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2007年9月21日 (金)

イマドキの独立第三者委員会

9月19日に名古屋の某会社にて、事前警告型買収防衛ルールにおける独立委員会の正式会合に出席してまいりました。社外監査役(某上場企業の役員の方)、東京の会計士資格を有する財務コンサルタント会社の社長さん、そして私の3名構成なんですが、委員会の要請で防衛策を設計した法律事務所の方にもお越しいただきました。会社との委任契約上、委員会での内容はあまり詳しくは書けませんが、やはりみなさん、ブルドック最高裁決定や、原審、原々審の内容など、けっこうよく勉強されていて、独立委員会の位置づけだけでなく、そもそもの防衛策の建てつけについてもご意見をお持ちのようであります。

2時間ばかりの会議だったんですが、「望ましい独立委員会のあり方」というのも、どうやら最低でも3つくらいの視点によって違った形になりますね。ひとつは、そもそも全体の防衛策スキームが違法と判断されないための独立委員会とは?といった視点、ふたつめは機関投資家や議決権行使助言会社からみて望ましいと判断される独立委員会とは?といった視点、そして三つめはといいますと株主や第三者から損害賠償責任を負わないような活動をする独立委員会とは?といった視点であります。とくに三つめにつきましては、そもそも取締役会からの諮問によって活動する委員会であって、どんな結論(勧告)を出したって株主や第三者に責任を負担しないでいいのではないの?といった考え方もあろうかとは思いますが、よく考えてみますと、平時の防衛ルールには有事における取締役会の行動が記載されておりませんので、有事の際、独立委員会はおそらく具体的な取締役会の執行予定(たとえば防衛策発動の場合には、買収者の経済的損失をどの程度補完する予定なのかとか)を聞く場面が出てくると思いますし、発動を勧告する場合には多くの会社資産が流出することを容認するわけですよね。長期的にみれば、これは株主共同利益を守るための手段であるともいえそうですが、短期的にみてこれは損害賠償責任を負担しないでもいい、といった保証はあるのかどうか、ちょっと不明であります。社外監査役さんなんかも、こういった独立委員会の委員として就任されているケースも多いとは思うのですが、これは社外監査役の職務との関係って、どうなんでしょうか?独立委員としての職務は、社外監査役の職務とまったく別個と考えていいのでしょうか、それとも通常の社外監査役の職務のひとつである、と考えるべきなんでしょうか?(独立性といったことからは前者のように考えるのが望ましいとは思うのですが、実質をみれば後者のように思われます)いずれにしましても、この「独立第三者委員会」のあり方については、問題ごとに、先のどの視点からみたらどんな方法が適切なのか、問題意識を共有しながら検討したほうが妥当なように思います。

以前、買収防衛策・独立第三者委員会の役割とは? のエントリーでも書きましたが、ホントこの委員会って、防衛策発動の場面における違法適法の判断といった視点からみた場合、一生懸命職務をまっとうするわりには「司法判断においてはほとんど影響なし」とみなされる存在なのかもしれません。先日ご紹介したとおり、会社法立案担当者のA澤さん曰く

「社外の独立性のある者の判断といったところで、しょせん取締役から依頼を受けた者の判断ですし、株主総会で選任された者でもなく、その者自体、適切な判断をする保証もなく、会社法上の責任を負うものでもないわけですから、そのような者の判断が法的な意味があるわけではありません」(商事法務1807号29ページ)

とまで、軽視(無視?)されてしまっている存在ですから、せめて株主の代弁者といいますか、透明性、公正性にふさわしい人選と活動が要求されてしかるべきなんでしょうね。昨日の独立委員会では、こういったところをけっこうまじめに議論しておりました。(ほかにも課税関係とか、事業価値評価の視点なども検討されましたが)また、防衛策を見直すのかどうかはわかりませんが、今後発動の場面では株主総会にかならず提案するのか、それとも取締役会決議で発動できるものとするかのよっても、独立第三者委員会の活動内容も異なってくるのではないか・・・といった疑問も出ておりました。まぁ、だいたい年間3回程度、こういった委員会を開催する程度がよろしいんじゃないでしょうか。

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コメント

私も、どちらかというと
「社外の独立性のある者の判断といったところで、しょせん取締役から依頼を受けた者の判断」との部分にとらわれがちでしたが、第三者委員会が結論・推薦・意見を出した場合には、取締役会では、第三者委員会の案が、そのまま通る結果になると思います。第三者委員会の案に、反対する取締役はほとんどおられないだろうし、おられても少数になると想像します。(社内の事情を無視したような、第三者委員会の案でない限りは)

toshiさんが提起された第三者委員会の損害賠償義務・責任の観点は重要と思います。勿論、一義的には会社と第三者委員会との関係であると思いますが。

投稿: ある経営コンサルタント | 2007年9月21日 (金) 12時03分

ご意見ありがとうございます。

あまり議論されていないかもしれませんが、事前警告型の防衛ルールによりますと、独立委員会の熟慮期間が60日から90日になっていますよね。ただ、あれは正式に意向書面の体裁が整ったと委員会が判断したときから起算されますので、「体裁が整う」までのやりとりの期間を合わせますと半年程度は独立委員会が活動する時間が確保されることになりそうです。(その間に株主総会の時期が到来したらどうなるか・・という問題もありそうですが)この半年の間に独立委員会はいろんな活動ができるわけですけど、そのぶんミスも発生しやすいのではないかと思うと、けっこう法的に検討しておくべき問題はあろうかと思います。
なお、いっぽうで、この独立委員会というものが「タテマエ」と「ホンネ」の議論を併せ持つところも否定できない(本当はこのような言い方は問題あるのですが)ように思えますし、議論の仕方が難しいなあと感じているところです。

投稿: toshi | 2007年9月21日 (金) 12時15分

ご無沙汰しております。
昨日ある研究会に出席したとき、報告者の某先生は、ブルドック最高裁決定を評して、
「発動時における株主総会決議を要件としない防衛策は裁判所が認めないであろう」
とおっしゃっておられました。

個人的にはなんで株主総会決議なのかよくわからないんですよね。
公開買付の成否で決めればいいように思うんですが。

投稿: とーりすがり | 2007年9月29日 (土) 23時50分

とーりすがりさん、ごぶさたしております。
今回のとーりすがりさんの疑問点をテーマとして、いま考えておりますことをエントリーにしてみました。
基本的なところで大きな誤りもあるかもしれませんので、またご教示ください。

投稿: toshi | 2007年10月 1日 (月) 03時02分

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