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2007年7月27日 (金)

内部統制支援と監査人の独立性

(土曜深夜 追記あります)

最新号の経営財務(2829号)の記事によりますと、先日(7月7日)の監査研究学会西日本部会におきまして、内部統制監査の基準をめぐって議論がなされた そうでして、あるCPAの方が「内部統制監査を実施する立場からみた制度上の懸念事項」として①業務プロセスの評価範囲の決定②外部監査人の独立性③他の監査人等の利用④内部統制の有効性評価主体の4項目を指摘されたそうであります。(私も先日のJICPAの監査実務指針を読んでの感想は、まさに上記4点ではないかと思っておりましたので、すこし安心をいたしました。)とりわけ②の外部監査人の独立性は大きな懸念事項のようでして、独立性に関する明確な指針が示されない中で、監査人がどこまで対象企業の(内部統制システム整備構築の)支援が可能であるか、かなり混乱が生じているようであります。監査人の見解次第で、監査人から積極的な支援を受けることができる企業と、そうでない企業との格差が生じつつある・・・といったかなりショッキングなお話であります。

そういえばこの外部監査人の独立性につきましては、先のJICPA監査実務指針の13ページ以下で詳説されているわけでありますが、実施基準の目玉であります「財務報告に係る内部統制構築のプロセス」にしたがって、「どういった行為が法律で禁止されている同時提供禁止行為で、どういった行為が同時提供可能か」といった例示が掲げられております。ここはおそらくJICPAとしましても、公認会計士法24条の2に関係する部分であり、違法性が問題となる場面ですから、相当慎重な配慮が必要な箇所ではないかと推測いたします。しかしながら、この例示というものが実にわかりにくい・・・と感じるのは私だけでしょうか?これを読んで、具体的にどういった行為が非監査業務の同時提供として違法なのか、それとも適法なのか、見事に区別できる先生がいらっしゃいましたら、ぜひ一冊の本にまとめていただくことを切望いたします。私はその監査実務指針に登場している倫理委員会報告第一号「職業倫理に関する解釈指針」(平成18年3月17日)を参照しましても、じつにわかりにくく、思い悩むところであります。

たとえば、以下のような事例においては、監査業務と非監査業務との同時提供に該当するのでしょうか?(なお、私個人としましては、企業側の立場から、できるだけ多くの情報を外部監査人から取得したいところですので、該当しない、といった意見が多いことを祈っておりますが・・・)

1企業担当責任者もしくは担当役員が自己の意思決定をもって、内部統制構築に係る経営者の基本的計画および基本方針を立てたのであるが、これに監査人候補者がコメントを出してきたので、そのコメントをもとに再度、修正して計画および方針を作成した。こういったことを繰り返して、やっとのこと、最終的には「言うべきコメントはありません」との監査人候補者の回答を得た。この場合、監査人候補者が後日、内部統制監査を行うとすると同時提供禁止規定には反しないのか?

2内部統制の構築上の要点や、構築に必要な手順、日程等の一般的な考え方について、監査人候補者が責任担当者、担当役員に対して教育、訓練をした。

3全社的内部統制について、内部統制の基本的枠組みと現状とを比較して、不十分な部分については指摘することは可能とされているが、監査人自らによる内部統制の構築と誤解されないように留意すること、とされている。そこで、担当責任者が、監査人候補者による指摘に基づいて、何度も現状を変更して、最終的には監査人候補者より指摘すべきところがない、といわれるようなシステムを構築した。

