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2007年5月31日 (木)

独立第三者委員会の構成

(業務中に備忘録として記載しておりますので、内容がラフな点をお許しください。誤記がありましたら、追って訂正いたします)

(追記)コメントをいただいております「けんけん」さんの訂正箇所にご留意ください。

読売だけが報じているようですが、昨日(5月30日)の企業価値研究会(経済産業省)の会合において、敵対的買収防衛策の発動について判断する「独立第三者委員会」のルール作りについて審議されたようです。(読売新聞ニュースはこちら)そのなかで、判断の中立性を確保するためには社外取締役は構成委員としてはふさわしくない、といった基準が示される可能性のあることが報じられています。そのほかに、検討対象としては、経営者側に近い立場として、社外監査役、取引先、顧問弁護士なども含まれているとのことで、「独立第三者委員会」の委員の属性問題だけでなく、広く企業意思決定に関与する立場の人たちの「利益相反問題への対応」にも突っ込んだ議論に発展する可能性があるのではないでしょうか。(といいますか、私個人がそういった議論の発展に期待している・・・とも言えそうですが)

そういえば、総合メディカル社は、4月中旬に導入したばかりの買収防衛プランについて、昨日(5月30日「独立第三者委員会委員変更のお知らせ」を開示しておられました。導入時の独立第三者委員会委員の構成は、大株主先(おそらく取引先)経営陣から2名、弁護士1名といった構成でしたが、このたびは独立性を配慮して、大株主企業からの2名の方は退かれて、弁護士さんはそのまま留任、新たに公認会計士さん1名ほか、公正性に疑義が出ない企業から現役監査役をされている方1名が就任されたようです。私の記憶では、議決権行使助言会社であるISS社やグラスルイス社などのインタビュー記事(商事法務)では、それほど独立第三者委員会の構成員の属性についてはうるさくおっしゃっていなかったように思いましたので、「たいした問題ではないのかな」と思っていたのですが、企業価値研究会のほうで問題として採り上げられていたんですね。300社以上の防衛策導入企業のうち、85%程度は第三者委員会が構成されている、ということなんで、また今後いろいろな動きがあるかもしれません。(ちなみに、私も某企業において就任しておりますが、完全に独立性のある委員として就任しております・・・(^^; )

5月 31, 2007 独立第三者委員会 | | コメント (5) | トラックバック (0)

事業リスクと内部統制の基本方針(その2)

またまた昨日のエントリーには、たくさんのご意見を頂戴しまして、どうもありがとうございました。監査役サポーターさんがおっしゃるとおり、わずかばかりの情報から、連結グループ企業15万人もの従業員がいらっしゃる日本の代表企業群のことを軽々に論じることは少しばかりためらいもございますが、常識的にみましても、10人ばかりの社員で23億円の会社資金を操作する・・・という事態はかなり異常ではないかと思いますし(これが組織ぐるみで23億・・・ということでしたら、たいしたことないのでは・・・ともいえそうですが)、昨年のNECS(子会社)における多額の架空取引とも併せ考えますと、社会的な非難の対象となってもやむをえないところがあるかもしれません。なお、本日(5月30日)のフジサンケイビジネスアイの記事におきましては、一連のNECの資金還流を解説したうえで、組織的な犯行といったニュアンスで書かれています。(フジサンケイビジネスアイの記事はこちらです)

昨日のエントリーへのいろいろなご意見を拝読いたしまして、「こんな不祥事が発生した。しかも内部統制システムに関してはレベルの高いものを構築しているにもかかわらず。だから内部統制に高額の資金投入はあまり意味がない」といった論調にもある程度は首肯しうるところがあるようにも思えます。ただ、交通整理をしておかなければならないのは、私の場合は(とくに会社法が規定している)内部統制システムの構築はあくまでもリスク管理を目的とするものであること、つまり不祥事リスクについては人間の利益獲得を目的とする集団である会社においては、不可避であることをまず認めて、その早期発見や被害額を最低限度に抑制するための仕組みと考えております。そして、「企業の体質改善」といった構造そのものを検討することも、こういった内部統制システムの構築と無関係とはいえないと思っています。ひとつの例として内部通報制度(ヘルプライン)が挙げられます。これは、企業体質が「不正を許さない構造」に一歩でも近づくものであれば、集団のなかにひとりでも真剣に声を上げる人が出てくることによって成立する制度であります。つまりいくら精密な内部通報制度を確立したとしましても、不祥事を仄聞する従業員の意識改革(たとえば10人のうち1人でもいいので)が期待できなければヘルプラインは機能しないわけでありまして、要するに構造改革の努力なしには内部統制システムの有効性は保証されないものと考えられます。もちろん異論もあるかとは存じますが、こういった意識改革のためには、社長の関与というものはとても大切だと思いますし、たしかに無力な場面もあろうかもしれませんが、「不祥事防止はリスク管理そのものである」の考え方からすれば、目に見えないところで(公表されていないところで)相当数の不正行為を早期に発見し、またその被害を極小に低減させているかもしれません。

