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2007年8月21日 (火)

企業情報開示の「遅れ」と「訂正」

(21日午前 追記あります)

今週号の経営財務(2832号)に掲載されている「内部統制報告の留意点(下)」(前金融庁企業開示課長さん)はなかなか面白いですね。前号の「留意点(上)」は、なんとなくこれまでの「実施基準」や内閣府令をもとにした議論の復習といったイメージでしたので、(たいへん失礼ながら)あまり期待もせずに読み始めたのでありますが、「内部統制報告制度にまつわる数々の誤解シリーズ」のようなものになっておりまして、金融庁があれだけ嫌っておられた呼称である「日本版SOX法」(J-SOX)の定義のようなものまで解釈がなされており(注 もちろん意見にわたる部分は筆者の方の個人的意見だとは思いますが)、実務的に役立つかどうかは別として、購学的には面白い箇所が散見されます。

さて、そういった「誤解を正す」シリーズのなかにおきまして、「内部統制報告制度がスタートすると決算発表の時期が遅れるのではないか」といった噂に対するご意見が述べられておりますが、内部統制報告制度自体にかかわらず、会計基準も公表されております四半期報告制度が導入された場合、上場企業のなかには報告書提出の遅れとか、報告数値の訂正の問題というのが今以上に頻繁に発生するのではないでしょうか。「連結」が基本となりますので、本体企業の経理部門が厳格に運営していても、子会社のほうでうっかりミスなどが発生してしまいますと、そういったリスクというのが顕在化する可能性は高いのではないでしょうか。このあたり、私は会計の専門家ではございませんので、素人的発想ではありますが、四半期報告書の提出遅延とか度重なる数値訂正などが発生した場合、これは内部統制における「重要な欠陥」に該当することになるんでしょうか?どういった言い訳があるにせよ、本来法律に基づいて期限までに提出しなければならないものを提出できなかったり、信頼性のある数値を表明できなかったことについては、全社的内部統制や決算財務報告プロセスあたりになんらかの不備があり、全体への影響度が大きいと判断されれば「重要な欠陥」と認められる、というのがリスク管理としての「プロセスチェック」の考え方ではないかと思われます。(しかし、遅延や訂正といった結果発生から、どういった原因行為を特定するのか、これも各企業においてマチマチでしょうから、真剣に考えますと、ずいぶんとたいへんな作業のような気もします。監査人の意見と経営者の意見が一致するとは思えないのですが)

ところでプロセスチェックといった観点からみた場合、企業情報開示の「遅延」と「訂正」では、どっちのほうがミスした企業側にとって致命的といえるのでしょうか。もちろん、経営者は確認書を提出しなければなりませんし、ミスしないのが当たり前ですから、そもそもミスのないように正確性と迅速性といった相反する要請をうまく調和させる必要があることは承知しておりますが、相反する要請である以上は、それが調和できないリスクといったものも検討しておく必要はあると思います。もちろん、上場企業が報告書提出を遅延したり、また訂正するにあたっては諸事情あるはずですので、単純に比較することはできないでしょうから、ひとつのモノサシとして「どちらがより内部統制報告制度における『重要な欠陥』に該当する可能性が高いか」といった基準で考えてみたいと思います。私の考えですと、「訂正」の場合は、迅速性への配慮とか、全社的な内部統制構築への対応は進んでいるものの、単純なミスがあったとか、会計基準への理解が不十分であったということで修復が容易な不備という理解で済みそうなケースが多いように思うのでありますが、いっぽう遅延ということになりますと、たしかに正確性への配慮は認められるものの、経営者不正があったのではないかとか、そもそも基本的な開示統制システムができていないのではないかとか、内部統制の根幹にかかわる問題を当該企業が内包していることを連想させてしまうように思われますので、どちらかといいますと「遅延」のほうがプロセスチェック的には重要な欠陥と結びつきやすいように思いますが、いかがでしょうか。(勝手な素人的発想にすぎませんので、またご意見等ございましたら、いろいろとご指摘ください。また、こういった疑問点をズバリ解説されている文献等ございましたら、ご紹介いただけますと幸いです。重箱の隅をつつくようなものかもしれませんが・・・・)

(21日午前 追記) 先日のプロネクサス社につづき、今回は宝印刷社でも「元社員」によるインサイダー取引が発生したようです(毎日新聞ニュース)。ご専門家である宝印刷さんですので、企業情報開示はおそらく「遅れ」なく公表されると思っておりましたが、午前9時30分、さすがに適切な情報開示がなされました。内部者取引を社内で防止するための再発防止策(すでに社内で履行されているものを含む)がリリースされておりますので、こういったことも情報管理のためには参考になるところです。

