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2007年5月31日 (木)

事業リスクと内部統制の基本方針(その2)

またまた昨日のエントリーには、たくさんのご意見を頂戴しまして、どうもありがとうございました。監査役サポーターさんがおっしゃるとおり、わずかばかりの情報から、連結グループ企業15万人もの従業員がいらっしゃる日本の代表企業群のことを軽々に論じることは少しばかりためらいもございますが、常識的にみましても、10人ばかりの社員で23億円の会社資金を操作する・・・という事態はかなり異常ではないかと思いますし(これが組織ぐるみで23億・・・ということでしたら、たいしたことないのでは・・・ともいえそうですが)、昨年のNECS(子会社)における多額の架空取引とも併せ考えますと、社会的な非難の対象となってもやむをえないところがあるかもしれません。なお、本日(5月30日)のフジサンケイビジネスアイの記事におきましては、一連のNECの資金還流を解説したうえで、組織的な犯行といったニュアンスで書かれています。(フジサンケイビジネスアイの記事はこちらです)

昨日のエントリーへのいろいろなご意見を拝読いたしまして、「こんな不祥事が発生した。しかも内部統制システムに関してはレベルの高いものを構築しているにもかかわらず。だから内部統制に高額の資金投入はあまり意味がない」といった論調にもある程度は首肯しうるところがあるようにも思えます。ただ、交通整理をしておかなければならないのは、私の場合は(とくに会社法が規定している)内部統制システムの構築はあくまでもリスク管理を目的とするものであること、つまり不祥事リスクについては人間の利益獲得を目的とする集団である会社においては、不可避であることをまず認めて、その早期発見や被害額を最低限度に抑制するための仕組みと考えております。そして、「企業の体質改善」といった構造そのものを検討することも、こういった内部統制システムの構築と無関係とはいえないと思っています。ひとつの例として内部通報制度(ヘルプライン)が挙げられます。これは、企業体質が「不正を許さない構造」に一歩でも近づくものであれば、集団のなかにひとりでも真剣に声を上げる人が出てくることによって成立する制度であります。つまりいくら精密な内部通報制度を確立したとしましても、不祥事を仄聞する従業員の意識改革(たとえば10人のうち1人でもいいので)が期待できなければヘルプラインは機能しないわけでありまして、要するに構造改革の努力なしには内部統制システムの有効性は保証されないものと考えられます。もちろん異論もあるかとは存じますが、こういった意識改革のためには、社長の関与というものはとても大切だと思いますし、たしかに無力な場面もあろうかもしれませんが、「不祥事防止はリスク管理そのものである」の考え方からすれば、目に見えないところで(公表されていないところで)相当数の不正行為を早期に発見し、またその被害を極小に低減させているかもしれません。

これは単なる思いつきでありますが、この23億円の還流に関与した社員たちも、また昨年の架空取引事件に関与したNECS社員の行動も、いずれも2000年ころからの不祥事であります。ところでNECは2000年4月から社内カンパニー制を導入しております。おそらく事業ポートフォリオの見直しとして、インターネットソリューションに特化した3部門に資源配分を集中させるようになったようであります。こういった社内カンパニー制は現在も存在するものと思いますが、こういった制度が必要以上にカンパニー間での売上競争を助長していなかったのか、経営トップによる管理の目が社内カンパニー制度の拡充によって「目の届かない」範囲を作ってしまったことにはならないのか・・等、いろいろな点も検討しておいたほうがよろしいのではないか、と思っております。1990年代から、NECの場合には防衛庁事件などにも関与していたことがありましたので、単なる偶然かもしれませんが、横領開始の時点と、カンパニー制導入の時期がほぼ一致するということで、なにか企業戦略のあり方と今回の不正を生み出す環境変化との関連性も当然問題視されていいようにも思えます。(以上)

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