これは単なる思いつきでありますが、この23億円の還流に関与した社員たちも、また昨年の架空取引事件に関与したNECS社員の行動も、いずれも2000年ころからの不祥事であります。ところでNECは2000年4月から社内カンパニー制を導入しております。おそらく事業ポートフォリオの見直しとして、インターネットソリューションに特化した3部門に資源配分を集中させるようになったようであります。こういった社内カンパニー制は現在も存在するものと思いますが、こういった制度が必要以上にカンパニー間での売上競争を助長していなかったのか、経営トップによる管理の目が社内カンパニー制度の拡充によって「目の届かない」範囲を作ってしまったことにはならないのか・・等、いろいろな点も検討しておいたほうがよろしいのではないか、と思っております。1990年代から、NECの場合には防衛庁事件などにも関与していたことがありましたので、単なる偶然かもしれませんが、横領開始の時点と、カンパニー制導入の時期がほぼ一致するということで、なにか企業戦略のあり方と今回の不正を生み出す環境変化との関連性も当然問題視されていいようにも思えます。(以上)

5月 31, 2007 会社法における「内部統制構築義務」覚書 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月30日 (水)

事業リスクと内部統制の基本方針

昨日は京都地裁で、本日は名古屋地裁、連日ちょっと遠方に出かけておりましたので、少し疲れ気味です。 (; ̄ー ̄A  大杉先生のブログで監査役と会計監査人との関係についてご質問を受けておりますし、また酔狂さんやコンプロさんなど、常連の皆様より、きちんとしたコメントを頂戴しておりますので、(少しばかり考える時間を頂きまして)また改めてお返事をさせていただきます。

昨年3月にNEC子会社の架空取引と企業コンプライアンスと題するエントリーを書きましたが、今度はNEC本体にて社員8名ほどが関与する社内横領事件が発覚したようであります。(朝日新聞ニュースはこちら)US-SOXと不正防止さんは(このブログにおきまして)以下のとおりコメントに書いておられます。

NECは米国に上場しているため、昨年度からUS-SOXに基づく厳格な内部統制監査を受けています(監査報酬は7.4億円)。しかし、多額の従業員不正を、会社の内部統制評価や公認会計士の内部統制監査で見つけることはできませんでした。摘発したのは国税局です。 US-SOXによる「内部統制」監査は、お金がかかることが問題ではありません。担当者が単独で犯す誤謬しか発見できない制度であることに、重要な欠陥があります。監査の手法に欠陥があるのですから、内部監査部が監査法人の品質管理審査を受けても、実施基準を超えて連結売上高の75%を文書化しても、IT全般統制で全社的なエクセルシートの洗出しとパスワード保護管理をしても、不正防止効果を全く期待できないと思われます。

さすがに私も無力感は否めないところであります。こうやって一年以上も前に自分が書いたエントリーを読み直してみますと、端緒こそ内部調査と国税調査、ということで異なるところはあるものの、時期的にも重なるところが多いようですし、「組織的関与があった」とは申しませんが、社内における構造的なリベート体質のようなものの存在を疑われてもしかたないかもしれません。HPで公表されているNECのコンプライアンスへの取り組み姿勢といったものは、将来における再発防止策を中心とするものでありまして、それ自体は文句のつけようのないものと思いますが、こういった二つの社内横領事件を見比べますと、企業不祥事が発生しやすい社内の構造的な体質をどう変えるか・・・といった方向での防止策のほうが効果的ではないかと思います。(まあ、たしかに「ウチは構造的に問題がある」とは、なかなか発表できないことは承知しておりますが。それでも真剣に再発防止を検討するのであれば、環境整備への取り組みのほうがむしろ重要ではないかと思います)たとえば前回NECEで判明した架空取引によるリベート還流でありますが、発覚した時点におきまして、これを単なる一社員の犯行とみるのか、それとも社内(もしくは企業グループ内)で他にも同様の犯行が行われているのかどうか本格的に調査するのとでは大きな差があると思いますし、そういった調査を敢行することはまさに体質を変化させるためのコンプライアンス施策の一環であると思われます。また、たいへん地味ではありますが、こういった犯行は職場仲間のなかでは結構、周知の事実だったりするわけでして(私が最初に某企業のコンプライアンス委員に就任したときがそうでした)周囲の者が内部通報制度を利用しやすい環境を整えるとか、コンプライアンスオフィサーのような立場の者を増やすといったことが「構造的体質」を変える要因にもなりえようかと思います。

