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2007年4月17日 (火)

会社法改正待望論?(監査役の権限強化)

(監査法人の内部統制6新たな疑問編では、会計監査責任者の短期交代制を導入することで、その地位の独立性を確保できるのではないか・・・といった自論を書きましたが、なかなか短期交代制は現実的でないことについてcritical-accountingさんよりご意見をいただきました。ご興味のある方は、TBをご参照ください。どうも、ありがとうございます)

また会計監査人の独立性に関わる問題でありますが、昨日(4月16日)の日経スイッチ・オン・マンデー「法務インサイド」では、会計士法改正案の審議入りを前にして、早くも会社法見直しについて、金融審議会・公認会計士制度部会より、強い要望があることについての解説が掲載されておりました。監査法人の体制強化や監査法人に対する監督・責任の見直し、監査人の独立性保障問題などが公認会計士法改正案の制度改革のポイントになるわけでありますが、金融審議会側としましては、会計監査人の独立性確保のためには若干課題が残ってしまったようです。この審議会の協議内容をリアルタイムでフォローされていた方でしたらおわかりのとおり、会計監査人の独立性確保のためには、「連携協調」のパートナーである「監査役」の権限強化(ガバナンス)を図りたかったのでありますが、監査役の権限強化は金融庁というよりも会社法を所轄する法務省マターの問題であるために、独自に機関設計のあり方を定めることができず(金融庁サイドで金融商品取引法を改正しての修正は無理、との意見が多かったようです)、今後の法務省の「会社法改正」に向けた動きに期待せざるをえない、とのことであります。

今回の平成17年会社法改正におきましても、会計監査人の独立性確保のために、監査役(会)の権限としまして、会社提案の会計監査人の報酬決定につき同意権が付与されることになったのでありますが(会社法399条)、単に同意権では足りず、監査役(会)が独自で会計監査人の報酬額を決定できるように(つまり報酬決定権を監査役に付与するように)すべき、との意見が出されるようになりまして、これにより、会計監査人の監査の独立性を補強すべき、とのことのようであります。筑波大学の弥永教授(金融審委員)も、会社法制定以降に会計不祥事が続発していることから、監査役の権限強化の機運が高まっていることも考慮すべき、との意見を述べておられますし、先日ご紹介させていただきました中央大学の大杉教授の「監査役制度改造論」なども含め、多方面から監査役制度のあり方への議論が始まったところではないでしょうか。また、こんな物言いをしてしまうと、またツッコミが入ってしまうかもしれませんが、現実の監査役の姿といいますと、その権限を強化してみましても、果たして独立的立場で経営陣に向かって監視機能を行使できるかどうかきわめて疑問視せざるをえないことも現実であります。したがいまして、この金融審議会の期待(会社法改正待望論)につきましては、監査役制度のガバナンス面の改正とともに、まずもって監査役制度の現実が変わらなければ、本当に会計士の独立性を補強する基礎にはなりえないようにも思われます。(ただ、現実の監査役制度を前にした場合、その独立性確保のために、監査役(会)独自で法務コンサルタントを委託する、といったことも検討されるところでありますが、これはまた別の機会に)