こういった問題事例は、このガイドラインを読んでおりますと、至るところで発生するかもしれません。(ほかにも経営者による評価範囲の決定について、直接的支援はできないが、経営者が決定した評価範囲についてコメントを提供することは可能、とされておりますが、こういったコメントを頻繁に求めて、その都度経営者サイドで修正を重ねて、最終的には監査人候補者のコメントが出ない形に整えたことについては、これを実質的に内部統制監査候補者自身が策定したものとは言えないか?等)これまで、このような監査人の独立性がまさに問題となるような事例集のようなものはあったのでしょうかね?このたびの財務報告に係る内部統制の監査基準を考えるにあたって、こういった監査人の独立性に関する論点は、会計士さん方の内々の議論の場では大いに意見交換がなされてきたものと推測いたします。しかしながら、先の研究会でも議論されているように、会計士さんの個人的な見解によって、ある事例では同時提供と解釈され、また別の会計士さんの見解では同時提供ではないと解釈されるとするならば、おそらく対象企業としてはその内部統制への費用負担に大きな差が発生することになってくるように思えるわけでして、大きな不公平感を招く結果となるのではないでしょうか。できれば、先のJICPAの監査実務指針で書かれている具体例をもう一段、わかりやすい「事例集」のようなものに落とし込んでいただき、厳格なのか緩いものなのかは別として、大きく内部統制監査に携わる会計士さん方の見解がブレないような枠組みを示していただけたら・・・と思います。

(追記)こういった財務報告に係る内部統制報告実務関連のエントリーにつきましては、最近は多くのコメントやトラックバックを頂戴する機会が増えたのでありますが、どうも今回のエントリーにはあまり頂戴できないようです。やはり、実務上も、まだ結論の出にくい難問なのでしょうか?すでに試運転の時期も中盤に差し掛かってきた頃ですし、このあたり内部統制実務との関係で、もうすこし明確な指針が必要ではないかと思っております。おそらく会計士協会の監査実務指針の公開草案に関しましても、私のような意見が出されているのではないかと推測しております。

7月 27, 2007 内部統制支援と監査人の独立性 |

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コメント

コンピュータ屋です。
おはようございます。

「監査人の見解次第で、監査人から積極的な支援を受けることができる企業と、そうでない企業・・・」
「1・・・内部統制構築に係る経営者の基本的計画および基本方針を立てたのであるが、これに監査人候補者がコメントを出してきたので、そのコメントをもとに再度、修正して計画および方針を作成した。・・・」

上記のようなご心配な点まさに昨日味わいました。
詳しい状況は割愛しますが、久しぶりの監査人さんとの調整会議の場でした。(例の移籍があったもので)
・監査の実施基準公表により、もう少し積極出来支援できますよと言うコメント
・気軽に、3点セット+もう一つ追加で作ってよ。評価用の見本があるよ。使ってよ。

経営者側の方、喜ばれていました。
しかし、これからどの方向に向かうのか疑問です。
・積極的関与で、効率よくなるのか、逆らえない監査人の指示で今までの作業をやり直す可能性があるのか。
・担当の監査人さんは良くても、バックの監査法人としての姿勢に大きく影響を受けるかもしれない

13ページの中、「監査人である公認会計士等は、経営者の責任において実
施する作業に対して助言・指摘を提供できるが・・・」
この言葉の重みは大きい、混乱を招くのではと言う心配です。

投稿: コンピュータ屋 | 2007年7月27日 (金) 08時38分

どうもでございます。

この問題もまた、"「イン」ダイレクトレポート"であるがゆえの、
日本独自の問題ということでしょう。

「こういう制度なんですよ」
「ええ、これまでより費用はかかります」
「追加費用の内訳と言われましても、説明できるのはここまでで…」
「こうしないとダメなんです。いや、ダメって私らが言っては本当は
 いけないっぽいんですが。それだと不備なんです。欠陥なんです」
「それならコメントなしで同意できます」


新しい制度なんでしょ?
会計士自身、というかそもそも学者先生だって元締め・金融庁だって
「よく分かってない」ままスタートしようとする制度なんでしょ?
素人の一般企業に分かるはずがないでしょ。

それは百歩しか譲れないところを1万歩ぐらい譲ったとして
仕方がないとしてですよ、
そういう制度の意義と方法をいかに啓蒙していくか誰が啓蒙できるか
といえば、公認会計士しかいませんよね。

「(外部)監査人の独立性」問題?

