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2007年7月22日 (日)

監査役の権限強化は第2のJ-SOXとなるか?

(日曜午前 追記あります)

監査役サポーターさんも思わず唸った・・・という土曜日日経一面記事でありますが、私もかなり驚いております。法制審議会を経て、早ければ来年の臨時国会に会社法改正案が提出され、監査法人(公認会計士)さんの選任権および報酬決定権を監査役固有の権限とする、といった内容になる模様であります。先日の監査法人改革の際にも、金融庁サイドでは監査制度に内在する矛盾(監査される者が監査法人の選任権や報酬決定権限を有しているのであれば、厳正な監査は制度的になしえない・・・といった「ねじれ現象」のこと)を解消するために、会社法を改正して独立性を有する監査役へそれらの権限を移すべきである、との意見が出されておりましが、まぁ、現実の監査役のあり方からみて、法務省が監査法人の独立性強化のために監査役制度を改正することは当分ないだろう、と思っておりましたので、「これはひょっとして米国SOX法301条の到来か?」(ちょっと大袈裟ですが・・・)と、この日経朝刊の見出しをみて、ちょっとビックリした次第であります。(ただし「日興上場廃止へ」のときも、「内部統制ルール実質緩和」のときもたしか大見出しの一面記事だったはずでして、このエントリーもなにげにおそるおそる・・・といったトーンになってしまいますが)

本当にこういった制度改革が実現するとなりますと、とても短いエントリーでは書けないほどの多くの論点があると思っておりますが、私自身の第一印象の感想としましては以下の2点であります。ひとつはそろそろ管理行為(注 会社の活動自体を収益獲得行為と管理行為に分類した場合の管理行為のことを指しております)の一貫としての「監査役制度」といったものが上場企業に出来上がってもいいのではないか、というものであります。大企業の場合であれば、それこそ監査役事務局の体制も整備され、外部専門家を監査役自身が選任できるようなところもあるかもしれませんが、それはほんの一握りの企業に過ぎないと思っております。一昨日の村上ファンド事件の東京地裁判決のなかで、裁判所はMACの監査役が村上氏に対して、アクティビストとしての活動と、投資顧問業としての活動とは(インサイダー取引や利益供与禁止規定違反などに触れるリスクが高まることを回避するために)分断すべきである、との意見を述べていたにもかかわらず、(村上氏は)これを聞き入れなかったことをたいへん重要視しております。監査役の存在というものが、あまり明るみに出ないことが多いなかで、このように経済刑法が問題とされている裁判例として、監査役の社内における意見陳述の事実を大きく採り上げられたところはたいへん新鮮に感じました。チャイニーズウォールが敷かれているかとか、アームズレングス・ルールが取引上で守られているか等、おそらく今後の上場企業の業務監査においては、とりわけ監督責任を果たせるプロの監査役が必要ではないかと考えておりますし、たとえば会計監査の部分においては、監査法人と連携協調して不正監査を防止していけるかどうか、といったところも重要なプロとしての要素だと思われますので、監査法人の選任権や報酬決定権の保持といったところも、「プロの監査役」が期待されている制度改革の一部分であると考えております。

もうひとつの感想は、「これまでの監査役の権限強化の歴史と、今回とはどこが違うの?どんなに変更してもなにも変わらないのでは?」といった問いに対する答えであります。これまでの1974年以降の監査役制度の変遷は、会社不祥事が社会問題となるたびに生じたものでありますので、このたびも「会計不正への対応」という点では同じようにも思われます。しかしながらこのたびはコーポレート・ガバナンスに関する世界的潮流(ガバナンスは企業パフォーマンスに影響を与える)に合わせての監査役制度改正という面も大きいのではないでしょうか。※1 ガバナンスに対する社内、社外からの「評価」というものを気にしないわけにはいかない時代になりつつあると思いますし、不祥事対策も「不正者への責任追及」から「プロセスチェック(リスク管理)による未然防止」へといった傾向にありますので、監査役会の構成(たとえば、財務専門家の監査役が存在するか)とか、監査役スタッフの構成(常勤監査役の周囲のスタッフはどうか、外部専門家によるサポートはどうか)など、いわゆる「プロとしての監査役制度が整っているかどうか」が、企業価値そのものへの評価のひとつになる時代が来るのではないか、と考えております。したがいまして、会社法や規則が改正されれば完結するものではなく、証券取引所規則によって、あるべき監査役制度の構成とか、その開示方法を提示したり、監査法人側からはあるべき連携協調のためのシステムが提案されたり、いろいろな民間レベルでのルール作りのなかで、監査役制度のあり方が模索されていくのではないかと思います。今回(もし本当に法改正があるのでしたら)の監査役権限強化への法改正が、そういった流れになる「きっかけ」となれば、これまでの「不祥事防止対策」とは少し違った「監査役制度の変遷」になるのでは・・・と期待をしております。(それにしましても、最近よく話題になります「公開会社法制定への動き」との関係はどうなるんでしょうかね?)

