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2007年10月 3日 (水)

内部統制Q&Aにみる金融庁の考え方

(10月5日夕方 追記)

昨日よりたいへんなアクセス数となっておりますし、忍者アクセス分析でも、コメント欄をアクセスされている方が多いことが明らかでありますので(近接した時刻に同一の閲覧者が複数ページをアクセスされておられます)、このエントリーをトップに残しております。しかしやまたけさんがおっしゃるように、ホントこの「Q&A」は大きな反響ですね。会計雑誌あたりでは、また11月号などで解説記事とか出るかもしれませんね。

(10月3日午後 追記)

いつも勉強させていただいております澤村八大先生(会計士)も、この10月1日から「現場復帰」ということだそうでありまして、今後のご活躍を祈念いたしております。(半年の間、主夫?をされておられたそうで、急に朝早く出勤されるようになった澤村先生をみて、ご子息が泣いてしまって困ってらっしゃる、とのこと。うーーん、たしかにそれはありますよね・・・。しかし、子供がそんなカワイイ時期はあっという間に過ぎ去っていきますよ。>澤村先生)

さて、もうすでにあちこちのブログで話題になっております「内部統制報告制度に関するQ&A」(金融庁総務企画局)でありますが、みなさんもう中身をお読みになられましたでしょうか?私もgrandeさん と同じ意見ですが、実務的にはけっこう重要ではないか(参考になるのではないか)と思います。ちなみに、私の場合、まず20問の質問を読んで、約1時間かけて回答を考えてみて、それから金融庁の答えを読んでみましたところ、20問中18問が理由、回答ともほぼ正解でしたが、2問は不正解でありました。(私の不正解は問9と問15です。)正解と申しましても、単に金融庁が正解と考えているところと合致していた・・・ということに過ぎず、内部統制報告制度の趣旨実現のための最良の回答かどうかはわからないですよね。それに、これらの質問のうちの4分の1くらいは、当ブログでもこれまで議論された問題ですよね。。(^^;

内部統制報告制度の運用についての金融庁の考え方(とりわけ経営者の有効性評価の方法に関するもの)について、このQ&Aを読んでの私の感想は以下のとおりであります。

まず全体を通していえることは、金融庁の運用指針として①トップダウン方式のリスクアプローチが基本であること②経営者による恣意的運用を回避するための仕組み作りが重要であること③プロセスの有効性評価が複雑で、経営者も監査人も業務が煩雑となることを避けるために、統制環境やモニタリングへの信頼性評価で代替すること④内部統制報告制度が経営活動の支障になるような事態を絶対に正当化しないこと、この4つが有効性評価のための基本となるものと思います。なぜなら、不正会計防止、誤謬、虚偽表示リスクの低減、費用対効果といった本来の内部統制報告制度導入における基本的な制度趣旨からみて、具体的な問題に金融庁の理念を落とし込むためには、上記4つのいずれかの基準をすくなくとも一つ以上はクリアすることが必要だからであります。(なお、「有効性の評価」という用語を使っておりますが、これが適正な用語かどうかはわかりませんが、不備と認められない・・・といった程度にお考えいただければ結構かと思います)

このQ&Aに沿って、もうすこし具体的に考えてみますと、たとえば上記②(経営者による恣意的運用を回避するための仕組み作りが重要)というのは、いろんな設問のなかに出てきます。「財務諸表監査における金額的重要性との関連をふまえつつ」(問2)、「必要に応じて監査人と協議しながら」(問1、2、4)、「サンプリングの手法を用いて」(問10)、「前年度の運用および四半期決算業務を参考として」(問11)、「モニタリングの一部を社外の専門家を利用して実施する」(問20)などなど、いずれもいわゆる「内部統制の限界」をできるだけ狭めて、経営者による内部統制報告制度の恣意的運用の機会を限定的なものにしようとするための運用方針でありますので、これらは非常に重要だと思われます。自社の内部統制システムの整備運用にあたり、実施基準との適合性を検討する場合に迷いが生じるケースがあると思いますが、こういった「経営者恣意を排除しうるような『モノサシ』が用意されているかどうか」をきちんと理解しておく必要があると思われます。

また、③でありますが、経営者が適正にリスク評価をしているか、そのリスク回避のための有効な回避方法を選択しているかどうか、といったあたりは経営者も監査人も十分検討すべきところでありますが、その回避方法が正確に運用されているかどうか・・・といったあたりは、経営者はモニタリングシステム(内部監査人)を信頼することで代替することになりましょうし、また監査人は統制環境や、内部監査人の能力などへの信頼で代替することになろうかと思います。(このあたりが、思いのほか監査費用が増加するのを防止しながらも、経営トップから現場社員まで、統制活動が全社的に行き届いていることの全体的評価を重視することで、制度への信頼性を高める工夫がみられます)この②や③あたりの基本的な考え方は、今後の内部統制報告実務において、現場での担当者と監査人との意見の食い違い等が発生した場合の「共通言語」的なものとして活用されることを期待しております。