ところで今回の上記「会社法改正待望論」に関する記事を読んでの感想でありますが、「法務省に監査役制度の改正が期待されている」とありますので、会計監査人の独立性の問題は、いわゆる会社法上の会計監査人と監査役との関係に絞った話でありますよね。しかしながら一般投資家保護、といった観点からみますと、監査の独立性確保を目的とした監査法人制度改革を考えるのであれば会社法監査とともに、証取法監査における会計士、監査法人の独立性確保についても検討する必要があるのではないでしょうか。そもそも会社法が今回規定している会計監査人の報酬同意権については、会社法監査についてのお話でありますから、証取法監査における監査人報酬については、監査役の同意権はなんら規定されていないわけであります。(会社法施行規則126条各項が、非監査業務を含めた監査法人の報酬開示ルールを規定しているくらいではないでしょうか)この点、どんなに法務省のほうへボールが投げられてしまっても、そこで改正されたものは、やはり会計監査人に関する規定ということになりますので、証取法監査についての監査報酬は経営陣と監査法人とで定められることに依然として変わりはないはずです。つまり、監査役制度を変容させてみても、それが「監査の独立」に機能するところはごく一部に限定されてしまうのではないか、との素朴な疑問がまたまた出てくるわけであります。このあたりはどのように考えればいいのでしょうかね?それこそ「公開会社法」を定めて、そのなかで企業が監査法人に支払うべきすべての報酬について、監査役が提案権を有する、とすべきなのかもしれません。金融庁と法務省が足並みを揃えて、監査制度のあり方を検討していかねば、監査役と会計士との連携協調がうまく機能しないのではないかと思いますが、どうなんでしょうか。

4月 17, 2007 「公開会社法」への道しるべ |

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さて、掲載するのがすっかり遅くなっちゃいまいましたが、先週金曜日の中央大学法科大... [続きを読む]

受信: 2007年4月17日 (火) 14時08分

コメント

 本題からは少しずれることかもしれませんが、先生の「現実の監査役の姿といいますと、その権限を強化してみましても、果たして独立的立場で経営陣に向かって監視機能を行使できるかどうかきわめて疑問視せざるをえないことも現実であります」と言うご指摘は、全く同感です。

 歯に衣着せず申し上げますと、監査役の独立性に関して根底にある問題は、権限の大小ではなく、監査役の「意欲」と「能力」にあると感じるからです。したがって、監査役の独立性を高める根本的な解決策は、監査役の権限を拡大することではなく、意欲と能力に富む人材を監査役に選任することである、と考えています。

 監査役をしている友人が次のようにぼやいていました。ーー自分のところでは、親会社の監査役を社外監査役としてお願いしている。先日、会計監査人から、ある案件で不正の要素が無いか業務監査をして欲しいと依頼された。早速調査を行い、監査役会で報告したところ、「こういうことをなぜ君がするのか」と聞かれた。取締役の適法性監査は監査役業務の根幹であり、しかも対象の取締役には社長も入っている、と答えたところ、社外監査役は、「そういう時は、まず君が調べるのではなく、執行部に調べさせて、その結果を見ればいいのだ。社内が難しければ、外部に委託すればよい」と平然と言われたとのことです。その友人は、驚きを通り越して、唖然とし、ひそかに親会社の監査役にはどういう人がなっているのか、聞き出したところ、社内の噂では、能力的にみて監査役の適格者は歴代ほとんど選任されていないとのこと、そうしたことから監査役業務について、間違った伝統が形成されているのではないか、と感じたとのことです。

 極端な例かもしれませんが、友人の言うとおり、監査役の根幹業務ですら、他人にやらせ、自分は相当性判断のみで糊塗しようとする程度の人が、大会社の監査役に選任されているという現実こそが問題ではないかと思います。こういう人たちにいくら権限を付与しても、「猫に小判」以外の何ものでもありません。先生のご指摘に深く共鳴する所以です。

投稿: 酔狂 | 2007年4月18日 (水) 12時32分

>酔狂さん

いつもご意見ありがとうございます。
少し生意気な物言いだったかもしれませんが、「意欲」と「能力」肝に銘じておきます。
少しでも、監査役の活動がガバナンスのなかで注目されるようになれば、いつか今度は機関投資家にも、そういった監査役の活動が評価され、相乗効果によって適任者が選抜されるようになる、といった好循環が生まれるようになれば、と思います。ただ、現実は酔狂さんがあげておられるような具体例がまだまだ多いように聞いております。この問題は当ブログの主たるテーマですので、また最近の監査役監査基準の改正などとも絡めて、いろいろと取り上げていきたいと思っております。

投稿: toshi | 2007年4月19日 (木) 03時15分

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