※1 7月20日まで、35回にわたって日経新聞に「新時代の企業統治」といった「やさしい経済学」が連載されておりました。こちらでも、企業統治の評価と企業パフォーマンスの関係がひとつの論点として採り上げられておりました。

(追記)メールにて、監査役制度が会社の「管理行為」とは、そもそも不適切な陳述である・・とのご意見をいただきました。もちろん私は「執行機関に管理されている」という意味で使っているものではありませんが、誤解を招くおそれがありますので、注記を付加いたしました。ただし本文で述べておりますとおり、最近のガバナンスの問題が業績や株価に影響を与える、といったことを前提といたしますと、厳密に収益獲得と管理行為を分けることができるかどうかは異論もありかもしれませんが。

7月 22, 2007 監査役の権限強化と会社法改正 |

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コメント

会計監査役の選任および報酬決定に関する株主総会議案の提出権を監査役会の権限にすることの検討を行っても良いのではと私は思っています。

会社法338条2項を改正する必要がありますが、会計監査人は株主のため、そして多くの利害関係者のために働くわけで、仕事の重要性は高いと考えます。それ故、一定期間毎に株主総会で会計監査人の選任を実施しては、どうかというのが私の考えです。

会社法338条1項の1年を長い期間に改正することが、あっても良いと思いますが、実状として会計監査人(監査法人)については、会社法329条が空文になっているような気がします。積極的に、何年に一度かは株主総会で決定することが、本来の姿であると思います。

冒頭に監査役会が議案提出と書きましたが、これは監査役会が議案を作成し、取締役会に提出することでも良いと思います。むしろ、重要事項である会計監査人の選出に関しては、総会とのつながりを濃くし、緊張感を持たせることにより、公認会計士・監査法人の地位向上や仕事の内容の向上、そして不正会計の防止につながると思い書き込みを行いました。

(Toshiさんのブログをお借りして、申し訳ないのですが、会計士の方は、私のような意見を、どのように思われるか、お伺いできれば幸いです。)

投稿: ある経営コンサルタント | 2007年7月22日 (日) 11時05分

「監査法人(公認会計士)の選任権および報酬決定権を監査役固有の権限とする」という日経新聞の記事について、既に、監査役には両権限とも合意権が認められていますので、果たして実効としての権限がどれだけ増すかは、疑問なところです。ただ、直感的には、これまで散見されていた会計上の解釈の相違から、執行部と監査法人の間に信頼関係が喪失し、実態的に監査法人が解任に追い込まれるという事例は、選任権が監査役の権限となれば、ワンクッションおくことになりますので、これから減少するのではないかと思います。

 しかし、エントリーで示唆されているように、いわゆる「プロとしての監査役制度が整っているかどうか」が、企業価値そのものへの評価のひとつになる時代が来る為の一つのきっかけになるのであれば、大変大きな意味合いがあるのではないかと思います。

 しかしながら、先日、弁護士の牛島先生は、「これからのM&Aに関する訴訟において、投資ファンドは必死であり、相撲で言えば、ガチンコ勝負を挑んでくる。その点、これまでの株主代表訴訟とは全く異なる。監査役制度を狙いどころとして攻め立ててくるのではないか」との問題提起をされていました。監査役制度の機能強化は、本来、エントリーでご指摘の通り、内からの改革がベストであり、ぜひそうしたいと思いますが、これまでの経験からしてなかなか進まないとすれば、最後は外圧に依存せざるを得ない、それでも変わらないよりはましではないかと考えています。

 一つ、異論があります。エントリーの「今後の上場企業の業務監査においては、とりわけ監督責任を果たせるプロの監査役が必要ではないかと考えております」のところで、私は、監督責任ではなく、監査責任とすべきではないかと思います。言葉の定義として、私は、監督は執行権の一部と捉えておりますので、このような質問になるのですが、先生はどのようにお考えでしょうか。
  

