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2007年6月30日 (土)

内部統制ルール実質緩和(速報版)

ここのところ株主総会ネタや買収防衛策に関するテーマが続いておりましたが、すこしばかり内部統制モノに戻ります。またまた土曜日の朝からビックリの日経ニュースであります。少しだけ噂の範囲では聞いておりましたが、2008年度から実施される(といいますか、すでに前年度実施としてすでに実施していらっしゃる企業もありますが)内部統制ルール(いわゆるJ-SOX)が緩和される見通しとなったそうであります。3日ほど前に葉玉先生といろいろなお話をさせていただいたときに、経済系の法律というものはなんと政治的な配慮によって成り立つ(もしくはお流れになる)ものか、またその配慮のなかで、いかに普遍的な法律を策定することがむずかしいものか・・・と改めて法のあり方を考えさせられましたが、金融商品取引法ルールといったものも、各省庁、経済団体、法律家組織、監査人組織の力学によって変容を余儀なくされる性(さが)を背負って生まれるものであります。ともかく実施される以前においてルールが変わるというのはほとんど前例をみないものでしょうし、これからもまた変わる可能性があることも証明してしまったようなものだと認識しております。目の前に「見積書」が届いてはじめて「内部統制リスク」に気がつくわけでして、システム導入だけでなく、そのシステムを誰が理解するのか・・・といったところで、見積もり以外の膨大な費用と時間を要することが現実化することになるはずであります。最近いろんな方とお話をする機会に恵まれましたが、この制度は費用に対する問題だけでなく、おそらく監査法人との間で「意見表明しないんだったら、やってみろ」といった開き直りの状況は必至であります。むしろ私からみれば、(内部統制評価は上場廃止とは結びつかないわけですから)自社で「重要な欠陥」を克明に表明する企業のほうが、経営者による本当の内部統制評価がなされているのであって、ぎゃくに(サンプル数が増えて監査費用が増えることはやむをえないにしましても)財務諸表の信頼性が高いのではないかとさえ思えるわけであります。金融商品取引法に導入されるに至った経緯と、その対応方法とのバランスを、もう一度見直す時期に来ているのかもしれません。また、上場企業を4つくらいに分類して、企業規模に対応した評価制度のようなものも(監査する方はたいへんかもしれませんが)真剣に検討されていいのではないでしょうか。(新聞報道によると、方法論自体はそれほどの変容はないと思われますが、それでも巷間あふれる内部統制マニュアル本はほとんどがこれまでの「実施基準」にしたがって書かれておりますので、なにを参考にすればいいんでしょうかね?私もこれからの情報に留意して、冷静に考えてみたいと思います。)

(7月2日追記です・・・)

コメントをたくさん頂戴しております。私自身の意見につきましては、右側のコメント部分に続編として若干記載しております。

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コメント

コンピュータ屋です。
こんにちは。

やはりみなさん、この記事に注目されたようですね。
私もこの記事に多少腹立たしい気持ちになったので、自分のブログにもアップしました。
「この記事で「緩和策」と言われているもの
そもそも例示を少しゆるめますと言っても何の意味もありません。」、
以下省略しますが。

いきなりこんな緩和策が出てくるなんて、
これからどうなっていくのでしょうね。

投稿: コンピュータ屋 | 2007年6月30日 (土) 16時40分

いつもコメントありがとうございます。
脊髄反射的に反応してしまいましたです。

ただ、新聞記事を読んだかぎりでは、根本的な修正が行われるものではなくて、その評価範囲が狭くなったりするだけなのかな・・とも思いますし、もう少し情報を集めたいと思っております。コンピューター屋さんのブログを拝見しましたが、「監査」→「レビュー」といった変更まで含むものなのでしょうか?それは推測ということでしょうかね?
いずれにせよ、企業の対応に影響が出ることは必至だと思っております。(そうでなければ、経済団体にとって、メリットはありませんよね)

投稿: toshi | 2007年7月 1日 (日) 03時07分

報道の限度で考えるに、Q&Aの範囲で対応できるところでの緩和ですから、本質的な方向転換ではないのでしょう。企業側の不安をあおるコンサルティング会社の動向については、従前より金融庁はあまりいい顔をしていませんでしたよね。内部統制の意味、位置づけについてもう一度考えるいい機会になったのではないか、と思います。

