« 2007年2月 | トップページ | 2007年4月 »

2007年3月31日 (土)

新生銀行に排除命令(その3)

エディオンとビッグカメラの統合計画が白紙撤回された・・・というニュースもたいへん驚きましたが、やはりこのブログでしつこく採り上げてきました「新生銀行の広告問題」の続きをアップしておきたいと思います。(なお、「新生銀行の金融派生商品のチラシについて、いったい何が景表法違反として問題なのか?」といったところは、金融法務のご専門家でいらっしゃる行方先生のブログで詳細なご解説がございますので、そちらをご参照ください。しかし行方先生のブログは更新頻度が高いですね。。。)

前回のエントリー(新生銀行に排除命令2)におきまして、私は景表法違反(不当表示)と銀行法に基づく説明義務の関係について大いに悩んでおりました。

もし、チラシが一般顧客を誘引するための媒体であったとしましても、それで結果的にみて一般顧客が取引条件の有利さを誤認したとすれば、それはチラシによるというよりも、銀行の説明義務に重大な問題があったからではないのでしょうか。(前回のエントリーより)

今日(3月30日)に金融庁から、さっそく「広告表示を含めた顧客説明に係る取組について」と題するリリースがなされておりまして、仕組預金の顧客説明態勢に係る監督指針のなかで、デリバティブ商品を組み込んだ預金商品(つまり元本割れのおそれのある預金商品)を顧客に販売する際の説明のあり方が指導対象とされております。(「日経ニュースはこちらです)なお、仕組預金につきましては、金融商品取引法において「適合性の原則」や;「契約締結前の書面交付義務」「広告規制」などの法律上の義務が発生することになります。この金融庁によるリリースを読む限りにおきましては、金融庁は「チラシによる商品説明を含めた一連の説明義務」といった概念を念頭に置いているようにも思えますし、そうだとしますと、やはり金融庁としましては、このたびの新生銀行の景表法違反(公正取引委員会による排除命令)については省庁の立場をかなり意識しているのではないか、と推測されます。

前回のエントリーでは、私はチラシと口頭による説明をひっくるめて「表示」に該当するのではないか・・・といった発想を考えておりましたが、金融庁は逆にチラシによる表示を含めて「法律上の義務としての顧客説明」といった発想で監督指導していく、といった考え方のようであります。リスクを伴う預金については、金融商品取引法では「金融商品」の定義にあてはまります。したがいまして、たしかに銀行としても、このデリバティブ預金商品を販売するにあたっては法律上の書面交付義務が発生するわけですから、この書面とチラシを一体のものと捉えまして、不適切なチラシ頒布についても規制されるべき「説明義務」に取り込んでしまおう、との発想はなるほど・・・と思います。(私の考え方を前提としますと、事前の書面交付、といった概念が説明しきれないこととなってしまいそうですね。金融庁の発想のほうがスッキリしていると思われます)

これは曲解とご指摘を受けるところもあるかもしれませんが、やはり前回エントリーでも少し疑問を呈したところでありますが、とりわけ銀行の場合、この商品チラシと銀行の顧客説明態勢の規制を別々に議論することは、どうも「すわりがよくない」気がします。やるんだったら徹底的に(不当表示規制に関する専門家集団である)公正取引委員会の活動に任せるべきでしょうし、金融庁の監督があくまでも主たる立場であるならば、(監査役サポーターさんがご指摘のように、その法目的に若干の差があるとしましても)金融庁の監督規制のなかで「公正な金融機関の競争制限」も議論すべきではないか、と考えます。これは内部統制システムの構築場面にも通じることでありますが、一般顧客との接し方について、別々の省庁による別々の視点からの規制に対応することは、かなりしんどい作業でしょうし、非効率な管理を強いられる結果になると思います。できれば純粋な独禁法違反項目(たとえば優越的地位の濫用事例など)でもないかぎりは、金融庁による監督指針のなかで、こういった不当表示問題も議論されるほうが、現場の対応としてはスムーズではないでしょうか。ただし、仕組預金販売の誘引として行われるチラシ頒布につきましては、そのチラシが一般消費者の目にとまるものである以上は、たとえ適合性原則が存在しているといいましても、その説明のレベルは一般消費者の理解を前提とする必要はあると思いますし、そのあたりは金融庁における規制が優先すべきではないか・・・とも思われます。(なお、3月30日には、金融検査評定制度に関するQ&Aも金融庁よりリリースされています。とりわけ会社法上の内部統制システム構築を検討するにあたりましては、こういったQ&Aの中身は一般事業会社にも参考になるところが多いと思われます。もしご興味のある方は、参照されてみてはいかがでしょうか)

3月 31, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2007年3月30日 (金)

またまた、皆様にお知らせがございます。

いつも「ビジネス法務の部屋」をご覧いただき、ありがとうございます。管理人からのお知らせがございます。(早く「架空循環取引と内部統制の効用」の続きを書けよぉ!といったお声が聞こえてきそうでありますが、すんまへん・・・)

すでにココログの使い勝手の悪さにつきましては、このブログでも過去2回ほど問題視しておりますが、このたびは、どうも管理人に無断で「スパム防止機能」をコメントの設定に付されたようであります。数名の方から、メールもしくはお電話にて「コメントがつけられないが、なぜか?」とのお問い合わせがありましたが、これはココログを運営するニフティ社(このブログの運営会社です)のスパム防止に関する方針に基づくものでありまして、当管理人の方針によるものではございませんので、悪しからずご了承願います。(実は私がコメントを入れるときにもスパム防止画面が出てきまして、6桁の英数字を入力しないとお返事ができないようになっております。どうにもこうにも信じられないのですが・・・・・)

上記の件につきましては、まだニフティさんが「よかれ」と思って設定されたものと善意に解釈できるのでありますが、もうひとつちょっと気になることがございます。もう、ほとんどお気づきの方はいらっしゃらないと思いますが、このブログに無料版のアクセス解析ツールを設定いたしました。(トップページ左のたいへん長いカテゴリー欄のすぐ下に、小さく「ninja tools」と浮き上がっているものが、その広告であります。解析ツールと申しましても、皆様方の個人情報を云々しよう・・・といったものではございませんので、どうかご安心ください。)このところ、ココログのアクセス解析で検索をしてみますと、驚くほどにこのブログのアクセス数(PV)が減少しておりまして、(平日PVで4000→2500)「あれれ?もう私のブログは飽きられてしまったのかなぁ」と思っておりました。ただ、いただくコメントの数は以前よりも相当増えておりますし、「どうもおかしいな」と疑問も湧いてきましたので、試しに最も普及している(と思料されます)解析ツールを載せてみました。そして29日の午後11時から30日午前0時までの1時間につきまして、両方の解析ツールを比較してみましたところ、ココログ29、忍者95(いずれもPV)という結果となりました。試しに忍者(sinobi)のほうの検索ワードを調べたところ、私のブログに出てきそうなワードやフレーズがずらっと並んでおりましたので、やはり忍者の解析ほうが正しいようです。ココログは、「フリーの解析には障害が出ている」とはリリースしても「有料ブログのほうにも障害が出ている」とは少しも公表しておりません。しかし、メンテナンスブログのほうには、解析ツールがおかしいのではないか、との書き込みが多数寄せられており、また実際に、この結果をみましても明らかに障害が出ているはずです。こういったところは、私のようなITオンチでも、普通に入手できる解析ツールさえ使用すれば容易に判明するところですし、上場企業である以上は、もうすこし問題視されてしかるべき、と思うのでありますが(ほかの運営会社でも、こういったことは大なり小なり発生しているのでしょうかね?)、おそらくニフティ側の説明は「貴殿の使用されているサーバー付近のみになんらかの障害が発生している可能性が高い」と回答されるだけに終わってしまうような気がします。微妙な料金設定と、引越しの面倒さのうえにあぐらを書いて収益を上げているような気がするのは私だけでしょうか。。。

(3月30日 午後追記)現在午後2時40分ですが、昨夜とりつけました解析ツールによりますと、かなりアクセス数が上がっておりますので、やっぱりココログのほうがおかしいようです。少し安心しました。(^^;;ただ、私のブログは自分の興味のある「狭い」分野につきまして、社外監査役の視点からマニアックに考える、というのが本旨でございますので、たとえアクセスが激減しようと、閲覧していただける方がいらっしゃるかぎり、続けていこうと思っておりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。。。

(3月30日 夕刻 追記)きょうは、いろんなところでブログを誉めていただきました。お昼のIPO準備会でも、夕方の某記者さんからも・・・・

「いやいや、先生のブログ、周囲でみんな読んでますよ」

「そうですか。ありがとうございます。」(* ̄∇ ̄*)

「コメントがいいですよね、コメントが(笑)」  (o^^)o

 ( ̄△ ̄;)エッ・・?   ・・・・・・・・・・ ( ̄▽ ̄;)

「そ、そうですよね。コメントが・・・ね。」(^◇^ ;)

こんな話が二度も続きますと、なんだか複雑な気持ちになります。

いやいや、そんな他力本願のブログがあってもいいのかもしれません。とりあえず、25ヶ月目(3年目)に突入する私のブログでありますが、まぁ、こんな感じですので、これからも立派なコメント、しょぼっちいコメント、なんでも大歓迎ですよ。

3月 30, 2007 未完成にひとしいエントリー記事 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年3月29日 (木)

新生銀行に排除命令(その2)

すでに「新生銀行に景表法違反で排除命令(その1)」のエントリーにて若干ご紹介しておりましたが、28日、新生銀行は、銀行としては初めて公正取引委員会より排除命令を発令されました。(日経ニュースはこちら また、公正取引委員会のHPでは処分概要と排除命令本文が掲載されております。本文のほうでは、実際に問題となりましたチラシの表面と裏面も参照できるようになっています)景表法違反ということでありますが、前回エントリーでの予想どおり、4条1項2号(取引条件の有利誤認)のほうでチラシの表示に景表法に抵触するところがある、といった判断のようであります。

銀行につきましては、不当表示に関する自主規制(銀行業の表示に関する公正競争規約、平成18年2月改訂なお、この規約は公正取引委員会による承認を得ておられるようです)もありますので、あえて排除命令に反論するようなこともないと思うのですが、やっぱり景表法は難解な法律のひとつであると思われますし、整理すべき論点がいくつかあるような気もいたします。まだ勉強不足のために、うまく表現できませんので備忘録としてあげてみますと、ひとつめは独禁法19条(不公正な取引方法の禁止)一般指定8項(ぎまん的顧客誘引の禁止)と、この景表法4条1項2号との関係であります。そして、もうひとつは銀行法12条(説明義務)と景表法との関係、あるいは適合性原則と景表法との関係であります。とりわけ後者のほうは、どうも私の頭では整理できずに悩んでおります。このチラシは他の商品ラインナップもあるにもかかわらず、この取引条件の金融派生商品がもっとも取引条件としては有利であると一般消費者に誤認させるおそれが著しく高い、といった判断において景表法違反に該当するものとされております。ただ、銀行で金融商品を購入する場合、銀行側は顧客の商品知識に応じて個別に理解可能な程度に商品説明をしなければならないわけですよね(適合性の原則)。たしかに、ニッセイのがん保険の表示が適切でなかった(つまり保険契約者が誤認するおそれが高い)として、2003年には保険商品について排除命令が出されている前例はありますが、高度の説明義務が銀行には課されているわけですから、チラシと一般顧客の誤認可能性との間に相当な因果関係というものが簡単に認められるかどうかは微妙ではないでしょうかね。もし、チラシが一般顧客を誘引するための媒体であったとしましても、それで結果的にみて一般顧客が取引条件の有利さを誤認したとすれば、それはチラシによるというよりも、銀行の説明義務に重大な問題があったからではないのでしょうか。たとえばネット上で金融商品を購入する、といった取引形態であれば、このようなチラシ広告だけを取り上げて「不当表示」と認定することも可能かとは思うのですが、この事例でもそうでありますが、店頭にチラシが置かれていて、そのチラシをみた一般の顧客の方々は、チラシに誘引されて店頭で商品の説明を受ける・・・といった流れになると思われます。ここで「誤認」ということがいちおう問題になろうかと思いますが、おそらく購買の意思決定を動機付ける情報の錯誤を指すものと解されますので、この錯誤の要因はどこにあるかといいますと、チラシだけでなく、説明のまずさにあるのではないかと思われます。