投稿: 酔狂 | 2007年7月22日 (日) 11時17分

コンピュータ屋です。

監査役さんの立場少し気になっていたところ、おっしゃるように事がおきたらますます内部統制対応者の立場が大変です。
少し論点がはずれますが、こんな事が気になっています。
内部統制評価に対して、三者の立場から監査を受けることにたいへんな負担を感じています。
1.内部監査人の監査・・・マネジメントサイクルとして仕方がない
2.外部監査人の監査・・・これも必須で仕方がない
3.監査役の監査・・・日本監査役協会も実施基準を出しており
まさに、三様監査となり、そのお手伝いと対応でたいへんなことになる。

今この辺の議論はされていませんが、負担がどの程度か想像できません。

投稿: コンピュータ屋 | 2007年7月22日 (日) 11時34分

本件は、J-Soxとは関係ないと思っています。そもそも、J-Soxという語自体がミスリーディングなので、不適当です。呼びやすいのかもしれませんが、金融庁は一度も日本版Sox法とは言っていない、と明言していますし、内容面でも異なるのは事実です。
また、何かあるとすぐ大騒ぎするのは、いかがなものか、と。
未確認情報や誤った情報等で、現場の方が踊らされたり、また無用な混乱が生じるのは見るにしのびないです。

この問題は、財務報告に関する内部統制の評価・報告制度の議論よりも前からそもそも存在していた本質的な問題です。本来的には、監査役や監査委員会が、外部監査人に対して、同意権だけでなく、その選任議案も含めて、コントロール(この語に拒絶反応を示される方はいると思いますが、厳密な意味でのコントロールではありません)を及ぼせる制度的な手当てが必要であるといえます。あそこまででいいだろう、という折衷的なところにとどまっていたことにそもそも問題の根源があるのだと考えています。どうしても、監査役・監査委員会は、会計面の監査の「蚊帳の外」になってしまいがちですが、この改正を契機に流れが変わることを期待したいところです。

以前、山口先生のブログでも議論があった、会計処理をめぐる経営陣と外部監査人の意見の対立の場面(外部監査人の辞任と辞任の理由の公表の問題)でも、監査役・監査委員会が本来は適時にこの問題に関与し、会社の機関として本来果たすべき「監査」の職責を果たせるように(経営陣に押し切られることを食い止め、また対立が発端となって外部監査人の辞任につながるような事態に早期から関与して、必要な職責を果たすことができるように)すべきですが、そういう論点もこの改正と密接に関連していると考えています。

この改正は、いい意味で実務に大きなインパクトをもたらし、監査役・監査委員が本来果たすべき職責をより適切に果たすことができるようになるのではないか、と大いに期待されるところです。逆に言うと、何とか阻止したいと考える立場の方々(もしいれば)にとっては、きちんとやるべきことをやらないと厳しい「現実」に直面することになると思われます。

大きな前進と捉えたい論点です。監査法人の方々の「本音」も興味があるところです。監査役・監査委員が防波堤となる、と期待されるのか、それとも.... いろいろポリティカルな問題もあるようですが、そういう要素から議論が歪むことなく、制度の本質論の建設的な議論が深まっていくことを願っています。

投稿: 辰のお年ご | 2007年7月22日 (日) 15時13分

監査役にこういう権限が付与されるとなると、不祥事を起こした会計監査人の選任責任なんかが監査役に問いやすくなってきそうですね。ただ、こういう権限があっても、結局は事実上社長が決めた報酬額等を監査役が形式的に決めるようになるだけでしょうから、実質的にどれだけその権限が有効に機能するかがこれからの問題になるんでしょうね。

投稿: m.n | 2007年7月22日 (日) 17時05分

監査法人の報酬決定権について、私は、現状、同意権が認められているので、あまり影響はないのではないかと考えておりますが、m.n.さんのご意見とは、ニュアンスが違います。私自身は、執行部が決めた報酬額であっても、同意をするに際して、金額の多寡について意見を申し上げて変更させたり、執行部が監査法人と交渉する前に、監査役としての適正金額を申し上げて誘導を図る等の措置を講じることにより、実質的に、同意権の下であっても、権限は有効に機能していると思います。

 m.n.さんには、失礼な言い方になるかもしれませんが、「こういう権限があっても、結局は事実上社長が決めた報酬額等を監査役が形式的に決めるようになるだけでしょうから」というお考え自体が、監査役の独立性を自ら放棄されているということになるのではないでしょうか。

投稿: 酔狂 | 2007年7月22日 (日) 20時13分

日経新聞に載った「監査役に監査法人の選任権を」という件は、確か以前(どれくらいか覚えていませんが)の日経新聞に載っていた覚えがあります。

私自身、理解不十分なところもあり少々混乱気味なままで書いてしまいますが....