過大な負担を強いるようなシステムの導入や体制構築ばかりが喧伝されてしまうと、本当は導入すべき企業が腰が引けてしまい、何もしないに等しくなってしまうおそれがありそうです。(時折、何もしないと堂々と行っている企業があるようなうわさもちらほら耳にします)。万一そのようなことになったとすると、(言ってみれば一番必要な会社が制度構築を十分にしないことになってしまい)制度導入の趣旨が損なわれてしまいます。おそらく、金融庁は新しい制度の定着をスムーズに図ることに腐心しているのだろう、と思われます。

換言すれば、当局側が緩和まで公表しているのに何もしていないでいた場合、善管注意義務違反の問題はより一層深刻になったといえないでしょうか。あれこれ詮索するよりは、各社が自社の状況に応じた真摯な対応(あまり外部のコンサルタントなどに惑わされず、必要なものをしっかり見極めたうえで)が求められるのではないでしょうか。

ただ、監査法人は厳格な姿勢を強めているようにも思われますので、過年度修正の事例は今後来年あたりにかけて増えるのではないかなと考えています。影響が小さいうちに過去の会計処理上の問題を解決してしまう方が、おそらく賢明でしょう。あまり衝突があって、監査法人の辞任が相次ぐことにならなければいいですが、経営陣の方には体面よりは実利をとる姿勢、積極的に開示する姿勢を期待したいですね(体面を気にして、不適正なものを隠蔽した場合に生じる害は、積極的開示にともなう害より大きいということを理解していただきたいという趣旨です)。

投稿: 辰のお年ご | 2007年7月 1日 (日) 11時14分

金融庁と日本経済団体連合会が、上場企業の負担強化を深く憂慮して下さり、内部統制ルールの実質緩和化に向けて方針を出していただいたことを、衷心より感謝申し上げます。

>>>>>>>>>>>
www.pwc.com/images/gx/eng/fs/1004soa.pdf
31ページ
In some situations, coverage of ... disclosure will fall below 60 percent.... However, it will be important for management to exercise judgement in these situations. We believe that if the coverage of ... disclosure is below 50 percent, management should ... consider selecting additional locations to gain sufficient evidende (ある状況では、開示のカバー率が60%以下になる。しかし、経営者はこれらの状況において裁量的判断をすることが重要である。我々=プライスウォーターハウスクーパース監査法人=は、開示のカバー率が50%以下の場合、経営者は追加的に拠点を選択しなければならないと確信する。)

32ページ
<5% Immaterial locations, individually and in the aggregate = No testing required (単独又は合算して5%未満の拠点では、評価作業が求められない)

>>>>>>>>>>>>>>>
文書化カバー率の下限50%は、2004年のアメリカSOX法開始時点で、既に監査法人が許容していた最低限度です。
5%未満の拠点を評価しないのは、最初からそのように定められていました。

アメリカ猿真似を排した日本独自の実施基準を策定し、アメリカの負担加重に対する社会的批判を十分考慮に入れた上で、SOX法開始時点の実務を実質緩和化と新聞の一面で大々的に発表する、金融庁と日本経済新聞社の英断を褒め称えましょう。

(コメントの一部を管理人において削除させていただきましたので、ご了解ねがいます・・・・・)

投稿: unknown | 2007年7月 1日 (日) 12時48分

TOSHI先生

私のブログへの訪問ありがとうございます。
「コンピューター屋さんのブログを拝見しましたが、「監査」→「レビュー」といった変更まで含むものなのでしょうか?」と言うご質問の件、
私の勝手な思いです。以下もそうです。
経営者の(主観的な)評価を第三者が客観的に監査することは難しいと思います。その思いからです。

また他のコメントで言われているように
「各社が自社の状況に応じた真摯な対応」、これが大切だと思います。
コンサルもお客さんの状況を理解し、専門的立場での少しのご支援でよいのかと思います。