また、「表示」というものがどんなものを指すか、といいますと、「見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似する物による広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものも含む)および口頭による広告その他の表示(電話によるものも含む)」(昭和37年6月30日公取委告示3号 平成10年12月改正 定義告示2項2号)とあります。ちょっとビックリしたんですが、口頭による説明というのも景表法における「不当表示」に該当する場合があるわけですね。そうしますと、銀行法によって厳しい説明義務(顧客保護管理態勢)が課されている銀行業界におきましては、チラシと口頭による説明を一体と捉えて「表示」に該当するものと考えてみるのが実態に合致しているようにも思われます。(このあたりは、どうなんでしょうか。チラシにつられて、ホイホイと金融デリバティブ商品が買われてしまう、といった実態はありうるんでしょうか。うーーん、少なくとも細かい文字の保険商品の契約書を渡されて、あっという間に保険契約を締結するのとは、すこし事情が異なるような気がいたしますが)この景表法による規制といいますのは、けっこう他の特別法と(目的は異なりますが)規制の面では競合する場合がありまして、特別法による規制が優先適用される場合もあるようです。この景表法を、銀行法によって厚く規制が敷かれている銀行業界に真正面から適用していくことについて、銀行側からの反発というものはないのでしょうか。(先の公正競争規約の条文を眺めてみましても、このあたりはやはりあいまいな条項になっておりまして、よく理解できませんでした)自分では、あまり適当なことを書いているつもりはなく、けっこう真剣に悩んでおりましたので、またご専門の方いらっしゃいましたら、いろいろと教えてくださいませ。

3月 29, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (6) | トラックバック (2)

2007年3月28日 (水)

ノーリツに対する株主提案権行使(その2)

本当は「架空循環取引と内部統制の効用」の続編を記述しようと思っておりましたが、どうしても時期的に、この話題に触れざるを得ないと思いまして、ノーリツに対する株主提案権行使の続編をアップさせていただきました。3月29日といえば、サッポロHDの株主総会において買収防衛策が否決されるかどうかが注目を集めております。ですから、いろいろなブログでもそちらのほうは話題になっているものと思われますが、私の場合は、前回のエントリーにも書かせていただきましたが、3月29日の(給湯器大手の)ノーリツの配当政策が争点とされている株主総会(神戸市)に(やっぱり)注目しております。フルサ・オルタナティブ・ストラテジーズが、前年度28円だった年間配当を、一気に300円に引き上げるよう要求し、またたとえ配当をしないとしても、320億円あまりの別途積立金を、繰越利益剰余金に振り替えることを要求しているものでありまして、こういった提案について、30%以上を保有する外国人株主(スティールパートナーズを含む)が賛同されるのか、されないのか・・・といったところに関心があります。また、前回記事でもすこし触れましたが、この総会では事前警告型の買収防衛策に関する株主承認議案も上程されておりまして、一般の株主にとりましては、双方の議案につき、どのように議決権を行使するのか、そしてその理由はなぜなのか、そのあたりも注目されるところではないでしょうか。(あまりこの話題をご存じない方は、こちらのロイター記事や、こちらの神戸新聞ニュースが参考になります。また配当政策が株価に及ぼす影響など、こちらのニッセイ基礎研究所のレポートなどが参考になるのではないか、と思います。)フルサ側のアドバイザーには証券取引法に詳しい某事務所が就いておられますし、また、ノーリツ側も、企業価値論に精通された著名な学者の方々が支援しておられますので、株主総会ではどういった論戦が繰りひろげられるのか、興味深いところです。(でも、報道されなければ、ちょっと中身まではわかりませんが・・・・そういえば、以前、神戸新聞の経済部の記者さん方とは、何度かお話させていただいたので、今回はいろいろと教えてもらえないでしょうかね・・・(^^;)。。ブログ見ていただいてたらうれしいんですけど・・・・・)

※ ところで、私事になりますが、本日(3月27日)、私の所属いたします弁護士団体の定時総会が無事終わりまして、これで1年間の役員生活も終焉を迎えることとなりました。(いちおう3月末まで、ではありますが。いやいや、自分なりには、よく頑張ったと思います。)深夜、打ち上げを終えてのブログ更新ということも多く、私的には納得のいかないエントリーしか書けないことが多かったのでありますが、今後はもう少し「まとも」なエントリーを書ける時間もとれそうであります。更新頻度よりも、納得いくエントリー、納得のいくコメントを書くことを心がけて参りますので、また大阪から発信するマニアックなブログにおつきあいくださいますよう、よろしくお願いいたします。

3月 28, 2007 ノーリツに対する株主提案権行使 | | コメント (5) | トラックバック (2)

2007年3月27日 (火)

架空循環取引と内部統制の効用

またまた株式会社加ト吉のリスクマネジメントに関する話題であります。かなりマニアックな内容ですので、ご興味のある方だけ閲覧いただければ幸いです。加ト吉社のHPのリリースにおきましては、「現在架空循環取引に当社が関与していたのかどうかは、第三者を交えての調査委員会による調査中であり、後日結果を公表します。それまで冷静に対応してください」とのことです。よって、以下のお話はあくまでも、推定に基づくものであることをご理解ください。また、加ト吉社を誹謗中傷することが目的ではなく、あくまでも上場企業におけるクライシスマネジメント(もしくはリスクマネジメント)に関する冷静かつ客観的な分析を目的としたものであること、ご理解ください。(なお、エントリーを書いているときに、取引に関与していた大阪の中堅商社幹部および代理人弁護士が「循環取引はあった」と取材で明らかにされた、とのニュースがありました。読売新聞ニュース

さて、以下のコーポレート・ガバナンスは、現在架空循環取引に関与していたことが問題とされておりますK社の組織図であります。(K社の東証コーポレート・ガバナンス報告書の内容から、私自身が作成したものであります。ただし概略図でありまして、詳細なところは省略しております。)このK社の組織図の特徴としましては、一見してきわめて内部統制システムの整備について意識されているものだなぁといった印象を持ちます。執行部門を統括して「内部統制委員会」が存在しますし、独立部門としての内部通報制度に「コンプライアンス委員会」が存在しますし、またさらに内部統制監査室もあり、内部統制委員会の統制活動をモニタリングしています。(ほかにも危機管理委員会もありますね)関連会社の内部統制を掌握するためでしょうか、「関連会社内部統制連絡協議会」も発足しているようです。取締役は12名(うち、1名が社外取締役)、社外監査役は3名(常勤1名の合計4名、なお社外監査役3名はいずれも税理士資格をお持ちの方)といった役員構成です。おそらく、昨年5月の会社法上の内部統制システムの基本方針の決議にしたがって、下図のようなガバナンスが策定されたものだと思われます。かなり上場企業のなかでも、レベルの高いものに属するのではないでしょうか。

Katokichi001

さて、こういった組織を持ちながら、果たして架空循環取引を未然に(つまり、「取引関与会社の倒産」といった引き金が引かれる前に)防止することはできなかったのでしょうか。報道内容からみて判断することは、ある意味でバイアスがかかった状態で判断することになりますので、リスクアプローチとして検討していかなければならないと思います。

まず上場企業として、こういった循環架空取引のリスクを一般的に管理しなければならないのかどうか、ということでありますが、おそらく定量的かつ定性的に企業の損害もしくは損失に影響を及ぼすほどの重要性ある取引に該当するかどうか、ということにつきるのではないでしょうか。架空循環取引は、主にその企業における「営業上の取引」に生じるものであること、過去の売上、利益額を大幅に修正しなければならないほどの大きな金額に至る可能性があること、そして架空循環取引に関与していたことによるレピュテーションリスクの大きさなどからみて、近時はこういった取引に関与していたことが明るみとなりますと、かなり大きなダメージを受けることとなりますので、この重要性といったところは否定できないのではないかと思われます。さらに、これは特別の業種に固有のリスクであって、どこの企業においても起こりうる・・・といった問題かどうか、という点も検討しておく必要がありそうです。この点につきましては、ここ数年の実例をみますと、経営層によるもの、一般社員によるものも含めますと、こういった架空循環取引は広範な業態において起こりうる「不正」でありますし、またそもそも最初から架空循環取引を行うことだけを目的とした取引ではなく、中間介在取引(信用貸し取引)が派生したものや、混在したものなども多くみられることから、(つまり、ろじゃあさんが指摘されているように、手形取引や、債権を担保として利用する取引などが頻繁に行われるところにおいては、こういった取引が自然に発生する可能性がある)多くの業種におきましても、架空循環取引が発生するリスクというのは否定できないのではないか、と考えております。そうしますと、こういった取引発生の危険性というものは、不正会計の温床になるものとしてどこの上場企業でも、とりあえずは重大なリスクへの対処方法として、内部統制へ依拠すべきかどうか、検討する必要が出てくるものと思われます。(ということで、具体的な架空循環取引を未然に防止する、あるいは最小限度のリスクで回避するための内部統制の仕組みに関する検討は続編に書かせていただきます。また、こういった問題にご関心がございましたら、またご批判、ご意見、ご感想など、どうかよろしくお願いいたします。本当にマニアックな話題で恐縮です・・・・・)

3月 27, 2007 架空循環取引 | | コメント (18) | トラックバック (3)

2007年3月26日 (月)

加ト吉社のリスクマネジメント

3月23日の加ト吉による特損リリース、そして24日の読売新聞の疑惑報道を中心にして、架空循環取引への関与が報道されておりました東証一部上場の加ト吉社でありますが、ついに役員関与に関する報道がなされるに至っております。(読売関西版はこちら

25日の常務の会見と社長インタビューとの発言内容のズレや、いくつかのブログで指摘されておりましたように、こういった循環取引につきましては、およそ全決裁に関与できる立場(つまり役員クラス)の方でないと(永年にわたる)隠蔽は困難と思われますので、(まだ滅多なことは申し上げられませんが)経営幹部の方の関与の疑いがあってもおかしくないはずであります。みずほ銀行(といいますか、みずほ銀行関連のSPC)が40億円の与信枠を中堅商社に付与していたわけでありますから、この中堅商社と加ト吉社との年間取引が200億円(中堅商社の加ト吉社への売掛債権をSPCが40億円の範囲で買取り、あとでSPCが加ト吉と現金決済)を超えていた、との証言のほうが正しいように思えますし(そもそも大手都銀が基礎となる契約書を精査していない、といったことは考えられないでしょうし)、「せいぜい年間十数億円と理解している」(経営幹部)ということであれば、おそらくSPCへのこれまでの現金決裁との整合性はどう考えてもでてこないと思われます。信用ある上場企業の「架空循環取引」における立ち位置の問題、一般投資家への情報開示のあり方、監査法人の指摘と企業の対応、外部調査委員会の報告内容などなど、今後の加ト吉社の対応につきましては、上場企業のリスクマネジメントのあり方として注目されるところであります。

そういえば、ちょうど1年ほど前に、NECE(NECエンジニアリング社)の社員が架空循環取引に関与した事例がありましたが、そこに今後同様の不正が社内で発生しないよう、4つの内部統制システム構築に関する社内決議がリリースされておりました。おそらく一般社員による循環取引関与は、そういった内部統制システムの整備によってリスクを低減することが可能だと思われますが、発注、納品、在庫管理、受注、請求と、一連のIT統制があたりまえの時代になりましても、(どんなに相互牽制作用を効かせても、それぞれの手続の適正性は確保されるかもしれませんが、一連の手続すべての評価はできませんので)一連の手続全般が見渡せる立場にある役員による内部統制の無視については内部統制の整備は無力のような気がいたします。(なお、循環取引と集合債権譲渡担保等SPCの利用との関係につきましては、TBいただいております ろじゃあさん のブログが詳しいです)

3月 26, 2007 架空循環取引 | | コメント (9) | トラックバック (2)

2007年3月25日 (日)

新生銀行に排除命令(景表法違反)

(3月25日午後 追記あります)

金融商品に関するチラシが不当表示に該当するとして、新生銀行が公正取引委員会より排除命令を受けるようであります。(チラシの表示や、金融商品の説明など、朝日新聞ニュースが詳しいようです)銀行としては初めて、とのこと。すでにこのチラシは使用されていないようですが、景表法(不当景品類及び不当表示防止法)6条1項におきまして、たとえ違反状態が解消されていても、排除命令を発令することはできることになっております。

(排除命令)第6条 公正取引委員会は、第3条の規定による制限若しくは禁止又は第4条第1項の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令(以下「排除命令」という。)は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、することができる。

