新生銀行に排除命令(その3)
エディオンとビッグカメラの統合計画が白紙撤回された・・・というニュースもたいへん驚きましたが、やはりこのブログでしつこく採り上げてきました「新生銀行の広告問題」の続きをアップしておきたいと思います。(なお、「新生銀行の金融派生商品のチラシについて、いったい何が景表法違反として問題なのか?」といったところは、金融法務のご専門家でいらっしゃる行方先生のブログで詳細なご解説がございますので、そちらをご参照ください。しかし行方先生のブログは更新頻度が高いですね。。。)
前回のエントリー(新生銀行に排除命令2)におきまして、私は景表法違反(不当表示)と銀行法に基づく説明義務の関係について大いに悩んでおりました。
もし、チラシが一般顧客を誘引するための媒体であったとしましても、それで結果的にみて一般顧客が取引条件の有利さを誤認したとすれば、それはチラシによるというよりも、銀行の説明義務に重大な問題があったからではないのでしょうか。(前回のエントリーより)
今日(3月30日)に金融庁から、さっそく「広告表示を含めた顧客説明に係る取組について」と題するリリースがなされておりまして、仕組預金の顧客説明態勢に係る監督指針のなかで、デリバティブ商品を組み込んだ預金商品(つまり元本割れのおそれのある預金商品)を顧客に販売する際の説明のあり方が指導対象とされております。(「日経ニュースはこちらです)なお、仕組預金につきましては、金融商品取引法において「適合性の原則」や;「契約締結前の書面交付義務」「広告規制」などの法律上の義務が発生することになります。この金融庁によるリリースを読む限りにおきましては、金融庁は「チラシによる商品説明を含めた一連の説明義務」といった概念を念頭に置いているようにも思えますし、そうだとしますと、やはり金融庁としましては、このたびの新生銀行の景表法違反(公正取引委員会による排除命令)については省庁の立場をかなり意識しているのではないか、と推測されます。
前回のエントリーでは、私はチラシと口頭による説明をひっくるめて「表示」に該当するのではないか・・・といった発想を考えておりましたが、金融庁は逆にチラシによる表示を含めて「法律上の義務としての顧客説明」といった発想で監督指導していく、といった考え方のようであります。リスクを伴う預金については、金融商品取引法では「金融商品」の定義にあてはまります。したがいまして、たしかに銀行としても、このデリバティブ預金商品を販売するにあたっては法律上の書面交付義務が発生するわけですから、この書面とチラシを一体のものと捉えまして、不適切なチラシ頒布についても規制されるべき「説明義務」に取り込んでしまおう、との発想はなるほど・・・と思います。(私の考え方を前提としますと、事前の書面交付、といった概念が説明しきれないこととなってしまいそうですね。金融庁の発想のほうがスッキリしていると思われます)
これは曲解とご指摘を受けるところもあるかもしれませんが、やはり前回エントリーでも少し疑問を呈したところでありますが、とりわけ銀行の場合、この商品チラシと銀行の顧客説明態勢の規制を別々に議論することは、どうも「すわりがよくない」気がします。やるんだったら徹底的に(不当表示規制に関する専門家集団である)公正取引委員会の活動に任せるべきでしょうし、金融庁の監督があくまでも主たる立場であるならば、(監査役サポーターさんがご指摘のように、その法目的に若干の差があるとしましても)金融庁の監督規制のなかで「公正な金融機関の競争制限」も議論すべきではないか、と考えます。これは内部統制システムの構築場面にも通じることでありますが、一般顧客との接し方について、別々の省庁による別々の視点からの規制に対応することは、かなりしんどい作業でしょうし、非効率な管理を強いられる結果になると思います。できれば純粋な独禁法違反項目(たとえば優越的地位の濫用事例など)でもないかぎりは、金融庁による監督指針のなかで、こういった不当表示問題も議論されるほうが、現場の対応としてはスムーズではないでしょうか。ただし、仕組預金販売の誘引として行われるチラシ頒布につきましては、そのチラシが一般消費者の目にとまるものである以上は、たとえ適合性原則が存在しているといいましても、その説明のレベルは一般消費者の理解を前提とする必要はあると思いますし、そのあたりは金融庁における規制が優先すべきではないか・・・とも思われます。(なお、3月30日には、金融検査評定制度に関するQ&Aも金融庁よりリリースされています。とりわけ会社法上の内部統制システム構築を検討するにあたりましては、こういったQ&Aの中身は一般事業会社にも参考になるところが多いと思われます。もしご興味のある方は、参照されてみてはいかがでしょうか)
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コメント
Toshi先生、遅くなりましたが、広告表示と説明義務の宿題を提出しました。だらだら長くなってしまいましたので、自分のブログに載せました。お暇なとき(はないと思いますが)に気が向いたらお読みください。
http://blogs.dion.ne.jp/namekata/archives/5352755.html
新年度もよろしくお願いしますm(_ _)m
投稿: 行方 | 2007年3月31日 (土) 15時16分
行方先生、ありがとうございます。
先生のエントリー(というか、論稿といったほうがいいかも)のなかで、金融機関における説明義務の解説部分につきましては、たいへん興味深いところです。よく勉強させていただきます。(お手を煩わせてしまいまして恐縮です)
投稿: toshi | 2007年3月31日 (土) 20時04分