投稿: コンピュータ屋 | 2007年7月 1日 (日) 18時41分

分からない問題にも考える手がかりはある(東京大学大学院教授の意見)
http://www.asakyu.com/column/?id=330

世界で起きていることのほとんどを私たちはメディアから受け取ります。それは一見、分かりやすく、口当たりのいい言葉で整理されて届けられる。プロの手を通して自動的に出てくる言葉の表層に、私たちは寄りかかりがちです。思考がその言葉の前で停止し、それ以上詮索(せんさく)する必要はないように思ってしまうのです。

かつて私がメディアで発言した経験の中で、イラクに大量破壊兵器があるのかないのか、という問題がありました。あの時点では、「イラクには大量破壊兵器があるだろう」という空気が大勢を占めていました。

やはり自分の価値観、コアとなる定見を持って交渉にあたっていかなくてはなりません。穏便に口を閉じて、問題が沈静化するのを待っているのではなく、ひるまず、決して意固地にならず、タブーといわれる問題についても「私の考え」を言えるようになって欲しい。

そのためには、どこで何を調べれば判断材料が手に入るか、というインデックスを若いうちからなるべく多く仕入れておくことです。専門領域でなくても、疑問に感じることを調べる引き出しを持っておく。そうして既知のものから未知を推測し、洞察する。あふれている情報に流されない価値観を身につけて欲しいと思います。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>
官庁と報道機関と専門職集団が三位一体で虚偽説明を繰り返すとき、市民はどう対処すべきでしょうか?

そんなとき、過去も現在も未来も、私たちの毎日が決断の連続であることを思い出しましょう。
幼少時のいじめ、入試、就職、結婚、家族の病気、肩たたき・・・などなど
どれひとつ取っても、あなたの人生にとって、うそまみれ内部統制ルールに基づく適正意見を所得するよりも、はるかに大切なものです。

投稿: unknown | 2007年7月 2日 (月) 08時00分

ご無沙汰しております。中小企業の内部統制の整備担当者のtonchanです。

皆様の高尚なお話ではなく、現場の一担当者の感じたところをお話します。

少なくとも業務処理が簡素な中小企業にとっては、今回の緩和策(?)というのは言葉の綾のような気がしております。
以下に感想を挙げさせていただきます。
1.評価範囲の削減
 単一セグメントまたはそれに近い企業の場合、売上基準で評価する範囲を削減することによる文書整備の負荷は変わりません。大企業にとっては重要な問題のように思いますが。
2.本来して頂きたい評価範囲の削減
 業務プロセスの絞込み方法を例示して頂きたいと感じています。これにより、整備が必要な業務プロセスの範囲を効果的に削減できます。この部分であれば、企業規模の大小に係らず削減が図れます。

 この段階で大枠の変更を行うと制度の根幹が揺らぐ事になるのは、頭の良い金融庁の方が気づかないはずはありません。

 担当者としては、これまで通りこつこつと整備を進めていくしかありません。今回の記事は、J-SOXの担当者にとって社内への説明負荷が増加するだけのような気がします。新たな記事が出るとため息が増えるのが現状ですね。

 長々と申し訳ありません。これからもこのブログを楽しみにしています。

投稿: tonchan | 2007年7月 2日 (月) 09時50分

ひどい記事ですなあ。正確なソースの無い飛ばし記事を載せるような新聞の内部統制はどうなってるんでしょうかね。
真面目な会社はとっくに2/3ルールをベースに方針を固めた上で個々のスケジュールを立てて必死に作業していますし、スタートが遅れていた新興市場上場企業にしても、緩和策の発表待ちをようやくあきらめて先月あたりから動き出しているというのに、このタイミングで曖昧な憶測記事を一面にのせて煽ることでどれだけ実務が遅れるか。マスコミは社会の公器などと良くも言えたもんです。

投稿: tegutan | 2007年7月 2日 (月) 10時17分

はじめまして。会計士なもので、内部統制ネタは特に興味深く読ませていただいています。
6月30日の日経新聞の記事について、以下の部分が気になるところです。

「点検対象となる部署や支店・工場などの合計売上高が全売上高の三分の二以上となるように義務付けていたが、それ以下でも認める方針だ。最終判断は会計士に委ねるものの、二分の一程度に範囲を絞り込む例が出る可能性がある。」