「貯蓄から投資へ」といった流れのなかで、金融商品取引法の成立施行は、「ホップ・ステップ・ジャンプ」のうち、未だ「ステップ」の段階と言われておりまして、保険、銀行を含めて広く横断的な規制が確立する「金融サービス法」成立が最終的な目標(いわゆる「ジャンプ」)とされております。そこで金融機関全般の監督監視機能といえば、そもそも金融庁及び証券取引等監視委員会が担っているわけでありますが、金融商品の取扱に関する垣根が取り除かれるにしたがって、金融機関も競争によるサバイバルの様相を呈してきております。「仁義なき顧客獲得競争」におきましては、こういった「不公正な取引方法」に対する公取委の厳しい対応が今後も予想されるところでありますので、金融機関内におけるコンプライアンス・オフィサー(またはコンプライアンス委員会)の役割もこれまで以上に重要になってくるのかもしれません。

ところで、私もあまり独禁法関連は詳しくないのでありますが、この新聞報道を読んだだけで、「いったい何が不当表示なのか」、私はよく理解できておりません。(もちろん、排除命令が出されれば、公取委のHPで確認できるわけではありますが)定期預金契約を希望する一般消費者が、もっともリスクの高い商品を選択した場合の利率だけをチラシ中央に大きく掲示した行為が問題になっているわけでありますが、この利率の表示の何が不当表示に該当するのでしょうか。具体的には元本割れの危険性があるにもかかわらず、一般消費者に対してリスクがないもののように誤信させたことが問題なのか、他の利率の商品構成があるにもかかわらず、もっとも利率の高いものだけを掲示したことが問題となっているのか、それとも、そのいずれも不当表示に該当する、というものなのでしょうか。景表法4条の要件から検討するに、他社の定期預金との比較において、自社の商品が優れているように一般消費者を誤信させていると考えますと前者が不当表示に該当するように思いますし、他者の同種金融派生商品との関係で、自社の商品が優れていることを誤信させている、と考えますと後者の点が不当表示に該当するようにも考えられます。(私的には後者なのかなぁ・・・と思ったりしておりますが)

昨日の、ある証券会社の引受審査が不適切であった事例や、本日報道されておりました日本テレビ「行列のできる法律相談所」での著作権侵害事例など、なかなか経営陣トップが現場での対応をいちいちチェックできるわけでもないと思っておりますので、やはりコンプライアンス関連の部署が重要な役割を担う時代がもうすぐ(事業会社にも、また金融機関にも)到来するのでは・・・と考えております。

(3月25日 午後追記)

金融法務事情などでお馴染みの行方先生のブログ(コンプライアンス、内部統制etc)におきまして、この不当表示に関する詳細なエントリーがございます。(私のエントリーよりもかなり正確な記述がなされております)また、本エントリーにコメントをつけておられる経営コンサルタントさんのコメントには、どういった場合にどれだけのリスクがあるのか、詳細に記述していただいております(どうも、ありがとうございます)ので、そちらをご参照ください。なお、この景表法の不当表示問題は、あくまでも経済法たる独占禁止法的な発想に由来するものと(私は)理解しております。つまり、不当表示が規制の対象となるのは、商品の持つ本来の品質よりも、「もっと優れている」と消費者に誤解させたり、他社の同種商品よりも「もっと取引条件がいい」と誤解させたりすることによって、不当に競争を優位に進めようとすることが経済競争にとって好ましくないところであります。そう考えますと、たとえば銀行などに、この景表法を適用しようとする場合、説明義務との関係などが問題になってくるのではないでしょうか。(つまり契約法としての性質を持つ金融商品販売法や行政取締法としての性質を持つ銀行法12条と景表法の関係など。)説明義務違反の問題と、景表法の問題を混同してしまわないように、この両社をどこかできちんと区別して検討する必要があると思いますがいかがでしょうか。(そのあたり、また別の機会に議論したいと思います)

3月 25, 2007 独占禁止法関連 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2007年3月22日 (木)

堀江氏と宮内氏と故野口氏

いよいよ私が所属しております弁護士団体の役員任期もあと1週間ほどとなり、最後の総会に向けての準備に忙しい毎日であります。ということで、ライブドア刑事事件については、まったくエントリーもできないまま、本日宮内被告人の地裁判決となりました。もうすでにいろいろなブログでご案内のとおり、1年8月(いちねん はちげつ)の実刑判決が出されております。堀江氏については実刑判決は予想通り(といいますか、無罪か、実刑か、どちらかだろう、との予想)でありましたが、正直申しまして、私は宮内氏につきましては、「執行猶予付きの判決が出るのでは・・・・」と予想しておりましたので、かなり意外であります。(一般の方が思う以上に、職業人として、この量刑感覚に狂いが生じたことにつきましては、ショックであります。。。)日経夕刊社会面には、東京地検の次席検事さんのコメントとして

「おおむね妥当な判決。証券市場の公正を害する犯罪に対して厳しい姿勢を示したものであると理解している」

とありますが、ホンネのところでは検察も「予想外」だったのかもしれません。(検察の求刑は堀江氏に対して4年、宮内氏に対しては2年6月、つまり宮内氏に対しては執行猶予がついても構わない・・・といった意思表示のあらわれではないかと。)たしかに、粉飾決算による利益を自らの私利私欲のために費消した一面に悪質性が認められること、首謀者的立場はむしろ宮内氏であったことは事実のようでありますが、堀江氏の有罪立証(つまり、検察側がもっとも欲したところ)のためには最大限の協力をしてきたのであり、もしこのような判決が予想できたのであれば、共謀関係の否認や投資事業組合の実体に関する法的構成などの面において、おおいに争う道を選択していたのではないでしょうか。(「先生、話がちがうじゃないですか!」と担当弁護士に向かって不満をぶつける宮内氏の姿が目に見えるような気がします。担当弁護士の方々も、おそらく堀江氏に実刑判決が下りた後でも、宮内氏については執行猶予判決が出る可能性は高いとみておられたのではないかと推測いたします)

粉飾決算に関連する刑事事件は、たいへん立件が難しいとされています。こういった刑事事件におきまして、検察としては、できるだけ「本丸」に登るための協力者を欲するところでしょうが、今回の判決を前提といたしますと、「どんなに捜査に協力的な態度をとっても、やってしまったことの重大性だけが判決の基礎となるのであれば、一か八か、無罪主張にかけてみよう」といった、共犯者の動機付けになってしまいそうであります。(もちろん、保釈申請の現実をみた場合、できるだけ早期に事実を認めてしまおう・・・といった気持ちになってしまうのも現実であります。ただ、今回、堀江氏は無罪を争いつつも保釈されていますし、無罪を争う動機を保釈制度の現実が排斥してしまう、ということにはならないと思われます)今後の証券被害事件の捜査にとって、このたびの実刑判決は、果たして望ましいものなのかどうか、私自身はかなり懐疑的な気持ちを抱いているところです。(なお、刑事弁護実務に詳しい著名ブロガーの落合先生、矢部先生は、いずれも、このたびの実刑判決は納得できるもの・・・との冷静な分析をされておりますので、そちらをご参考ください)

裁判官の内心を斟酌してみる(たいへん失礼ながら・・・)

今回、堀江氏、宮内氏の裁判を担当された小坂裁判長の特色としましては、いずれも被告人の期待に反する判決内容を読み終えた直後に、「あなたを慕っているハンディキャップを背負った少年がいる。これから、そんな少年たちのためにも立ち直ってほしい」とか「堀江氏逮捕直後に、一生懸命かばおうとしたあなたの姿勢は評価できる(ちょっと不正確かもしれませんが・・・)そんな気持ちを、いつまでも持ち続けてほしい」などと、(その判決内容とは裏腹に)被告人らに温かい言葉を投げかけている ところであります。私が弁護人だとしますと、被告人らが奈落の底に突き落とされた直後に、そんな言葉をかけられても・・・、と思うわけでありますが、こういった情緒的な発言を好む裁判長の姿から、ふと、ひとつの内心のシナリオが浮かんできます。

「かつて堀江氏、宮内氏の仲間だった、元ライブドア取締役の野口英昭氏が天からこの裁判を見ているとしたら・・・・。その野口さんに対して、恥ずかしくない裁判をしなければならないのではないか・・・」

私の先ほどの「証券犯罪への捜査が困難になるのでは・・・」といった批判を吹き飛ばすシナリオです。もし、この世に野口氏が存命であるならば、宮内氏、堀江氏が完全否認に転じていたとしましても、おそらくこのたびの裁判では(検察側は宮内氏の協力がなくても)完全有罪立証を勝ち取ることは可能だったのではないか。野口氏は、このたびの被告人らのように振舞うことに耐えられず、あのような最期を遂げたのではないか・・・と。今回、検察の捜査に協力してきた宮内氏について、実刑判決を下すことについてのいろいろな判断はあるかもしれないが、それは決して将来の証券犯罪の立件を困難にすることにはつながらない。なぜなら、このたびは偶々、立件の焦点となる人物が不遇の死を遂げられ、そのために関係者の立場がアンバランスな状態になってしまったのだから。ともにベンチャーの道を進んだ「仲間の死」を境にして、仲間のひとりは自分が「にわか協力者」となって減刑を切望し、そしてもうひとりは完全否認の道を選択する。そういった人間の行動を、裁判所はどう受け止めるべきなのか。たとえ検察の意向、そして被告人らの期待に反する判決となっても、むしろ今後、第ニ、そして第三の「野口さん」を出さないようにするためにはどうすればいいのか。「自己中心的に振舞える大胆さ」を備えていない者がそっとこの世を後にすることで、その恩恵を仲間が受けることを、そのまま裁判所が追認してもいいのだろうか。野口氏がこの世に残すものとして、ここで裁判所としては、厳格な判断に至るべきではないのか・・・・と。小坂裁判長は、「生きていさえすれば、きっと更生の道も開かれ、世の中のためにその能力を発揮できるときがある」といった考え方をお持ちだと思います。裁判長が、最もこのたびの一連の判決で訴えたかったのは、天国の野口さんに背くような判決を出さないこと、つまり「生きていれば・・・」との気持ちを社会の人たちにメッセージとして送る判決を書くことにあったのではないでしょうか。さらにもう一言、付け加えるならば、もし野口氏を死へと導いた原因のひとつに「検察の捜査手法」があったとするならば、そういった検察の捜査への警鐘を鳴らすためにも、検察の思惑から逸脱した判決を出すことも厭わなかったのではないか・・・・・とも思えます。

久しぶりに刑事事件に関するエントリーでありましたが、小坂裁判長のちょっとした特徴から、上記のようなシナリオもあるかな・・・と考えました。もちろん情緒的な私個人の妄想でありますので、聞き流してください。。。(あっでも、こういったベタなシナリオを頭で考えてから、判決文を読むのと、全く何も考えずに判決文を読み出すのとでは、ずいぶんと判決内容の理解度に差が出ると思いますよ>司法修習生、ロースクール生の皆さん)

3月 22, 2007 刑事系 | | コメント (3) | トラックバック (3)

監査役協会「内部統制監査の実施基準」草案公開(その2)

監査役による内部統制監査の実施基準への感想(その1)におきましては、saraさんや、とーりすがりさんよりご意見をいただきました(どうも、ありがとうございます)私は、saraさんが深読み(?)されておられるほどのことは考えているわけではありませんよ(^^;・・監査役協会さんには普段からお世話になっておりますので、あんまり滅多なことは実名ブログとして書けるものではございませんし・・・・・(^^;;そこのところ、ご理解くださいませ。私が前回のエントリーにて、社外取締役と監査役監査との関係が若干不明瞭ではないか、と考えたところを、すこし敷衍して書かせていただきます。

この監査役協会の監査基準(内部統制監査の実施基準)の冒頭で、会社法上の内部統制システムの整備は「良質な企業統治体制の構築にとって必要不可欠である」(4条1項)と明記されておりますので、内部統制システムの整備はコーポレートガバナンスの議論と密接な関係にある、といった立場を鮮明にされています。J-SOXにおける内部統制報告制度は、ガバナンスの議論と一線を画していること(一般的にはそう理解されております。このあたりは先ごろ発売された「内部統制実施基準を考える」八田、町田教授の冒頭部分でも、話題になっております)とは対象的だと思われます。(このこと自体は、私も同意見であります)ただ、ガバナンスの問題と密接に関わっているとするならば、これまたガバナンスの重要論点である「社外取締役」に対する内部統制への位置づけというものも、どこかで検討されるべきではないのかな・・・と単純に考えた次第です。もし、そのことを7条3項(代表取締役の意思決定過程に関する内部統制整備への監査)で表現されているのであれば、すこし不明瞭ではないか、と。

