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2007年9月25日 (火)

買収防衛策と独禁法コンプライアンス

今週以降、M&A関連の話題として盛り上がりそうなのがヤマダ電機、ビックカメラ、ベスト電器による事業提携話のようであります。(ヤマダ電機の株買い増し、防衛策発動も辞さず・・・ベスト電器 読売新聞ニュース)ビックカメラとの事業提携に邁進しようとするベスト電器社に対して、業界ダントツトップのヤマダ電機社が持分法適用会社(20%超)とした後、事業提携を持ちかける意思のあることを表明されたとのことです。本年5月の株主総会で勧告型決議によって事前警告型買収防衛策を導入(正式には継続)しているベスト電器としましては、今後ヤマダ電機が買い増しを続ければ、防衛策ルールに則った対応を予定しているようであります。

もし独立委員会(社外取締役2名、社外監査役1名の合計3名)による評価手続きが開始されるとなりますと、私的に一番関心がありますのは、ベスト電器の企業価値をき損するかどうかの判断において家電量販店特有の独禁法コンプライアンスといった問題をヤマダ、ベスト双方がどのように考えているのか、明らかになるのではないか、といったあたりのことであります。先日リリースされておりましたTBSの企業価値評価委員会の報告書におきましても、楽天社の企業としてのコンプライアンス問題が判断対象になっておりましたが、とりわけ家電量販店におきましては、平成18年6月発表されました家電量販店ガイドライン(公正取引委員会)にもありますように、地域小売事業者との競争関係確保や、不当廉売(不当表示)、優越的地位の濫用等、コンプライアンス上の問題点が山積している状態ですので、支配権取得までいかなくても、事業提携としても気を遣うところではないでしょうか。

とりわけこの5月にはヤマダ電機社の場合、メーカー社員を無償で派遣労働させていたとして公正取引委員会より調査を受けておりますし、九州地区におけるベスト電器とヤマダ電機との店舗数の比率が極端に違うことから、小売事業者への量販店の及ぼす影響度も違ってくるかもしれません。今後、買収防衛ルールによる事前交渉が行われるならば、そういったコンプライアンス問題について双方の現経営陣がどのような説明を果たすのでしょうか。これまで敵対的買収の話題のなかで、あまり独禁法に関連する論点が出てこなかっただけに(ニッポン放送事件では少しだけ話題になっておりましたし、意見書も出ておりましたが)、コンプライアンス問題と絡めて法的観点からの議論がなされることに期待しております。(とりいそぎ備忘録程度のみ)

(9月26日追記)関西の者にはなじみがありませんが、キムラヤを子会社化するといった話題や、ベスト電器の株式を一気に買い増すなど、M&Aに向けたヤマダ電機の動きが活発化したようであります。ベスト電器の株価もストップ高のようで。

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コメント

別の角度でブログネタにしようと思っていましたこの話題、さすが早いですね(笑)。

家電量販店はデューデリジェンス経験がある業態なので、その知識から。
恐縮ながらコンプライアンス合戦に持ち込むと、「共倒れ」 のリスクがあるかもしれませんね。
ベストも九州でのシェアが高いとなれば、似たり寄ったりな部分はあるでしょうね。

ヤマダ側がベストのコンプライアンスのまずさをどうやって立証できるかは別問題とし、ヘルパーのまったくの無償は論外としても、リベートがらみは厄介でしょうね。家電量販店の営業利益の半分はリベートが占めるといわれていますから(仕入れ値引き以外の実質的なリベートを含む)。

投稿: katsu | 2007年9月26日 (水) 01時10分

この会社は、確かここ数年間に、何度か公取委からお咎めを受けているかと思います(記憶の範囲ですが、①不当廉売と②不当表示で)。加えて、今回調査が入ったとされる優越的地位の乱用も、ここ数年大規模小売事業者等が相次いで類似案件で摘発されて来ている事実からすれば、決して対岸の火事ではなかった筈です。第三者的に勝手な意見を述べさせて貰えば、公取委行政をなめている(あるいは確信犯か)としか思えません。競争政策的に言えば、こういう会社が自助努力(=よりよいモノ・サービスをより安く提供)によらず、単純なM&A(=カネにあかせて同業者を買い漁る)でシェアを伸ばすことが許されていいのだろうかという素朴な疑問が湧きます。

「企業価値、ひいては株主共同の利益」という考え方では、なかなかこういう観点が、買収防衛策の正当性の議論に入ってこないような気がします。従業員の反対声明など無意味とする議論もあるようですが、そうとも言えず、場合によっては、取引先(仕入先、販売代理店など)や顧客(消費者や需要家など)の意見も考慮して然るべきケースもあるんではないでしょうか。競争法専門家(学者・弁護士)が、今の買収防衛策議論に一石を投じて欲しいものです。

