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2007年3月19日 (月)

監査役協会「内部統制監査の実施基準」草案公開

本日(3月18日)は早朝から日本NPO学会年次大会のシンポジウムにて、パネリストとして参加させていただきました。主に一般社団法人における内部統制システムの整備(大規模一般社団法人)について発表いたしました。昨年成立した一般社団法人法におきましても、理事会の専決事項として、内部統制の基本方針を決定する義務が規定されており、ほとんど会社法の規定と変わらないものであります。ただ、自由に収益活動はできるけれども、社員に持分の概念がなく、したがって配当概念もない非営利法人たる一般社団法人について、どれほどの内部統制システム整備に対するインセンティブが理事会や執行機関に働くのか、未知数な部分が多いのではないでしょうか。(といいますか、会社法におきましても、その法制化の実効性については未知数ではありますが・・・)それと、学会に参加させていただいての印象でありますが、営利企業が一般社団法人の利用を検討しようとする場合、税務の取扱を抜きにしては実務的にはまだ十分に詰めて検討できないような気がいたしました。

会社法の内部統制の関連で申し上げますと、3月16日付けで日本監査役協会より、「内部統制システムに係る監査の実施基準(公開草案)」が公表されております。(日本監査役協会HPより)1月19日に公表されました改訂監査役監査基準の21条7項を受けて策定されてものでありますので、これは監査役監査基準21条と一体となって監査の実務指針が示されたことになります。この実施基準策定にあたり、新たに内部統制研究の専門家たる著名な実務家、学者の方々が加わって検討されているようでして、監査役の皆様方だけでなく、会社法における内部統制システムの整備(構築および運用)に関心のある方には、自社の整備状況の確認のためにも、ぜひご一読されることをお勧めいたします。(3月30日までに意見を広く募集され、最終案を固められる予定とのこと。)なお、月刊監査役をご購読の方におかれましては、毎月、取締役会における内部統制システムの整備状況に関する実例集が豊富に掲載されておりますので、これらの実例を参照しながらこの公開草案の内容を検討してみるのもいい方法かもしれません。なお、私自身としましては、(取締役会の構成員たる)社外取締役と内部統制システムの構築、運用問題について、若干不明瞭な条文構成になっているのではないか・・・といった疑問点がございますので、意見を提出してみようかと思っております。基本的には(取締役会による)内部統制システムの基本方針の決定の「相当性」と、業務執行における構築運用状況における「不備」の有無が監査対象となっておりまして、個々具体的な整備運用ポイントでは、着眼点と検証対象も合わせて列記されております。財務報告内部統制(あくまでも会社法上の)監査のあり方や、効率性確保体制に関する監査、企業集団内部統制に関する監査など、個別に検討するとなかなかおもしろいところがたくさんありそうです。(そのあたりにつきましては、また後日ということで)

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コメント

内部統制実施基準 第Ⅱ部
「原価計算プロセスは、期末の在庫評価に必要な範囲を評価対象とすれば足りる」

監査リスクアプローチの実務 日本公認会計士協会編 清文社 294ページ
<棚卸資産残高の原価計算に関する監査手続>
棚卸資産が商品・・は、原価計算は商品の仕入単価を考慮すればよい。仕入単価を仕入請求書と照合し、平均法、先入先出法等の原価配分方法に応じて計算チェックをすることにより検証することができる。

製造業における棚卸資産の原価計算は・・・、会社が採用している原価計算制度が製造工程に照らして適切かどうか判定する。標準原価制度を採用している場合には原価差異が適切に棚卸資産と売上原価に配分されているかを検証する。原価に占める間接費が高い会社は、配賦すべき間接費の範囲、間接費の配賦基準の適切性を検討する。仕掛品は、棚卸立会時点でのチェックとともに、進捗度の妥当性を検証する

投稿: 監査リスクアプローチの実務 | 2007年3月19日 (月) 09時50分

内部統制実施基準 第Ⅱ部
「売上、売掛金、棚卸資産に至る業務プロセスは、すべてを評価の対象とする。ただし・・・財務報告の重要性も僅少である業務プロセスについては、評価対象としないこともできる」

アメリカでは軽微金額(税引前利益の1%未満)を評価対象としないようです。
同じ趣旨を別の局面で推奨するコンサルタントがあります。
http://www.itcomp.jp/a/article.aspx?aid=120
なお、評価対象は、「委託業務が企業の重要な業務プロセスの一部を構成している場合」となり、企業が重要性を勘案して決めることとなった。上場企業は評価対象とするか否かのルールを、例えば「事業目的に大きく関わる業務プロセスを他社に委託している場合、あるいは、連結財務諸表の税引前利益の1%以上になる業務処理を委託している場合」のように定める必要がある。

監査法人の中には、もう少し緩い基準を用いるところもあるようです。
http://www.ey.com/GLOBAL/content.nsf/Australia/Publications_-_In_Control June page 13 to 14
Account balance level materiality is considered in identifying the major transaction flows in these process, which are then documented (勘定残高の重要性は、取引プロセスの重要なフローを特定し、その場合には文書化する)
account balance level materiality could be computed as 50% of financial statement level materiality (勘定残高の重要性は、財務諸表レベルの重要性=連結税引前利益の5%=の50%とできる~連結税引前利益の2.5%以下は文書化しないことができます)
この後の記述で、予想する誤謬率が低い場合は連結税引前利益の3%又はそれ以上、誤謬率が高い場合は連結税引前利益の2%以下にする手法を紹介しています。