8月 21, 2007 企業会計 |

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受信: 2007年8月22日 (水) 01時05分

コメント

こんばんは。
「遅れ」と「訂正」は相互に依存している関係にあると思います。

たとえば、本日、夢真HDが改善報告書を提出しています。
http://ir.nikkei.co.jp/irftp/data/tdnr1/home/oracle/00/2007/2815095/28150950.pdf

監査法人の業務停止や子会社の決算処理の遅れといった原因が、不十分なままでの決算短信発表を招き、その後監査法人の継続的調査によって、二度の訂正開示となってしまう。
したがって、どちらが内部統制的にみて欠陥が大きいか、といった比較よりも、遅れや訂正を繰り替えす企業の体質そのものに焦点をあてて検討すべきもののように思います。

投稿: たっちゃん | 2007年8月22日 (水) 02時15分

>たっちゃんさん

コメントありがとうございます。
夢真ホールディングスの改善報告書(再度のもの)、遅ればせならが読みました。たしかにこの改善報告書を読みますと、たっちゃんさんのおっしゃるとおり「遅延」と「訂正」は表裏の関係にあるといえそうですね。(もちろん、私もどっちであれば許される・・・といったことを述べているのではありませんが)企業からみると、いずれにせよ、発生する原因事実としては共通しているところだと考えればよろしいのでしょうか。
ただ、情報開示の問題ですので、開示された情報を見る側に立った場合、その評価は同じでしょうか?もし評価内容が異なるとすれば、それによって企業の信用毀損の度合いも異なるはずですし、そのあたりも(推測の域を超えてはおりませんが)エントリーのなかで検討してみたいところであります。
あと、この夢真の再報告書でありますが、内容的にはこれで十分なのでしょうか。
また、ご意見等お待ちしております。

投稿: toshi | 2007年8月23日 (木) 11時37分

決算の遅れ、過年度修正がどの程度今後広まりを見せるかは、大いなる関心をもってみて行きたいと思います。それ自体が悪いというよりは、それは過去の信頼性の低い決算から脱却する過程で不可避的に生じることなのかもしれません。今後、適正な開示がなされることになることが、究極的な目標であり、ある程度、その移行期においては、いろいろな現実的な対応があったもいいかもしれません。ただし、確信犯的にこれまでに不正を行っていた会社には、もちろん、甘い処置は許されるべきではないでしょう。どことはあえて言いませんが、いろいろ今後も問題となると思われます。そういう会社に投資している株主は、問題を簡単には許さずに、しっかり出直してもらうように強く迫る必要があるかもしれません。経営陣は少なくとも退陣すべきでしょうし、それを見逃していたことについては、監査役、会計監査人を含めて、一定の説明が必要でしょう。こういった基本的なことがひとつずつきちんとなされることで、明日があると思いたいですね。隠しだてをすることが、最終的にはペイしないことが確立しないと、いくらでもモラルハザードは続いてしまいます。
他方、適切な処理を今行おうというところに対して、いろいろ柔軟な対応も必要でしょう。そういう移行期における対処方針などが当局から示されると、いい意味で、ドライブがかかるかな、とも思われます。


投稿: 辰のお年ご | 2007年8月26日 (日) 23時06分

開示の遅れと訂正のどちらを取るか
実務の面ではどう評価されるかというより
どちらが強く求められているかを考えます

例えば決算短信は位置づけが速報でもあることから
東証などは正確性より迅速性を強く求めています

今のところ、多少の訂正があっても
早く出すほうがいい、という風潮に感じていますね

投稿: saikawa | 2007年8月27日 (月) 06時38分

辰のお年ごさん、saikawaさん、ご教示ありがとうございます。

私も監査役として、外部監査人の方々と決算短信のあり方、四半期開示のあり方について協議したいと思います。近々に協議の場が設けられますので、また私なりの意見を述べてみたいと思っております。会計基準の度重なる改定や、東証からの迅速性への要望など、いろいろと要因は考えられるかもしれませんが、ご指摘のとおり、開示統制がついていってないのも大きな原因であろうと思います。

なお、本日ligayaさんのブログ(CFOのための最新情報)におきまして、決算報告の訂正に関する情報が掲載されております。ご参考まで。

投稿: toshi | 2007年8月28日 (火) 01時22分

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