コンプライアンス・トライアングル
さて、昨日ご紹介した『「まずい!!」学 組織はこうしてウソをつく』でありますが、いや実におもしろく、現在ほぼ2回目の読了となりました。これを読んでおりますと、企業におけるコンプライアンス・オフィサー的立場の方が、どのように活躍すべきか、といったことを、ふと考えてみたくなりました。ちょっとしつこいようでありますが、二夜連続のコンプライアンス経営に関するエントリーであります。
今年6月、東京の行方先生とお話をさせていただいたときに、金融機関のコンプライアンスの難しさについて語っていただいたことがあったのですが、タテ割り組織であるがゆえに、上から下への指揮監督関係は整備されており、上司のコントロールの届く範囲においては目立った不祥事は発生しないそうであります。むしろ問題なのは、タテ割り組織の弊害、つまりヨコの繋がりが薄いために、「隙間」の部分の問題を誰も扱おうとしなかったり、忙しいときに別の部署がヒマそうにしていても、なかなか遠慮してしまって、別の部署の応援を頼みにくくなってしまったり、というあたりの問題が、企業不祥事の温床になってしまうわけであります。(このたびの樋口氏の「まずい学」にも、同様の事例が紹介されております)そういったところをカバーするために、社内を横断的に動くことができる職種が必要だと思われますし、それこそコンプライアンス・オフィサーのような資格者の存在がピッタリなのかもしれません。金融機関のコンプライアンス・オフィサーといった立場と同様、一般の会社においてもオフィサーが活動できるかどうかは私もわかりませんが、リスクマネジメント委員会あたりの直轄として、活躍できる方(おそらく現場ではあまり歓迎されない役回りだとは思いますが)がいらっしゃったら、全社的リスクマネジメントの立場からコンプライアンス経営の一端を担える存在になるのではないでしょうか。企業組織のヨコ軸に一本串を刺すような役割を誰かが担う必要はあると思われます。
さて、企業組織にはタテ軸とヨコ軸を想定することはありますが、もう一本「時間軸」というものもコンプライアンスを考えるうえでは想定できるような気がいたします。これは現在、私が数社のIPO企業の支援活動を行っているなかでの感想でありますが、ワンマン経営者以外、一般の企業にはローテーションがありますので、就任早々は「あれもやりたい、これもやりたい」と仕事に対する前向きな気持ち(改革への意欲)でいっぱいの方も多いのでありますが、時間が経過して、そろそろ次の職務に異動するころになりますと、「ちょっと気になることがあるが、もう黙認してしまって、次の人に任せてしまおう」といった気持ちになってしまうケースが多いようです。新たに就任した方も、前任者が積み残した問題点について疑問に思うものの、新しい職務遂行には関係ないということで、そのまま放置してしまって、いつまでたっても不祥事の芽が摘まれないままに違法状態が増幅してしまう、といったケースであります。先ほどの遠慮が「ヨコ軸の遠慮」であるならば、こっちは「時間軸における遠慮」であります。コンプライアンス委員や、リスクマネジメント委員をしていて、こういった時間軸に起因する「隙間」による危機的な不祥事発生のリスクはけっこう多いように感じます。いまのところ、こういったリスクへの対策は思いつきませんが、こういった時間軸における問題につきましても、コンプライアンス・オフィサー的な立場の方々が「引継ぎにおける啓蒙活動、とりわけ後任者の勇気」を社内で根付かせるような取り組みを始めるべきだと思います。私自身は、これまでいくつかの具体的な事例を知っておりますので、そういった事例を多少デフォルメして、社内研修などで対応策を検討してみることが一番手っ取り早い方法かもしれません。
このようにコンプライアンス・オフィサーが一般事業会社で有効に機能するためには、タテ軸、ヨコ軸、そして時間軸の「コンプライアンス・トライアングル」のような発想を基本に据えて検討してみるのもひとつの方法ではないかと思います。なお、この樋口氏の著書の言葉を借りるのでありましたら、「やかまし屋」のような存在こそ、コンプライアンス経営には機能発揮が期待されるのかもしれません。
7月 31, 2007 コンプライアンス経営はむずかしい | Permalink | コメント (5) | トラックバック (0)

この本は書名からも明らかなとおり、組織行動の失敗から何を学ぶべきか?というところに照準が置かれておりまして、最近発生した民間企業や公共団体の組織行動上のまずさから大きな社会的非難へと発展した、その経過と原因をわかりやすく分析されております。コンプライアンス関連の書物も、最近の企業不祥事をテーマに掲げたものは数多く出版されておりますが、結論的には「概念的、抽象的なマニュアル的提言」に終わってしまう本が多く、途中で眠くなってしまうものが多いのでありますが、この本の場合、その詳細な事実認定と、著者の本来的に持っておられる常識や専門知識の組み合わせから、具体的な事例を通じて、日本の組織社会がどこでも持っているような「生来的な弱点」を探りあてておられます。結論に至るまでの推論の過程につきましては、読者の賛否両論がありえるとは思いますが、事実を認定することや、事実を解析することのムズカシサが味わえますし、第三者に納得してもらえるような事実認定とはどういった努力の積み重ねによってなされるのか・・・といった点をとても考えさせられる一冊です。