中小監査法人の登録辞退について
GW明けの5月7日の適時開示情報をみておりましたら、MBO(マネジメント・バイアウト)に関する意見表明報告書が2つも出ておりました。いま話題の株式会社テーオーシーのMBOに関する開示情報を含めますと3つです。このブログでMBOに関するエントリーをアップいたしますと、コメントもあまりつけていただけませんし、閲覧数も減ってしまうので、あまり皆様ご興味がないのかもしれませんが、(個人的には)会社法や金融商品取引法上の大問題だと思っております。おそらく、MBOは今後もどんどん増えてくると思いますが、企業価値向上が実現する陰で、情報不足や多数株主の恣意的な利益独占の状況に泣き寝入りするしかない一般株主(少数株主)は何も手が打てない・・・・・というのはどうなんでしょうか。このたびのダヴィンチ・アドバイザーズ(大証二部)によるテーオーシーへの「株主価値を守るための公開買付けのご提案」(TOB価格800円に対して1100円の提案)は、いろいろな意味で注目されるところだと思われますが、その提案内容からの感想でありますが、やはり買付届出書に添付されている株価評価書を少数株主側が閲覧して、そこからTOB価格の妥当性に関する意見を述べておられますが、こういった手続きはとても貴重だと思います。もし、5月11日が期限となっております有限会社オオタニファンドTOによるTOBが不成立となった場合、800円と1100円の金額の差もさることながら、少数株主側が開示資料をもとに企業価値向上策を公表して賛同を得た、という点も評価されるかもしれませんね。(もちろん、私はどちらにも特別の思い入れはございませんのであしからず。)
さて、昨日のエントリーのなかで、中小の監査法人さんが監査法人登録を辞退されるところが多いのはなぜか??といった疑問を少し書かせていただきましたが、さっそくligayaさんのブログにて、たいへん詳細にご解説いただきました。(いつも、どうもありがとうございます。)こういったところは、なにゆえか新聞報道などでもつっこんだ解説がなされないところですし、監査法人さんのリスク回避というのが、どのあたりに由来するのか・・・といったところがとても気になるところでしたので、(あくまでもligayaさんの私見、ということではございますが)たいへん勉強になります。実は今日(7日)、私が社外監査役を務めております会社で、監査役会と監査法人さんとの監査実施説明を含め、いろいろな協議がなされたのでありますが、その席上でちょっとこの話題について指定社員の方にお聞きしましたところ、ligayaさんとほぼ同じようなお話をされてました。学校法人の監査や任意監査で食べていくことを選択するところ、税務コンサル業務で食べていくことを選択するところ、どこかと統合することを考えているところ、いずれにしましても、監督官庁による組織的監査への厳格な立ち入り調査や(だいたい6ヶ月に一回くらいとか?ホンマかいな・・・)、報酬と、今後予想される負うべきリスクとの兼ね合い等で考えますと、中小の監査法人さんでは、法定監査のお仕事というのは、かなり厳しいものなのですね。。。とりわけ、私のほうから、監査法人の内部統制についていろいろとご質問させていただこうかと思いましたが、「監査報告の品質管理」ということで、きちんと書面および図面にてご報告がありました。あまり詳細なことを書くのも信頼関係違背になるといけませんので控えさせていただきますが、マネージャー以上の肩書きの方については、監査法人の顧問弁護士さんも巻き込んで、かなりシビアな品質管理をされていますね。また独立審査担当社員の方の業務評価とか、レビューの方法とか、一般の継続研修以外のプログラムを受講しなければいけないとか、中途採用における新たな問題とか・・・、私が予想していたのよりもはるかに厳しいことがわかりました。
こういった監査役と監査法人との意見交換の場はとても有益であります。私のような財務会計的知見をもたない監査役の素人的疑問が(わずかながらも)解消されることも有益なのでありますが、なんといっても内部統制、とりわけ統制環境上の問題点の把握だと思われます。減損会計や税効果会計、リース会計の適用など、会社の会計上、税務上の成績に大きな影響を与える評価見積もりへの考え方の相違のようなものを目の当たりにしますと、「こんなことだったら、ちょっと粉飾したほうがいいかも。なんぼでも、バレへん方法あるんとちゃうかな・・・・・」といったような気になりますよね。ホント、業績が悪かったらそう思います。でも、そこで役員クラス、グループ企業の社長さんなど、みんながまじめに、変な気をおこすことなく、変な数字をいじることはしない環境、それがあたりまえと思える環境、悔しかったら本業で見返す環境(笑)・・・・・、そういった環境があるとないとでは、やっぱり大違いのような気がいたします。日本を代表するような超大手企業と監査法人さんとの関係はまた別なのかもしれませんが、売上高100億とか200億くらいの規模の上場企業の場合ですと、会社と監査法人との信頼関係はまさに「企業の統制環境」にあるように思います。以前、ローテーションのお話をさせていただきましたが、そういった統制環境を監査法人の担当者の方が認識するまでに、やっぱり少しは時間を必要するのかもしれませんね。(文書化しろといわれても、これはなかなか文書化になじまないところではないでしょうか)