投稿: 監査リスクアプローチの実務 | 2007年3月19日 (月) 10時35分

内部統制の文書化で「自力対応」をお考えの上場企業向けの、内部統制文書化の入門でした

投稿: プロフェッショナルぼったくり | 2007年3月19日 (月) 10時40分

toshi先生、おひさりぶりです。いつも拝見しておりますが、精力的に更新されておられるようで、毎回のテーマを楽しみにしております。

さて、今回の監査役協会の内部統制実施基準、非常に内容も突っ込んだ部分があり、私もこのテーマが議論されることを楽しみにしております。ところで、先生が本題の中で触れておられるところと共通するのかもしれませんが、第3条では監査役の監査対象として「取締役会決議の相当性」と「取締役が行う内部統制システムの構築及び運用状況における不備の有無」とされています。取締役会設置会社における取締役の職務権限は業務執行を当然に含むものではありませんので、意思決定のみを職務執行とする者も取締役に就任するわけでして、いわゆる「社外取締役」については、これに該当する場合が多いのではないでしょうか。しかしながら、この第3条のかきぶりからすると、意思決定のみを職務とする取締役への監視ということがはずれているように読めます。統制環境そのものが最も重要といいながら、社外取締役に代表されるような意思決定を職務とする取締役の行動について、内部統制監査からはずれる、というのはおかしいのではないでしょうか。

きょうの日経新聞の「法務インサイド」では、社外取締役の就任と、顧問契約の継続の可否、に関する法律事務所の対応がテーマになってます。(先生読まれましたか?)そのなかで、大手法律事務所でも対応がマチマチということですが、この監査実施基準を作成した実務家のうち弁護士はいずれも顧問、社外取締役容認派のNT法律事務所の方々です。どうも、そういった事情がこの基準作成に機能しているように思えてしかたありません。
後半部分は勝手な推測ですので何の根拠もありませんが、これだけ精緻なものになってきますと、監査役の人たちもたいへんですね。内部統制そのものだけでなく、監査役監査基準そのものについても、実務と制度との恒常的乖離にならないことを願います。
長文失礼いたしました。

投稿: sara.onji | 2007年3月19日 (月) 14時05分

会計監査論 山浦久司 著 中央経済社 219ページ
損益計算書項目は、過去的な取引の集合であるので、・・・内部証拠を中心とした立証アプローチを採る。貸借対照表項目の多くは、実在ないし現在高の集合である・・・外部証拠によることができる。そのため貸借対照表項目の残高の立証をもって、損益計算書項目の抑えとする

この理論を適用すると、外部者への残高確認で売上高と売掛金の立証になり、棚卸資産の実査で販売・在庫管理・購入・原価計算プロセスの立証になるでしょう。

アメリカの内部統制監査において、業務プロセスの不備が重大な欠陥につながらなかった(6.9%:内部統制の知識 町田祥弘著 日経文庫72ページ)理由が分かりました。
【八田進二】現実的には、・・・除外とか不適正意見というケースは生じないのではないかと考えています。(実施基準を考える 同文館出版 194ページ)

投稿: なるほど | 2007年3月19日 (月) 15時44分

>財務報告内部統制(あくまでも会社法上の)
とありますが、「会社法上の財務報告内部統制」って一体何でしょうか? そんな概念または考え方ってありましたっけ? この辺を判りやすくご解説願えれば、と思います。14条(特に4項・5項)の解説と絡めて頂けると、なお幸いです。

投稿: ほるもん | 2007年3月20日 (火) 00時21分

>ほるもんさん

はじめまして。コメント、ありがとうございます。
「会社法上の財務報告内部統制」というのは、誤解のないように申し上げますが、私の言い回しでありまして、監査基準(もしくは内部統制実施基準)のなかに記載されているものではありません。(いきなり、こういった言い回しをして誤解を与えたのであれば失礼いたしました)
ただ、金融商品取引法上の内部統制と、監査役が会社法上要求される業務監査の一貫として検証すべき内部統制とは、区別して考えるべきでありましょうし、そのあたりこのたびの監査役監査の実施基準のほうでも相当気を使っているようですので、このような言い回しを使用しております。このあたりは、会計審議会(金融庁)の意見書にも、監査役監査と内部統制監査に関する記述が記載されておりますので、そのあたりとの整合性を含めて、もうすこし掘り下げたエントリーを書きたいと思っております。

投稿: toshi | 2007年3月20日 (火) 11時30分

まだきちんと読んだわけではないのですが。

内部統制はあくまで業務執行ラインの話ですから、その構築・整備・運用は業務執行取締役(2条15号)の役割です。
その他の取締役(社外取締役)は監査役と同じく内部統制の適法性を監視し、さらには監査役とは異なりその妥当性まで判断するという職責を負っていますので、立場的にはどちらかといえばいわゆる「経営者」ではなく監査役の方に近いと言うべきなのでしょう。ですから規定の仕方として別段おかしくは無いと思います。

ただそーすると、じゃあ監査役って必要なんだろうか?という疑問も無いわけでは無いんですが・・・。

投稿: とーりすがり | 2007年3月21日 (水) 15時47分

toshi先生

そうですね。すこし憶測が過ぎたような気もいたします。
申し訳ありませんでした。先のコメントも含めて、削除していただいて構いませんので。今後ともどうかよろしくお願いします。

投稿: sara.onji | 2007年3月22日 (木) 11時54分

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