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2007年5月11日 (金)

株価算定評価書の開示について

M&Aフィナンシャル・アドバイザリー・サービスの著者でもいらっしゃる公認会計士の澤村八大先生のブログにおきまして、MBO等における第三者による株式算定書の開示制度について、感想をお書きになっておられます。ほかのM&A関連のブログでも少し話題になったりしておりますが、「第三者による株価算定評価書」といったものは、実際にバリュエーションに携わる方々にとっても、たいへん興味のあるところのようですね。こういったものは、あまり「教え合いっこ」はなされないようであります。(株価算定の方法といったものは、これだけ人材が流動化した時代においても、企業秘密のようなところがあるのでしょうか?)

MBOネタにつきましては、当ブログにお越しの皆様方には、おそらく書き手の能力に問題があるようでして、あんまり人気の高い話題ではございませんけれども、もうすこしおつきあいください。(^^;;、昨年の12月13日に証券取引法の企業情報開示に関する内閣府令等(証券取引法施行令の一部を改正する政令および発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令)が改正されまして、MBO等(経営者や親会社が関与するTOBにより、株式非公開化を図る制度)において公開買付けを行おうとする者は、買付届出書の添付書類として第三者作成にかかる株価算定書が要求されることとなりました。したがいまして、MBOにおける経営者関与会社が、TOB価格を決定する際に判断資料とした株価評価書がEDINETでも閲覧できるようになったわけであります。(どういった会社のMBO手続きのものが閲覧可能であるか・・・というところは澤村先生のブログに記載されております)

ただし澤村先生も指摘されておられるように、公表される株価算定評価書は、公開買付届出書を提出した者、つまりTOBをかける立場の方だけでありまして、MBOの際にもっとも知りたいところの「意見表明者が参考とした第三者作成にかかる株価算定書」については公表されません。(おそらく、これは競合TOBの場合の株主への情報開示を念頭におかれているものと思われます。ただ昨年12月に東証もMBOの際の情報開示に関する要請書、「合併等の組織再編、公開買付け、MBO等の開示の充実に関する要請について」と題する書面をリリースしておりますが、そのなかでは、MBOの際における対象企業側の第三者算定評価書も東証への提出資料としては要請されておりますが、公衆縦覧に供されるべき資料には含まれておりません)もし、「賛同のお知らせ」のように、MBO対象会社のほうも、意見表明書に第三者による株価算定書の添付が義務付けられたら、なかなか情報開示も充実するのではないでしょうか。とりわけ、澤村先生が感想でお書きになっているように「評価書の中身は、各社さまざまで、それぞれの個性が出ている」といったものでしたら、買付側の第三者と、対象企業の第三者がまったく別個の算定基準を用いているにもかかわらず、どうして対象企業が買付け側の価格に賛同するに至ったのか、そのあたりの経緯を詳細に説明しなければならないと思われます。(また、もしほとんど同じような内容でしたら、逆に公正性が強く疑われる結果になってしまうかもしれませんよね)

たとえば、5月7日に代表者の100%出資会社による公開買付けによってMBOを行うことがリリースされましたP社の場合、Nコーディアル社が買付け者側の第三者機関として対象会社の株価算定書を作成しておられますが、N社はフィナンシャルアドバイザーたる地位にあって、この案件の成功報酬をいただく立場にあるようです。また、算定根拠はこれまでの開示資料と、対象企業の事業計画書によるものであって、特別なDDはされないそうです。つまりフェアネスオピニオンではないということですよね。そして、基本は市場株価算定法によるものとして、そこに類似会社比較法、DCF法を参考にするといった手法とのことで、直前の株価をもとに評価する、というもののようです。正直申し上げて、素人ながら、なんでこれが公正な価格算定のための資料になるのか、大いに疑問であります。公表しなければならない情報が公表されずに企業側に一方的に存在している状況があって、しかも市場株価を基準に算定する(つまり一般株主に市場株価での売却を強要する)となると、これはけっこう問題になりそうな雰囲気が漂っていませんかね?(もちろん、適時開示すべき情報で、公表していないものはない、ということであればいいわけですが。でも、MBOをリリースした後に、経営者に競合してTOBを仕掛けるファンドなどが現れないように、企業に有利な情報を公表しないインセンティブというのも働くような気もします・・・)しかも、この評価書を算定した機関が、買付け届出者の代理人として交渉したり、成功報酬を受ける、ということになりますと、交渉成立への大いなるインセンティブが働くわけですから、買付者(=対象企業)が納得できないような評価内容をそもそも記述するはずがないと思われますが、いかがでしょうか。

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コメント

ブログのご紹介ありがとうございます。

バリュエーションの方法については、最近では各種解説書が出ている上、ご指摘のとおり投資銀行における人材の流動化も激しくそれほど「企業秘密」があるわけではないのですが、それでもやはり「アート」の部分あったりするのでやっぱり他社の例というのは気になるものです(あんまり見えませんでしたけど・・・)。
あと、報告書のデザインとか(笑)

ところでP社の件ですが、ざっと見た限りではいちおうP社側でも別の機関に算定依頼しているようですよ。N社の算定も、市場株価法とDCFと類似会社比較は並列的な位置づけで市場株価メインというわけではないようですが(別のP社?)

投稿: M&A会計士 | 2007年5月11日 (金) 22時18分

>M&A会計士さん

また、新たに関連エントリーを立てていただき恐縮です。
むずかしい計算等はわかりませんが、こういった評価書をプロの方がどのような意識で作成されるのか、そのあたりがとても参考になり、ありがたく思っております。5月12日にまた新しくエントリーをアップしましたので、またご意見賜れば幸いです。

意見表明側も、別機関の算定依頼をしていることは承知しております。MBOに限って考えますと、自社が依頼されている第三者機関の算定書こそ閲覧できればいいと思うのですが・・・・

投稿: toshi | 2007年5月13日 (日) 11時38分

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