会計帳簿閲覧謄写請求の仮処分
楽天によるTBSの会計帳簿等閲覧謄写請求の仮処分が、東京地裁で却下され、本日即時抗告をされたようであります。仮処分決定全文は読んでおらず、報道ニュースからの情報だけしかわかりませんので、推測の域を超えておりませんが、楽天側は閲覧請求の目的物についての閲覧謄写権があること、TBS側に閲覧謄写を拒絶する正当理由が認められないことについては裁判所が認めたものの(つまり被保全権利は認めるというもの)、仮処分によってまで認めなければならないほどの株主としての著しい権利救済の必要性は認められない(つまり保全の必要性は認められない)といった理由だったそうであります。そもそも会計帳簿の閲覧請求の仮処分といいましても、いったん閲覧を認めてしまいますと、本訴訟で勝訴したこととまったく同様の利益を楽天側が取得してしまうことになりますので(いわゆる満足的仮処分)、仮処分を利用する側にとりましては、かなり厳格な要件該当性が必要となってくるものと思われますので、TBS側が拒絶事由をまったく主張しない場合とか、株主総会による議論をまっていたのでは、回復しがたい個人としての株主権侵害を主張する場合、株主総会による多数派決議によって、少数派株主が一方的に不利益を受ける場合など、この時期に閲覧謄写を認める高度な必要性がないかぎり、なかなか仮処分による楽天側の満足は得られないものと思われます。
それでも楽天側が「即時抗告」によって、緊急に会計帳簿閲覧謄写にこだわる理由は、買収防衛策の一貫としての大株主との株式の持合依頼が、会社法の禁止する「利益供与による株主権行使依頼」に該当するのでは・・・との疑念に対する調査や、総会で議決権を行使する株主が自由意志によるものかどうか、といった点を調査する必要性が高いとの判断からのようであります。しかしながら、これらの調査結果は、後日司法判断を仰ぐ際に(たとえば代表訴訟提起の前提とか、敵対的買収防衛策導入や発動の是非を争う裁判の前提とか)利用すれば、閲覧謄写権を少数株主権として認めた趣旨はまっとうされるのであって、総会における議論の前提としてまで利用されることは妥当ではない、といった裁判所の判断があるのかもしれません。したがいまして、即時抗告審では、司法判断ではなく、総会における株主の判断の前提として会計帳簿を調査しなければ、株主権が回復困難なほどに侵害されてしまうことを説得的に立証しなければならないと思われます。
ところで裁判所は何を考えながら保全の必要性なし(株主にそのまま本訴訟での救済をはかっていては回復困難な権利侵害が発生する、とまではいえない)といった手法で却下したのでしょうか?先に述べたように、純粋に会計帳簿閲覧権の法的性質(経営管理のための株主の権限ではあるが、それは後日の訴訟資料収集の機会を株主に付与したもの)からなのでしょうか?それとも別の意味がこめられているのでしょうか?たとえば、敵対的買収防衛策の是非といったものは、総会で承認されることはあまり大きな意味はなく、防衛策導入の経緯やその仕組みなどについて、導入後や発動後に司法判断で検討すれば足りる、したがって、総会での承認を排除しなければ反対株主の権利救済が困難になるというわけではない、といった意味はないのでしょうか?・・・・・いろいろと疑問点が浮かぶわけでありますが、ともかく決定文の内容が判明しておりませんので、あくまでも推測ということで。
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