会社法においては、(上場企業の場合という前提として)会社法監査を行う会計監査人を監査役が選任(内定)し、株主総会の決議により決定することになる。

一方、証券取引法(金融商品取引法)においては、有価証券報告書提出会社は、いわゆる監査人の監査証明(いわゆる証取監査、今後は金商法監査?)を受けなければならない。

監査費用と監査効率の点から、会社法監査と証取監査は同じ監査法人が行っている場合が多いのでは思いますが、会社法における会計監査人=証券取引法における監査人、であらねばならない法的根拠ってあるのでしょうか(ここがよくわからないのです。単に、監査コストと監査効率だけの理由なのか)。

ひょっとしたら、会社法が改正されると、監査役が選任する会計監査人(監査法人)と、会社が監査証明を依頼する監査人(監査法人)は異なるという状況もあり得るのでは、とか、監査法人が異なった上に、会社法上の監査意見と証取法上の監査意見で相違があったり、などと思ったりしますが、あまり現実的は話ではないでしょう。

ただ、山口先生のブログだったと思いますが、上場企業の場合は、証取法(監査)>会社法(監査)というようなご意見があったように思います(他のブログでしたら済みません)。現状として、内部統制監査や45日開示を考えると、やはり証取法(金商法)対応が第一とならざるを得ないという気がします。

そうすると、監査役が証取法監査の監査人も含みで選任権を持つのか、実質は会社(取締役会)の選任する証取法監査の監査人(監査法人)を監査役が会計監査人としても選任するのが実態となるのか。

もし、証取法監査と会社法監査で監査法人が異なった場合は、一方の監査結果にもう片方が依拠する形として監査をするのか。この場合は、内部統制監査も含む証取法(金商法)監査に依拠するのが妥当であるような気がします。

「監査役に監査法人の選任権を」については理解が足りないのかもしれませんが、今ひとつインパクトに欠けるような感じでして、要は、会社法上だけでは不十分で、証取法(金商法)も含めて包括的に(会計)監査人を捉えないと、結局、会社法上の内部統制と金商法上の内部統制の議論と同じとなってしまうのではと思ったりします。

まとまりに欠けしまいまして済みません。ただ、金商法の内部統制構築を行っている立場故もありますが、ある日突然監査役から、来期は別の監査法人になるからと言われても実務上の都合もありますし、まして、監査報酬を倍にして内部統制監査をしっかりやってもらうなどと決められたら...  想像したくありません。

投稿: 内部統制右往左往 | 2007年7月23日 (月) 01時35分

皆様、日曜日であるにもかかわらず、非常に熱のこもったコメントを頂戴しまして、まことにありがとうございます。エントリー中にも書かせていただきましたとおり、このブログで触れるにはあまりにも論点の多いところでありまして、辰のお年ごさんからも「不適切な用語使用」の点にご指摘がありましたが、私の上記文章は「ジャスト印象」の範囲を超えておりません。今後深く掘り下げていくべきでしょうし、また監査役制度につきましては、このブログの中心テーマのひとつでもありますので、また議論していきたいと思っておりますのでどうかご期待ください(笑)

なお、m.nさんからご指摘のありました「たとえ監査役に権限が移譲されても、しょせんは社長さんが実質的には決めてしまうことになるのでは」とのご疑問、私はもっともかと思います。酔狂さんは苦言を呈しておられますが、私のようにIPO企業のリスク管理委員を数社務めておりますと、執行機関といい、監査法人さんといい、あきれかえるほどに監査役の存在を無視しております。そのような土壌のなかで「プロとしての監査役」が育つはずがないと思っております。数万人の従業員を抱える大企業にも、わずか40人の従業員の新興上場企業にも、監査役会もしくは監査役という制度は存在します。また、内部統制監査も始まります。社外役員だけでなく、常勤社外(社内)監査役も含めて、その地位にふさわしい働きをするためには、やはり監査役さん方の気持ちの問題とは別に、外圧や既成のルールといったものが必要になるでありましょうし、社内で監査役の「おしりをたたく」人たち(外部第三者でもいいので)が不可欠ではないかと思っております。
なお、右往左往さんのご疑問につきましては、会社法のなかで上場企業を規制対象とする条項はすでに立案担当者のほうでも検討されているところでありますので、理論的な説明はつくところだと認識しております(たしか、昨年の7月ころに出されました「会社法A2Z]の相澤氏のインタビュー記事に関連項目が掲載されていたと記憶しております・・・ちょっといまは手元にありませんので確認はできませんが)