また、かなり乱暴な議論ですが、公取委行政自体としても、企業結合規制の枠組みの中で、過去の独禁法(景表法・下請法を含む)違反事実を考慮要素にすることがあってもいいんではないか(簡単にいうと、”競争法を守れない事業者が、自助努力によらずして、競争力、競争上の地位を強化することは許さない”ということです)と思ったりもします。

投稿: 監査役サポーター | 2007年9月27日 (木) 00時30分

自分のブログで「従業員の反対声明など無意味」と書いたものの一人ですが、上記の監査役サポーターさんの意見には同意します。

投稿: おおすぎ | 2007年9月27日 (木) 09時29分

少し議論の混同があるように思い、議論に参加します。

これまで従業員の反対声明についての疑問を呈する意見は、
「よそ者に買収されたくない」、とか
経営者が従業員をいわば動員して(場合によっては半ば強制的に)反対意見を表明させるような場合を想定して、
そのような反対意見の存在をもって、買収をしても企業価値が損なわれるぞ、というロジックで防御がなされることが続くと、敵対的買収でほぼ毎回のように従業員の反対意見が出されてしまい、買収がいつも失敗になってしまうのではないか、
という問題意識が根底にあったと理解しています。

独禁法その他の法令違反の問題などの場合の従業員の反対意見は、上記とは議論の前提事情が異なりますよね。
換言すれば、従業員の反対意見の表明の「理由」をもう少し考えた議論をすると、いいのではないでしょうか。

次に、企業価値の点からは法令上の問題点の議論が出てこないはず、というのは、果たしてそうでしょうか。
企業価値は果たしてどういう要素で決まるのでしょうか。経済効率性、スケールメリット、シナジー、経営方針の巧拙、従業員のインセンティブ、技術力、などなどいろいろあるでしょうが、独禁法その他の法令上の問題は、一切関係してこないのでしょうか。次元が異なる議論が混在していないか、やや懸念しています。

おそらく、企業価値という基準だけで世の中をすべて切り分けることはできないので、現場の従業員の問題意識が表明されたり、取引先その他が問題を提起できるようなことがあってもいい、ということかなと思ったりします。

なお、私見では、従業員の処遇等について買収者が明確な方針を示すことは重要だと考えますし、買収イコール大量解雇とならないような買収提案であるのか、それともそうでない提案なのか、などについて、関係者として関心の高い事項ですし、社会政策的にも大切な問題ですから、買収提案者側から事前に明確な開示があることは、買収提案を検討し議論するうえで重要な点だと思います。

ただ、「敵対的」や「友好的ではない場合」にいつも「反対表明」が従業員からなされ、その反対の理由もよく分からないという場合、果たしてそれはどうかな、と思ってしまうのは素朴な意見です。
外部から見ているだけなので、現場が分かっていない、という批判もあるでしょうが、外部から見て経営が拙劣である場合にまで従業員の反対があったりすると、少し首を傾げたくなるところです。これはどちらが正しい、という問題ではないですし、法解釈として白黒つけられる問題ではないのですが、そういう意見を個人的には持っています。法律問題ではなく、それ以外の面でいろいろ議論し検討する問題が少しありそうです。

投稿: 辰のお年ご | 2007年9月27日 (木) 21時53分

私は従業員については、てっきりヤマダのような人使いの荒い(と言われている。過労死とかあり。しかし、このような話は私が以前いた銀行にも多少ありましたが)会社に吸収されるとそれこそ、労働法的なコンプライアンスがむちゃくちゃになって、モチベーションが下がり、結果的に収益力悪化により企業価値が毀損される、というロジックかと思っておりました。ヤマダ電機の属性問題かと(正確に同社のことを知らずに申し上げ、関係者の方がいたらすみません)。

例えば、当社の企業理念は、仕入先やヘルパーのような縁の下の力持ちともともに成長し、地域顧客の家電需要を満足し、これこれの計画を達成すべきところを、こんな行儀の悪い買収者とでは、ヘルパーや仕入先の十分な協力が得られず、当社の持つ既存優良顧客基盤は離反が必至で結果的に売上が下がる。

コンプライアンスと企業価値とはこのようなイメージ感を持っております。あくまで勝手な例です。業界的になかなかうまく当てはまりませんが。

取引先の意見を考慮するというのはどういう意図でしょうか?経済活動では、需要と供給が取引を決める最大要素で、未来永劫とまで言わずとも取引が継続する保証がないことぐらい相互理解が出来ているはずです。ヤマダのM&Aに松下電器の意見を聞くのでしょうか? 松下側が自ら上場企業として本音を言うでしょうか?(一層強固な取引を期待するぐらいのコメントが想定されます) 
ベスト電器の顧客に意見を聞くのでしょうか?「もっと安くします」とヤマダが言えばベスト側は不利になるだけだと思います。