これと同じことは、日興コーディアルの不正会計事件のときにも申し上げたところでありますが、将来的な再発防止策といいましても、企業文化や業界の環境、そして不祥事の原因追及によって判明した社内事情などによって、対応策のベストプラクティスは様々でありまして、単に職務分掌を強化したり、相互監視体制を強化することで再発のリスクを低減できるほど甘くはないと思っております。もし構造的に不祥事が発生しやすい社内環境が認められるのであれば、地味で時間のかかることではあるかもしれませんが、同種不祥事が社内のあちこちで発生していないか徹底的に調査することも必要かもしれませんし、社内研修を強化することが必要な場合もあるかもしれません。

ところで、ここのところ、毎月「月刊監査役」では「内部統制システムに関する取締役会決議」の各社事例集といったものが採り上げられておりまして、毎回楽しみにしているのでありますが、どこの上場企業でも「内部統制システムの基本方針に関する取締役会決議の内容」というものは、それほど変わらないものなんですよね。会社法施行規則100条をみれば、損失の危険の管理に関する体制といったものも体制整備の一貫でありますので、いっそのこと、この基本方針のなかに、各企業においてどのような事業上のリスクがあるのか、そのリスクに対して自社がどのように対応するシステムを構築するのか(あるいは、したのか)といったことを明記したほうがいいのではないでしょうか。また、グループ企業であるがゆえに、グループ全体としての事業リスクといったものも考えられると思います。もちろん、継続企業としてのリスクといった注記内容を調べればいいのかもしれませんが、その企業が何をリスクと考え、そのリスクにどう対応しようと考えているのか、といったことを記述することで、その企業の内部統制システム構築への積極性をうかがうこともできますし、また一般株主や投資家にとっても、管理行為のうえでの企業価値を把握する資料にもなるのではないかと思います。他社との差別化をもう少し工夫してみてもいいんじゃないか・・・と思ったりしております。

5月 30, 2007 会社法における「内部統制構築義務」覚書 | | コメント (15) | トラックバック (0)

2007年5月29日 (火)

会計制度監視機構のひさしぶりの提言

昨日は「内部統制と代表者の関与」のエントリーにつきまして、いろいろとご意見ありがとうございました。やはり予想通りといいますか、現実の内部統制システム(現状把握と整備)構築の場面におきましては、経営者と担当者(外部コンサル)との距離はかなり遠いものかもしれません。(まだ他にもご意見がございましたら、昨日のエントリーにコメントを頂戴できますと幸いです。ボヤキに近いものでも結構ですんで。)

さて、先週金曜日の日経新聞の記事にもありましたように、会計制度監視機構より、本当にひさしぶりに「独立性の高い監査を実現するために(監査役と監査法人のあり方について)」と題する提言が公表されました。(提言内容はこちらのPDF)企業会計における不祥事が多発する原因のひとつとして、監査法人の独立性が十分に確保されていないことが問題であることから、これを監査役制度と会計監査人の関係を見直すことによって、あるべき方向を検討しよう、監査役の責任を問わずして、監査法人の厳罰のみを推進するという方向はバランスを失している感が否めないとのことで、いくつかの具体策が提言されております。公認会計士法等の一部を改正する法律案が国会で審議されているところでありますので、非常にタイムリーな提言ですね。

証券取引所の規則で(上場会社に対して)社外監査役に要求される基本的な能力や要件の詳細を記載した規則を策定するとか、「監査役リスト」のようなものを証券取引所が具備して、その中から上場会社に選択してもらったり、取引所が指名するなどの制度が紹介されており、それはそれで面白い提言だと考えますが、いまもっともポピュラーなご意見と思われるのが(立法論ではありますが)監査役に会計監査人の選任解任権を付与したり、報酬決定権を付与することで会計監査人の独立性を確保しようといった提言であります。これは会計制度監視機構に限らず、いろいろなところから監査役制度と会計監査人のあり方として提言されているところであります。