投稿: toshi | 2007年7月23日 (月) 02時33分

 toshiさんの「執行機関といい、監査法人さんといい、あきれかえるほどに監査役の存在を無視しております。そのような土壌のなかで「プロとしての監査役」が育つはずがないと思っております」という現状認識には、私も、残念ながら、反対することはできません。しかし、周囲の環境に全面的に責任転嫁をしてしまうことで、監査役制度の整備が果たして図られるのでしょうか。

 私は、歯に衣着せず申し上げれば、現状の監査役制度の不備の大半は、監査役の人選が杜撰なことから、監査役のミスキャストが生じているため、と考えております。私は、監査役が最低備えるべき能力要件は、監査役としての見識と、胆力と考えております。この二つが不可欠である理由については、申し上げるまでもないことと思います。監査役としての見識は、始めから持つことはできませんので、就任後勉強していかざるを得ませんが、監査役の主要任務である業務監査は、調査・分析能力がベースになっていますので、調査・分析能力を有していることが、まずは必要要件ではないかと考えております。

 大企業で、調査・分析能力と、胆力を有している方が皆無かというと、決してそうではないでしょう。問題は、そうした方が監査役にならずに、他のポストに就かれることです。役員の退職後の派遣先について、肩書きに応じたポストが決まっていることも多いでしょうが、そこの見直しを図るだけで、監査役の適正な人選が可能になります。したがって、大事なことは、トップが、監査役制度の価値をどのように評価するか、ということです。

 toshiさんは、「外圧や既成のルールといったものが必要になるでありましょうし、社内で監査役の「おしりをたたく」人たち(外部第三者でもいいので)が不可欠ではないかと思っております」とおっしゃっています。こうしたこともたしかに必要ですが、監査役制度の整備を図るための基本的な解決法は、トップに監査役に対する理解を深めていただき、適正な人材を監査役に登用することであると考えております。

投稿: 酔狂 | 2007年7月23日 (月) 06時38分

監査役は誰が選ぶのか?
当然、株主総会の場に於いて「選任」される、とあります。
でもその「選任案」を総会に掛けるのは会社側です。
株主側から監査役選任案が出されることは非常に稀でしょうし、
それが総会で通ったという話は寡聞にして知りません。

事実上、社長と監査役会が相談して、「新任の社内監査役は誰がよい?」
「社外の監査役で、いいひといない?」てな調子で決められていると
思うんですよ、多くの場合。これは別におかしなことではありません。

でもそうやって決められた監査役は精神的に独立しているでしょうか?
監査役会の職務を有効なものにするためには社内監査役は必要です
(でないと、社外の監査役にその会社の内情が分かるはずがない)。
でもその会社出身の監査役に(いくら法的な責任を課したところで)
自分を選んでくれた社長や取締役たちに反旗を翻すようなこと、
そこまでいかなくても彼らにあまりいい顔をされないようなことを
積極的にやれるでしょうか。
あ、むろん、そういう人間は監査役に不適格だと思います。
しかし、事実上「彼(彼女)を選ぶのは社長」なのです。

他方、社外監査役は銀行等金融関係や大手企業のOBや法人担当歴の長い
弁護士などが選ばれています。彼らは現状玉石混交でしょう。
優れた資質をお持ちのかたもいます。しかしそうではないかたも
大勢います。
そうではないかたは退場!と叫んだところで、後任者はいません。
つまり、プロの監査役市場は確立されてないわけです。

何より問題なのは、監査役制度がほぼ日本独自のものであるがゆえに
公認会計士や公認内部監査士のように国際水準・規格の波や外圧を受ける
こともなく、公的評価制度のないまま今に至っているということです。

監査役の権限を拡大するのはいいですが、その監査役の質はどうやって
測るのでしょう?質の向上はどうやって図るのでしょう?
彼らの自己研鑽に任せていいのでしょうか。


法的には、会社側が人選をし、株主総会が承認(選任)する。
これで何の問題もありません。
「会社側が人選を誤り、株主総会もそれを認めてしまい、監査法人は
 そんな監査役に選ばれるような法人だから不正を見過ごしてしまう。
 その結果企業が経営を危うくする事態が起こる…」
そういう事態が起こっても株主総会が認めているわけですから自己責任です。
しかし、それではいかん、というところからこの話は始まってるのでは
なかったでしょうか?


