別途積立金を、繰越利益剰余金に振り替えることを要求しているものでありまして、こういった提案について、30%以上を保有する外国人株主(スティールパートナーズを含む)が賛同されるのか、されないのか・・・といったところに関心があります。また、前回記事でもすこし触れましたが、この総会では事前警告型の買収防衛策に関する株主承認議案も上程されておりまして、一般の株主にとりましては、双方の議案につき、どのように議決権を行使するのか、そしてその理由はなぜなのか、そのあたりも注目されるところではないでしょうか。(あまりこの話題をご存じない方は、こちらのロイター記事や、こちらの神戸新聞ニュースが参考になります。また配当政策が株価に及ぼす影響など、こちらのニッセイ基礎研究所のレポートなどが参考になるのではないか、と思います。)フルサ側のアドバイザーには証券取引法に詳しい某事務所が就いておられますし、また、ノーリツ側も、企業価値論に精通された著名な学者の方々が支援しておられますので、株主総会ではどういった論戦が繰りひろげられるのか、興味深いところです。(でも、報道されなければ、ちょっと中身まではわかりませんが・・・・そういえば、以前、神戸新聞の経済部の記者さん方とは、何度かお話させていただいたので、今回はいろいろと教えてもらえないでしょうかね・・・(^^;)。。ブログ見ていただいてたらうれしいんですけど・・・・・)

※ ところで、私事になりますが、本日(3月27日)、私の所属いたします弁護士団体の定時総会が無事終わりまして、これで1年間の役員生活も終焉を迎えることとなりました。(いちおう3月末まで、ではありますが。いやいや、自分なりには、よく頑張ったと思います。)深夜、打ち上げを終えてのブログ更新ということも多く、私的には納得のいかないエントリーしか書けないことが多かったのでありますが、今後はもう少し「まとも」なエントリーを書ける時間もとれそうであります。更新頻度よりも、納得いくエントリー、納得のいくコメントを書くことを心がけて参りますので、また大阪から発信するマニアックなブログにおつきあいくださいますよう、よろしくお願いいたします。

3月 28, 2007 ノーリツに対する株主提案権行使 | | コメント (5) | トラックバック (2)

2007年3月27日 (火)

架空循環取引と内部統制の効用

またまた株式会社加ト吉のリスクマネジメントに関する話題であります。かなりマニアックな内容ですので、ご興味のある方だけ閲覧いただければ幸いです。加ト吉社のHPのリリースにおきましては、「現在架空循環取引に当社が関与していたのかどうかは、第三者を交えての調査委員会による調査中であり、後日結果を公表します。それまで冷静に対応してください」とのことです。よって、以下のお話はあくまでも、推定に基づくものであることをご理解ください。また、加ト吉社を誹謗中傷することが目的ではなく、あくまでも上場企業におけるクライシスマネジメント(もしくはリスクマネジメント)に関する冷静かつ客観的な分析を目的としたものであること、ご理解ください。(なお、エントリーを書いているときに、取引に関与していた大阪の中堅商社幹部および代理人弁護士が「循環取引はあった」と取材で明らかにされた、とのニュースがありました。読売新聞ニュース

さて、以下のコーポレート・ガバナンスは、現在架空循環取引に関与していたことが問題とされておりますK社の組織図であります。(K社の東証コーポレート・ガバナンス報告書の内容から、私自身が作成したものであります。ただし概略図でありまして、詳細なところは省略しております。)このK社の組織図の特徴としましては、一見してきわめて内部統制システムの整備について意識されているものだなぁといった印象を持ちます。執行部門を統括して「内部統制委員会」が存在しますし、独立部門としての内部通報制度に「コンプライアンス委員会」が存在しますし、またさらに内部統制監査室もあり、内部統制委員会の統制活動をモニタリングしています。(ほかにも危機管理委員会もありますね)関連会社の内部統制を掌握するためでしょうか、「関連会社内部統制連絡協議会」も発足しているようです。取締役は12名(うち、1名が社外取締役)、社外監査役は3名(常勤1名の合計4名、なお社外監査役3名はいずれも税理士資格をお持ちの方)といった役員構成です。おそらく、昨年5月の会社法上の内部統制システムの基本方針の決議にしたがって、下図のようなガバナンスが策定されたものだと思われます。かなり上場企業のなかでも、レベルの高いものに属するのではないでしょうか。

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さて、こういった組織を持ちながら、果たして架空循環取引を未然に(つまり、「取引関与会社の倒産」といった引き金が引かれる前に)防止することはできなかったのでしょうか。報道内容からみて判断することは、ある意味でバイアスがかかった状態で判断することになりますので、リスクアプローチとして検討していかなければならないと思います。