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コメント
こんにちは、大阪で働いていたM&A会計士こと澤村八大と申します。
MBOネタはあまりコメントがつかないとのことですが、かなり興味があり、私のブログでも取り上げたりしていますので、またアップしてください。
MBOにはいろいろ論点はありますが、個人的には、以前株式評価業務をやっていた関係上、他社が出している株式評価報告書の内容が気になったりしております(^_^;)
投稿: M&A会計士 | 2007年5月 8日 (火) 21時46分
>澤村先生
こんにちは。昨年は大阪弁護士会での新会社法連続研修でお世話になりました。(先生は第5回目でしたよね?私は3回目で講演をさせていただきました。もうあれから丸1年が経ちましたけど)あのときの研修速報と、「実務をひもとく14のストーリー」はよく利用させていただいております。先生もブログをお書きだったんですか。(いままで存じ上げませんでした。)ぜひいろいろとMBO絡みの質問をさせていただきたいので、またそちらにもお邪魔させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。
投稿: toshi | 2007年5月 8日 (火) 22時37分
始めまして。
私もコンサルタントやっております。テーオーシーの件ではEYが売り手側で評価して
いるとのことですが、評価側も、会社側と評価の前提をきっちり決めていると思いま
すので、それ自体がおかしいとEYが非難されないように免責しているのではないかと
推察します。
「会社の事業計画通りにDCFでやればこの評価」ぐらいのものでしょう。フェアネス
オピニオンではなくて単なる評価ですから、フィーは2~3百万円程度です。この程
度でそこまでリスク取れません。フェアネスオピニオンであれば、こういった際にか
なりリスクに晒されるので、億近いフィーを取るはずです。
一方1100円で買ってみせるといっているダヴィンチの意見には説得力があり、「善管
注意義務」(何度もこのような形で登場しましたが)の観点ではダヴィンチの勝ちで
はないでしょうか?
かつてスティールとユシロ工業(NIF)がTOB合戦を展開しましたが、このときにNIF
側(MBOスポンサー)はTOB価格を引き上げましたよね。当時は「はげたか・スティー
ル」対「守旧勢力(世間はなんとなく同情的)」見たいな構図が出来ており、NIFに
よるTOB価格の引き上げが容認されていましたが、テーオーシーVSダヴィンチ(敵対
的ではないが)の場合、テーオーシーがTOB価格を例えば1200円等に引き上げた場
合、これも「善管注意義務」に違反するのでしょうか?
なぜはじめからそうしなかったんだ、株主を馬鹿にしているみたいな感じにならない
のかなと・・・。時代とともに法解釈も厳格化されるような印象を持っております。
ご意見賜れれば幸いです。
投稿: katsu | 2007年5月10日 (木) 00時54分
>katsuさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
本日、新聞にも出ていますし、開示情報にもありますが
テーオーシーのMBOが頓挫してしまったようです。
まぁ、ここ数日、1000円程度で推移していましたので
当然といえば当然ですが。
時代とともに、法解釈は厳格になるときもあるし、また
要求レベルが低くなるときもあろうかと思います。
じつは1200円にあげても善管注意義務にならないような
方策というものは、すでに法律家のなかでは検討されている
ようです。(ここではお答えできませんが)
しかし1100円のTOB予告があるにもかかわらず
800円で押し切り、不成立となるというのも、なんとなく株主から
すれば文句が出そうな気もしますし。難しいところですね。
最後まで、ダヴィンチ社の社会的責任に関する質問状を送り
つづけた、というのもこのあたりと関係あるのでは?
今後の展開をもう少し見極めたいですね。
投稿: toshi | 2007年5月12日 (土) 14時59分