一般的な評価範囲の決定方法や、全社的内部統制の評価すべき事業拠点の選択、重要な欠陥の判断基準など、実施基準の例示と個々の企業の有する個別事情との乖離から生じる問題点に悩むケースもあろうかとは思われますが、このQ&Aを読むことで、けっこうホッとされた担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、重要だと思われるのは、評価範囲の決定方法にせよ、事業拠点の選択にせよ、その決定や選択が、個々の企業におけるリスク評価と、そのリスクへの対応方法の選択との間で、十分に合理性があることが前提となるわけでありまして、これはまさに社長を含んだ経営陣による全社的な(会計上の虚偽表示に関する)リスク評価と、そのリスクへの対応(つまり、統制上の要点の識別)が十分に説得的であることが条件だと思います。そこに経営者が関与していなければ、(企業のリスクを最も上手に洗い出すことができるのは社長さんだと思いますので)評価範囲の決定方法についても、事業拠点の選択についても、監査人による(経営者の)評価手続きへの検証において疑問符がついてしまうのではないでしょうか。

個別の設問をみておりますと、どれもコメントしたくてウズウズしてくるようなものばかりでありますが(最近当ブログで話題になっております「内部監査人の位置づけ」につきましても、問19あたりで出てきますね)、最後の問20などは結構、おもしろいですよね。「中小規模の企業」って、いったいどれくらいの規模の上場企業までを含むのでしょうかね?「事業規模が小規模で、比較的簡素な組織構造を有している企業」と実施基準にはありますが、この説明だけでは曖昧ですし、このあたりの基準も例示としてQ&Aの中で示してほしかったと思います。このあたりは以前、紹介させていただいた「簡易版COSOガイドライン」などがとても参考になりますし、この設問の回答に近い内容の解説も書かれております。ともかく、経営者の目が会社の隅々まで行き届く程度の規模の場合には、管理部門の人数も少ないでしょうし、人材不足をどうやって補っていくべきか・・・ということが問題になろかと思われますが、部門間モニタリングや、モニタリング機能を外注することで補えるということですから、ずいぶんと一般に言われている内部統制システムの構築内容とは異にします。私が現在、支援業務を担当しているIPO企業などは、こういった内部統制システムの構築運用を導入しております。(中小規模の場合ですと、企業会計不正と、それ以外の業務上の不正を区別してシステムを作ることも困難でしょうから、たとえば会計不正についても、内部通報制度等によって、社外窓口を設けて、経営者不正をモニタリングする・・・ということも考えられます)IPO企業の場合、最初のリスク評価と、その対応方法の検討のところから、社長さんをかならず引っ張り出してきて、役員会で決定しておりますので、その後の構築はかなりスムーズに進むことが多いですね。(ただし、経理や内部監査のできる人材不足、というのが最大の問題ではありますが・・・・)(ということで、つづく)

(追記)grandeさんのブログで、個別設問に関するコメント等、新しくアップされていらっしゃいますので、参考にされてはいかがでしょうか。

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コメント

うちの会社では、内部監査を担当する人が、ひとりで構築していて、社長もたいへん注目しています。おそらく実際の有効性に関する評価も、彼がすることになりますが、この担当者はすでに勤続10年になりますが、彼が転職してしまったらどうなるんでしょうか?これもやはりリスクになるんでしょうか?ちなみに某監査法人は、その点については何も指摘しておりません。

投稿: やまたけ | 2007年10月 3日 (水) 09時39分

こんにちは。

山口先生の記事からいらっしゃる方が多いので、
見かけだけですが関連記事をエントリーしました。

この件についての詳細なコメントはあちらにてしております。
(長くなってしまいますので)

投稿: grande | 2007年10月 3日 (水) 11時31分

はじめて、書き込みをさせていただきます。

>ただし、経理や内部監査のできる人材不足、というのが最大の問題ではありますが・・・・

この現況というのは、一体どんな感じなのでしょうか?
最近、人材派遣会社が花盛りで、経理スタッフの能力を
持つ人も、内部監査ノウハウもある人も、ITで調達されて
いるかと思いました。


投稿: a book lover | 2007年10月 3日 (水) 12時52分

Q&Aを読んだのらねこです。

画一的な基準より、企業側に創意工夫を求める内容です。
効率化を図るならば、リスク評価などの手法を用いた合理的な説明を監査法人に行い、説得する必要があります。

企業側に緩和政策、監査法人側には締付政策(従来からの施策として)を行うことにより、両者での協議を活発化させ、内部統制報告制度の活性化を狙う金融庁の戦略と思います。

投稿: のらねこ | 2007年10月 3日 (水) 23時19分

>やまたけさん
はじめまして。コメントありがとうございます。私個人の意見でありますが、たしかに代替性のない人的資源につきましては、かなりリスク管理といった点からみて問題があるのではないか、と考えております。とりわけ監査に関わるところでありますので、能力とまでは申し上げられませんが、その業務に関するスタッフ的(補佐的)人員の確保は必要ではないでしょうか。