この提言の趣旨は、業務監査と会計監査の最終責任者である監査役の権限を強化することで監査役自身の独立性を強化して、会計監査人はその監査役の保証された独立性のもとで会計監査業務をまっとうする、といった考え方がベースにあるようです。それは結論部分におきまして「企業会計をめぐる不祥事においては、まず経営者が断罪されるべきであり、次に監査役の責任が徹底追及されるべき筋合いである。・・・監査役の責任をなんら問わずして、監査法人の厳罰のみを推進するという方向は、バランスを失している感が否めない」と記述されていることからも理解できるところでして、たとえ監査役の指揮監督下にあったとしても、会計監査人の業務上での独立性を守ることで不祥事防止の一翼を担える存在になる、といった観点からの提言だと思われます。監査役の責任が重いわけですから、まずは徹底的に監査役こそ責任問題の矢面に立つわけで、その結果として「会計監査人の責任軽減」を導く思想といえるのではないでしょうか。

ところで、会計監査人の責任軽減といった観点から「監査役と会計監査人のあり方」を考える場合、ふたつの考え方があると思います。ひとつは監査役の権限強化による考え方(つまり立法論としての会計監査人選任解任権付与を前提とするもの。監査役の独立性の傘のなかに、すっぽりと会計監査人が入ってしまうもの)と、これまでの会計監査人と監査役との法的な位置づけはそのままにして、会計監査人の業務の一部を監査役の業務で代替させ(監査役が会計監査人の業務の手足になるもの)、その監査役の代替業務を合理的に信頼することによって(つまり信頼の抗弁を会計監査人に付与することで)、会計監査人の責任軽減をはかる、といった考え方であります。私は会計監査人の責任限度を合理的な範囲にとどめながら、かつ監査役制度の強化を図ることができるのは、後者の考え方ではないかと思っております。

といいますのも、(たとえ立法論としましても)監査役に会計監査人の報酬決定権や選任解任権を付与するとなりますと、それはもう委員会設置会社における監査委員会と同様のものになってしまい、まさに監査役が妥当性監査を行うことを認め、また経営判断にも関与することを認めることになります。ここまできますと、もはや監査役は「監査」をするのではなくて「業務執行を決定する」ことに近い業務内容になってしまいます。(注)そもそも、経営陣と会計監査人との関係からみて会計監査の独立性が毀損されてしまうことを問題提起しているにもかかわらず、期待される対象であるはずの監査役自身が「経営者」になることを認めてしまっては、なんのために独立性確保をはかろうとするのか、理解できなくなってしまうのではないでしょうか。現行の会社法が認めているところの、取締役が決定する会計監査人の報酬について「同意する」ことや、選任解任に「同意する」ことあたりが、監査役本来の監査業務と言えるスレスレの場面のようにも思われます。また、監査役の独立性強化の下での会計監査人の独立性といった概念は、たとえば金融庁による指揮監督関係や、監査法人内部における組織的監査における指揮命令関係などと、どういった関係になるのか、かなり複雑な問題を新たに抱え込むことになるのではないか、という危惧も拭いきれません。さらに監査委員会とは異なる「監査役会」において、いったい常勤監査役と社外監査役がどのような役割分担をはかるべきなのか、その理想のようなものが見えてこないような気がします。

いっぽう、会計監査人と監査役との連携協調を重視して、会計監査人がその業務の一端を監査役に担ってもらう、という考え方であれば、日常の情報収集は常勤監査役に、そして財務会計的知見を必要とする会計判断は社外取締役に期待することで、それぞれの役割に応じた職務が明確になること、会計監査人の独立性が確保されにくい分野での取締役らとの交渉関係に必要な範囲で、監査役の独立性を利用する(監査役に交渉してもらう)ことで足りるのではないかと考えられること、そしてなによりも(これは先日も申し上げましたが)監査役制度の機能が発揮されているかどうか、といったことが監視検証され、対外的に評価の対象となるのであれば、そのことが監査役制度の実質的な社内における地位向上の要因になるのではないか、と期待されるからであります。(また、もし監査役制度が若干力不足の場合には、優秀な監査役サポーターが多数存在している事実とか、監査役会専従の外部専門家が存在している事実なども、その会社が監査役制度をどの程度重視しているか、といったことも評価されることになるようにも思われます)立法論を伴っての問題提起ということになりますと、それこそ監査役制度そのものを大きく変動させるような案に魅力を感じますけれども、本当に暫定的に、監査役と会計監査人との責任上のバランスの均衡を検討する、ということでしたら、やはり監査役と会計監査人との業務における分担を基本的に考え直すほうが得策ではないでしょうか。

