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2007年7月24日 (火)

内部統制の重要な欠陥と人材流動化リスク

財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い(いわゆる会計士協会による監査実務指針)につきましては、すでにいろいろなブログでも話題になっているところでありますが、そのなかに「内部統制の重要な欠陥」といった項目がございます。私自身も「内部統制の重要な欠陥」に関する判断指針にはかなり関心を持っております。これまでは、文書化やIT統制といったところに財務報告内部統制の関心が非常に高いところでありますが、いわゆる財務報告の信頼性確保のための内部統制プロセスに関わる「人」の資質というものが、「重要な欠陥があるかどうか」といった企業の有効性判断にどのような影響を与えるのか・・・・というところには、あまり光があたっていなかったのではないでしょうか。(また、これからも、光をあてにくい問題なのではないでしょうか)いくら内部統制報告制度において、文書化やIT統制の整備運用が充実したとしましても、所詮は整備運用に携わる社員に財務的な素養がなければ、有効性評価とは結びつかないはずであります。

そもそも「重要な欠陥」かどうか、といったことも経営者による評価ということになりますが、監査する側からみれば、「経理、財務部門」の専門的能力や人員が不十分であるために、企業の内部統制により識別できなかった財務諸表の重要な虚偽表示を監査人が検出した場合には、その不備が「重要な欠陥」に該当するかどうか、慎重に判断しなければならない、とされております。(実務指針43ページ。ところでまず「企業の内部統制により識別できなかった財務諸表の重要な虚偽表示を監査人が検出した」という結果と、それが「経理財務部門の専門的能力や人員が不十分であった」という原因との因果関係は誰がどうやって判断するのだろうか、容易に判断できるのだろうか・・・といった素朴な疑問が浮かんできませんでしょうか。私はこのあたりでまず理解不能に陥ってしまいました)したがいまして、この人的な資質の問題によって内部統制に重要な欠陥を作らないためにも、企業側におきましても、こういった人的な資質の部分において、内部統制に不備があるかどうかを評価することが不可欠、ということになりそうです。ところで、たとえ経理、財務部門の専門的能力や人員が不十分であるとしましても、内部監査部門が充実しているのであれば、たとえ決算財務報告プロセスにおける資質に関する人的不備が存在していたとしても、その不備は監査人の目にとまる前に是正される可能性があるわけですから、結局のところ、企業における専門的能力や人員が不十分であることに起因する不備が重要な欠陥に該当する可能性は低くなるはずであります。したがいまして決算財務報告上のブロセスにおける人材不足と、内部監査部門(有効性評価部門)における人材不足が競合するようなことを回避することが得策かと思われます。(人的資質という部分に光をあてて企業が「重要な欠陥」と判断できるかどうか、また「重要な欠陥が是正されたかどうか」を判断できるかどうか、という問題は、その資質を評価できる人材が社内に存在することが前提となるはずであります)このように考えますと、経営者評価の問題と、人的資質が「重要な欠陥」のひとつになる、という条件を結び付けますと、決算財務報告プロセスに関わる社員の財務的資質と、内部監査部門の社員の財務的資質とが不可欠ではないかと思われます。

私は上記のように考えているのでありますが、実際に内部統制監査人の方は、決算財務報告プロセスに関与する社員の経理、財務部門の専門的能力だけを判断の対象とするのでしょうか?もし、経営者評価のしくみ、つまり社員の資質が「有効」と評価できる部門の存在を抜きにして、人の資質を監査対象とするのであれば、それはダイレクトレポーティングを採用していない内部統制報告制度とは矛盾しないのでしょうか?また、内部統制監査の目的というものが、財務諸表に虚偽表示を発生させる可能性の高さと、その発生した場合の重大性を判断するところにあるとすれば、この人材流動化の時代に、ある程度の財務的資質を持った人材の流動リスク、といったものも不備の対象になってくるのではないでしょうか?内部統制監査に携わる方々にお聞きしたいことは、まず何をもって「財務的資質」に問題なし、と考えるのか、その判断指針でありますが、そのつぎに、どの領域に、どの程度の「財務的資質」を持った社員が存在すれば、「不備」にはあたらないと考えるのか、その2点であります。

