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2007年10月27日 (土)

監視委員会事務局長氏の論文

(27日午前 追記あります)

ひさしぶりに素晴しい論文を読ませていただきました。ひとつ前の旬刊商事法務(合併号1812号)冒頭の「金融市場・市場監視当局の現状と今後の課題」であります。この論文の著者でいらっしゃる証券取引等監視委員会事務局長の内藤純一氏という方が、どのような方なのかはまったく存じ上げませんが、「秀逸」のひとことです。自分もこのような文章が書けたらなぁと(もちろん才能的に無理ですが・・・)思いますし、できれば一言一句をすべて暗誦できるようにして、このスタイルを盗みたいとも思うほどであります。論旨明解、長い論文の至るところに個人的意見が述べられているおもしろさ、構成の巧みさ、文章の美しさ、それらの結果から生まれる抜群の説得力・・・・・と、数え上げたらきりがありません。証券取引等監視委員会を取り巻く金融商品市場がどう変わろうとしているのか、そのなかで監視委員会はどういった組織であるべきか、どういった優先順位でなにを守ろうとしているのか、非常にわかりやすく意見が述べられております。私のような法律家が書く文章は他人様からツッコミを入れられてもだいじょうぶなように、「なお」「もっとも」「ただし」といった条件や例外を説明する接頭語のオンパレードとなってしまうことが多いのでありますが、この論文にはそのような「但し書き」が一切ありません。これが読みやすさの第一歩でありますし、著者の意見の説得力の裏づけではないかと思います。

上場企業におけるコンプライアンス経営、内部統制、開示統制などに興味をお持ちの方でしたら、(かなり長い論文ですが)ご一読をお勧めいたします。私も、この論文は何度も読み返すつもりであります。

(27日午前 追記)備忘録のような内容でありますが、NOVAのエントリーのコメント欄にも書かせていただきましたが、やはりJASDACはNOVAのような有償による新株予約権発行についても対応を早急に検討する方向のようであります(27日読売ニュース)。上記事務局長氏の論文でも新興企業向けの市場の対応についてのご意見が記載されており、新興企業自身が持つリスクの問題と、新興企業向けの市場の健全性を確保する問題とは「貯蓄から投資へ」といった観点からは全く別個であり、これを分けて検討する必要がある・・・と述べておられ、強く共感するところであります。金融庁ができること(プロ専用市場の創設も含めて)、取引所ができること、証券会社やVCができること、投資運用業者や助言業者ができること、そして自己責任の基礎になるもの、それぞれをどう分けて考えるか、こういったNOVAのような事案をもとに考えていきたいと思います。

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コメント

商事法務。読まずに寝てました。ご指摘頂いて、積ん読書中から掘り起こしてみると、この号は注目記事目白押しではないですか。見過ごしてしまうところでした。ご指摘有難うございました。感謝感謝であります。

投稿: kawaiaw | 2007年10月28日 (日) 09時34分

先生、はじめましてです。コメントありがとうございました。
ときどき、そちらのブログも拝見しております。

おっしゃるとおり注目記事がたくさんありますが、この事務局長さんの論文以外では、「総会検査役に期待される役割」がなかなか面白かったです。(仕事がら、岸田教授の論文は最初に拝読させていただいております)来月の関西商事法務研究会では、今年関西で総会検査役をされた法曹の方に発表をいただくことになっているようで、そちらも楽しみにしております。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: toshi | 2007年10月28日 (日) 22時33分

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