まず上場企業として、こういった循環架空取引のリスクを一般的に管理しなければならないのかどうか、ということでありますが、おそらく定量的かつ定性的に企業の損害もしくは損失に影響を及ぼすほどの重要性ある取引に該当するかどうか、ということにつきるのではないでしょうか。架空循環取引は、主にその企業における「営業上の取引」に生じるものであること、過去の売上、利益額を大幅に修正しなければならないほどの大きな金額に至る可能性があること、そして架空循環取引に関与していたことによるレピュテーションリスクの大きさなどからみて、近時はこういった取引に関与していたことが明るみとなりますと、かなり大きなダメージを受けることとなりますので、この重要性といったところは否定できないのではないかと思われます。さらに、これは特別の業種に固有のリスクであって、どこの企業においても起こりうる・・・といった問題かどうか、という点も検討しておく必要がありそうです。この点につきましては、ここ数年の実例をみますと、経営層によるもの、一般社員によるものも含めますと、こういった架空循環取引は広範な業態において起こりうる「不正」でありますし、またそもそも最初から架空循環取引を行うことだけを目的とした取引ではなく、中間介在取引(信用貸し取引)が派生したものや、混在したものなども多くみられることから、(つまり、ろじゃあさんが指摘されているように、手形取引や、債権を担保として利用する取引などが頻繁に行われるところにおいては、こういった取引が自然に発生する可能性がある)多くの業種におきましても、架空循環取引が発生するリスクというのは否定できないのではないか、と考えております。そうしますと、こういった取引発生の危険性というものは、不正会計の温床になるものとしてどこの上場企業でも、とりあえずは重大なリスクへの対処方法として、内部統制へ依拠すべきかどうか、検討する必要が出てくるものと思われます。(ということで、具体的な架空循環取引を未然に防止する、あるいは最小限度のリスクで回避するための内部統制の仕組みに関する検討は続編に書かせていただきます。また、こういった問題にご関心がございましたら、またご批判、ご意見、ご感想など、どうかよろしくお願いいたします。本当にマニアックな話題で恐縮です・・・・・)

3月 27, 2007 架空循環取引 | | コメント (18) | トラックバック (3)

2007年3月26日 (月)

加ト吉社のリスクマネジメント

3月23日の加ト吉による特損リリース、そして24日の読売新聞の疑惑報道を中心にして、架空循環取引への関与が報道されておりました東証一部上場の加ト吉社でありますが、ついに役員関与に関する報道がなされるに至っております。(読売関西版はこちら

25日の常務の会見と社長インタビューとの発言内容のズレや、いくつかのブログで指摘されておりましたように、こういった循環取引につきましては、およそ全決裁に関与できる立場(つまり役員クラス)の方でないと(永年にわたる)隠蔽は困難と思われますので、(まだ滅多なことは申し上げられませんが)経営幹部の方の関与の疑いがあってもおかしくないはずであります。みずほ銀行(といいますか、みずほ銀行関連のSPC)が40億円の与信枠を中堅商社に付与していたわけでありますから、この中堅商社と加ト吉社との年間取引が200億円(中堅商社の加ト吉社への売掛債権をSPCが40億円の範囲で買取り、あとでSPCが加ト吉と現金決済)を超えていた、との証言のほうが正しいように思えますし(そもそも大手都銀が基礎となる契約書を精査していない、といったことは考えられないでしょうし)、「せいぜい年間十数億円と理解している」(経営幹部)ということであれば、おそらくSPCへのこれまでの現金決裁との整合性はどう考えてもでてこないと思われます。信用ある上場企業の「架空循環取引」における立ち位置の問題、一般投資家への情報開示のあり方、監査法人の指摘と企業の対応、外部調査委員会の報告内容などなど、今後の加ト吉社の対応につきましては、上場企業のリスクマネジメントのあり方として注目されるところであります。

そういえば、ちょうど1年ほど前に、NECE(NECエンジニアリング社)の社員が架空循環取引に関与した事例がありましたが、そこに今後同様の不正が社内で発生しないよう、4つの内部統制システム構築に関する社内決議がリリースされておりました。おそらく一般社員による循環取引関与は、そういった内部統制システムの整備によってリスクを低減することが可能だと思われますが、発注、納品、在庫管理、受注、請求と、一連のIT統制があたりまえの時代になりましても、(どんなに相互牽制作用を効かせても、それぞれの手続の適正性は確保されるかもしれませんが、一連の手続すべての評価はできませんので)一連の手続全般が見渡せる立場にある役員による内部統制の無視については内部統制の整備は無力のような気がいたします。(なお、循環取引と集合債権譲渡担保等SPCの利用との関係につきましては、TBいただいております ろじゃあさん のブログが詳しいです)