「実際に緩和する際には、会計士に判断を委ね、責任を負ってもらうことで内部統制ルールの骨抜きには歯止めをかける。」

ルールの緩和によって軽減された企業の負担は会計士に肩代わりさせるということのようですが、果たして負担に耐えられる会計士(監査法人)は、どれくらいあるのか、負担に見合う報酬はいくらになるのか(得られるのか)。
会計士協会が近く公表するという実務指針が待たれます。(というか、怖いなあ。)

投稿: ktbep | 2007年7月 2日 (月) 11時06分

皆様、コメントありがとうございます。月曜朝から裁判だったために、コメントのアップが遅れました。

おそらく月曜日の朝から、あちこちでこのニュースは話題に上っていることでしょうね。私自身は煽動的なエントリーは避けたいと思いましたが、しかしちょっと冷静に考えてみますと、新聞で報道されているところは結構内部統制報告制度にとって重要な部分ですよね。評価範囲の変更というのは、トップダウン型のリスクアプローチを基本とするのであれば「リスクの評価」の見直しにも影響するでしょうし、「重要な欠陥の公表」の変更はダイレクトに経営者の有効性評価方法に影響するでしょうし、また(ktbepさんが指摘されていらっしゃるとおり)「企業が実際に緩和する際には会計士が判断する」とありますが、果たしてそんなことまで会計士さんが責任を負担しなければならないのかどうか・・・。
そもそも、全社的内部統制が良好と判断される場合に、財務決算プロセス以外の業務プロセスの有効性判断にあたって「2分の1程度」の事業部門や子会社の範囲とするのであれば、監査人は経営者評価を検証するにあたって「監査」の水準を確保できるのでしょうか?じつは、個人的なエントリーのトーンとしては今後、tonchanさんに近いところで「書きたい」のでありますが、やはり問題点はきちんと解決しておいたほうがいいと思いますね。

tegutanさん曰く
「このタイミングで曖昧な憶測記事を一面にのせて煽ることでどれだけ実務が遅れるか。」

本当ですね。もしこの記事が憶測でなく、事実であるとしたら、本文にも記載しましたように、今後の更なる緩和策を期待する人も出てくるでしょうし、だいいちQ&Aが出るまで「休止状態」と決め込むところも出てくるような気がします。適時開示ではありませんが、こういったときこそ、金融庁から「一部報道について」と題する開示情報がほしいところであります。

投稿: toshi | 2007年7月 2日 (月) 12時13分

ウチの会計監査をしている監査法人がコンサルなんですけど、会計士に責任を押しつけるってことは、逆に厳しくなるのではないかと思い、評価範囲の最終決定を来週に控えてのこの発表は、追い風とは思えないのですが、どうなのでしょうか?監査法人が厳しく出てくる可能性が高まっただけで、この時期の発表は、緩和どころか、大変にしただけでは?と思うのは、私だけでしょうか?

投稿: 竹村 | 2007年7月 2日 (月) 13時27分

>竹村さん

そういった可能性もあろうかと思いますが、なにぶんまだ新聞報道だけの情報であり、具体的な中身が確認できておりませんので、もうすこし情報の精度が高くなった段階で、私自身もそういった監査面での影響を考えてみたいと思います。
なお、金融庁からQ&Aが秋頃に出るということ、会計士協会による監査指針ももうじき出るなどの情報も気になるところですね。

アメリカのように中小の公開企業においては猶予期間をもうける・・・といった対応をとらないのは、そもそもこの日本の内部統制報告制度が、それぞれの企業規模や事業特性に応じて費用対効果を考慮しながら作れるからだ・・・とされていませんでしたかね?もし、本当にルールを緩和するということであれば、やっぱり費用がかかりすぎるから、検討しなおすというものでありましょうし、それも公開企業一律にルールを緩和するのでありば、これまでの説明と矛盾しないのでしょうか?