(注)本日のお話は、「会計監査人の責任軽減・・・責任負担のバランス・・・といった観点からみた会計監査人と監査役とのあり方」について記述したものであります。純粋に監査役の独立性強化・・・といった目的のみを追求するのであれば、こういった「妥当性監査」「経営判断への関与」を前面に出す考え方自体も十分検討に値するものと思っております。

5月 29, 2007 監査役の理想と現実 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年5月28日 (月)

内部統制準備と代表者の関与

日曜日(5月27日)の日経朝刊では、ある監査法人さんの(4月時点での)レポートとしまして、「内部統制(金融商品取引法上の内部統制報告制度)の導入準備」について、上場会社の7割強が、「これから整備」といった状況にあることが報じられておりました。概要は以下のとおりであります。

これから整備が7割強(内部統制の導入準備)

内部統制の導入準備 約4分の3の上場企業が本格的な導入準備をはじめていないとのこと(日経5月27日朝刊)。太陽ASG監査法人の調査で判明した。同監査法人は「十分な試験運用ができないまま来年四月を迎える企業が出かねない」とみている。4月に開催した太陽ASG監査法人主催のセミナーに参加した上場企業278社に調査を実施。「整備に着手した」「整備が5割程度進んだ」「整備は完了した」のいずれかの選択肢を選んだ企業の合計は全体の26,2%にとどまった。残りの7割強は本格的な導入準備に至っていなかった。

(なお、太陽ASG監査法人さんの実施した調査アンケートについて、その回答項目をみますと、「整備完了」「整備は5割程度」「整備を始めた」「現状把握を終えた」「整備方針を決めた」「プロジェクトを設置した」「プロジェクトはまだない」と並んでおりまして、そのなかから選択することになっていたようであります。ご参考まで。)

こういったアンケートは昨年後半あたりから、大手の監査法人さんのほうで何度か実施されてきたわけでありますが、「約7割が未だ準備に着手していない」といった結果報告内容につきましては、あまり変化がないようにも思われます。どなたかが、コメントでも書かれておられましたが、こういった調査結果を読みますと、アメリカでもPCAOB基準2号が廃止され、基準5号が適用される(将来的に)ということでもありますので、日本における実務対応についても今後慎重に各社において判断したほうがいいのかもしれませんね。(試験運用の段階・・・ということではありますが)ところで、このブログにおきましても、現状把握に関する問題点や、現場レベルにおける内部統制整備に関する問題点などを具体的に指摘して議論されてみては・・・といったご要望も承っておりますし、私もそういったエントリーの話題を検討したいと考えております。(有益なコメントをたくさんつけていただけそうですし)ただ、そういった議論をする前に、このアンケート調査の結果を踏まえて確認しておかなければならないと思いますのは、上場企業の社長さんは、自社の内部統制報告制度の整備運用についてはどの程度、積極的に取り組んでおられるのか・・・といったことにも留意すべきではないか・・・というたいへん基本的なことであります。また、とりわけこのブログを閲覧されていらっしゃる皆様方には、内部統制報告制度のための現状把握、システム整備の必要性をどのように社長さんに説得されたのか、といった点を教えていただければ、と思います。社長さんがグループ企業全体の内部統制整備に関して、どのような方針でどのように進めていくのか、そのあたりの確認というのはどうやってされているのでしょうかね。それとも、そんなことは無視して、現場レベルでコンサルタントさんと担当者で進めている、ということなのでしょうか。私自身も、もうそろそろ抽象的な内部統制理論の是非よりも、具体的な整備レベルでのお話をしたいと考えているところではありますが、社内で一番重要なリスクがわかっていらっしゃる(と思われる)代表取締役さんの目の届かないレベルの話をしても意味がないと思われます。そこで、さきほどのアンケート調査などにおきましても、セミナーに参加された上場企業の担当者の意識と、その企業のトップの意識とでは食い違いが生じていないのかどうか、そのあたりにたいへん関心を抱くところです。(経営トップの方々によるアンケート結果報告、というものもリアルタイムにあればおもしろいと思います)いま整備されつつある内部統制システム(あるいはその補強といった作業)は社長に認識され、社長が重大と認識しているリスクをどう管理することに役立つのか、そのあたりの説明がつかなければ、「それはおかしいのではないか」といったトップの問題意識すら生まれてきませんよね。以前、このブログでも少し話題となりましたが、経営者による業務プロセスの有効性評価のためのサンプリング手法というものも、あれは経営者(および役員一同)にわかるものでなければいけないのでは・・・といった問題意識から採り上げさせていただきましたが、あの議論の際にも、そもそも正規分布の法則の適用が妥当なものなのかどうかとか、サンプルを抽出する母集団が均一であることを前提とできない場合はどうしたらいいのか、など、当該企業の経営者でなければ正しい認識が下せない前提条件がいくらでもあろうかと思います。