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コメント

コンピュータ屋です。
おはようございます。

おっしゃっている「有効性の判断」「重要な欠陥」、というところ議論がなかなかありません。
コンピュータ屋的発想(PM的発想)からしたら、最後の内部統制報告書を作成するところが不明なまま、プロジェクトを進めていくなんておかしな話と思っています。
これからも議論なり、例示があるのか心配です。
また、事例として、
・決算プロセスの不明朗さ、およびそれを一人の人に依存していたこと
 (責任者首、会社は監理ポストへ)
一般的に、
・販売や購買のプロセスの不備を積み上げてもどのように重要な欠陥となるのか具体的に見えません。
やはり、米国事例をまねするしかないのでしょうか。
今は文書化一生懸命ですが、
このフェーズに来たら、混乱するのではと、心配です。

投稿: コンピュータ屋 | 2007年7月24日 (火) 07時59分

この部分、「本家」米SOXをほぼそのままパクってしまってるんですよね。
パクっているというのか影響を受けているというのか…。

合衆国に於いてSOX404条「重要な欠陥」と指摘された対象で
最も多い部類の1つが「人材(配置、能力)、教育」だったとか。
アメリカ公認会計士たちがどういう物差しで企業とその構成員を
「裁いた」のかまでは不勉強にて存じませんが、
これはダイレクトレポートだったからこそ判断できたことでは
なかったでしょうか。

翻って我が国に於いてはインダイレクトレポート(←私にはもうこの
「イン」は建前だけのような気がしていますが)ですので、
「直接」人材評価をするようなことが出来るはずがない(会計士に出来る
能力もないし、会計士はそんなことをしていい立場ではない)。
だから「慎重に判断しなければならない」などと
歯に何かが挟まったような言い方になっているのだと思います。

でも、むろんご指摘のように、「ヒトの問題が全て」と言ってしまえる
ほど人材・人事に関わる問題は各企業最大のリスクであることも事実で
ここに触れない内部統制監査はあり得ません。但し、「財務報告に係る」
内部統制、と範囲を限定していることを強く意識しなければなりませんが。

巨大企業はもちろん、伝統ある中規模以上企業であれば、
経理財務担当者が一定の職務分離のもと、番頭が丁稚に仕事を教えるが
ごとく人材の教育を行っているシステムが
(一応)出来ているでしょうから、
実際にこの部分で引っ掛かってくることは極めて少ないと思います
(業務プロセスのなんらかの整備は必要となることはあっても、
 それは監査期間内に整備可能)。
問題はやはりこの方面の人材が不足しているベンチャー企業でしょう。


うーん、繰り返しになりますが、「ダイレクトレポートにしたから
アメちゃんとこはエラいことになったんで、うちはやめとこ」
という「誤解」(J-SOXの制度設計上の重要な欠陥に直結)「矛盾」が
ここでも噴出しているように感じられてなりません。

あ、「J-SOX」って表現は今でもどうかと思いますが、
真田さんが(暗に)物凄くキッツイ絶望的な皮肉を込めまくって
「J-SOX」と使われ始めておられることに
私も倣っております(笑)。

投稿: 機野 | 2007年7月24日 (火) 10時04分

>コンピューター屋さん、機野さん
おはようございます。朝からコメントありがとうございます。

以前からモヤモヤしているところでして、自分ひとりがなんか大きな誤解をしているのではないか・・・と思っておりましたが、昨日ある会計士さんとお話しているときに、「中小の上場企業の内部統制支援をしていて、一番やっかいなのが人の問題」と悩んでおられたので、思い切ってエントリーにしてみたような次第であります。
法律家なもんで、「相当な因果関係」などといった用語を使用してしまいましたが、「監査」「レビュー」といった合理的な保証の水準を求める監査の世界に適切かどうかはわかりません。ただ、人が人を裁定する・・・といった問題のわけですから、財務報告内部統制の世界では、経営者と監査人による二度の裁定問題をどう解釈するのだろうか・・・といったところが、明確な判断基準を求められても当然なのでは・・と思います。

