二つの内部統制理論(再考編 序)
「内部統制監査と会計士さんの法的責任」のエントリーには、みすず所属会計士さんと藤野先生より、たいへん貴重なコメントを頂戴いたしました。連休中にアップしたものでありますが、私のエントリーをお読みいただき、かなり心外に思われたり、もう少しよく調べてからご意見を述べたらいかがなものか・・・とのお怒りに近い感想をお持ちの先生方も多いかと存じます。(失礼な物言いがございましたらご容赦くださいm(_)m)ご指摘の点につきましては、真摯に受け止めまして、もう一度よく調査検討のうえ、続編をアップさせていただきます。私自身、こういったご批判、ご意見を頂戴することは本当にありがたいことと思います。自分の知らない世界のことを、思いつくままに記述しておりますので、至らぬ点もあろうかと思いますが、今後ともどうかご教示のほどよろしくお願いいたします。たとえば本日の日経新聞の一面におきましても、監査法人の登録制度を採用したがゆえに(また、監査体制に関する審査が厳格になるがゆえに)、30法人程度が今後の監査業務を辞退する予定、との記事が出ておりました。(たしか中間報告がもうすぐ日本公認会計士協会のHPにアップされるんですよね?)こういった記事を読んでおりましても、「なんで辞退しなければならないのか」「人手不足と監査強化とはどのような関係にあるのか」「辞退しなければならないほど、今後の監査法人の監査体制は変わるのか」「それではどう変わるのか」「辞退するほうがコスト的に見合うほど、監査は儲からない仕事なのか、それともやりたいけれど、泣く泣く辞退したのか」といったところ、素直に部外者である私などは本当に疑問の湧くところであります。こういったところを会計士さん方の世界の常識ではどう考えておられるのか、といったところに私はたいへん関心を持ちます。このブログはそもそも社外監査役という視点から企業価値をどう考えるのか・・・というところが出発点であります。「内部統制」ということを議論することによって、私は監査役と会計監査人(監査法人)は共通言語を持つ時代になったと理解しております。ということは双方がそれぞれ相手の世界のことをもっと知らなければならない時代になったと考えております。そういった気持ちで、今後も真摯にいろいろな話題を採り上げさせていただこうかと思っております。
さて、このブログではもう何回か、金融商品取引法と会社法における「内部統制理論」の関係について考えてきたわけでありますが、最近またいろいろな論文等で、このふたつの内部統制理論に関する問題が採り上げられておりますので、再度私自身の考えを整理してみたいと思っております。(これまでの私のエントリーにつきましては、こちら等をご覧ください)一般法、特別法の関係のように、同一の法体系のなかに存在するのか、それともそれぞれまったく別個の体系のものなのか、ということでありますが、まずそういった議論をする実益はどこにあるのか、ということが問題となりますし、またどのように考えるべきかを検討するにあたっての問題の視点を3,4点ほど提示してみたいと思っております。私自身、あまり統合的に検討する必要はないのではないか・・・といった立場に与するものでありますが、ひょっとすると、私が法律関係の仕事をしているために、財務報告に係る内部統制のあり方を考えるにしても、(さきほどの話と関連するかもしれませんが)法律家の観点で意見書を読んでいるところに原因があるのかもしれません。あの「財務報告に係る内部統制報告の実施基準」あたりは、おそらく監査論を学ぶ体系の上で成り立っている論理構成のような気もしますが、しかし「経営者評価の仕方」といった監査論では学ばない部分も中心にすえられているわけでありますから、これをどう考えるべきなのか、そのあたりも含めて、これから検討していきたいと思っております。(ちょっと本編を書く時間がなくなってしまいましたので、本日は序論のみとさせていただきます)
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コメント
コンプライアンス(法令順守)上の不祥事が企業の致命傷となる傾向が強まっていることが、帝国データバンクの調査で浮き彫りとなった。同社が14日発表した平成18年度の調査結果によると、法令違反の発覚をきっかけに倒産に至った企業は102件に上り、前年度に比べ37・8%増と大幅に増加した。負債総額も3568億1600万円と3・3%増となった。(産経新聞社)
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帝国データバンク「倒産速報&集計」によると、昨年(2004年度)一年間の倒産件数は1万3837件となっています。これは毎日約38件の企業が倒産していることを表しています。
つまり、1時間ごとに1社は確実に会社が潰れているのです。
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法令順守は、大切なことです。ただし、倒産件数の比較で経営の効率性と法令順守を比較するなら、経営の効率化(倒産年間13,000)に要する努力の130分の1を法令順守(倒産年間100件)に割り当てれば良いこととなります。
法令順守はものすごく大切なことですが、むやみに倒産の恐怖をあおりたてて、コンプライアンス・ビジネスに利用することに対しては、相当に注意が必要なようです。
投稿: あおり罪??? | 2007年5月15日 (火) 09時04分
こんにちは。本日のフジサンケイビジネスアイにも、同様の記事が掲載されていますね。(2004年→2006年かな?)
実は あおり罪さんと同じような感想を持ちました。データを自らの商売に有利なように引用するのは危険だと思いますし、あおり罪さんのように分析する能力が必要だと思っております。(最近では大阪人が振り込み詐欺にひっかからないのはなぜか、とか、タバコの悪性などに関するデータなども同様です)そうでないと、おっしゃるとおり、コンプライアンスビジネスが短命に終わってしまうような気がします。(自戒を含めて)
このあたり、またエントリーの題材として使いたいと思っておりますので、またお気づきの点がありましたらコメントよろしくお願いします。
投稿: toshi | 2007年5月15日 (火) 21時13分