3月 26, 2007 架空循環取引 | | コメント (9) | トラックバック (2)

2007年3月25日 (日)

新生銀行に排除命令(景表法違反)

(3月25日午後 追記あります)

金融商品に関するチラシが不当表示に該当するとして、新生銀行が公正取引委員会より排除命令を受けるようであります。(チラシの表示や、金融商品の説明など、朝日新聞ニュースが詳しいようです)銀行としては初めて、とのこと。すでにこのチラシは使用されていないようですが、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)6条1項におきまして、たとえ違反状態が解消されていても、排除命令を発令することはできることになっております。

(排除命令)第6条 公正取引委員会は、第3条の規定による制限若しくは禁止又は第4条第1項の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令(以下「排除命令」という。)は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、することができる。

「貯蓄から投資へ」といった流れのなかで、金融商品取引法の成立施行は、「ホップ・ステップ・ジャンプ」のうち、未だ「ステップ」の段階と言われておりまして、保険、銀行を含めて広く横断的な規制が確立する「金融サービス法」成立が最終的な目標(いわゆる「ジャンプ」)とされております。そこで金融機関全般の監督監視機能といえば、そもそも金融庁及び証券取引等監視委員会が担っているわけでありますが、金融商品の取扱に関する垣根が取り除かれるにしたがって、金融機関も競争によるサバイバルの様相を呈してきております。「仁義なき顧客獲得競争」におきましては、こういった「不公正な取引方法」に対する公取委の厳しい対応が今後も予想されるところでありますので、金融機関内におけるコンプライアンス・オフィサー(またはコンプライアンス委員会)の役割もこれまで以上に重要になってくるのかもしれません。

ところで、私もあまり独禁法関連は詳しくないのでありますが、この新聞報道を読んだだけで、「いったい何が不当表示なのか」、私はよく理解できておりません。(もちろん、排除命令が出されれば、公取委のHPで確認できるわけではありますが)定期預金契約を希望する一般消費者が、もっともリスクの高い商品を選択した場合の利率だけをチラシ中央に大きく掲示した行為が問題になっているわけでありますが、この利率の表示の何が不当表示に該当するのでしょうか。具体的には元本割れの危険性があるにもかかわらず、一般消費者に対してリスクがないもののように誤信させたことが問題なのか、他の利率の商品構成があるにもかかわらず、もっとも利率の高いものだけを掲示したことが問題となっているのか、それとも、そのいずれも不当表示に該当する、というものなのでしょうか。景表法4条の要件から検討するに、他社の定期預金との比較において、自社の商品が優れているように一般消費者を誤信させていると考えますと前者が不当表示に該当するように思いますし、他者の同種金融派生商品との関係で、自社の商品が優れていることを誤信させている、と考えますと後者の点が不当表示に該当するようにも考えられます。(私的には後者なのかなぁ・・・と思ったりしておりますが)

昨日の、ある証券会社の引受審査が不適切であった事例や、本日報道されておりました日本テレビ「行列のできる法律相談所」での著作権侵害事例など、なかなか経営陣トップが現場での対応をいちいちチェックできるわけでもないと思っておりますので、やはりコンプライアンス関連の部署が重要な役割を担う時代がもうすぐ(事業会社にも、また金融機関にも)到来するのでは・・・と考えております。

(3月25日 午後追記)

金融法務事情などでお馴染みの行方先生のブログ(コンプライアンス、内部統制etc)におきまして、この不当表示に関する詳細なエントリーがございます。(私のエントリーよりもかなり正確な記述がなされております)また、本エントリーにコメントをつけておられる経営コンサルタントさんのコメントには、どういった場合にどれだけのリスクがあるのか、詳細に記述していただいております(どうも、ありがとうございます)ので、そちらをご参照ください。なお、この景表法の不当表示問題は、あくまでも経済法たる独占禁止法的な発想に由来するものと(私は)理解しております。つまり、不当表示が規制の対象となるのは、商品の持つ本来の品質よりも、「もっと優れている」と消費者に誤解させたり、他社の同種商品よりも「もっと取引条件がいい」と誤解させたりすることによって、不当に競争を優位に進めようとすることが経済競争にとって好ましくないところであります。そう考えますと、たとえば銀行などに、この景表法を適用しようとする場合、説明義務との関係などが問題になってくるのではないでしょうか。(つまり契約法としての性質を持つ金融商品販売法や行政取締法としての性質を持つ銀行法12条と景表法の関係など。)説明義務違反の問題と、景表法の問題を混同してしまわないように、この両社をどこかできちんと区別して検討する必要があると思いますがいかがでしょうか。(そのあたり、また別の機会に議論したいと思います)

3月 25, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2007年3月22日 (木)