投稿: toshi | 2007年7月24日 (火) 10時16分

こんばんは。

大変突拍子もない話(寓話?)で恐縮ですが、この問題、もし会計参与設置会社であれば、どういうことになるのでしょうか。

以前先生のエントリーにもありましたが、会計参与は予想外に普及しているとのこと。が、殆どは、中小規模の非上場会社でしょう。上場会社が会計参与を置くなんてことはまずないのではないか、と思います(もしかしたら、そんな会社は取引所が上場を認めなかったりして?)。また、多くは公認会計士(監査法人)ではなく、税理士(税理士法人)のようですね。

その意味で、この話は全く現実感のないハチャメチャな話なんですが、私の想定事例は:
◎もし会計参与設置会社で、かつその会計参与に公認会計士または監査法人が就任している会社であれば、内部統制監査を実施する監査人は、「経理・財務部門の専門的能力」を問題視する、重要な欠陥になり得る内部統制上の不備と認識することは絶対にないのではないか?
・・・というものです。
(多少現実感を持たせるとしたら、「上場会社の子会社である中小規模の非公開会社」と置き換えればいいでしょうか。)

この想定に対し、「いやそんなことはない。あくまでも個別具体的に実態に即して判断する。」と言い切れる会計士や監査法人の業務執行社員の先生方がどれほどいらっしゃるでしょうか。

先生もご指摘のとおり、これは「人が人を裁く」領域に属するものであり、(これまた先生の従前の言を拝借すれば)高度にトレーニングされた人間のみに許される「神の領域」に属するのではないか、と思うのです。

殆どの会計士の先生方は、そんなことやりたくないでしょうし、ご自身やれるとも思っていないのではないでしょうか? 

起案された先生方には、安易に彼の国の議論と実例に振り回されない冷静かつ現実的なご判断をお願いしたいものです。

PS:
ところで、今日手許に回ってきた別冊商事法務の「金融商品取引法の検討〔1〕」をパラパラと眺めていたんですが、これめちゃくちゃ面白いですね。いや、内容でなく、書振りが。関西系の先生方による研究会の「報告」-「討論」という構成なのですが、開示制度の箇所を見たら、その討論の面白いこと、面白いこと。関西商法学界(仮称)の重鎮であるK教授を筆頭に言いたい放題の限りを尽くしています。口角泡を飛ばして議論する様子やしたり顔して受け売りの論陣を張る若手の先生を罵倒しまくる様子が目に浮かぶようです。大変面白い読み物に巡り会えて、今日は少しばかりリフレッシュできました。山口先生には大変失礼なんですが、関西人の懐の深さの一旦を思い知らされました。

投稿: 監査役サポーター | 2007年7月26日 (木) 00時23分

>監査役サポーターさん

会社法上の機関設計の可否とは別に、上場審査の関係からみて、会計参与だけ就任していて会計監査人の存在しない上場企業、というものはまずありえないと思うのですが、たとえば社外監査役に公認会計士さんが就任されているケースで、全社的内部統制における「統制環境」を外部監査人が監査する場合というのは普通にあるケースですよね。おっしゃるように、まず事例的に「資質の問題として不備がある」といった判断がなされることはないでしょうね。
私も、破産管財人をしていて、破産申立代理人の弁護士さんが、「あれ?破産申立報酬を取りすぎていますよね」と感じるケースがありましても、正式に報酬の返還を、この弁護士さんに要求するのはなかなか勇気がいりますし。(まあ、その分、破産宣告後にも、いろいろと働いていただくことはありましたが)こういったケースでも、一番イタいところですね。

なおPSの部分でありますが、この研究会のメンバーの方も、僭越ながらこのブログをご覧になっていらっしゃるようですので、私はノーコメントとさせていただきます。ハイ・・・(^^;;

投稿: toshi | 2007年7月26日 (木) 02時53分

 コメント内容がトピとずれているかもしれませんが。

 書かれているように、「決算財務報告プロセスに」おいて「企業の内部統制により識別できなかった財務諸表の重要な虚偽表示」(例えば法人税の計算誤り)を外部監査人が検出した場合、「なぜそれに気がつかなかったのか?」という内部統制上の問題が浮上してきます。
 当然、虚偽表示に気がつかなかった原因・理由を「慎重に判断しなければならない」のですが、例えば「税法改訂に伴って新たな計算方法を適用しなければならなかったのに、新たな計算方法が適用されることを知らなかったため、大きく金額が誤ってしまった場合」には、「経理財務部門の専門的能力や人員が不十分であった」という流れになると思います。
 また、ご指摘のように内部監査部門が、経理財務部門の誤りを訂正して、適切に作成された財務諸表が外部監査人に提出されれば、内部統制上の問題点にはならないものと思います。