投稿: toshi | 2007年7月 2日 (月) 17時12分

初めてコメントします。小生は中堅企業にて内部統制構築の“現場監督”に従事している者です。
毎日、数多くの日雇い(非常勤)のスタッフを相手に、時になだめすかし、
時には叱咤激励して、工期どおりの完工を目指しています。

実はktbep様と同様に、小生も「実際に緩和する際には、会計士に判断を委ね、責任を負ってもらうことで内部統制ルールの骨抜きには歯止めをかける。」の文言には非常に注目しています。
小生は会計士協会の実務指針の草稿を拝見した事がありますが、確かに若干、緩和される部分や会計士の判断拡大を匂わせる部分はあります。
しかし大筋は実施基準どおりであり、そのため日経記事には別の意味で驚いています。
いずれ「真実」は分かる事ですが、協会と金融庁には不協和音でもあるのかと・・・。或いは大手監査法人の間に見解の相違でもあるのかと・・・。

いずれにしても、会計士の判断する領域が拡大すると、大手監査法人毎の傾向等が色濃く出て、寧ろ法人によっては実質緩和が実質強化の道へ逆走するかなとも想像しています。

投稿: KGB | 2007年7月 2日 (月) 22時18分

会社で文書化作業に従事しつつ、いつもこのブログを読ませていただいております。今回は結構盛り上がっていますので、コメントさせていただきます。

実施基準を読むと、全社的統制が良好であるという条件の下に売上高の2/3程度ということですが、良好でなければ2/3以上もあるというわけで、このあたりが最近わかってきたのか、全社的統制の評価については監査法人も、実施基準が出る以前に比べ、結構細かいことを言うようになってきています。

某大監査法人は、全社的統制質問だけでなく、金額的シミュレーションを使って、評価範囲を2/3どころか少しでも広げるくらいの考え方を持っています。

2/3とか1/2以前に、判断基準が今ひとつ漠然として監査人の主観がかなり入りそうな全社的統制の評価が、まず良好であらねばならないわけです。

仮に全社的統制が良好と評価できても、重要な事業拠点としての評価範囲は、まあ1/2でいいですと言い切れるような腹の据わった監査人がどれだけいるでしょうか。現在、監査人の責任が重くなっている中では、良好でも2/3はやっぱりほしいというのが普通のような気がしますが。

それに、先の方のコメントにもありましたように、金融庁の方針というこの記事のソースは一体どこなのでしょうか。前の日興コーディアルの時も、ここの新聞はフライイング気味の記事を書いていたような覚えがありますが。ちなみに、この新聞社は上場はしていませんが、某大監査法人が監査しているそうです。

上場企業すべてが関係するわけですから、金融庁も一部のマスコミに情報を流すよりも、公式発表をお願いしたいものです。

投稿: 内部統制右往左往 | 2007年7月 3日 (火) 01時24分

>KGBさん、右往左往さん
コメントありがとうございます。

おふたりの下記意見、
「いずれにしても、会計士の判断する領域が拡大すると、大手監査法人毎の傾向等が色濃く出て、寧ろ法人によっては実質緩和が実質強化の道へ逆走するかなとも想像しています。」

「2/3とか1/2以前に、判断基準が今ひとつ漠然として監査人の主観がかなり入りそうな全社的統制の評価が、まず良好であらねばならないわけです。
仮に全社的統制が良好と評価できても、重要な事業拠点としての評価範囲は、まあ1/2でいいですと言い切れるような腹の据わった監査人がどれだけいるでしょうか。現在、監査人の責任が重くなっている中では、良好でも2/3はやっぱりほしいというのが普通のような気がしますが。」

いずれもかなり説得力のあるご意見と思います。また、内部統制報告制度の導入に腹を据える必要があるのは、経営者も同じだと思います。だからといって、何もしない、ということをお勧めしているわけではありません。不正会計とは無縁の企業体質を築くためにも、それなりの費用をかけて整備構築する必要はあろうかと思います。そもそも企業価値を向上させるための内部統制は会社の秘伝であり、営業秘密であって、法律になじまないものなのかもしれません。ただ、本当に投資家保護のために法律に導入されるものであれば、がんばって開示になじむものにしなければいけないわけですが、経営者が頑張って財務報告の信頼性に資するようなものを作ったのであれば、監査人の意見とは別にHPで堂々と「うちはこういった方法で内部統制を整備し、また運用しています。だから投資家の皆様、そして取引先の皆様、どうかうちの会計の数字を信用してください」と宣言すればいいと思います。
どうか企業の経営者にこそ、この制度をリードしていってほしいと思っています。そういった気概をもった企業こそ、外部監査人から全社的内部統制について、信頼を置かれる企業として評価されるのが「健全」なのではないでしょうか。