>grandeさん
いま、そちらのブログを拝見しましたら、すでに(その3)まで解説記事が延びているようで(・・スゴイです・・・(^^; )
丸山先生のブログも、スゴイことになっているようで、やはり今回のQ&Aはインパクトがあったようですね。。。また、そちらで勉強させていただきます。

>a book loverさん
はじめまして。コメントありがとうございました。(そちらのブログも拝見させていただきました。ラジオ形式で、とても斬新なブログのスタイルですね。)問20でも出てくるような中小規模の上場会社やIPO企業であれば、人材派遣でもかなりカバーできると思うのですが、そこそこの規模となりますと、まず内部監査人には専門的知見と同時に、その会社の業務プロセス自体への知識と経験、その業界の標準的な収益構造などが必要だと思いますし、なかなか人材派遣で代替できるというわけにもいかないものと考えております。財務決算報告のプロセスに関する有効性評価という点でも、この人材能力の問題は今後話題になるものと考えております。

>のらねこさん
コメントありがとうございます。
なるほど、監査法人側へは締め付け政策ということですか。。。
ご指摘のとおり、企業側からの意見が活発に出てくるといいですね。
また続編を書こうと思っておりますので、ご意見ください。

投稿: toshi | 2007年10月 4日 (木) 01時26分

本家SOXが改正される方向だそうで、これでもしも外部監査人監査が
廃止されたり「レビューでOK」になっちゃったりしたら、
日本の立場はBSE問題みたい(一国だけ過剰規制)になったりして…

こういう軽口も容易に出てこないほど、改めて「J-SOX」の
虚しさを痛感させられるQ&Aでございました。
金融庁の担当官自身も
「これはエラいもんを作ってしまったなあ…(汗)」と本心では
思っているけど、そんなことを言えるはずもなくて、
とにかく辻褄を合わせるにはどうしたらいいかと苦心してるように
私には感じられました。
「問い8」「問い18」「問い19」あたりをもっと素直に読めば
論理が破綻しているのは明らかなのですが、
それを破綻(矛盾)していないという前提で"曲解"して読まないと
いけないというこのツラさバカバカしさ…。

 外部監査人は、
 経営者の評価結果を利用せず
(↑してもいいけど利用しようとするとそのためのハードルが高すぎる)
 経営者評価の手続・方法についての検証は行わず
(↑「統制上の要点の識別の妥当性の検証」を除き) 
 経営者の評価結果を監査する。

…出来ますか?

「財務諸表監査でOKと会計監査人が表明しているんだから、
 内部統制そこそこ、つまり問題ないレベルでは出来てるじゃん、
 うちの会社」

こういう経営者は無知なんでしょうか?
絶対に間違ってると絶対に言い切れますか?

財務諸表監査の強化でよかったんです。
かつ、「会社法」の内部統制システムのさらなる整備のなかで
コンプライアンス体制の強化を義務付ければよかったんです。
また、取締役・監査役の職務をこれまで以上に事後チェックできるように
すればいいんです。
完璧ではないけれど(完璧な制度などはないですが)
これでエンロン、ワールドコム的な企業不祥事は
かなり減らし得るはずです
(実際に減るかどうかは運用次第ですが、それはどのような体制でも
 同じことです)。

評価すること自体馴染まない(コンサルタント的に評点をつけることは
出来るとしても、監査としてYES・NO、白黒の区別をつけること
ではない)「全社的な内部統制」、個々の不備が企業全体の損益に
大きく響くことがあるとは極めて考えにくい「業務プロセスの評価」…

                               .

我々は神風特攻隊みたいなもんですかね。
徴兵の忌避は出来ませんから宮仕えの身には。

投稿: 機野 | 2007年10月 4日 (木) 09時41分

■ 内部統制制度Q&Aの問18、あるいは問19について

質問は外部監査人が内部統制報告書等を監査する場合、評価手続きの詳細な検証まではしないだろうと言う点を確認していますが、これに対する回答が非常に巧妙な応え方をしていると思われます。答えの1では、「実施基準では」と前提を置いています。これは、監査人がそれ以上を求めた場合、それは行き過ぎですとは言っておりません。あくまでも、「金融庁(=実施基準)は詳細検証までは求めていません」ですから、監査法人が詳細について、すべてではないにしても検証が必要と判断するなら金融庁はそれを止めなさいと言うはずもなく、監査法人はその場合は実施するでしょう。と言うか、普通実施すると思われます。