 ご質問の「何をもって『財務的資質』に問題なし、と考えるのか」に関しては、「決算財務報告プロセス」の一環として、「法人税の計算誤り」等のリスクに対して「経理・財務部門に対して、専門能力を維持するための教育研修を行っている」あたりがコントロールになるものと思います。
 「どの程度の『財務的資質』を持った社員が存在すれば、『不備』にはあたらないと考えるのか」に関しては、実質的な判断が難しいので、上記のように「結果的に問題なければ必要な能力が備わっていた」と判断するものと思われます。

 当然これらは私見ですので、外部監査人が最終的にどのように判断するかは判りません。ずいぶんUS-SOXに影響されていますし。。。

 「まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記」に同様の記事が出ていました。ご参考までに。
「相次ぐ決算修正」:http://maruyama-mitsuhiko.cocolog-nifty.com/security/2007/05/post_45a1.html
「SOX 2年目の重要な欠陥:http://maruyama-mitsuhiko.cocolog-nifty.com/security/2006/09/sox_2_0b3e.html」

投稿: unknown | 2007年7月26日 (木) 03時56分

あらら・・・こんなところにまるちゃんが登場していますね。。。

で、教育研修を受けているというのはある意味手段だと思います。目的は、適切な会計基準や税法上の取り扱いを理解し、実践できる人材を育成しているということだと思いますので、実質的に監査人に税務上の取り扱いを理解していないと判断されるような誤りが発見されると、やはり内部統制は有効でないと判断されるように思います。。。

まるやま

投稿: 丸山満彦 | 2007年7月27日 (金) 02時22分

丸山先生、unknownさん、こんにちは。
コメントありがとうございました。

ところで、実はunknownさんの考え方につきましては、とても興味がありまして、結果が発生したから、その結果を生じさせた原因を追及して、不備を突き止めるといった手法は、会計以外の世界でも行われるところだと思っております。
そこで疑問なのですが、この考え方はリスクアプローチ的な発想と矛盾しないのかどうか、「会社の予算との関係で人材補強ができない」といった場合に、「費用と効果」といった内部統制の限界論があるにもかかわらず、やはり「不備」(→識別によっては重要な欠陥)となってしまうのか、つまり「不備」と評価されることと、内部統制の限界論との関係といいますか、このあたりはどう考えたらよろしいのでしょうか。
また、別エントリーで検討してみたいところであります。

投稿: toshi | 2007年7月27日 (金) 11時20分

はじめまして。
現在、内部統制を構築している実務者としてコメントさせていただきます。
「ところで、たとえ経理、財務部門の専門的能力や人員が不十分であるとしましても、内部監査部門が充実しているのであれば、たとえ決算財務報告プロセスにおける資質に関する人的不備が存在していたとしても、その不備は監査人の目にとまる前に是正される可能性があるわけですから、結局のところ、企業における専門的能力や人員が不十分であることに起因する不備が重要な欠陥に該当する可能性は低くなるはずであります。したがいまして決算財務報告上のブロセスにおける人材不足と、内部監査部門(有効性評価部門)における人材不足が競合するようなことを回避することが得策かと思われます。(人的資質という部分に光をあてて企業が「重要な欠陥」と判断できるかどうか、また「重要な欠陥が是正されたかどうか」を判断できるかどうか、という問題は、その資質を評価できる人材が社内に存在することが前提となるはずであります)」

おっしゃっていることには同感できるものの、いくつかの前提が必要になると考えます。
まず、「監査人の目にとまる前に是正される可能性」がどれほど確保されているかです。
内部監査部門が充実しているといっても、その内部監査部門が経理部門のみならず会計処理に係る実務担当者の不備を発見可能なほどに、網羅的に評価することが可能なのか、また、その網羅的な評価は期末日よりどれだけ前(是正にかける猶予期間)に完了するのかによると考えます。
会社の規模によっては現実的に困難ではないでしょうか。