といいますのも、このあたりは、以前から個人的にも非常に興味を抱いていたところでありました。監査役の立場からみて、社外取締役さんをどう位置づけたらいいのだろうか、と。この監査役による内部統制監査実施基準は解説のところで「おもに大会社であり、上場会社を念頭に置いている」ものとされております。つい先日(3月19日)の東証の上場制度整備懇談会の7項目の提言のなかにも、東証が模範となるべき企業統治のあり方を公表すべき、とありました。その中間報告には「親会社となんらの関係のない社外役員の導入」が明記されております。(こちらのフジサンケイビジネスアイの記事をご参照ください)そうしますと、今回の内部統制監査に関する実施基準のなかでも、この社外取締役さんに対峙する監査役の立ち位置のようなものをどう考えるべきなのか、素直に関心を抱くところであります。たしかに、とーりすがりさんのご指摘されているとおり、この監査役監査実施基準の6条2項におきましても、監査役が内部統制の整備状況を把握するためには、代表取締役および業務執行監査役からの事情聴取によるべし、とされておりますので、業務監査の範疇では、そもそも監査役と社外監査役の接点はあまり問題視するほどのことはない、と考えるべきかもしれません。

しかしながら、この内部統制監査実施基準では、「統制環境こそ、監査役として最も重要な監査対象」と明記されております。(4条2項)社外取締役による業務執行全般に対する意思決定への関わり方(たとえば社外取締役の意見形成に必要不可欠な情報の伝達方法が確立されているか、社外取締役の意見が取締役会、執行役員会議等において反映される仕組みが運用されているか)といったあたりは、ガバナンスと密接に関わる内部統制システムの整備事項として不可欠ではないか、と私は考えておりますし、このあたりの視点は「統制環境」を着眼点とするならば、内部統制監査としては見逃してはならないところだと認識しておりますが、いかがなものでしょうか?もちろん、このたびの実施基準が、そもそも取締役会が決定した内部統制システムの整備の「相当性」を判断するわけでありますし、当該企業が決定した内容に「社外取締役制度導入予定」がなんら記載されていないのであれば、そこまで監査役実施基準で一般化しなくてもよい、との考え方もあるかとは思いますが、すでに多くの企業で「社外取締役」の方々が就任されているのが現実ですし、この実施基準も上場企業の監査役監査指針(しかも内部統制整備に関する評価)を念頭に置かれているわけでありますから、もうそろそろ「社外取締役と監査役監査」の関係についても一般的な指針を設けてもいい時期に来ているのではないでしょうか。会社法上の内部統制システム整備の目的を考えた場合、そこには「経営の効率化」「法令順守」「企業のリスク管理体制の整備」など、いろいろと揚げることができますので、たとえ社外取締役への期待というものが「経営者への助言」「株主への説明義務の徹底」「株主の代弁者」といったように分かれている現状におきましても、それぞれの企業が導入したい目的に合わせて内部統制システム整備の一貫として社外取締役を位置づけることはできるものと考えております。(すいません・・・・、今回も財務報告内部統制のお話まで言及する余裕がなくなってしまいました。。。)

3月 22, 2007 内部統制構築と監査役のかかわり | | コメント (8) | トラックバック (0)

2007年3月19日 (月)

監査役協会「内部統制監査の実施基準」草案公開

本日(3月18日)は早朝から日本NPO学会年次大会のシンポジウムにて、パネリストとして参加させていただきました。主に一般社団法人における内部統制システムの整備(大規模一般社団法人)について発表いたしました。昨年成立した一般社団法人法におきましても、理事会の専決事項として、内部統制の基本方針を決定する義務が規定されており、ほとんど会社法の規定と変わらないものであります。ただ、自由に収益活動はできるけれども、社員に持分の概念がなく、したがって配当概念もない非営利法人たる一般社団法人について、どれほどの内部統制システム整備に対するインセンティブが理事会や執行機関に働くのか、未知数な部分が多いのではないでしょうか。(といいますか、会社法におきましても、その法制化の実効性については未知数ではありますが・・・)それと、学会に参加させていただいての印象でありますが、営利企業が一般社団法人の利用を検討しようとする場合、税務の取扱を抜きにしては実務的にはまだ十分に詰めて検討できないような気がいたしました。

会社法の内部統制の関連で申し上げますと、3月16日付けで日本監査役協会より、「内部統制システムに係る監査の実施基準(公開草案)」が公表されております。(日本監査役協会HPより)1月19日に公表されました改訂監査役監査基準の21条7項を受けて策定されてものでありますので、これは監査役監査基準21条と一体となって監査の実務指針が示されたことになります。この実施基準策定にあたり、新たに内部統制研究の専門家たる著名な実務家、学者の方々が加わって検討されているようでして、監査役の皆様方だけでなく、会社法における内部統制システムの整備(構築および運用)に関心のある方には、自社の整備状況の確認のためにも、ぜひご一読されることをお勧めいたします。(3月30日までに意見を広く募集され、最終案を固められる予定とのこと。)なお、月刊監査役をご購読の方におかれましては、毎月、取締役会における内部統制システムの整備状況に関する実例集が豊富に掲載されておりますので、これらの実例を参照しながらこの公開草案の内容を検討してみるのもいい方法かもしれません。なお、私自身としましては、(取締役会の構成員たる)社外取締役と内部統制システムの構築、運用問題について、若干不明瞭な条文構成になっているのではないか・・・といった疑問点がございますので、意見を提出してみようかと思っております。基本的には(取締役会による)内部統制システムの基本方針の決定の「相当性」と、業務執行における構築運用状況における「不備」の有無が監査対象となっておりまして、個々具体的な整備運用ポイントでは、着眼点と検証対象も合わせて列記されております。財務報告内部統制(あくまでも会社法上の)監査のあり方や、効率性確保体制に関する監査、企業集団内部統制に関する監査など、個別に検討するとなかなかおもしろいところがたくさんありそうです。(そのあたりにつきましては、また後日ということで)

3月 19, 2007 内部統制構築と監査役のかかわり | | コメント (9) | トラックバック (0)

2007年3月17日 (土)

経営者による内部統制運用状況評価(続編)

木曜日の「経営者による内部統制運用状況評価(サンプリング)」には、多数のコメントを頂戴しまして、どうもありがとうございました。「ど素人の視点から、統計学の一端を垣間見る」ことが、単に「趣味の領域」であれば、私のブログで採り上げる必要もございませんが、これがJ-SOX法上経営者に課せられた「試練」であるならば、「ど素人」なりに、理解したつもり(?)になりませんと、会計監査人へ何の反論もできない・・・・といった状況に陥るわけでして。。。いずれにしましても、監査の世界の常識が、いきなり経営者の管理行為の世界にやってきたようなイメージが強いわけでありますので、たとえタテマエ論でありましても、「サンプリング論」とはこういったイメージのもの・・・という認識はどうしても必要かと思います。(経営者だけでなく、監査役も同様だと思われます) ※1

ということで、丸山先生のブログ(ふたつのエントリーですが、とりあえずこちら)におきまして、すでにこの「25件のサンプル問題」をきちんと採り上げていらっしゃったようでして、文系人間の私にも、かなりの程度、理解が深まったような気がいたします。離散型確率分布である二項分布を理解するうえでは、まずサンプルリスク(取り出したサンプルが、どの程度母集団を正確に反映しているか)と許容誤差(100枚の伝票のうち、何枚の伝票ミスは許容できるか)とをきちんと区別して考える必要があり、それぞれに前提となる数値を決める必要があるわけですね。そうしますと、丸山先生が掲示されておられるポワソン分布の公式にあてはめて、最大逸脱可能性を検討しますと、25件のサンプルにミスが1個も存在しないか、もしくは40件のサンプルにミスが1個の場合には、先の許容率の範囲に収まる・・・といったことが計算上導かれるということのようです。

しかしながら、統計学のもともとの理解に乏しい私としましては、ここで新たに疑問が生じて参ります。まず、内部統制実施基準には100個のうち9個までのミスは許容する、といった前提条件が記載されておりません。90%の信頼度というのは、おそらくサンプルが母集団を90%の確率で正しく反映しているとする・・・といったことを表しているものと思うのですが、この「9%までのミスは許容範囲」とすることは、なにか慣行的な決まりごとのようなものがあるのでしょうか。それとも、理論上導かれるところがあるのでしょうか。(サンプリングさんのコメントを読みますと、アメリカの基準では10%以下の誤謬は問題とせず、とうことがわかります。ただ、このあたり監査慣行ということだけでしたら良いとしましても、経営者評価方法にも関連するところであるならば、どうして実施基準に記載がないのでしょうか。丸山先生のサンプリングさんへのご回答内容を読みましても、もうひとつ理解できないのであります。ひょっとしますと、このあたりは統計学というよりも会計学の世界のお話なのかもしれません。監査のために、多少のミスが発見されてしまって、そのために更に一から監査をやり直すということになりますと、全体の信頼性とやり直す労力(費用)とがつりあわなくなってしまって、極端に非効率的なもの(内部統制リスク)が発生してしまうために、「まぁ、9%以下ならいいんじゃないの?」といった現実的な要請に起因しているようなものでしょうか。)

さらに、実施基準におきましては、私のブログへ質問された方も疑問を呈されているように、「正規分布の基準によれば」との条件が付されております。(正規分布するのは、伝票ミス発生の確率ですよね?)正規分布の基準に基づきますと、もうすこし概算的な観念によって「25件」の説明ができるような気もいたしますし(正規のランダムサンプリングを行い、概ね30件のサンプルサイズがあれば、中心極限定理によって、ほぼ間違いなく正規分布の考え方を応用できる、というもの)このあたりは、どうなんでしょうか。また、全社的内部統制評価の結果、良好と判断された場合には、サンプル数を減少(縮小)することが認められるそうでありますが、これはいったい、先の「誤差の許容度」が減少するからなのか、それともサンプルの信頼性が高まるからなのか、それともまったく別の観点からなのか、そのあたりもよく理解できないところであります。

おそらく二項分布の考え方を前提として、「ミスはめったに起こらない」といった仮説をとり、さらに25件のサンプルはかなり多い数である、とすることで二項分布はポワソン分布に限りなく近づく、ということになろうかとは思うのですが、果たしてこの実施基準もその考え方と同じなのかどうか、またどなたかご教示いただけましたら幸いでございます。(ブログの恥はかきすて・・・とはいかないかもしれませんが・・・・(^^:;。私もじつはbunさんのようにカッコよく言い放ってみたいのですが、なんせ基礎ができていないものですから・・・・会計士さんや、学者の先生方におかれましては、統計学のど素人が、どういったところでつまってしまうのか、そういった実例としてご参考いただければと。。。)

※1 もちろん、平成19年2月15日付け「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」(以下たんに「意見書」という)の実施基準Ⅱ「財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3(1)「経営者による内部統制評価」におきまして、経営者は財務報告に係る内部統制の評価作業の一部を、社外の専門家を利用して実施することができる」とされております。しかしながら、上記意見書によりますと、社外専門家を活用するにあたり、サンプル件数等の基本的要件については依頼の際に明確にしなければならないとされておりますので、依頼事項を特定するための前提条件として、経営者はある統制上の要点につき、何件のサンプルが妥当か、といった価値判断を必要とするものと思われます。

3月 17, 2007 経営者のためのサンプリング(J-SOX) | | コメント (50) | トラックバック (2)

2007年3月15日 (木)

経営者による内部統制運用状況評価(サンプリング)

ひさしぶりにJ-SOX(金融商品取引法上の内部統制報告制度)に関するエントリーであります。先日、ある企業のCSR部の方よりご質問をいただきました。ご質問内容は以下のとおりであります。

実施基準がサンプリングにおいて最低25と言っているのは記事にお書きになったとおりですが、この点に関して、実施基準は正規分布を前提すると言っております。
数字に弱いもので、この意味が理解できないでいるのですが、 そのようなことをおっしゃる方はないのでしょうか?何が、正規分布するのでしょうか?エラーの件数?エラーの発生確率?エラーの金額?監査ではエラーの有無を検証するために、属性サンプリングというやり方を採りますが、これは、特に分布を仮定しているわけではないようです。何らかの知見をお持ちでしたら、あるいは、知見をお持ちの方がおられましたら、ブログで解説いただけると幸甚です。

実は私も、昨年11月に実施基準の公開草案がリリースされましてから、このサンプリングのところはよくわからないままになっておりまして、おそらく公認会計士さん方のように、普段の財務諸表監査におけるサンプリングの統計的手法に慣れておりませんと、理解は困難なところなのではないでしょうか。とりあえず、どなたかにお聞きしようと思っておりましたが、どちらかといいますと「全社的内部統制」の整備運用のほうに目が向いておりましたので、私も疑問をそのまま残しておりました。

せっかくのご質問でもあり、また私自身も非常に関心の高いところであること、さらに統計学の素人である「一般経営者」にとりましても、このサンプリングは内部統制の運用状況評価方法として理解しておかなければならないこと(少なくともタテマエとしては・・・、いやホンネとしても・・・でしょうか?)ですから、どなたが参考文献でも結構ですので、このサンプリングについて「なんとなく」理解できそうなものがございましたらご教示いただけませんでしょうか?

