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2007年8月29日 (水)

弁護士人材紹介と弁護士法72条

日経ニュースで知りましたが、東京に本社のある某上場企業さんが、弁護士人材紹介に特化した新会社を設立されるそうであります。(ニュースはこちら)私個人の意見としましては、2年ほど前に「弁護士も派遣さんになる日がくる?」のエントリーで述べましたように、これだけ切実な法曹人口急増時代が到来し、また弁護士自身のライフスタイルも多様化していることからみて、パートタイム弁護士とか、弁護士派遣センターのようなものがあってもいいのではないか・・・と思っておりました。(今でもそう思っております。あくまでも私個人の見解でありますが・・・)

ところで、上記の上場企業さんのHPを閲覧いたしましたが、弁護士人材紹介と弁護士法72条との関係については問題はないのでしょうか?ちなみに弁護士法72条といいますのは・・・

第72条 (非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 

というものであります。「弁護士人材紹介制度と弁護士法72条との問題」といいますのは、法律事務を取り扱う弁護士の周旋行為を弁護士でない者が、報酬を得る目的で業務として行ってはいけない、といったところでありますが、本件のように新会社の業務として弁護士を紹介することはこの「周旋行為」に引っかからないのか?という問題であります。さらに、弁護士紹介制度の場合には、紹介先と派遣先とのトラブルが発生した場合、弁護士はどちらの指示に従えばいいのか、その指揮命令関係が不明確となり、弁護士としての職務の公正独立性が阻害される・・・といった職務の独立性の観点からも問題視されているようであります。(楽天のサムライ業紹介制度のなかに、唯一弁護士紹介制度が存在しなかった理由はこのあたりにあります)おそらく先の上場企業さんの場合、弁護士法72条の解釈から、この新会社の業務は法律に触れるものではない・・・といった結論を導いていらっしゃるとは思うのですが、「コンプライアンス経営推進のための弁護士紹介」を標榜する以上は、こういった不審感を拭うためにも、なにゆえ当社の弁護士人材紹介制度が弁護士法72条に抵触するものではないのか、その明確な説明をどこかに掲載する必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

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コメント

あくまでも弁護士資格を持った方を斡旋するだけで、特定の法律事件等に関してのみ紹介するといったことでなければいいのかもしれませんね。つまり、派遣元の会社は弁護士資格をもった人材を派遣する。そしてその後に法律事件が発生し、弁護士資格をもった人がいるからということで法律事件に関与させるのは派遣先の会社の勝手ということかもしれません。

投稿: m.n | 2007年8月29日 (水) 23時22分

>m.nさん

どうもおひさしぶりです。ご意見ありがとうございます。
ご指摘のような解釈に基づくのでしょうね。
その解釈に関するわたしの見解などを(その2)のなかで書いてみました。わたしの勘違いなどございましたら、また指摘してください。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: toshi | 2007年8月30日 (木) 15時25分

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