「何のために、そのようなシステム構築が必要なのか」そういった疑問が社長さんから出てくるのが最も健全な姿なのではないでしょうか。少なくとも内部統制報告制度によって「会計不祥事については、『社長は知らなかった』では済まなくなる」ようなものを目指すのであれば、社長さんの関与の度合いといったものがとても重要になるものと思います。私のような社外監査役の立場の者は、そういった現場レベルでの進捗を認識しつつ、その重要性を社長に翻訳するのが大きな役目ではないかと思って、そのように活動しているのが現状であります。

5月 28, 2007 内部統制の費用対効果 | | コメント (10) | トラックバック (0)

2007年5月27日 (日)

ブルドックソースの意見表明報告と附随質問

EDINETによりますと、スティールパートナーズ(正確にはSPのSPVLLC)がブルドックソース社(BS社)に対して5月18日にTOBを開始、その公開買付期間は40日間だそうであります。買付価格は1,584円ですが、現在のBS社株価は1、630円ということのこと。報道にもありますとおり、これまでBS社は敵対的買収防衛策を導入していなかったようで、急遽、アドバイザーを選任のうえ、対応策を検討中のようであります。

ともかく、BS社はSP社によるTOBに対して賛同とも反対とも意見表明をしておりません。証券取引法27条の10第1項、証券取引法施行令および発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令13条の2、第1項により、公開買付対象者は買付け開始日から10営業日以内に意見表明が義務化されておりますので、5月25日付けにて賛否留保の意見表明報告書の提出と、これに付随してSP社への質問を行っております。(BS社の意見表明報告書の内容等はこちら で閲覧できます)なお、新聞報道等におきましては、BS社の賛否留保、といった対応は意見表明が義務化されたにもかかわらず許されるのか?といった疑問が出されておりましたが、証券取引法で義務化されたのは意見表明報告書の提出でありますから、賛否どちらかの表明をしなくても、「今後も表明しません」といった内容の報告書を提出しても、とくべつに違法にはならないと思われます。(したがいまして判断留保、といった表明もなんら問題ないと思います)

ただ(ここからは私の素人考えですが)、79項目にも及ぶ質問事項について、報告書をSP社が受領した後わずか5営業日以内に(前記府令13条の2、第2項)対質問回答報告書として(SP社が)提出をしなければならない、というのは普通に考えますとかなり厳しいんじゃないでしょうか。しかも、ひとつひとつの質問に「明確かつ詳細に回答せよ」とか「具体的かつ詳細に・・」といった要望が記載されておりますので、いくらBS社の株主のためとはいえ、まともに回答するにはちょっと時間的制約がきついと思われます。(もちろん、こちらも「報告書」の提出が義務付けられておりますので、回答したくなければ、その理由を記載して回答を差し控えた報告書を提出するのは自由であります)そもそも、SP社のTOBに関する自らの賛否判断は留保しておいて、その判断のための根拠事由を収集するために相手方に質問をするといった対応はフェアといえるのかどうか、すこし疑問が残るものと私は考えております。なお、商事法務1786号には金融庁担当者の方の解説論文(公開買付制度の見直しに係る政令・内閣府令の一部改正の概要)が掲載されておりますが、その担当者の方の解説によりますと、たとえば公開買付期間が30日(延長請求ができない場合のうちの最短期間)だとすると、前半の15日間に、公開買付者と対象者、それぞれの意見を株主に提示させて、後半の15日間は一般株主の熟慮期間にあてる、したがって、意見表明報告を買付日から10日以内、対質問回答書を質問受領後5日以内と規定したもののようであります。そういたしますと、この5日以内に提出されてくる対質問報告書の内容を精査したうえで、対象者側の意見形成表明を行うといったことになりますと、(今回は公開買付期間が40日間ということで、若干長めではありますが)その意見表明には期限が付されていないわけでありますから、対象者側が一般株主に自らの主張を広報するのであれば絶対的に有利な立場に立つと思われますし、上記の制度趣旨にも反するものになるのではないでしょうか。なお、内閣府令の報告書様式の記載例におきまして、意見を留保したときにはその理由を付すること、今後意見表明する予定があるかどうかを記載することなどが定められておりますので、そもそも自己の賛否判断のための質問も許容されるかのようにも読めるわけでありますが、ここで想定されているところの「意見表明を留保せざるをえない理由」といいますのは、たとえば対象会社内において、賛否に関する意思形成過程で意見が分かれているとか、独立社外役員が強く反対(賛成)しているといったような場合を指すものであって、いわゆる社内意思形成過程を一般株主に開示する必要があることから「留保」が許容されているのではないかと思われます。したがいまして、自らの判断を形成するための質問をする必要があるために、判断を留保する、といった感覚は、どうも私にはフェアでない対応ではないか(そういったことで証券取引法が質問権を定めたとはいえないのではないか。質問権というのは、その質問に公開買付者が回答すること、それ自体を一般株主に開示させるためではないか)・・・という気がいたします。