現時点でなんとなく理解しておりますのは、以下のとおりであります。

経営者も業務プロセスにおける内部統制の運用状況について、その有効性をサンプリングの手法を用いて評価しなければならない。実際には社内の内部統制評価チームが検討するのであろうが、その統括者として、経営者も評価の全体像については認識しておかなければならない。なお、実施基準には、監査人による監査方法として、統制上の要点ごとに25件以上のサンプルを必要とすると書かれており、経営者の評価手法としては書かれていないが、すくなくとも監査人に要求されるものと同等数のサンプルについては必要である。25件のサンプルのうち、1件でも問題事項が発見されたのであれば、その対象となっている内部統制には「不備」があると評価せざるをえない。その「不備」が重要な欠陥といえるかどうか、別個の判断を要するが、数値的な判断によって重要な欠陥と評価されるに至るケースは稀少であろう。(参考「内部統制の知識」町田祥弘2007年日経文庫165頁以下、企業会計2007年4月号座談会記事 中央経済社 46頁以下、逐条解説「内部統制基準を考える」八田=町田 2007年同文館出版134頁以下、同180頁以下)

とりわけ前記町田先生の「内部統制の知識」を読みますと、アメリカSOX法下における実際の内部統制監査手法を参考にされているようですので、そちらの方面での監査経験をお持ちの会計士さん方であれば、自明のこととして知悉しておられるのではないか、思います。(いまは業務中でありますので、また続編を書きたいと思っております)

3月 15, 2007 経営者のためのサンプリング(J-SOX) | | コメント (60) | トラックバック (1)

2007年3月14日 (水)

日興CGの上場維持決定(その2)

昨日の「日興CGの上場維持決定」へのコメント、TB、そしてメールありがとうございました。こんな場末のブログにも、思いのほか大きな反響がありまして、たいそうビックリいたしました。TBや個別に頂戴しましたメールの内容など、8割程度のものが「なんで上場維持やねん!!」といった内容でありまして、東証の判断に対する怒り、落胆、他事考慮への推測、出来レースなどなど、いろんなご意見を頂戴いたしました。「東証の判断に概ね賛同」と主張したことにつきましては、今も変更はございませんが、もう少し東証(だけでなく大証さん、名証さんも)の判断について検討してみたい(言い訳をしてみたい)と思いましたので、続編とさせていただきます。(また私の勝手な意見でありますし、議論の前提条件に勝手な思い込みがあるかもしれませんから、お気楽にお読みいただければ結構であります。)

上場廃止決定の持つ意味その1(参加者への安心感の提供)

まず、「なんで上場維持やねん!!」といった意見が多数であったことにつきましては、これは東証さんも十分耳を傾けるべきですし、「上場維持」という判断に至った過程についての説明を尽くしたほうがよろしいのではないかと思います。そもそも、なぜ東証さんは監督庁でもないにもかかわらず、上場廃止といった強力な処分権能を有するのか?という問いへの答えを検討する必要があるでしょうが、それはまず市場管理者として、自主規制機能たる「罰則的処分権能」を持つからであります。日興の犯した事件につきまして、その事件が悪質であるにもかかわらず、そのまま上場を維持できるのであれば、一般投資家の方々は市場に対して失望し、市場を離れてしまい、市場の活性化の道が閉ざされてしまうことになります。(株式会社としての取引所の最悪パターン)つまり、まず株式市場という場におきましては、ルール違反をした者に対しては、即刻退場を願い、「こんな悪い会社は追い出しましたよ。さあ、もう安全な市場が形成されましたので、どうかここで安心して売買をしてください」とアピールする必要があるはずです。(安心提供機能)これはとりわけ海外の投資家向けにも必要なアピールではないでしょうか。「一社でも、悪質な行動に及んだ企業は参加させていない」という(ある意味で、理想論に近いものでありますが)タテマエは、この株式市場には必要でありまして、そのためには、事件の後でどのような情状酌量のための反省態度を示したとしても、その過去の事件内容のみから、懲罰的処分を検討する必要があります。これまでの退場となった他社事件との比較から「悪質かどうか」を判断したり、組織ぐるみの事件かどうかを判断するのは、こういった懲罰的処分としての性格から求められるものと思われます。つまり、懲罰的処分でありますから、当然の前提としまして、上記のような当該企業の責任論とも関係するわけであります。 (ここで、私の意見としましては、組織ぐるみとは認められない、つまり日興CGという法人としての「退場処分」に見合う責任までは認められない、という判断が関係してくるわけであります)ただし、一般投資家の方々が「こんなあぶなっかしい企業が上場されているのだったら、株式投資はやめとこ」といった気持ちになってしまうことは証券取引所としても防止しなければなりません。そこで、コムズカシイ議論をするよりも、今回の日興問題については一般投資家がどのように考えているか、といったところへも配慮が必要になってくるわけでありますので、もし東証さんにとって、上場維持といった判断が微妙なバランスのうえでのことであるならば、もう少し市場参加意欲を一般の投資家が失わないようにするための説明責任を果たす必要があるのではないかと思います。

なお、ここで「金融庁から5億円の課徴金納付命令をすでに受けていることと、東証の判断は矛盾するのではないか」といった意見も出てくるところであります。しかしながら、これは以下の記述とも関係するところでありますが、行政処分たる「課徴金制度」は(いまでこそ、懲罰的効果が問題となっておりますが)原則的にはそもそも懲罰ではなく、違法な利益取得を吐き出させる制度として構築されております。したがいまして、課徴金制度は責任論というよりも後述の「違法状態除去」に関する監督官庁による対応のひとつと考えられますので、懲罰論(責任論)を前提とする「悪質かどうか」「組織ぐるみかどうか」の判断に関する議論とはなんら矛盾するところはないものと考えます。

上場廃止決定の持つ意味その2(違法状態の除去)

証券取引所には金融庁という監督官庁が存在します。したがいまして、もし市場の信頼を失わせるような行動の再犯可能性が当該問題企業に認められるのであれば、市場に参加しております一般投資家は再度、不当に粉飾のリスクを背負い続けることになります。しかしながら金融庁は、投資家が危険にさらされている状況が継続しているのであれば、当該企業の責任論はどうであれ、ともかく違法状態を除去し、一般投資家を保護するために、即刻金融庁自身が退場命令を出せる仕組みを用意しておかなければいけません。(ここで改めて申し上げますが、企業に違法状態が存在するのと、その企業に責任が発生することとは区別して考える必要があります。ちょうど、刑事事件におきまして、被告人が有罪とされるためには、構成要件該当性と違法性が認められるだけでなく、そのうえで被告人に故意もしくは過失、といった責任が認められる必要があることと同様であります)金融機関の場合、最近はこの「違法状態が継続しているかどうか」といった判断基準として、内部統制(内部管理態勢)が問題とされるわけでありまして、たとえばトップが交代しているか、取締役会の体制がトップの暴走を未然に防止できる人的物的組織となっているか、牽制機能は働いているか、監査役による監査体制はどうか、連結決算の対象となる子会社との関係はどうか、などが精査されることとなるわけであります。そして金融庁自身がその調査に及ぶよりも、専門性、迅速性の面で格段の差が認められる証券取引所に(つまり自主規制機関による判断に)、その判断を委ねている、と考えるのが妥当ではないかと思います。そして、この違法状態の除去が認められるかどうか(つまり上場を維持させてもいいかどうか)、といった判断基準におきましては、当該企業の問題事件以降の再犯防止策への取組姿勢というものが「違法状態の有無」に影響を与える場合もあろうかと思われます。

昨日、私は日興CGへの上場維持決定に関するコメントのなかにおきまして、騒動直後からの反省態度のようなものが、実際には判断理由のなかでは考慮(斟酌)されていないのではないかと書いておりましたが、実際のところは上記二本立てで総合的に考慮されるのではないかと思います。このように考えますと、処分の公正さも担保され、また粉飾決算発覚後の当該企業の再犯防止へ向けてのインセンティブも相当程度、満たされるのではないでしょうか。(ちなみに、大証の米田社長さんは、「不良がいたら、その不良を追い出すだけではいい学校とは言えない。不良をきちんと育てることも学校の使命だ」と記者会見で述べておられました。しかし、「あの学校には不良がいっぱいいるから、受験は控えよう」と考える受験生がたくさん出てくることも事実でしょうし、株式会社としての証券取引所として、米田社長さんのように言い放ってしまっていいものかどうか・・・、ちょっと悩むところであります)

3月 14, 2007 日興コーディアルと不正会計 | | コメント (14) | トラックバック (1)

2007年3月13日 (火)

日興CGの上場維持決定

東証、大証、名証は日興コーディアルグループについて、上場を維持することを決定し、監理ポスト割り当てを解除することになったようであります。(日経ニュースはこちら)なんだか手前みそで恐縮でありますが、私は従前より>こちら>こちらのエントリーにおきまして、特別調査委員会の報告書を拝読しましても、「日興CGの組織ぐるみの行動」とは認められないものと主張しておりましたので、このたびの上場廃止基準該当性なし、との東証の判断理由には、概ね賛同するものであります。(ただ、たとえ組織ぐるみではないとしても、NPIの組織ぐるみの日付繰上げ行為の悪質さは否めないところではないでしょうかね。証券会社が一番やってはいけないことをやっているわけですから、この行動に至った動機というものは是非もうすこし議論しておきたいところであります。)

ところで日経ニュースでは、この13日深夜になって異例の釈明記事がHPにアップされています。(釈明ニュース)いったん「日興、上場廃止へ」と報道したにもかかわらず、結局「上場維持」という東証の判断に至った経過についての釈明でありまして、今後もさらに検証していく、とのことであります。日経の与える投資家への影響を考えますと、こういった問題発生企業の報道姿勢というのも、かなり難しいものがありそうですね。

なお、有識者の方々より、(この上場維持の決定をうけて)もう少し上場廃止基準を明確化したほうがいいのではないか、との意見が出されておりますが、たとえもう少し廃止基準を明確化したとしましても、またさらに細かいところで基準への該当性が議論されるだけであり、結論としては「明確化」が投資家の保護に資することは期待できないと思います。むしろ、要件該当性が比較的あいまいなバスケット条項のままで廃止基準を残しておくほうが、上場企業の違法行為抑止効果は機能するのではないでしょうか。

それと本日の東証の判断理由を聞かせていただいて感じましたことは、日興CGは不祥事発覚後にいろいろと情状をよくするための対策をとったものではありますが、そういった悪質な行動の後の対応についてはほとんど東証は(最終決断にあたり)斟酌していないのではないでしょうか。(もし、これを斟酌したことで、東証が上場維持の決定を下したということでしたら、これまで「上場廃止へ」と報道してきたマスコミも救われるところだったのですが・・・・)再発防止策を一生懸命練って、二度と同じ過ちを繰り返さないように内部統制システムを再構築することが、大きく上場維持の判断に影響する、といった慣行が成り立ちますと、そもそも粉飾決算に対する取引所規則の抑止的効果が薄れてしまうのも事実であります。しかしながら、問題とされている悪質な行動だけを捉えて廃止基準の該当性を判断する、と明確な姿勢を打ち出した場合には、ぎゃくに内部統制の再構築へのインセンティブは薄れてしまうわけでして、企業の自浄能力を引き出すことができなくなってしまいます。もう1年以上前のエントリーにおきまして、ニューヨーク証券取引所におけるプロベイジョンの制度をご紹介いたしましたが、日本の証券取引所でも、これに類似する「上場廃止執行猶予制度」のようなものを策定するのもひとつの案ではないでしょうか。「廃止か維持か」といった根本の決定につきましては、取引所がこれまでのとおりの判断理由をもって決することとしますが、情状によりましては、「その廃止決定を猶予」するような制度も一考に値するように思われます。つまり、執行猶予期間中に、将来にわたって再犯防止のための施策を熱心に行っている場合におきましては、最終的にその廃止決定を見直す、というものであります。これであれば企業側にもインセンティブが付与されるので、適正なものであるように思われますが、いかがでしょうかね。

3月 13, 2007 日興コーディアルと不正会計 | | コメント (3) | トラックバック (9)

2007年3月12日 (月)