私は以前、米企業の子会社である日本法人の米SOX法による内部統制監査について関与した事がありますが、この時の本邦監査人は詳細を見ています。初年度だったせいもあり、相当入念に見たという事はあると思いますが、監査人は詳細を検証します。
なお、米国の監査人はダイレクトリポーティングを行ないますが、この部分の本邦との差は問題にならないと思います。企業側の監査実施内容の詳細について、その妥当性・適切性を見るのは、その報告に依拠(程度の多寡はありますが)して財務諸表監査が行なわれる以上、むしろ必要な事かと思われます。

さて、前述の関与先企業では、相当数の内部監査のやり直しを命じられました。統計的試査を主として、監査手続としてはリパフォーマンス(再実施)を主として、内部監査人により行なわれましたが、外部監査人の指摘(主にやり直し)は、母集団の設定の不適切さとサンプリングの不適切さだったと記憶します。証拠についても非常に厳しく吟味され、その証拠では証明出来ないなどの指摘があったと記憶します。企業側も支援側も初めての経験で疲労困憊、精根尽き果てて間に合わせたと(そのとき私は関与から外れていており、残った者に聞きました)聞いています。

何れにせよ、外部監査人の責任の重さは今回の法改正により、非常に重く広くなっており、そこから外部監査人は大変保守的な態度になっています。以前ならOKだった事も今はNGと言う事はたくさんあるようです。監査人も重い責任を担い、かつ責任を問われないようにするためには仕方がない──私も彼らの立場なら容赦なく対応し、白黒を明確にする態度に出ると思われます。
そのような立場の外部監査人が経営者の評価などと言う、ある意味では聞こえの良い部分だけの吟味で終わるなどあり得ない事です。この質問18は聞く相手を間違えています。外部監査人に聞くべき内容かと思われます。

最後に周知ではありますが、財務諸表監査と内部統制の関係に言及しておきたいと思います。近代監査の主な手法は「(統計的)試査」によるわけですが、全件精査ではなく、数万件以上の母集団から数百件のサンプルで実施してこれが成り立つ裏づけとして、内部統制が適切でなければならないと言う理論があり、これが近代監査理論の中心的な考えです。
具体的には外部監査人は「内部統制の理解と評価」のための遵守性調査等を行なった上でこれを踏まえ、対象の勘定についてどれほどのサンプルを抽出すべきか、サンプルの多寡を決定します。内部統制が不適切であると判断した場合、全件精査も辞さないアプローチを行ないます。
今回の法制はこの「内部統制の評価と理解」を企業側に任せると言う変更を行ないました。すなわち、内部統制監査の結果次第で外部監査人が財務諸表監査で扱うサンプル数が変わり、結果として財務諸表監査がこれに依拠すると言う事になります。

実際、外部監査人がどれだけ企業側の内部統制報告書・調書・証拠等に依拠するか、出来るか──外部監査人は重要な決断を迫られていると思います。しかし、従来も外部監査人は内部統制監査に相当するものを自ら行なっている(報告書化はしていない手許資料)ので、最終的には自ら行なえばよいのですが、法定報告として企業による内部統制報告書が提出される以上、有価証券報告書や監査報告書との平仄を取る事は避けられないと思われます。

なお、問19の方ではサンプリング方法の適切性、母集団設定の適切性を見ると言っているにもかかわらず、問18では詳細をあえて否定している点、一方、問19では「経営者の評価結果」として統計的試査による証拠(サンプル)のような詳細レベルを引き合いに出していますが、これは問18で否定している詳細に他ならないと言う点、つじつまの合わない内容かと思われます。
この問18、19を読むにつけ、どうも金融庁は財務諸表監査と内部統制の適切性(有効性)との依拠関係を正しく弁えているのか、甚だ疑問に感じます。問19の答えなどはインダイレクトリポートを否定するかのような記述にも読み取れます。

非常に長くなって恐縮です。実は問14にもいろいろと述べたいのですが、またの機会と致します。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 4日 (木) 13時16分

>機野さん

今回のエントリーについて、機野さんが「いつ登場されるのか」また「どんな切り口で登場されるのか」期待しておりました(笑)

おそらく機野さんのコメントに拍手喝采をされていらっしゃる方も多いものと思います。(ただ、管理人は場末のブログとはいえ、最近のアクセス数からみて、なかなか明確なコメントを発しがたいところであります・・・・(^^; )
ただ私も問8、問18、問19あたりは、たいへん気になるところでありまして、監査人との協議のなかで、個別企業がこれを検討してみてはいかがだろうか・とひそかに期待をしております。(論理矛盾を抱えているかどうかは別として)私も、いくつかの研究会に在籍しておりますので、その研究会のなかでこれを討論材料にしていただこうかと思っております。
「神風特攻隊」であることは否定はしませんが、私はもうすこし今後の金融庁のフォローを眺めてみたいと思っています。ここまでは予定に入っていましたよね? 今後はどうなるんでしょうか?