ジョーダンはほどほどにしてもらいたい。
少なくともこの日本オリジナルの内部統制監査制度が根付くまで
(根付くとして、ですが)
その数年間はこの問題は一切問題にしない!!!!!と
金融庁も日本公認会計士協会も法学者筋も、そう思ってそう発言して
そう考えるようにしてください。
というか「しなさい」、ですよ。

会社側と会計士側が汗水垂らしてやりとりを繰り返して
やっとなんとか「それらしき仕組み」「それらしき報告書」が出来て、
それが、独立性に抵触する!などと、"無効宣告"でもされたら、
火をつけにいきますよ。
いや、日本人は素直な羊ですからそんなことはしないでしょうけど(爆)。

事例集というのも、どうですかねえ、有効なものが出せると思えませんが。

「内部統制制度」を今回導入するにあたって、
「これは企業をよくする制度であって、烙印を押す制度ではない。
 不備がある、問題があるところは報告期日までに出来るだけ修正して
 いって欲しい。改善を促す、そのための仕組みなんだから」(要約)
と八木さん他、仰せになってますよね。
とすれば、しばらくの間、
「当事者(こういう企業にしたいという意志の発露者)は経営者としても、
 会社側と会計士側が共同で内部統制整備を進めていく」
ということで、構わないはずです。
「日本オリジナル」なんだから。


それでも、法的な意味合いで「独立性」にこだわざるを得ないのなら、
この制度の組み立て自体を、(なんらかの理屈をつけて)
「違憲」とでもして、最初からやり直させたほうがいいかもしれませんよ。


「監査人の独立性」問題は米SOXでも問題になっていて
ダイレクトレポートに変更したところで、ついてまわるのかも
しれませんが、インダイレクトという建前にしてしまったがゆえに
余計に屈折してしまったわけで、
私の心も上記のように屈折してしまいました(笑)。

毎度のことながらたいへん失礼申し上げました。
素人はこうやって怒ってみせるしか「武器」がありませんもので
ご容赦くださいませ。

投稿: 機野 | 2007年7月27日 (金) 10時03分

一方においては(早急に)財務報告に係る内部統制構築を上場企業一律に要請しなければならないわけですが、また一方においては最近の企業不祥事多発のなかで監査法人改革の中心課題として「監査人の独立性」が議論されているわけで、これはおそらく「二律背反」関係に近い悩みではないかと想像しております。
このような意見を述べますとご批判を受けるかもしれませんが、監査実務のなかで監査人実務に混乱が生じるだけであれば、企業側としましても時間をかけて「いいもの」を作っていただければいいのでしょうが、なんせ本当に企業サイドに「不公平感」が生まれるというものであればそうも言っていられないように思います。
ところで、これまでの財務諸表監査におきましても、いろいろな見積もりや価値評価にあたっては監査人の見解の相違というものもある程度は考えられると思うのでありますが(表向き、そのようなことは会計士さん方からは出てこないでしょうけど)、このたびの内部統制監査につきましては参考となる前例もそれほどなく、なにを基準として見解の統一をはかるべきなのか、とても見えにくいところがありますよね。

投稿: toshi | 2007年7月27日 (金) 11時11分

今回のエントリーの独立性の件については、実務の現場でも大変悩ましい問題でいろいろ神経を使うところであります。

しかし、誤解を恐れずにいいますと、個人的には「機野」さんのコメントと同じような印象を持っています。

会計士監査において独立性は当然の前提となりますが、内部統制評価報告制度導入の目的は、やはり日本の上場企業にしっかりと内部統制を根付かせることであり、その場面で会計士が独立性の問題を意識しすぎると、制度導入に非積極的な態度と見られかねず、逆に会計士の社会的存在意義を低下させる恐れがあるのではないかという気がします。