誰でも経営者になれるように誰でも監査役になれる。
そのために必要な資格制度はない。
これはいわば資本主義の根本ルールの1つでしょう。
この原則を維持しつつ、かつ監査役制度の(本当の意味での)有効性を
いかに向上させるか、この議論がもっとなされてしかるべきだと思います。

なお、監査委員会制度に関しても、アメリカのAS2(翻訳)を
読んでいると、監査委員会が当局(SECやPCAOB)から
全く信頼されていないのがよく分かります。
エンロン、ワールドコム等の事件の際、
ほとんど機能してこなかったからなんでしょうけどね。

投稿: 機野 | 2007年7月23日 (月) 10時54分

しかし、ひとつのエントリーから、いろんなご意見が出されるのはおもしろいですね。
今週月曜日に大阪弁護士会におきまして、800名ほどの聴講者を集めた「社外監査役シンポジウム」が開催されました。会計士協会さんや、日本監査役協会さんと共催だったのですが、そこでも面白い議論が出てきました。(また、別エントリーでご紹介したいと思います)

さて、機野さんや酔狂さんのご意見など、かなり筋の通ったものであると思いますし、私自身は(現実は機野さんのご指摘のとおりかもしれませんが)「プロの監査役市場」というものが出来上がってくれたらいいなと考えているわけでありますが、昨日、ブックオフという上場企業におきまして、外部第三者委員会の最終報告書というものが公表されております。この第三者委員会は、いちおう監査役会の直轄機関としてこの2ヶ月活動されてきたわけですが、その報告書の内容や、報告書をもとにした社内の決定事項など、なかなか興味深いものであります。以前のエントリーにおきまして、私はこのブックオフの事例について、やや批判的な立場で意見を述べておりますが、ひとつの監査役(監査役会)のあり方としては教訓を残しているのではないかと考えております。これもまたエントリーの題材として考えてみたいと思っております。

投稿: toshi | 2007年7月26日 (木) 02時28分

【監査役の権限強化関連に対するコメント】
この問題は、確かにインパクトのある話題ではありますが、法務省がこのような方針を打ち出すというのは、ある意味面白いと思います。このような制度を設けるのであれば、それこそ経済産業省が以前の報告書で提唱していたとおり、監査役の資格性の導入などが、本格的に議論されてもいいのではないでしょうか。
 確かに、TOSHI先生の言うように、多くの会社、特にIPOを目指す新興企業の場合は、監査役の立場・発言力は社内においてはきわめて弱いケースがほとんどだと思います(そもそも、取締役の人数に比して、監査役の数が著しく少なすぎる。常勤監査役にいたっては、1名という会社が多い)。一方で、酔狂さんのおっしゃるように、本来の監査役の役割や資質はある程度のものが求められてきます(特に使命感)。
 会計監査人は、公認会計士という資格を有しているわけで、監査役にも一定の資格制度を導入していかなければ、制度の実効性は担保で機内のではないかと思います(少なくとも、選任権を有するというならば、その資質を判断できるだけの能力が監査役に備わっていなければ、まったく絵に描いた餅になってしまい、かえって会計監査人の責任逃れを助長するように思えてなりません)。
 ただ、現実問題として、そのような資格制を導入すれば、監査役のなり手が少なくなる可能性があり、監査役不在の状態を生みかねないことから、その意味で実効性を持たせるのはかなり難しいのではというのが素直な感想です。

 どっちつかずのまったくの素人意見ですみません。

なお、
>>監査制度に内在する矛盾(監査される者が監査法人の選任権や報酬決定権限を有しているのであれば、厳正な監査は制度的になしえない・・・といった「ねじれ現象」のこと

は、確かにそういう問題意識はあると思いますし、必ずこのような問題提起がされますが、これは違うのではないかと思います。
 監査人が気に入らないからといって監査を受けないことはできないわけですし、監査人の交代も社長の独断ではできません。むしろ、監査表明が出なくなる分、困るのは会社経営者サイドではないでしょうか。

 現実的な解決案になるかどうかはわかりませんが、たとえば犯罪収益防止法の議論の中で、疑わしい取引の通報義務を弁護士にも課すべきであるという意見があったように、「疑わしい会計処理の通報義務」を公認会計士に課すとか(公認会計士協会は反対するでしょうが)、公益通報的な発想を取り込むとか(通報されたことによる不利益取り扱いの禁止等)の方策は取れないんでしょうか?

投稿: コンプライアンス・プロフェショナル | 2007年7月27日 (金) 00時25分

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