投稿: toshi | 2007年10月 4日 (木) 13時17分

日下さん、1分違いのコメントで「かぶってしまいました」
気がつきませんでした。
やはり18,19問に関するものですね?
ちょっと京都から大阪へ戻る途中ですので、またゆっくりと事務所で読ませていただきます。

投稿: toshi | 2007年10月 4日 (木) 13時23分

toshi先生
フォローのレス恐縮です。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 4日 (木) 13時26分

>日下様

外部監査人の立場で考えることがないもので(そこまで気を回すひまもないので)よくわからないのですが、
「外部監査人の責任の重さは今回の法改正により、非常に重く広くなっており」というのは具体的にどうなるのでしょうか。

また、金融庁からQ&Aで明文化されたのに、
「監査法人が詳細について、すべてではないにしても検証が必要と判断するなら金融庁はそれを止めなさいと言うはずもなく、監査法人はその場合は実施するでしょう。と言うか、普通実施すると思われます。」
なんてことをやったら、会社側はそれが過剰であると考える場合は、徹底抗戦して、最終的に会社側(経営者側)内部統制報告書にて「監査人との意見の相違」を公表すればいいのではないでしょうか。その場合、信用を失うのは外部監査人側だと思います(というか、そのように投資家が受け取ってほしいものです)

アメリカでの実際の対応を監査人が繰り返し、それによって「過剰な対応」が強いられることになれば、大前提の総則にあたる「内部統制の整備及び運用に際しては、費用と便益の比較衡量が求められる」に反しますし、金融庁の強力な指導(行政指導ではなく、処分まで含めた)に期待したいところです。「先行事例のアメリカではこうだったからここまでやるべき」ということを否定するのが今回のQ&Aの強いメッセージだと思いますし、その点においては(細部はいろいろ疑問点もありますが)まともなQ&Aが出たと思います。

以上、米国SOX法で評価される側で実作業に携わった者の意見でした。

投稿: unknown | 2007年10月 4日 (木) 14時01分

こんにちは。以前1回投稿しました。今回のQ&Aでの感想を書かせていただきます。

●八田教授の講演がそのままQ&Aへ
今回作成された金融庁のQ&Aの項目には、8/31に青学・八田教授が品川のカンファレンスホールで「実施基準・スタート段階での7つの誤解」として講演した内容が、ほとんどそっくり入っているのが特徴的です。金融庁のQ&Aも、八田教授の考え方で構成されていることを、改めて感じさせられます。

●経営者・監査人・ITベンダーへ牽制球
Q&Aの中身では、経営者・監査人・ITベンダーへクギを刺しておこうという意図を、随所に感じます。
1.社長が各部門の責任者から、部門ごとに「間違いありません」の宣誓書を出させることで、責任を担保させておこうという企業の動きが出てきていることに、牽制球を投じています。
「ワシはお前がOKですと言ったから信用したんだからな」というセリフは通りません。あくまでもそれをチェックするのが、経営者の仕事なんですよ、ということで、サラリーマン社長の責任転嫁を戒めています。

2.監査人が手間を少なくするために、「期末3ヶ月以内になったらシステム変更は凍結してください」とか「監査側と同じ書式で業務プロセスのフローチャートを作ってください」といった要求に対して、そんなことは関係ないと名言しています。金融庁回答が「会計士がフローをせっかく作ったなら、それをもらって活用すればよい」とまで書いてあるのは、行政にしてはユニークなコメントです。

3.ITベンダーが販売攻勢で「ITは同一の基盤にしておかないと、不備が出やすいのでERPで基幹システムを統合しないといけません」とか「IT全般統制の不備は、直ちに重要な欠陥にランクされてしまいますから、内部統制ソリューションが必要です」などの煽りに乗る必要はないことを回答しています。

●銀行に重要勘定科目を例示
銀行など金融業界から再三「売上・売掛金・棚卸資産でなく金融業界にとっての重要勘定科目を例示してほしい」の声が出ていました。金融庁では「業界や事業形態によって適切に判断を」と繰り返してきましたが、今回ようやく「預金・貸出金・有価証券」を具体的に出しました。再三粘れば出てくるものだということを感じさせられます。

●中小企業の救済ガイド
「システム部門の人数が少ない中小企業では、牽制機能を設けたり、開発と運用のスタッフを分けるのは難しい。どうすればよいのか?」といった切実な声は、以前から出ており、金融庁からは「身の丈サイズの内部統制で、工夫すれば足りる」という抽象的な回答でしたが、今回は他部署のスタッフがモニタリングを実施したりチェックするなどで、牽制機能に代わる内部統制と認められる旨に言及しており、システム部門を最低限の人員でまかなっている中小企業にとって、だいぶ具体的な方針提示になったと思われます。