実際の現場の対応は、各監査法人又は各事務所の方針で様々なケースがあるとは思われますが、本来は会計士協会がもっとわかりやすい説明をすべきではないかと思います。

投稿: critical-accounting | 2007年7月29日 (日) 23時11分

この件に関してコメントが少ないのは、本質を分かっていない方が多いからかもしれません。
逆に本質を分かっていらっしゃる方が多いからかもしれません。

わたくしなりのコメントを、失礼ながら徒然なるままに書かせていただこうと思います。

私が関わっている場合でもそうですが、『解答』にこだわり過ぎている感が否めません。
おそらく財務諸表監査での見解の相違も『解答」の点だけが論点となっていると思います。
『解答』ももちろん重要ですが、どのような『過程』を経てその『解答』を導き出しているのかが重要なのです。
中学の数学でも証明問題が苦手な人とそうでない人がいると思いますが、
特にこの内部統制の件に関して言えば、証明問題が苦手な人にはとても辛い案件だと感じます。
多くの会社で、会計士から『解答』をもらおうと思っていませんか?
『解答』を導き出す『過程』の考え方についてもっと議論してみてはいかがですか?
(いま一つな会計士が相手だとこのような議論ができずに苦労するかもしれませんが。。。)
(また、会社側が『解答』だけでなく『過程』そのものについてまでももらおうと思っているとなると、もうどうしようもありません、話になりません。。。)
そうすれば、この「内部統制支援と監査人の独立性」の件に関して、意識することはそれほどありません。
①押さえるべき考え方をベースに
②情報を集め
③その情報をもとに分析し
④判断の尺度を構築し
⑤決断する
①②③については主観的でなく客観的な視点であるので、この点について会計士と情報交換をすることについては全く問題はないと考えます。
④⑤はまさに会社自身の行動ですから、この行動の是非を会計士のコメントの有無にゆだねることはできません。
しかしながら、よりぶれがなく、適正と判断される④⑤に結びつけるためには、①②③の活動がとても重要となるのです。
それだけだと思いますし、④⑤に重要な影響があるからといって、①②③が監査人の独立性の観点で問題になるとは考えられませんがいかがでしょうか?

以下、個々の質問にコメントさせていただきます。

『1企業担当責任者もしくは担当役員が自己の意思決定をもって、内部統制構築に係る経営者の基本的計画および基本方針を立てたのであるが、これに監査人候補者がコメントを出してきたので、そのコメントをもとに再度、修正して計画および方針を作成した。こういったことを繰り返して、やっとのこと、最終的には「言うべきコメントはありません」との監査人候補者の回答を得た。この場合、監査人候補者が後日、内部統制監査を行うとすると同時提供禁止規定には反しないのか?』

全般としては前述したとおりです。ただ、この場合、「何をコメントしたのか」、「何に対して言うべきコメントはありませんと言っているのか」がポイントです。それによって問題となる場合もありますし、問題とならない場合もあります。


『2内部統制の構築上の要点や、構築に必要な手順、日程等の一般的な考え方について、監査人候補者が責任担当者、担当役員に対して教育、訓練をした。』

まったくもって問題ありません。


『3全社的内部統制について、内部統制の基本的枠組みと現状とを比較して、不十分な部分については指摘することは可能とされているが、監査人自らによる内部統制の構築と誤解されないように留意すること、とされている。そこで、担当責任者が、監査人候補者による指摘に基づいて、何度も現状を変更して、最終的には監査人候補者より指摘すべきところがない、といわれるようなシステムを構築した。』

全般としては1と同様です。追加するとすれば、到達すべきゴールを「十分なものとする」だとすれば、スタートとなるベースがあり、ゴールに至る過程があります。
この過程の通り方をどのようにするかが『構築』と考えます。
監査人が過程の通り方を限定列挙的に指摘しているとすれば問題となります。過程の通り方を導き出す考え方を示しているのであれば問題ありません。
また、「十分な」のレベルの設定をどのようにするかも『構築』と考えます。これについても同様にレベルそのものを指摘しているのか、レベルの設定をするにあたっての考え方について指摘しているのかです。


以上、さほど実務経験もなく、ましてや監査人と対等にやりあえる専門的知識もないにも関わらず、生意気なことをつらつらとコメントしてしまいましたが、思うところは一つで、
「楽しようとするな、さぼろうとするな、他人に頼ろうとするな、置かれている立場ですべきことは何かを考えろ、愚直にシンプルに考えればおのずと答えは出るでしょ?」
です。

投稿: HISAEMON | 2007年7月30日 (月) 00時52分

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