企業価値の算定方法への疑問

3月10日土曜日は、午前中に社外取締役ネットワークの企業価値評価に関するセミナー、午後からはACFE(公認不正検査士協会)JAPANの資格継続研修、というとてもハードな一日でありました。企業価値評価セミナーにつきましては、毎回楽しみにしておりまして、今回も4人ずつのグループに分かれて、ある企業を買収するにあたって、買収側と売却側とで、それぞれ企業価値算定のうえで売買交渉を行う、といった演習であります。私のほうのグループには、某証券会社の大阪支店長さんがいらっしゃいますので、私なんかは、その方の評価方法をお聞きして、ただ「あぁ、なるほど・・・・」と納得してしまうだけでして、問題解決の手法を学ぶところまではいっていなかったような気もいたします。(情けないですが・・・(^^;  )

ところで、あいかわらずの「素朴な疑問シリーズ」で恐縮でありますが、この公開企業の価値算定の基礎とされる「DCF法」(未公開企業でも、よく利用される)というのは、普通に友好的なM&Aの公正な企業価値算定には、なんの疑問もなく利用されているのでしょうかね?この演習におきましても、売り手と買い手が、それぞれDCF法を当然の前提として利用するところから始まるわけでありますが、元々どっちかに有利な算定方法ということにならないのでしょうか?サッカーの試合におきましても、ホームとアウェーでは、勝敗の確率には大きな違いが出るわけでして、このモノサシである「DCF法」といったものも、どっちかに有利な算定方法を、双方が所与の条件として、何の疑いもなく利用している、ということはないのでしょうか?もう少し細かく考えますと、売り手市場の時代ではどっちに有利で、買い手市場の時代ではどっちに有利とか、そういった公式はないのでしょうか?なお、株式市場があって、TOBという買付け方法が認められているわけですから、基本的には買い手側の意向によって算定基準が形成されるようにも思えますが、それでも敵対的買収防衛ルールが厳格であったりする場合には、やはり「買い手市場、売り手市場」といった分類は意味があるようにも思えます。そういったことが、素人なりに疑問として感じるわけでありますが、最近のコーポレートファイナンスに関する書物などには、こういった仕分け条件がどこにも書いてありません。こういったことは普通の人には疑問として浮かんでこないのでしょうかね?とても不思議です。

それと、もうひとつの疑問でありますが、収益還元法ですから「収益」が企業価値算定の根拠となることは理解できるのですが、その「収益」を「続ける」ことのパフォーマンスはどこで考慮されるのでしょうか?DCF法は「収益」とともに「ある一定時期までの持続的成長」(持続的成長が見込めなければ、その後はターミナルバリューの算定のみ)不動産収益事業へのDCF法の利用であれば問題は出てこないと思うのですが、企業活動についてDCF法を用いるのであれば、毎期の「収益」のほかにも、ある一定時期まで、「事業を継続」するパフォーマンスも別途必要ですよね。「継続は力なり」とはよく言われるところでありますが、売り上げを伸ばすところで収益を計上する場面と、売り上げを伸ばすことなく、また新規事業にも手を出さず、たんに経費を切り詰めて、利益を計上する場面とは、明らかに企業における「事業継続への意欲」には差が生じますよね。収益(リスクを含む概念として)が企業パフォーマンスのひとつであれば、事業を続けること自体も企業パフォーマンスのひとつであることは間違いないと思います。人件費を最大限切り詰めて収益を上げていても、あるとき、突然その限界を超えてしまって、事業継続力がなくなったらどうするのでしょうか?(なんか私がアホなこと、考えているんでしょうかね?しかし、ゴッツイ大事なことのように思えるのですが)

世間でよく言われているようなDCF法への指摘(資本コストの算出や、ターミナルバリューの算出に関する恣意性など)につきましては、ある程度の幅のある価値判断によって回避できるのかなぁとも思うのですが、それより以前に、先のような漠然とした疑問が湧いてまいりまして、どうもスッキリとしておりません。所詮、売買交渉における共通のモノサシとしての意味があれば、それ以上客観的な価値把握のことまで考える必要はない、と言われてしまえばそれまでかもしれませんが。。。(なお、ワールドコムの事件を題材にしましたACFEの研修につきましても、いろいろと討論があって面白かったのでありますが、それはまた別の機会に・・・・)

3月 12, 2007 企業価値算定方法 | | コメント (3) | トラックバック (3)

2007年3月10日 (土)

ノーリツに対する株主提案権行使

未だ日経新聞等では記事になっていないものの、先日の「いちご旋風」に続き、この3月29日の株主総会に向けて、たいへん注目されるのが、神戸に本社を置くノーリツの少数株主(保有株0,09パーセント)による株主提案権の行使であります(読売新聞ニュースはこちら、またノーリツからリリースされております株主参考資料ついてはこちらです。該当ページは通し番号77ページあたりから)。これまでの配当金額の10倍以上の期末剰余金配当を求める(もしくは、別途積立金を大幅に配当可能となる繰越利益剰余金に振り返ることを要求する)というものであります。

筆頭株主にはスティールパートナーズ(15,3パーセント)、外国人株主が約3割を占める企業であることや、同日の株主総会におきまして、ライツプランによる敵対的買収防衛策の導入を決議にはかるタイミングでの提案であること(つまりは株主価値の最大化をはかる施策を導入する意思が企業側には存在すること)、給湯器死亡事故の公表問題や、製品の回収問題が発生していることなどと、この株主提案権がどういった関係にあるのかは、私自身は不明でありますが、いずれにしましても、株主がこういった配当要求を行い、他の株主が賛同されるのかどうか、非常に注目されるところだと思います。

理屈のうえでは、MM理論(配当無関連命題)によって、(インカムゲインとキャピタルゲインとの割合からみて)配当政策は株価には影響を与えないとされているようですが、現実には株価の向上を招来するわけでして、たとえばノーリツさんのように、安定的なキャッシュフローがあり、使途が明確でない余剰資金を大量に抱え込んでいる企業につきましては、フリーキャッシュフロー問題が深刻でありますので、株価がまったく企業価値を反映していない典型と言われております。したがいまして、長期短期云々というよりも、まず現時点における株主価値の最大化をはかるための施策としましては、他の企業の場合ですと「あまりにも過大」といわれるような大幅な増配(現金によるか、自己株式取得とするか)を敢行することが望ましいのではないでしょうか。おそらく、これは株主の本意だと思われます。しかも、取締役会としては、一方で買収防衛策を導入することとして、一方では株主提案に反対するということでありまして、このあたりの取締役会の行動といったものが、果たして株主と利益相反的にならないのかどうか(そもそも企業価値をますます株価に反映させない方向に検討されているのか)、これもまた非常に興味深い論点であります。(まだ十分に問題点を整理しておりませんので、本日は速報版ということで失礼いたします)

3月 10, 2007 ノーリツに対する株主提案権行使 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年3月 9日 (金)

セカンドオピニオンと監査報酬について

会計士さん方のブログで、「週間経営財務2810号」の町田祥弘青山学院大学教授の論稿「監査報酬はなぜ低いのか~監査人の交代時における監査報酬の実態調査を踏まえて~」が話題になっております。私もこれを読ませていただき、「ロー・ボーリング」なる概念を初めて知りました。(ちなみに、ロー・ボーリングとは、入札等におきまして、将来の追加契約や取引継続を見込んで、低廉な価格または報酬で最初の契約に応じることのようであります。)

ところで、監査報酬が低い(傾向になってしまう)のは、町田先生ご指摘のような契約形態とは別に、「セカンドオピニオン」に関する会計士業界の掟のようなところにも原因があるのではないでしょうか。たとえば、先日の三洋電機の子会社株式の評価に関する問題などが新聞で報じられましても、どなたか会計専門家の方がコメントとして、「会計処理に疑問がある」とか「会計士はまったく問題ない」などといった意見表明をされていることはほとんど見当たりません。また、先日の日興CGの粉飾問題の場合におきましても、監査委員を務める社外取締役の方々が、セカンドオピニオンを監査法人に依頼されたところ、一向に協力していただける監査法人さんがいらっしゃらなかった、とのことでしてた。先日も別のエントリーでも書かせていただきましたが、そもそも監査証拠となりうる計算書類の原本にあたっていなかったり、それまでの会計処理の歴史を深く認識しておられない第三者的な監査法人が、独立して会計処理に関する意見はリリースできないのかもしれません。また、そもそもセカンドオピニオンをとる、ということは監査の品質基準に差があることを認めてしまうこととなりそうですので、業界団体としましては、できればセカンドオピニオンの乱発は回避したいところだと思います。

ところで、もし監査報酬がもう少し高くなることを希望されるのであれば、やはり監査法人のランク付けのようなものが必要になるのではないでしょうか。「あの監査法人が監査しているのだから、間違いない」とか「あの監査法人が財務に関するコンサルタントをしているのだから」といったようなところに投資家が開示情報としての価値を見出すとか、そういった「付加価値」を創出しなければ、どうも今後も高額になることはたやすいことではないような気がいたします。(ましてや、競争原理も働かないままにジリジリと、どこの監査法人も監査報酬が高額化していく、というのは独占禁止法上の問題にも発展するかもしれませんよね)しかし、これだけ「見積もり評価」を要求されるような会計基準が増えたにもかかわらず、すべての会計士資格を有しておられる方の意見がすべて一致するとは思えませんし、企業側の適正なリスク管理の一環としまして、会計士さんのセカンドオピニオンをとりたい、といった企業側の要望にも、ある程度の合理性があるように思われます。やはり監査報酬の高額化というところは、そういった競争原理の働きがなければ難しいのではないか、と思った次第であります。(いえ、ふとそういったことが思い浮かんだだけでありまして・・・・・この話を今後も発展させるつもりは毛頭ございません。)

(追記)ほかの会計士さんのブログを読ませていただいておりましたが、どうも日経新聞の記事で「会計士協会、二次意見で新規則」なる報道がされておられたようですね。(まったくこの記事を読んでおりませんでした。)会計士協会さんのほうでもまじめに取り組んでおられるようで、誤解を招くといけませんので(言い訳になりますが)、私も決して不真面目な気持ちでエントリーしたものではなく、究極の目的が「監査報酬の高額化」であるならば、こういった方法もひとつの案ではないか、といった気持ちで書かせていただいたものであります。

3月 9, 2007 セカンド・オピニオン | | コメント (6) | トラックバック (1)

2007年3月 8日 (木)

4月からIPO研究会本格始動予定です。

ちょっと3月はシャレにならないほどの慌しさであります。(hamsterさんはじめ、いろいろと有益なコメントを頂戴しているにもかかわらず、お返事が遅くなっておりまして申し訳ございません)本日も大阪商工会議所での法律講演会でしたが、9日は銀行協会、18日はNPO学会、22日も某民間企業主催のセミナー講演とつづき、27日には私が役員を務めております弁護士団体の定時総会、と予定されておりまして、あと20日ほどはほとんど身動きがほとんどとれない状況であります。しかしながら、私もついにこの3月末をもちまして、その弁護士団体の役員任期満了を迎えますので(^^)/やっと1年ぶりに本業復帰(!?)となります。(幹事長はじめ、他の副幹事長もみな、いい人達ばかりでして、とても楽しかったけど、やっぱりキツかったなぁ・・(^^;)もちろんコンサルタント的なお仕事はこの1年もさせていただいていたのですが、やっぱり弁護士は裁判ですよね。ともかく刑事事件を含めて、いまは法廷活動に飢えております。法廷で「吠えて」いるときが一番自分らしいと思いますね。

それと、本業復帰に合わせまして、これまで何回も準備会を重ねてまいりました「IPO研究会関西版」が少しずつ形になってまいりましたので、そろそろHPを制作して広報させていただく段階となりました。(といいましても、今から制作にはいる、といったところでありますが)弁護士だけでなく、証券取引に関わっていらっしゃるさまざまな分野の方とともに、関西地区におきまして新規上場をめざす企業のご支援をさせていただく「ビジネスモデル」であります。守秘義務の壁もございますので、とりあえず軌道に乗るまでは、あまり進行形の形ではご報告できないかもしれませんし、はじめのうちは「社会貢献」に近い形になってしまうかもしれませんが、私自身たいへん楽しみにしております。またHP等公開の時期になりましたら、このブログにおきましてもご紹介させていただこうと思っております。

あともうひとつは、「内部統制」に関する情報交換会ですね。これもぜひ、関西で立ち上げたいですね。こちらはあまり弁護士の間では賛同者はおりませんが(^^;;、仕事抜きでJ-SOXの準備状況とか、コンプライアンス委員会での運用の現状とか、内部監査とか、そういった「管理部門」に携わる方が集まれる場を持ちたいですし、やっと時間的な余裕もできそうなんで、このブログの「オフミーティング」的なものでもいいので、やってみたいですね。いま勉強させていただいております「社外取締役ネットワークの関西地区勉強会」みたいに、できれば長続きするような会合ができれば・・・と考えております。(などと言っているうちに、また4月になってみると、いろいろと忙しくなってしまったりして・・・)