また、以前にも少し触れましたが、楽天に対するTBSの再質問などにもみられるとおり、「どこまでの回答が得られたら、十分な回答とみなすか」といったことについて、対立(本件ではまだ対立かどうかは未定ですが)当事者間で認識が一致することなど到底ありえない話なわけですから(これは独立第三者委員会が設置され、そこが判断する場合でも同様だと思われます)、どちらがより「ルールを公正に適用しているか」によって判断せざるをえない場面が今後も散見されるようになるんじゃないでしょうか。そもそも、TBSさんも、このブルドックさんも、取締役の地位確保のためではなく、まさに株主利益を最大限守るために、十分な時間を確保して、相手方に対して多くの情報を収集しようと必死になっているわけであります。とりわけ買収防衛策を導入している企業におきましては、そのルールは自ら策定したものであるにもかかわらず、さらに相手方のルール遵守を要求したうえで、自らの判断のもとにルール適合性を判断するわけであります。ということは、裏を返せば、たとえばMBOの場面におきましても、一般株主がTOB価格が公正なものであるかどうかを判断するために、対象企業の取締役らは(公正な価格による一般株主排除の手段がとられているかどうか、を判断するための資料提供として)最大限の情報提供に尽力しなければならないはずでありまして、もし個別株主からの要求があれば、その要求にも最大限度、回答しなければならないのではないでしょうか。(そうでなければ、取締役の態度としては一貫していないはずであります)敵対的買収者が現れたときには、相手方に自分たちの納得のいくまでの情報提供を要求しながら、いっぽうでMBOを敢行する際には、政令や内閣府令で規定されている最小限度の情報開示で足りる、と考えるのは著しくフェアではないと思いますし、法的にもかなり問題性が高いのではないか・・・と、ふと素人考えではありますが、疑問が生まれるところであります。(なお、最後の部分につきましては、ビジネス法務7月号におきまして、田中教授と清原弁護士による座談会記事におきましても、少し触れられているところでありまして、今後さらに大きな論点として採り上げられるのではないか・・・と予想しております。M&Aにつきましては、私には素人的発想しか思い浮かびませんが、上記座談会記事は非常に参考になるところが多く、関心のある方は6月号の前半部分と併せてご一読されてみてはいかがでしょうか)

5月 27, 2007 ブルドックソースvsスティールP | | コメント (5) | トラックバック (0)

2007年5月25日 (金)

委任状勧誘と議決権行使の助言

以前からたいへん尊敬申し上げておりました、ある企業の部長さんと夕食をご一緒させていただき、私の「ある事業」に関するご相談にのっていただきましたが、つくづく弁護士という仕事しかしたことのない人間にとってはビジネスはムズカシイものと思い知らされました。弁護士会への根回し(事前相談)といったあたりはなんとか大丈夫なんですが、マーケティングのセンスもありませんし、事業計画の中身も曖昧だし、組織の動かし方も不徹底・・・、そもそも今までは誰かがレールを敷いてくれて、そのうえで私は踊っていればよかったのでありますが、自分でレ