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2007年7月 2日 (月)

新株予約権の無償割当と株主平等の原則

(ちょっと本業のほうで準備が忙しく、ブルドック地裁決定もきちんと読めていないままでのエントリーですので、間違いがございましたらご遠慮なく指摘してください。)

内部統制ルールの実質緩和(速報版)」およびブルドック防衛策発動に関するエントリーにたくさんのコメントをいただきまして、ありがとうございました。どちらも続編として書きたいことがあるのですが、とりいそぎ、ブルドックの買収防衛策については、やはり個人的関心が強いものですんで、抗告審決定が出る前ではありますが、考えを整理しておきたいと思っております。なお、コメントをいただいたシロガネーゼさんは、おそらくコメントの書きぶりから拝察するに、決定全文を未だお読みになっておられないままに、意見をお書きになっておられるようです。しかしながら、その指摘されていらっしゃるところは、やはり債権者側(スティール側)代理人より争点として提起されているものばかりでありまして、(基準日問題およびスティールへの現金給付が「利益供与」に該当するか否か)やはり、ある程度こういった問題に詳しい方々の視点というものは、理解が深いぶん、おおよそ問題点の捉え方について共通してくるものなんですね。さすがです。そのシロガネーゼさんが少し触れておられますが、敵対的買収防衛ルールの考え方としましては、米国型だけでなく、欧州型の規制方法についても検討すべきということは合点のいくところであります。ただ現実の解釈論としては、会社法の制度趣旨を基本にすえたものでないと、なかなか裁判所を説得するのはむずかしいように思えますね。(今回の決定を読んでの感想であります)

ということで、ブルドックvsスティールの東京地裁決定への感想のつづき(すいません、しつこいですが・・・)でありますが、タイトルにも書きましたが「新株予約権の無償割当と株主平等の原則」との関係について、少しばかりの疑問がございます。この東京地裁決定を読みますと、一般株主に対して新株予約権を無償割当するケースでは、株主平等の原則の適用がある(平等原則の趣旨が適用される)ことをまず明確にして、つぎに平等原則違反にはらなない例外的な場合があることを指摘し、そして本件がその例外的事由に該当するかどうかを詳細に検討する、といった構成になっております。

ところで、2005年5月27日に出されております経済産業省と法務省共同リリースによる「企業価値・株主共同の利益確保または向上のための買収防衛策に関する指針」の6ページから7ページにかけて、買収者以外の株主に対する新株・新株予約権の発行(買収者以外の株主に対してのみ新株・新株予約権の割当を行うこと)は、株主平等の原則に違反するものではない、と明記されております。たしかに、商法時代における「差別的行使条件のある新株予約権の発行」と、会社法上初めて認められた「取得条項付き新株予約権の無償割当」とではスキームは異なるわけでありますが、この経済産業省、法務省による「買収防衛策に関する指針」で定義されている株主平等の原則とは「株主としての権利について、その有する株式数に応じて比例平等的に取り扱われねばならない」というものでありまして、この定義からみるならば、本件無償割当につきましても、本来一般株主が保有している株式自身の内容への取扱いには変更はないわけですから、そもそも株主平等原則とは無関係ではないかと思われるのですが、いかがなもんでしょうか。地裁決定では、割当前の株式よりも、割り当てられる新株予約権の内容(行使条件に差があること、取得方法に差が生じること)自体にスポットをあてて、平等原則の「趣旨」が適用されるとされているようでありますが、そういった考えであるならば、逆に先の買収防衛指針の例の場合であっても、平等原則の適用場面になるのではないか、と若干の疑問が生じます。また、この地裁決定が会社法109条の解釈において「この規定は、株主としての資格に基づく法律関係においては、株主をその有する株式の内容および数に応じて平等に取り扱わなければならない」ということを「株主平等原則」と定義付けておりますが、この「株主としての資格に基づく法律関係においては」といったフレーズや、平等原則の適用があるとする理由などを読みますと、株主平等の原則を形式的にではなくて、実質的に考えるといった立場ではないかと思われます。つまり、先の防衛指針での防衛策と平等原則の考え方と、この地裁決定での考え方とはかなり立場が異なるものであって、なおかつ、その差は商法時代に認められなかった(第三者割当ではなく、株主に対する)新株予約権の無償割当が行われたから、ともいえない、つまり「株主平等の原則」の捉え方に関する「根源的なところでの違い」に由来するものではないでしょうか。

このあたりは、今後の敵対的買収防衛策のスキームをどう考えるのか、ということにも影響を与えるところと思っております。たとえば、以前このブログでもすこしご議論いたしましたが、D社が株式を長期保有する株主だけに議決権の優遇措置をとるとか、新株予約権を多めに付与するといったことが行われる場合、(エントリーはこちら)たしかに「元」になっている株式に注目するのであれば、誰でも長期保有する機会を付与されているわけであるから、会社側の取扱いには平等原則違反はないとも考えられます。しかしながら、優遇措置にスコープしますと、ある時点の株主については、同じ「株主という資格」を有するにもかかわらず、議決権をたくさん行使できる人と、できない人が発生するわけでして、株主という資格に基づく法律関係においては平等原則違反の状態が発生する、という解釈に向かうのではないでしょうか。

こういった問題をエントリーするのは、ひとつ間違えますと赤面モノのエントリーになってしまいますので(本来もう少し決定書を精読し、文献なども調査すべきであって)たいへん勇気がいるわけでありますが(^^;;、シロガネーゼさんのように「チョコチョコ」っと書いただけで、問題の核心をつくことができるほどの実力者の方々が、私のブログを閲覧されていらっしゃることを思いますと、またどなたか問題点の整理をしていただけましたら、もしくは考え方のヒントを頂戴できましたら、きっと私の同様の疑問を抱いておられる方もいらっしゃると思いますので、幸いであります。(この問題は絶対に、いろんなところで議論されている、と思うのでありますが・・・)

7月 2, 2007 ブルドックソースvsスティールP |

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さて、ブルドック地裁決定について少し分析に入ろうかと思います。今回は、ブルドックの買収防衛策と株主平等原則との関係について。この点は、今回の決定で、実務上もっともインパクトがあって、関係者が顧問弁護士と自社の防衛策について対応を迫られるところでしょう。 ...... [続きを読む]

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