3月 8, 2007 IPO研究会関連 | | コメント (4) | トラックバック (1)

2007年3月 6日 (火)

内部統制構築と経営判断原則(再考)

昨日、grandeさんのブログでも紹介されておられる経営財務2810号の「監査報酬はなぜ低いのか~監査人の交代時における監査報酬の実態調査を踏まえて~」(町田祥弘教授)もたいへんおもしろい内容でして、いろいろと検討してみたいところも多いのでありますが、その前に、一度「内部統制構築と経営判断原則」といったテーマで最近の内部統制議論の方向性を検討してみたいと思い、(再考編)とさせていただきました。なお(再考)といたしましたのは、2005年8月に同名のエントリーをアップしているためであります。(しかし、いま1年半ほど前のエントリーを読み返しますと、かなり恥ずかしい内容のエントリーですね。(^^; 最近であれば、「内部統制リスク」や「監査リスク」との関係から「リスクアプローチ」について、もすこしマシな論点提示ができそうでありますが、この当時は監査論もよくわからずに、よくもまぁ、シャーシャーと書きなぐっていたものだと・・・・・・)

経営判断原則を問題にするわけでありますので、どちらかといいますと会社法上の内部統制システムの構築に関連する話題でありますが、金融商品取引法上の内部統制(いわゆる内部統制報告制度)につきましても、「費用対効果によって内部統制リスクを管理する」ことを検討するならば、やはり経営判断原則が問題となる場面もあろうかと考えております。ただ、どちらの内部統制を議論するにあたりましても、最近は内部統制には「整備」と「運用」の問題があるというのが通説になってきております。「企業会計4月号」特集「座談会、内部統制報告基準および実施基準の重要ポイント」の44ページ以下におきましても、(こちらは主に内部統制報告制度を踏まえての議論でありますが)「整備状況・運用状況の評価」として、運用面に関する評価の重要性が参加者より説かれております。つまり、運用状況の評価というものは、整備状況の評価を踏まえたうえで、決まりごとがどのように運用されているか、想定したとおりに実際に機能しているのかどうかに着目して評価する、ということが解説されておりまして、このあたりは私のブログにおきまして、何度も確認をしてきたところと合致しているものと思われます。

さて、このあたりまでの議論につきましては、概ねコンセンサスの得られてきたところではないか、と考えておりますが、今後著名な学者や実務家、会計士の方に検討していただきたいと願っておりますのが、こういった「整備」「運用」分類法と、取締役の内部統制システムの構築義務を議論する際の「経営判断法理」との関連性であります。ご承知のとおり、平成12年の大和銀行事件判決におきまして、初めて裁判のうえで「取締役の内部統制システムの構築義務」なる概念が登場したわけでありますが、この構築にあたっては、取締役らに広範な裁量が認められる、つまり経営判断の原則が妥当する、とされまして、これまでもダイレクトに「内部統制システムの構築義務違反」によって取締役らに責任が認められた判決は登場しておりません。時代とともに、この内部管理態勢のあり方がクローズアップされ、主要な経済法令のなかでも「内部統制構築」が規定されてきた昨今、取締役の責任を論じるときには以前よりも「内部統制構築義務違反」と裁判所に評価されやすい風潮になってきたような気もいたします。しかしながら、「費用対効果」による内部統制構築の限界や、リスク管理の手法は各企業のおかれている経営環境や企業の組織規模などによって左右されることなどからみましても、どのような内部管理態勢を構築すべきか、といった点につきましては、やはり経営者には広範な裁量権があるといった前提はいまでも妥当するものと考えております。

その一方におきまして、内部統制の構築というものは、静的なイメージではなく、PDCAサイクルによるリスク管理の一種であり、動的なイメージが強い管理手法である、といった概念が共有化されてきますと、その「運用」面での評価というものにも、経営者らの広範な裁量権が認められるかといいますと、これには別個の考え方が成り立つようにも思えます。つまり、「整備」することは、それなりに経営者らに裁量権も認められるかもしれませんが、いったん整備した内部統制システムというものが1年間(ある評価のための期間と言い換えてもよろしいと思います)適切に稼動したのかどうかをチェックして、その有効性を評価するプロセスというものは、決められた約束事をきちんと取締役らが守ることが前提となりますから、どうも経営判断の原則が適用される場面ではないように思います。たとえこの運用面におきましても、当該企業の管理行為への予算配分の問題だとか、内部監査の経験年数などの問題などから、ある程度の経営判断が優先されるべき場合があるとしましても、その「整備」における裁量権の範囲よりも、かなり狭い範囲での裁量権しか認められないのではないでしょうか。こういった議論がもし成り立つのでありましたら、株主代表訴訟等、取締役の会社に対する善管注意義務違反が問題となる場面におきまして、とりあえず「三点セット」など内部統制構築のなかで文書化されたものの開示を企業側に求め、その開示書類を分析したうえで、運用面での取締役らの怠慢(過失=放置責任)を立証する方策が検討されうるだけに、かなり重要な論点ではないか、と思います。このあたり、また既にどこかの雑誌で検討されておられましたら、その内容等ご教示いただけますでしょうか。

3月 6, 2007 内部統制構築と経営判断原則 | | コメント (3) | トラックバック (3)

2007年3月 5日 (月)

コーポレート・ガバナンスと株主の評価基準

毎月第一土曜日は全国社外取締役ネットワークの関西地区勉強会が開催されまして、その帰りに堺筋本町の紀伊国屋書店に立ち寄ってみましたら、ずいぶんと株主総会関連の法律書が増えておりました。本格的な会社法施行後の総会は本年度からということもあるでしょうから、例年以上に雑誌、書籍では総会対策モノが売れ筋になるのでしょうね。(もうそんな時期なんですね。)

ということで、そろそろ機関投資家の方々が、今年はどのような議決権行使に関する基準をリリースするのか、といったところも気になるところでありますが、「コーポレート・ガバナンスの評価に基づいた投資のすすめ(銘柄選択の新潮流)」なる本(2006年 東洋経済新報社)の著者でいらっしゃるアレクサンダー・フラッチャー氏が3月10日号の旬刊経理情報にて、「企業統治リスクをどう見抜くか」といった、たいへん興味深い文章を書いておられます。この論稿では、昨今のいろいろな企業不祥事をとりあげて、コーポレート・ガバナンスのあり方と不祥事発生の可能性とを関連つけることで、企業評価基準として「守りのガバナンス評価」を展開されておられます。この論稿を読ませていただいた後に、先の「投資のすすめ」の書物を読みますと、なるほど、最近の代表的な不祥事を起こした企業のボードを分析されて、それを投資評価の基準として検討されるようです。(ちなみに、少し観点は異なりますが、この本では「長期保有している株主に対して、議決権上で有利な扱いを認める企業については、株主平等原則に反するものとして、断固反対する」とありますので、以前このブログでちょっと話題として取り上げさせていただいた同和鉱業さんの株主優遇策とかは、さてどうなんでしょうか・・・)

そもそもコーポレート・ガバナンスを投資評価基準として用いる、といいますのは、私の理解では「攻めのガバナンス評価」つまり、企業パフォーマンスの向上のためには、どういったガバナンスが最適か、といったアプローチで研究されているのが世界の潮流ではないかと思っておりましたので、かなり斬新なイメージを抱きました。たとえば、ときどき引用させていただいている「コーポレート・ガバナンスにおける商法の役割」(2005年 中央経済社)でも、最近は全世界において、ガバナンスのあり方と企業パフォーマンスの関係が議論されていると書かれてありますし、また最近出版されました「企業統治の多様化と展望」(2007年 金融財政事情研究会)におきましても、日本型取締役会の多元的進化とパフォーマンス効果について、ニッセイ基礎研究所の方等が研究成果を発表しておられますし、こういった評価基準に基づいてガバナンス投資を考えるのが通常ではないかと思っておりました。

たしかに、以前からコーポレート・ガバナンスを議論する目的は、(企業パフォーマンスとの関連性以上に)企業不祥事の防止(コンプライアンス経営の実現)と言われておりましたが、直接の目的が「企業不祥事防止」というのではなくて、いわゆる株主の利益を無視して(利益相反取引などによって)経営者が暴走することを止める仕組みを考えるのが一次的であり、その副次的な効果として「不祥事も防げる」といった関係で捉えるのが正確ではないかと思います。ただ、そう考えましても、具体的にどういったガバナンス体制を構築すれば企業不祥事を防止できるのか、といった観点から、果たして投資評価のモノサシにできるような定型的な解が出てくるのでしょうか?そもそも企業統治のあり方と企業パフォーマンスとの関係についての実証的研究というのも稀少なところかとは思うのですが、企業統治のあり方と不祥事発生の危険性との関係といったところは、ほぼ実証的な検討は困難な気もしますね。「何年何月から、この企業はこういった組織を構築した。そして何年ころからこういった競争力の向上があった」といった前提条件ならば、そういった企業がいくつか判明することによって、企業パフォーマンスとガバナンスの関係も(うすうすながら)推定できると思いますが、「企業不祥事は発生した。そして報道によって信用が既存され、株価が下がった」「この企業はこういった組織形態であり、ボードメンバーもこういった関係にある」ということから、「よって、こういった組織形態で、こういった人間関係にある企業は投資価値が低い」という結論に至るのはどうも短絡的に過ぎるような気もいたします。また、機関投資家や議決権行使支援会社より、おもしろい判断基準が発表されるかもしれませんし、今後何か興味深い基準が見当たりましたら続編をアップするつもりであります。

3月 5, 2007 コーポレート・ガバナンスと株主評価基準 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年3月 2日 (金)

監査法人の粉飾決算加担への罰則ルール

2月27日の新聞報道では、監査法人改革案のうち、監査法人への刑事罰導入は見送られた、とありました(日経ニュースはこちら)。その一方で、3月1日夕方のニュースによりますと、監査法人が粉飾決算に加担した場合には課徴金制度が導入され、その加担した会計士が在籍している監査法人には、当該法人から報酬として受領した金額の1.5倍の課徴金納付が命じられることになる模様であります。「刑事罰を課される」ということに関連して、監査法人にはさまざまな不利益(事実上の解散など)が生じることになりそうですから、その社会的影響力(上場企業が被る不利益の回避)を勘案しますと課徴金制度に落ち着くことも妥当なところではないか、とも思われます。ただ、受け取る報酬の1.5倍の金額の課徴金といえば、これはほとんど制裁的意味しか持たない(つまり、不当に得た利益を返還する、といった意味合いではない)わけでして、実質的には「刑事罰」を課すに等しいものではないでしょうか。私は監督官庁のない資格者ですから、有事におきまして、金融庁や証券取引等監視委員会と対峙しなければいけない公認会計士さん方のお気持ちは十分にはわかりかねますが、本当にそれでいいのでしょうか?

たしかに、平成17年の証券取引法改正によりまして、継続開示義務違反行為に及んだ発行体企業につきまして、ある程度の制裁的な意味合いでの課徴金が課されるようになりましたので、これと平仄を合わせる形で制裁的課徴金を導入することにも一理あるようにも思えます。しかしながら、私の理解では、平成16年に証券取引法に課徴金制度が導入された当時は、伝統的な憲法の二重処罰禁止ルールにしたがって、不当利得剥奪的な課徴金制度として導入されたはずでありまして、それが平成17年に、継続開示義務違反行為に制裁的課徴金制度が導入されるに至ったところでの理論的整合性につきましては、ほとんど説明はされていないように思います。(刑事罰として罰金が科される可能性があるにもかかわらず、どうして刑事手続きによらずに、制裁的な罰則金を科されるのでしょうか、といった問題。もちろん両方が科される場合の金額に関する調整規定といったものは存在するわけでありますが・・・)結局のところ、あまり理論的に詰めることもなく、社会政策的な目的(資本市場を舞台とする企業不祥事を抑止したい、といった目的)から、監査法人による粉飾加担を防止するための制裁措置として、場当たり的に課徴金制度を導入するのではないか、と推測されます。

そもそも監査法人に対しましては、刑事罰の導入が見送られ、課徴金制度だけが導入されるわけですから、「ともかく払っておいたほうが監査法人の将来にとって好ましいのであれば払ってしまおう」といったインセンティブが働くようになるかもしれませんね。でも、実際に問題の企業における監査担当者には刑事罰が適用されるわけですから、行為者が否認をして、最終的に刑事的に「無罪」となった場合、監査法人はすでに課徴金を払ってしまっていた、という事態にもなりかねません。(課徴金賦課の条件として、行為者の刑事事件が確定したこと、とすることも理論上はありえますが、これでは法人に対する両罰規定、つまり刑事罰と同じになってしまいますから、やはり行為者の刑事事件とは別個の手続きになるのでしょうね)監査法人が得た報酬といいましても、これはほとんどが会計士さん方の労働の対価でしょうし、虚偽記載の報告書によって「濡れ手に粟」の利益を監査法人が得たものではありませんので、報酬の1.5倍の課徴金といいますのは、たいへんな制裁金と言えそうであります。粉飾への加担ということを刑事的な発想で考えますと、「会計基準の解釈」や「担当会計士の故意過失」「事業会社の役員との共謀」「監査法人の担当会計士に対する注意義務の有無」などなど、刑事法的には有罪と無罪を分ける論点がかなりたくさんあると思われますし、そういったところを十分反論することもなく「刑事罰よりもまし」ということで払ってしまうことになってしまうのでしょうか?