投稿: DMORI | 2007年10月 4日 (木) 14時08分

>UNKOWNさん

今回の法制で外部監査人の責任が増したと思われる部分は、①監査対象が増えた、②企業側が行なう内部統制監査の結果を踏まえる──すなわち、監査結果の品質に問題や疑義がある場合、これを法定報告に足るレベルまで引き上げる努力を払う(簡単に意見を留保にするわけにはいかないでしょうから)、③前述②のような状況を抱えながら期日を守らねばならない、④IT統制について本格的に対応しなければならないなどがまず列記出来ます。
加えて昨今の監査の信頼性に対する社会の批判的な風当たりもあり、その責任は前述の範囲も加えながら厳しくなっていると思います。何しろ少し前までは外部監査人は不正を摘発するのはその職責ではないみたいな発言をしていましたが、最近は随分変わりました。

さて、外部監査人に内部監査のやり直しを命じられてそんな事はない、やり直しの根拠が不適切だとなった場合は徹底抗戦でよいと思います。私の関与先さんもそのようにしていたと記憶します。
外部監査人からの指摘をどう受け止めるかはいろいろあって、例えばサンプルの抽出にしても、系統サンプリングではこれは駄目だと言う外部監査人に対して、系統サンプリングで何が悪いと言う風になれば、収拾はつかないかもしれません。価値観のぶつかり合いに近くなりますから。しかしこれはとことん議論して結論を出すしかないと思います。

なお、外部監査人が詳細を見るかどうかの論点ですが、これは外部監査人が企業側の作成した報告書等をどこまで検証するかと言う論点なので、上記のやり直しとは異なり外部監査人の負担になりますが、確かにこれまで負担していなかったフィーを請求されるでしょうから、その点では「過剰」──と言うか、これまでにない費用の負担である事はその通りです。
会計・監査ジャーナルの10月号でこの7月の実務指針(公開草案)に携わった方たちのやりとりを読んでいると、外部監査人は検証はやはりするようです。これは企業の作成した内部統制報告書に対する内部統制監査報告書を作成して意見を表明する以上、詳細の検証(全部ではないと思いますが)なくして意見を述べれば、それは監査に基づく意見ではなくなります。

UNKNOWNさんの「過剰」の指摘が「内部監査のやり直し」なのか、企業が作成した内部統制報告書等の監査費用の増加なのか、両方なのか、読み取れない所もありましたが、金融庁が外部監査人による企業の監査結果の詳細レベルの検証を禁止するとは思えません。
もちろん、適正な監査費用と言う点から極端にその目的と経済性のバランスを欠いた場合は問題だと思います。ただ、内部統制監査報告書作成のために必要なものは必要経費として解されると思います。

最後のQ&Aに対する評価は人と立場でそれぞれかと思います。
ところでUNKNOWNさんはもしかすると私が面識のある方でしょうか。論調が知っている方に似ていましたので…

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 4日 (木) 16時45分

>UNKNOWNさんへ追伸

今回の内部統制報告制度でどれほど企業の負担が大きくなるかについては、十分認識しています。正直言って、これまでは職業監査人がやっていた事を企業にやれと言う事自体無理が相当あると思われます。最初は職業監査人が内部統制報告書をダイレクトリポートすれば済むのではと考えました。

普通の企業がきちんと内部統制監査を継続的に進めていくには、おそらく10名以上の監査人を抱えなければならないと思われます。そのへんは認識した上で、それでもやらないといけない以上、どうすれば良いか──上場企業(米SOXとは関わりのない)はいまだに文書化で苦労している状態だと言います。某メーカは文書化だけで6億とか8億かけたと言う話ももれ聞きました。
このあたりの不条理感はもう隅に追いやって考えるようになってしまいました。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 4日 (木) 17時15分

日下様

丁寧にして論理的なご説明、ありがとうございます。先程の私の書き込みは少し脊髄反射気味でありまして、論調に不穏当なところがあったことをお詫びいたします(なお、おそらく私は日下さんとは直接の面識はないと思います)。日下さんが(おそらくは)本名を名乗っておられるのに全くの匿名であることに内心忸怩たるものがありますが、会社内の立場もありますので御寛恕ください。

私が憂慮するのは、「財務報告に係る」内部統制のみが(なにしろ法対応なのですから)優先されて、「業務の有効性及び効率性」「法令等の遵守」に関しての監査がおろそかになりはしないか・・・ということです。理想的には従来の内部監査についてはそのままとして、SOX対応の評価を専門に行う担当を別に作ればいいのでしょうが、上場会社3000社以上の中でそこまでの体制をとりうる会社がどれだけあるでしょうか・・・

大半の経営者(及び経営者を支えるスタッフ)は馬鹿ではないと思うので、コンプライアンス違反があっては一発で会社が存続しえなくなることは十分承知していて、今回のSOX対応のために従来のコア部分の内部監査をなくすことはないとは思いますが「とりあえずコンプライアンスについては継続して内部監査をしてきたから来年度はSOX対応へ人を注ぎ込もう」と考える経営者がいてもおかしくありません。その結果、コンプライアンス違反が発生した暁には、もちろん経営者の責任ではありますが、「内部統制への監査」がその引き金には十分なりうると思います。