公正取引委員会がらみの件について、公取委のHPで検索しました。
http://websearch.e-gov.go.jp/cgi-bin/common.cgi
ヤマダ、コジマは10件ヒット、ビックカメラは2件、ケーズは1(社名があたらしいからか)、ヨドバシカメラは2件でした。この程度の検索で10件ヒットするということは監査役サポーターさんのいう、公取委を軽視しているというのは、外れてはなさそうな感じがしました。ちなみにドン・キホーテは21件ヒットしました(余談ですが)。

但し、ヤマダの経営戦略は少し行き過ぎた感があるものの、自助努力(IRの世界では内部成長とかオーガニックグロースなんていいますが)が少し鈍ってきた(得意の郊外型出店余地がなくなりつつあるの)こと、中期計画に売上をほぼ倍増するような計画を株主にコミットしたこと(外国人株主比率50%超)などからM&Aも加えた成長戦略に切り替えているはずです。
少し、ユニクロみたいな感じでしょうか。
したがって、ご認識が逆だと思います。彼らなりに株価を維持成長させるためだと思います(その手段の正当性はもう少し調査が必要ですが)。

ヤマダの安さが、企業努力だけなのか、その不当性が介在するかは、両方あるのではないでしょうか(但し、前者の割合が高いと推察)。

なんだかどうしても説明に具体性を加えないと伝わらなさそうな文章力がむなしいですが。

投稿: katsu | 2007年9月28日 (金) 02時13分

>おおすぎ先生
すいません。そんなつもりは全くございませんので。どうぞご放念下さい。

>「辰のお年ご」様& 「katsu」様
すいません。私の書込みは第一パラのみが個別論(個社の話)、以降は完全に一般論で、この両者の間には直接の関連はありません。拙い文章のことゆえ、何卒お許しを。そんなわけで、お二人のコメントは、全くそのとおりと思います。

>「この会社」の関係者の皆様
ほんの僅かな公開情報をベースに、一方的な決付けをしてしまい、申し訳ございません。これでも、御社の折込みチラシは毎週熟読(見)しておりますし、月に一度はお店にお邪魔しており、大変お世話になっている身です。御社の宣材タレントT・Mさんも好きです。

>山口先生
管理人をさしおいた場外戦、大変失礼いたしました。

投稿: 監査役サポーター | 2007年9月28日 (金) 22時44分

皆様、ご意見ありがとうございます。
企業価値と独禁法の関係、私も監査役サポーターさんがおっしゃるように、競争法に関する実務家、学者の皆さまの解説をお聴きしてみたいと思っております。普通に思い浮かびますのは、競争自体が制限されるのではないか・・・との発想ですよね。この発想からしますと、ヤマダだけでなく、ベストも九州地区では独占に近いんだから、といった反論もかえってくるかもしれません。ただ、独禁法上のコンプライアンス問題というのは、けっこう重要であり、企業価値論にも展開されうるのではないかと考えています。地元消費者、地元取引先、地元小規模業者、家電メーカーと、いろんな利害関係人との間で独禁法が問題となるはずですが、社会的な評判だけの問題ではなくて、民事上の損害賠償とか、差止めの問題の可能性なども当然に考慮の対象になってくるのではないでしょうか。メーカーとのバランス関係も変わってくると思いますし。ベスト電器側からしますと、「企業価値論」とからめるのであれば、具体的な危惧まで株主に説明する必要はなく、漠然とした抽象的危惧でも足りるのではないかな・・・と思ったりしております。むしろ、敵対的買収の局面においては、そういった危惧がないことをヤマダ側がかなり説得的に説明をしていかなければならないのかな・・・と。

投稿: toshi | 2007年9月29日 (土) 20時45分

一般論では、株主の属性(構成要因)によると思いますが、各株主は消費者なら、より良い品が安くなるとかいう基準で判断するでしょうし、取引先等であれば、取引の安定性とかでしょうし、株主に過度な判断を求めていることになると感じます。

そうでなければ株主に訴えるというより、取締役の責任において判断すべきじゃないでしょうか。京都大学のM教授説、成蹊大学T准教授に近い発想ですが。金融裁判所(を創設して)辺りが決めることになるのでしょうか?

少なくとも、事件勃発以前までに株主に何を貢献できていて、今後何を還元できるのかをセットで説明出来ないと相手側の非を訴えるだけでは少し、寂しいです。

投稿: katsu | 2007年9月30日 (日) 08時43分

私も、あまり業界の詳しいことまではわかっておりませんが、家電業界の場合、コジマやエディオン、そしてヤマダやビックカメラを含めて、これまでにもM&Aを繰り返してきた経験がありますので、そういった事業再編がどのように企業価値の向上に影響しているのか、検証することは比較的やりやすいのかもしれませんね。もちろん、私の考え方は、いろんな要素を考慮するうちのひとつとして、独禁法レベルの要素も含まれるのではないか・・・といったものであります。前に述べておりますように、独禁法違反に関するリーガルリスクの大きさについても、もう少し検証してみる必要があると思っています。

投稿: toshi | 2007年10月 2日 (火) 02時20分

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