投稿: toshi | 2007年7月 3日 (火) 02時39分

で、ですね(笑)、
となるとますます
「『全社的統制の評価』ってどうやるの。どうやってどう評価するの?」
という問題に戻ってきてしまうんですよ。
3点セットやらをいくら積み上げていっても
「全社的な内部統制に関する評価」には繋がらない。否、繋がるとしても
それをどう繋げればいいのか、分からない。
「分からない」、つまりそういう技法が現段階ではない、と、
前にも書きましたが新日本の持永先生も言っておられました。

つまり、2/3であろうが1/2であろうが
範囲の絞り込みなんて全部見てみて確認しないとと出来ない
という矛盾したことになるのです。
で、全部見られるかというと物理的時間的にそれは全く不可能なわけで。
論理が破綻してるんですけど。

無理に無理を重ねたことに道理を与えようとしても所詮は無理なんだと
いうことだと思います。
内部統制を客観的に評価など出来るはずがない。それを可能なのだ、
費用が掛かっても意味があることなのだ、と抗弁することの愚かしさを
感じずにはいられません。

.

 公認会計士は今まで以上に財務諸表監査を厳密に行う。
 内部統制システムの整備・運用状況については経営者が報告し、
 監査役が評価し、公認会計士が毎年度「レビュー」を行う…

日本の公認会計士の数から言っても、監査役の質から言っても
これが今の日本で出来るギリギリの、かつ有効なレベルだと考えます。
アメリカみたいに、たーーーくさん優秀な会計士がいても
あんな混乱のドツボになってしまったんですから。

投稿: 機野 | 2007年7月 3日 (火) 10時35分


企業の中で、J-SOX対応を行っているものです。

正直言って、素人の私にはよくわからないのですが、疑問に感じていることを少し書かせていただきます。ご指導いただけたら助かります。


<ダイレクトレポーティング不採用>

経営者が内部統制の評価範囲を決定し、評価を行って意見を表明する。
独立監査人は経営者の行った意見を評価して監査人として意見表明をする。
独立監査人は原則として独自のサンプリングを行って評価する。
独立監査人に求められるのは監査の水準。


この監査の水準というのが気になるところです。
独立監査人の責任はどうなるのでしょうか?


<ダイレクトレポーティング不採用とは何か>

当初「ダイレクトレポーティング不採用とは何か」とずいぶんと悩みました。

独自のサンプリングを行って監査を行う。違いは経営者の行った評価範囲に独立監査人の監査の範囲が限定されるということが大きな違いということなのかなとなんとなく理解しております。

でも、経営者の行った評価対象範囲の妥当性も独立監査人の監査対象。

しかも求められるのは監査の水準。


<疑問に感じること>

独立監査人としては、責任を追及されるいじょうは「無限定意見」を表明するためには、経営者の決定する評価対象範囲に関してもそうは安易に妥協はできないと思うのです。


監査を行っていく中で、基本的な部分から監査手続きを開始して、必要に応じて必要な部分に監査対象範囲を広げていくことによって心象形成をしていくためには、経営者の行う評価対象範囲は広くしておかないと困るということになってしまうのではないのでしょうか?


本来、内部統制は経営者が経営管理に必要と思う管理を行うもの。だから、経営者がトップダウン型リスクアプローチで内部統制の評価を行いなさいと言っている。

でも、ダイレクトレポーティングを不採用にしたために、経営者の行う内部統制評価対象範囲は経営者が必要と考えることをやればいいということにならなくなってしまうという矛盾があるような気がするのです。

このあたりに関して、公認会計士の方々はどのようにお考えなのでしょうか?