独占禁止法や証券取引法など、それぞれの法目的が異なりますので、課徴金の持つ意味もそれぞれの法によって異なることには異論はありませんが、監査法人には刑事罰を導入しないからといって、実質的な刑事罰と評価しうる課徴金制度をそのまま受け入れていいものかどうか、(刑事法学者の方はもちろんのこと)監査法人さんのほうでも、今後の具体的な立法過程に十分ご留意いただいたほうがよろしいのではないか・・・と思った次第であります。

3月 2, 2007 監査法人改革の論点整理 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年3月 1日 (木)

金融庁が三洋電機への課徴金付加見送り?

読売新聞によりますと、金融庁は三洋電機の粉飾決算疑惑について、課徴金処分を見送る可能性が高いとのことであります(ニュースはこちら)理由とするところは、証券取引等監視委員会が「今回の件は悪質とはいえない」と判断している、とか。今回の件、もし見送りということになりますと、企業コンプライアンス的にはとても重要な事例になるのではないでしょうか。なにが見送りの原因になったのか。会計基準の判断に起因するのか、それとも後日、自主的に修正したことに起因するのか。「悪質とはいえない」といった報道が正しいとするならば後者のような気もいたしますが、もしそうだとしますと、たとえ企業不祥事が発生したとしましても、その後企業が自律的行動(ここでいう「自律的行動」というのは、次年度に修正をした、ということですが)に出ることで、その情状が公的処分においても考慮されることがありうるといったことが認められるわけでして、今後の企業行動にも影響を与えるのではないでしょうか。(とりあえず、備忘録程度にて失礼します)

3月 1, 2007 三洋電機の粉飾疑惑と会計士の判断 | | コメント (2) | トラックバック (1)

内部統制「実施基準」解説会@九段会館

大阪ではIXI社の架空循環取引が、特別背任容疑で強制捜査となっておりまして、私もあまりノンキにブログを書いている場合ではないのでありますが、ちょっと28日、1日と顧問先の東京支社での会議のため上京中でありまして、いまは食事会も終了して神田のホテルで書き込みをしております。(しかし日興の上場廃止の記事といい、IXI社の強制捜査といい、本当に最近は粉飾決算に関連する報道が多いですね。民事再生や刑事事件など、にっちもさっちもいかない事態から粉飾が発覚した、というのも多いですけど、やはり証券取引等監視委員会による調査や、内部告発による調査開始事例のようなものも、増えていくのでしょうか)

そんなわけでありまして、本業のほうの会議開始時間まで時間がありましたので、九段会館で開催されました経営法友会、商事法務によります「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」の解説会に参加させていただきました。東京で解説会に参加させていただくのは先日の日本取締役協会におけるH部会委員による解説会以来、二度目であります。本日は金融庁企業会計審議会を担当されておられるN調整官の2時間にわたる解説でありました。なお、以下の記述はすべて私の感想でありまして、「N調整官がこう言いました」といった報告ではございませんので、そのつもりでお読みくださいませ。ただ、N調整官の全般にわたるトーンとしましては、やはりこのブログの論調どおり「内部統制報告制度はとても重要な制度ではありますが、あんまり騒がないでくださいね。いまからでも、平成21年3月までまだ2年ありますよ。だいじょうぶですよ」といった感じでした。(そうでしたよね>お聞きになられた皆様)

つい先日、これまでの集大成としての内部統制審議会による意見書が採択されたわけでありますが、今後は政令、内閣府令によりまして、制度適用企業の範囲、内部統制報告書、監査証明書の様式が決定され、また意見書に盛り込まれた基準が一般に公正妥当と認められる監査の基準(会計基準)となることが明らかにされます。これらはほとんど形式的なものでありまして、今後期待されるのは内閣府令とは別の「事務ガイドライン」であります。しかしながら、この「事務ガイドライン」でありますが、きょうN調整官からお聞きしたところでは、あまり具体的な内容になることは期待できないようであります。(これはあくまでも私の推測にすぎませんが)、要は実施基準に定められた構築、経営者評価、監査人監査の基準を補足する程度のものに過ぎないようであります。ということで、私としましては、もう今後はあまり公式なところから「実施基準Q&A」のようなものが出ることは期待しないほうがいいのではないか、と思います。(もし情報通の方がいらっしゃいましたら、またお教えいただける範囲で結構ですのでご教示いただければ幸いですが)

ふと思いましたが、金融庁の方のお話というのは、おそらくどなたの解説をお聞きしても、本日のN調整官と同様、公式に発表されたもの以外に「初耳」として参考になることはあまり聞けないのでしょうね。これはお立場上、やむをえないところかと拝察いたします。(著名な学者や実務家の先生方の集まる証券取引法研究会におけるある金融庁の課長さんの解説でも、ほぼ同じ内容だったように記憶しております この課長さんの解説内容は財団法人日本証券経済研究所のHPで閲覧可能であります)きょうのお話にしましても、これまでの内部統制審議会がリリースしている意見書の中身を丹念に読んでおりましたら、この解説会で新たに参考となるお話というものは出てこなかったように思います(私は本当に2時間、聞き耳をたてて拝聴しておりましたが、ほとんど新しい情報はなかったように記憶しております)たとえ新しい情報が出てこなくても、この意見書のここが重要、といったところが力説されればよいのですが、まぁそのあたりも、これまでの内部統制部会の委員の方の「全国行脚解説会」でお聞きしたところとほぼ同様でありました。ただ、唯一、「評価範囲の決定方法」のあたりをかなり具体的に説明いただいたところは参考になったかなぁとは思っております(たとえば棚卸資産評価のための業務プロセスにおける「原価計算プロセス」については、どこまでのプロセスを評価範囲にとりいれるべきか・・・など。これはパブコメの質問に由来しているのかもしれませんが)

しかし考えれば考えるほど、疑問のわく制度であります。あまりにたくさん疑問があって、いつも解説会を終えると夜も眠れなくなりそうな思いになる(じつはぐっすり寝ていたりするわけですが(^^;))のですが、きょうもN調整官が力説されたところからひとつ採り上げますと、内部統制監査業務と非監査証明業務の同時提供につきましては、意見書記載のとおり(ご承知のとおり)有効な内部統制の構築のためには経営者の判断の独立性を害しない範囲においては事前にいろいろと指導することは妨げない、といったところが解説されておりました。経営者評価に対する監査は年度末に行われるわけですから、評価もしくは監査のための内部統制の性質上、これは私も異論はございません。ところで、一方におきまして、「評価範囲の決定方法」では売上高の3分の2程度に達するまでの拠点を重要な事業拠点として選定することが実施基準で盛り込まれております。つまり、業務プロセスの評価のうち、いわゆる「決算財務業務プロセス」以外の業務プロセスの評価範囲としては、その企業のどの部門の内部統制を評価するかは、その範囲を経営者が選択することになるわけであります。でも、これもあとで経営者と内部統制監査人との間におきまして、選択すべき事業範囲に差が出てしまいますと、後戻りはできないわけでしょうから、先ほど述べたとおり、期中におきまして、どの事業範囲を選択すべきか、相談協議が行われるものと思われます。ところで、こういった(評価の範囲に関する)協議を行ってしまいますと、経営者としましては「じゃあ、期末に内部統制監査の範囲からはずれる3分の1のところで粉飾しちゃおう」といったことにはならないのでしょうか?たしか財務諸表監査に付随して、これまで行われてきた内部統制監査というものは、財務諸表監査の重点項目の決定やサンプリングの程度を決定することを目的として行われてきた、とお聞きしております。そういったものは経営者の側では監査計画が立つまではわかりませんので、私は「なるほど」と納得しておりました。しかしながら、財務諸表監査とは独立した監査体制となるこのたびの内部統制監査におきましては、そういった期中における経営者と内部監査人との連携(打ち合わせ?)が必要となるわけでありますから、むしろやり方次第では、粉飾決算がやりやすくなってしまうのではないかと思うのですが、いかがなものでしょうかね?それとも四半期報告制度のなかで、ある程度は内部統制監査もやってしまうのでしょうか?

もうひとつの疑問でありますが、最近とくに内部統制報告制度が世間で話題となるときに「文書化」といった言葉が使われておりますが(N調整官によりますと、意見書のなかでは「文書化」といったことは一切言っていない、と強調されておられましたが)、この文書化なる言葉の定義というものは共通語として存在しているのでしょうか?(もしあれば教えていただきたいのですが)内部統制報告制度(つまり金融商品取引法上の制度)を語るときに「文書化」というのは「何を」文書化することを示しているのでしょうか?私には考え方としては二つあるように思えるのです。ひとつは業務プロセス自体の「文書化」です。これはフローチャートを作成して、その図面や業務記述書に表れる業務の流れがそれぞれ文書によって確認できる、ということになりますね。おそらく「膨大な量になる」と言われていることからすると、こちらが「文書化」の本筋かと思われます。しかしながら、私にはもうひとつの文書化、つまり経営者評価や監査人による監査プロセスのための「文書化」というものがあると思います。経営者が何をもって「内部統制が有効」と判断したか、その証憑としての文書、監査人が90%の信頼度を得るためのサンプリングを行うことを容易にするための文書や、反復継続的に発生する定型取引であることを理解するための文書などがそれであります。財務報告の信頼性確保のために、本当に前者の文書化というものが必要なのでしょうかね?その信頼性が崩れることで会社が損害を被るリスクと、膨大な文書化のために事務が停滞したり、内部統制費用を要するリスクとを比較すれば、明らかに後者のほうがヤバイのではないでしょうかね。経営者による不正リスクと末端における事務処理上の過誤によるリスクでは比較にならないほど前者のほうが大きいわけでして、その対応といったものは「文書化」では補えないことは明らかでしょうし。本日のN調整官のお話をお聞きしておりまして、業務プロセスにかかる内部統制の不備の検討につきましては、内部監査人による監査基準は公表されておりますが(つまり、統制上の要点ごとに25件のサンプルが必要)、経営者の有効性評価のための確認作業の仕方については意見書では明言さえていないと思われます。そうであるならば、文書化が必要なのはむしろ経営者が「私はこれでもって有効性を確認しましたよ」と堂々と表明できるに足る「証憑」としての文書であって、業務プロセスそのものを「文書化」するものではないという考え方も成り立つのではないでしょうか。

ところで、最新号の「旬刊経理情報」(3月1日号)におきまして、(私が勝手に「ミスター内部統制」と思っております)眞田先生が「適正コストでコンプライアンスを達成、J-SOX法対応への心構え」と題する論稿を出されております。涙が出そうになるほど(2ちゃんねる風に申し上げると「禿げしく同意」といったところでしょうか)、眞田先生の意見はスッキリと頭と心に浸み込むのであります。おそらく法律家に一番ウケるのは、この眞田先生の(金融商品取引法上の)内部統制報告制度の考え方ではないか、と。「実質的内部統制」と「財務報告に係る内部統制」をまずきっちり区別して議論することはとても大事だと私も思っております。(その差異を十分認識したうえで、効率性を考えながら、企業は会社法上も金融商品取引法上にも役立つ統制システムを検討すべきではないかと思いますし、費用の関係上、内部統制報告制度上での対応のみ、ということもありかと。)ともかく内部統制報告制度の「費用対効果」を考えないまま計画を練りだすことは、「内部統制リスク」を背負うことになるはずですし、とても不安になりますよね。(きょうは妻としゃべる時間もなく、ホテルで過ごしておりますので、ずいぶんと長くなってしまいました・・・・・)

3月 1, 2007 「内部統制議論」への問題提起 | | コメント (8) | トラックバック (0)