また、決算・財務報告プロセスに関与する部門は、財務報告に係るあらゆる業務プロセス上の内部統制の設計の第一人者と考えられます。
このプロセスにおける資質に関する人的不備は、全社的に会計処理に関する内部統制の不備を誘引し、不備の状況は期末日までの是正が困難なほどになることが想定されます。

以上のことから、人材不足についてどちらを優先するかと考えるのではなく、「いかにして決算・財務報告プロセスに関与する部門と内部監査部門双方の人的資質を高めていくか」を検討し、少しづつでもその実現に向けて歩み続けることが重要だと考えます。

投稿: hisaemon | 2007年7月28日 (土) 00時39分

>hisaemonさん

はじめまして。コメントどうもありがとうございます。
たいへん有益かつわかりやすいものであり、自身の考え方について再考する機会となりました。

>まず、「監査人の目にとまる前に是正される可能性」がどれほど確保されているかです。
内部監査部門が充実しているといっても、その内部監査部門が経理部門のみならず会計処理に係る実務担当者の不備を発見可能なほどに、網羅的に評価することが可能なのか、また、その網羅的な評価は期末日よりどれだけ前(是正にかける猶予期間)に完了するのかによると考えます。
会社の規模によっては現実的に困難ではないでしょうか。<

この部分は納得です。
時間的な問題はまだまだ企業側でも十分把握されていないのではないかと思います。とりわけ決算財務報告プロセスについては、どうやって是正していくのか、ということも含めて、不備もしくは重要な欠陥を是正するのは、とくに人的な資質のことになりますと困難なところがあるかもしれませんね。

>また、決算・財務報告プロセスに関与する部門は、財務報告に係るあらゆる業務プロセス上の内部統制の設計の第一人者と考えられます。
このプロセスにおける資質に関する人的不備は、全社的に会計処理に関する内部統制の不備を誘引し、不備の状況は期末日までの是正が困難なほどになることが想定されます。<

「このプロセスにおける資質に関する人的不備は」とあるところがちょっと私自身もわかりにくいところなのですが、これが「人的不備だ」というのは、いったい誰が決めるのでしょうか?
おそらく経営者と監査人が評価することになるのではないかと思うのでありますが、監査人による評価の前に、「人的資質に関する不備」とまず内部統制報告書で評価することが優先でしょうから、そうなりますと、やはり「内部監査人」による評価が優先するのではないか・・・と概念的には考えられないでしょうか。財務決算報告プロセスに関与する部門がどんなに優秀であったとしても、自己評価はできないわけで、経営者による評価は内部監査部門のスタッフの意見に依拠せざるをえないと思われます。そうしますと、そういった優秀な財務決算プロセス部門を「優秀」と評価できるだけの、これまた優秀な内部監査部門がなければ経営者評価というものはありえないようにも思えるのでありますが、(このあたりはまったくの理屈の問題なのですが)どうなんでしょうかね?

投稿: toshi | 2007年7月29日 (日) 02時50分

コメントありがとうございます。
内部監査人が先か財務決算報告プロセスに関与する部門が先かについては、優劣をつけるほど余裕はないと考えております。
確かに、評価をするものが適切な評価できなければ、話にはなりませんが、評価の結果是正が必要となると、決算財務報告プロセスに関与する部門の能力が問われることになります。
そして、評価の結果がでてから是正までの猶予期間はどちらかと言えば短く、この部門の能力が高くなければ、適正な是正(是正完了の時期および是正内容)が完了しないこととなります。
また、この部門の能力が低い場合、評価の結果の不備・欠陥はかなり全社的なもので影響が広く大きいものとなると想定されます。
内部監査人に関して注力するあまり、このような事態が判明するのが、本番年度の評価のタイミングとなってしまうと目も当てられないと考えるのです。
ですから、どちらを先にではなく、どちらも早急に人材を整備する必要があると考えます。
(非常に難しいことは分かっていますが。。。現に私も当事者として頭を悩ましておりますし。。。)