ダイレクトレポーティングを不採用として、経営者が本当に必要と考える範囲を対象とすることにより負荷の軽減を図るのであれば、独立監査人の行う評価はレビューの水準とすべきであったのではないか。


このように考える、日経の記事の「経営者の評価範囲は縮小し、監査人にしっかりと責任をもって監査をやってもらうから問題ない」というのは、ダイレクトレポーティング不採用としているいわゆるJ-SOXの中では成り立たない考え方と感じております。

日経の記事の通りだとすると、ダイレクトレポーティングに方針変更する必要あるのではないかと思うのです。


投稿: Eboshi | 2007年7月 3日 (火) 19時18分

>Eboshiさん

はじめまして。コメントありがとうございました。
私も会計の専門家ではありませんので、Eboshiさんと問題意識を共有する側です。同様の悩みを真剣に抱いていた時期があります。
所詮、裁判に影響を与える法律学も、監査に影響を与える会計学(監査論を含む)も、人間の活動を司る社会科学の一部に属するものですから、どっかで合理性の認められるラインを引いて「エイ!」っと割り切るところが必要なのかな・・・と少し思い直しております。
この内部統制報告制度(上場会社への適用される金商法上の制度)も、それ自体で完結する制度ではなく、有価証券報告書の中身が投資家保護のために要請される程度の真実性を担保することが目的でありましょうから、たとえば経営者の確認書制度との関係や、四半期開示制度との関係などとの整合性にも配慮しながら理論形成されているのではないかと思われます。とりわけ四半期開示情報の充実が要請されますと、企業会計担当者は内部統制制度との注意力の配分が必要になってくるはずでしょうし、確認書制度が重視されますと、「開示統制」への注意も必要になってくるわけでして、そう思いますと、ダイレクトレポーティング問題、監査の水準(四半期開示はレビューの水準としてバランスを確保している)、財務諸表監査人と内部統制監査人の同一性を認め、評価範囲などの事前相談などを「非監査業務の範囲内」とはしないことなどなどを通じて、費用対効果のリスクを低減させようとしているのではないでしょうか。
以前、サンプリングの件数について、いろいろと議論いたしましたが、あのときに会計の素人として思いましたのは、「70点程度の信頼性で合格点」的な発想が、この内部統制の話全般に存在するわけであって、それは理論の緻密さにも残されているように思えます。なお、会計士さん方の専門家からみた意見はまた違うかもしれませんので、参考意見がございましたら、どうかよろしくお願いいたします。(ちなみに、財務諸表監査についても、学問上では「意見表明監査」に属するのですよね?)

投稿: toshi | 2007年7月 4日 (水) 01時47分

かつての阪神タイガースの吉田監督の発言(妄言)ではないですが、

「ほな、あんさん、やってみなはれ」

なんですよ(笑)、現場の気持ちは。


金融庁はん、ちょっと来て、あんさんが言うてるところの
内部統制監査ってどうやったらよろしいのか、やってみてえな。
あんさんが言うてること、さっぱり要領を得てないんとちゃうの?
そんなちゅうとはんぱーな状態で任されても、困りまんがな。
ホンマに任せてくれはるんやったら、やってもやらへんでも
文句を言わはりませんのでっしゃろな。
ええかげんにしなはれや。絵に描いた餅は食われしまへんのやで。


これで経済が混乱したり過労死するひとが出てきたりしたら、
誰が腹を切って詫びてくれるんでしょうかね。
そうならないように制度を作ったとかヌカされてますが、
究極の無責任だと思います。
これは冗談で言っているのではありませんよ。


なんかですねー、現場と理論を考えるかたとの間で、
議論がかみ合わなくなりつつあるようなんですよね。
現場はどちらさまも、意味があるのか意味がないのかも分からず、
闇雲に3点セットの整備にやっきになっておりますが、
肝心な「全社的な内部統制」の部分は手付かず
(八田先生らはまずそこから始めるようにと言ってられるのに)。

私(内部監査部門所属)としては、当事者でありつつ、
いまは同時に第三者的な、やや冷ややかな視線を送らざるを得ません。

当社も株式を公開する法的存在である以上、
こうやってブータレていても仕方がないわけで
決まったことを進めていくしかないわけですが、
「攻めの内部統制」などというセリフを聞くと
その能天気さに可笑しさと腹立たしさを感じずにはいられません
(むろん、例えば東京ガスさんとか立派な会社さんはERMの手法を
 確立されて既にその「攻め」の段階にあると思いますし、
 それがあるべき理想であることも理解しております)。


たいへん失礼申し上げました。

投稿: 機野 | 2007年7月 4日 (水) 10時16分

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