投稿: unknown | 2007年10月 4日 (木) 18時01分

追記

個人的に、SOXおよびJ-SOXで有用だと思われるのは、「RCMの作成および評価」です。従来の内部監査では、(会社により様々であると思いますが)「最低限守らないといけないことは何か」を事前に組織内に浸透させているとは言い難い状態で、もぐら叩き的に監査を行っていることが多いのではないかと思います。

RCMを作ることにより、「誰が統制の責任者として、どういう統制を、何を根拠に、何のために(どういうリスクコントロールのために)、どういう頻度で」行わなければならないのかが会社として統一され、様々な規程・通達をはじめとする雑多な規律が、実際に責任を持つべき者にトータルとして理解できるようになります。また、「評価」を行うことにより、「実際に会社内で行われていること」を客観的に検証できるようになります。

様々言われている通り、諸悪の根源は「外部監査人の監査」に集約されると考えます。

投稿: unknown | 2007年10月 4日 (木) 18時19分

管理人という立場上、総花的な意見となることをお許しください。

とりわけ、unknownさん(できれば、なんでも結構ですので、お名前を入れていただけますと幸いです)と日下さんのやりとりは興味深く拝見いたしました。正直申し上げて、unknownさんが「脊髄反射的」といわれている日下さんへのご質問については、私もほぼ同様の感覚を抱きました。私なりに日下さんの論理的かつ緻密な「金融庁Q&A」へのご意見について、ひとつ質問をさせていただきたいのは、「個別の企業や個別の業界事情」といったものが、外部監査人による監査や経営者評価のうえで(つまりは内部統制報告制度のなかで)、どのように反映されるのでしょうか?
日下さんもご指摘のとおり、そもそも外部監査人がやるべきことを、経営者にやれ・・・という制度である以上は、ある意味で経営者が保有する企業の風土とか、歴史、業界の特殊事情への認識など、外部監査人としても尊重すべきところもあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

あと、たしかに世間の外部監査人の監査責任に対する関心の高まりはあろうかとは思いますし、不正発見への期待感も抱いておられる方も多いとも思いますが、現実には「外部監査人の不正発見義務」には大きな壁があるものと思います。(期待ギャップというのでしょうか)たしかに、ここは「監査制度の根幹」にかかわるところですし、私も周りの会計士さん方と話をするなかで、この壁は痛感しているところです。不正摘発が職責のひとつとすべきである、といった論調が強くなるとすれば、それこそ会計士さんのお仕事はどういったものであるか、専門家としての説明を尽くさなければならないように思いますね。

投稿: toshi | 2007年10月 5日 (金) 02時25分

tosi先生、お返事ありがとうございます。
ただ、現実には中小規模の企業にとって、同様の監査を可能とする能力者は存在しませんし、そのような余裕もありません。ということで、DMORIさんやunknownさんの言われているようなところに元気づけられた次第です。中小規模の会社独自の内部統制まわりをじゅうぶん認識して、監査法人さんともし意見が異なるときには、こちらの考えをぶつけてみようかと思います。あと、前にも書きましたが、いまのところは監査法人さんとは良好な関係でして、特別に問題はありません。最近小さな企業の場合、監査法人さんが「内部統制監査を行うまでの余裕がない」ということで監査人を辞任されるところもでてきていますが、うちもそういったことのほうが心配です。
しかしこのブログはtoshiさんの意見もさることながら、多くの方の意見を参考にさせていただけますので勉強になります。ありがとうございました。

投稿: やまたけ | 2007年10月 5日 (金) 11時29分

>UNKNOWNさん

従来の社内の監査部門とは別にSOX専担部門を組織したところは数社耳にしております。ただ、私の知るところでは相互の連携があまり考慮されておりませんでした。また、軌道に乗るまでの臨時的プロジェクト的対応として位置づけているところもあり、最終形態を決めかねて経過的措置をとっている節もあります

コンプライアンスについて確かに今回の内部統制監査がどれだけ全般的にフォーカスしているか、財務報告の信頼性確保と言う範囲でのみ強調されているのではないかと言う御指摘は同感です。
さて、多くの企業がRCMを聖典・原典ととらえ、そこに記載されているキーコントロールの履行証明(内部統制監査)に腐心するのみ──これが実態かと推測していますが、するとRCMにコンプラ要件がどれだけ入っているかが重要な論点になると思います。
いわゆる文書化過程である「内部統制の整備・構築」と言う局面に財務報告以外の分野のコンプラ専門家が参加していれば、非常に望ましいと思われますが、範囲を広げたくないのか財務報告の信頼性に収斂させたところが多い気がします。