投稿: HISAEMON | 2007年7月29日 (日) 15時36分

混ぜっ返すようで恐縮ですが、どうも基本的に
この内部統制の話、非科学的・非数学的に感じられてなりません。

「動物実験もまだの人間用新薬ナイブトーセが何故か難病の特効薬として
 厚生労働省に認可されてしまった。
 それどころか難病患者はその薬を飲むことが義務になってしまった。
 何せ実験がまだだから、どれぐらい飲ませると効くのかわからない。
 どの程度効くのかわからない。治療にかかる費用もわからない。
 副作用があるかどうかもわからない。
 アメリカには類似の薬があるので一応参考にはなるが、
 どうも治療法が違うらしい。
 にも関わらず、体力のない年寄りも、生まれたての赤ん坊も
 みな等しく飲まないといけない。病院から追放されてしまう」


血液製剤問題などで行政が繰り返してきている(現在進行形)誤謬が
またいま繰り返されてはいないか(むろん、「薬」は必要です)、
誰かが「この薬、効きます?劇薬ではないんですか?副作用はありません?
薬を買うカネがないひとは救済されないの?」と
言わないといけないと思うんですが、
「"決まってしまったことは仕方がない"文化」は
ここでも踏襲されているんですな。
そうやって真珠湾を攻撃しちゃうんですね。


公認会計士の皆さんがストライキをやるのが一番有効だと思いますがね(笑)。
いや、現場では静かなストが始まっているのかもしれませんが。

だいたい、公認会計士の人的資質、能力は大丈夫なんでしょうか?
これまでの財務諸表監査に関しては長年の経験があるでしょうし、
そのためのムズカシイ試験をパスされて会計士になられているわけですから
問題はないとして、内部統制監査に関しては彼らも「素人」(とまでは
申しませんが)なわけですよね。

内部統制監査を行った経験がない、そのための教育を受けていない、
そもそも何をどう教育すべきかというテキスト、ガイドラインがない…。

これは皮肉抜きで「内部統制制度自体の重要な欠陥」の1つだと
思うんですが。

泥棒捕らえて縄をなう、どころか、
いま縄の作り方を研究し始めたところですよね。


ですので、この議論は申し訳ない表現になってしまいますが、
どこか「ちゃんちゃらおかしい」のですよ。
会社側と監査法人(公認会計士)側が同じレベルでは困ります。


ただ、そんなことを言ってても始まらないと、それでも言わざるを
得ないとすれば、各企業、各監査法人、各法務家、そして官僚らが
ともに汗をかいて協力し合い、有効でかつ費用対効果のある制度にする、
つまり皆んなで仏に魂を入れていくしかありません。

とすると、やはり当初数年間は「試行期間」とし、出てきた不備、欠陥に
ついてはあくまでも今後制度整備のための材料としてのみ取り上げる
(むろん、その間も企業自身が改善すべきと思う箇所は改善していく
 べきですが)、
いたずらに企業と末端の会計士を怖がらせ困惑させ過労死させるような
ことは断じて控える…
これが現実的な方策だと考えます。

こうやって、人材は育てていかないと人材が最初から充分に「いる」はずが
ないじゃないですか。
繰り返しになりますが、制度そのものが不備を、欠陥を創出してしまおうと
してるんですよ。無実の人間を犯罪者にしようとしているようなものです。
これは「法人格」に於ける「人権(侵害)問題」ではありますまいか。

法律の専門家の皆さんのご意見を拝聴したく存じます。

あやふやな基準によって最終的に上場廃止に追い込まれた企業(但し、
財務諸表監査上は問題なし)が制度の不備に原因あり!そのために
損害が生じて株主に迷惑をかけたと国と日本公認会計士協会を訴えたら
(或いは株主自身が原告となる)、
国は勝訴するでしょうか?(まあ確かに門前払いになりそうですが)

監査法人との意見の不一致が原因で、監査に空白が起こってしまった
などの理由で、株価が暴落し、それによって株主が多大な損害を被った際、
株主は監査法人を訴えうるでしょうか?
会社側と監査法人は契約時に監査不成立の場合法的なトラブルが起きない
よう取り決めるでしょうが、株主は別ですからね。
その前に監査役が「会計士のこの意見はおかしい」と言ったりすることに
なるのでしょうか?

投稿: 機野 | 2007年7月30日 (月) 10時02分

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