御指摘のようにRCMは非常に非常に重要なものと理解していますが、某有名専門コンサル会社が提示した雛形をほとんどそのまま利用した企業のもの(これは結構多いようですが…)を見たとき、首を傾げました。「未承認の受注を処理するおそれがある」とか、「期末評価を誤まるおそれがある」とか、漠然としたリスク評価があり、コントロールには社内の規程がそのまま引用されていました。全般的にコンプラをモニタリングに組込もうと言う段取りには遠く及ばないと感じました。RCMのアサーションの項に「法遵守」がほとんどの場合にない事もこの点を二の次にした気がします。
ところで、財務報告以外のコンプラを評価選別し、モニタリングに組込む事を範囲がさらに膨らむとか、パンドラの箱は開けるなとか、このあたりの正道や正攻法を嫌う空気がトップにあるとか…モニタリング拡大上申を憚らせるような空気は社内にないでしょうか。

※RCMに真剣に取り組んだ企業は意識改革や情報の可視化・統合化で大きな成果を上げている事は理解しています。

さて、ここだけの話ですが、妙に権威的に振舞う会計監査人の方も居ます。相当イロジカルな事を口走る人も居ます。別項で書きましたが、サーバルームに段ボールがちょっとまとまった数あった事でITGCの不備をカウントされた企業があります。もっともこれを指摘した人は監査法人の方ですが会計監査人ではありませんでした。
それから、ある処理に関する完了確認について、この場合は再鑑を行なうだけでは足りない、再々鑑がなければ駄目だと強硬に主張した方(この人も非会計監査人)が居て、私もそれは行き過ぎだろうと議論していたら、企業側の監査部門責任者の方が大層立腹し、その監査法人の方は以降出入禁止となりしました。知らないと言えない、今更取下げられない、だから譲らないな…と思わざるを得ない場面、思いたくなる場面に私も居合わせました。
彼らは敵ではありませんが、味方ではなさそうで、相手の主張するところを批判的な観点で検証し意見を言う集団です。是々非々で論を尽くし、理を働かせるしかないと実感しました。
でも、ちゃんとした監査人の方も居ますから、あまり毛嫌いするのも…。


>toshi先生

職業監査人の方は関与先企業の業種業態、企業規模による差異等には敏感なようです。私の知る限りでは──御存知の事かと思われますが、企業と監査契約を結ぶのに先立って、その企業の予備調査としてヒアリングや資料分析を行ない、自分達の経験・ノウハウ等と相手企業の状況・条件を検討して契約を結びます。ですので、個別企業や業界事情を弁える点を十分考慮していると考えます。──まあ、このあたりは会計監査論の中身になってしまいますが。

また、リスクアプローチを基本にしている事から、契約後の監査においても、どこが一番危ないか、どこが脆そうかを見積もるため、資料やヒアリングや実地検査等も含めて情報を収集してから監査計画を立てているはずです。また、分からない事は経営者にも現場の人にもヒアリングしていると思いますので、問答無用の振る舞いや見当違いを避ける努力は払っていると思います。

ただ、──尊重となると人に依存する所がありますし、頑なにこれまでの理解を押し通そうとする方も居ます。
これはあまり具体的に書くと、見る人が見た場合分かってしまうのでぼかしますが、私のかつての関与先企業は特殊な機械設備(事業サービスそのものを提供する機械)で事業を運営しているのですが、会計監査人がその機械のダウンが一般利用者に対する影響が大きいので、そのリスク統制としてのリカバリ手順について(IT統制の観点です)、それが有効である事を証明するために、毎年何回かリカバリリハーサルを実地にやれと強硬に申し入れてきました。

技術担当の人に詳しく話を聞いたのですが、某准国営企業と異なり代替マシンを持たないその企業がこれを実施すれば、直ちにサービス停止になってしまいます。そんな事は社長決裁でないと出来ないし、たぶんやれっこない、あいつら何を考えている!──企業の技術の方は大変な剣幕でした。
私も困り果て、とにかく本番リハーサルだけはあり得ないので他の手段を考える事とし、その機械のメーカに頼んでメーカの同型機械でバックアップデータのリロード等を依頼し、その結果を書面発行してもらうようにしました。それでリカバリは可能と推定するとしてしまいましょうと外部監査人の要求はさておき、無理なものは無理として要求とは違った答えを出す事にしました。(これはUNKNOWNさんが書かれた外部監査人と企業の評価相違そのものになりますね)

この例は外部監査人がその業界の特徴──この場合は営業用機械設備の稼動条件ですが、これについて保守用の代替機を完備するまでの投資は困難と言う個別企業の事情にまったく理解を示してくれなかった例です。どうも外部監査人はIT系分野ではどうだろうと、以前より疑問に思う事しきりですが、業務や事業運営と言う観点ならサービス・流通・製造・金融等、監査法人内には詳しい人が居るはずです──IT統制にはかなりギャップがあるようですが。

御質問の回答としては、このような点を重要視(尊重とはまた違いますが)する考えは会計監査論などに表されているし、リスクアプローチと言う方法がそれを意識させるはず、と言う事になりましょうか。しかし、頑なでそれを変える≒緩める?とおのれがリスクを負うのではないかと、主張を曲げない人も居る(知っている)──になりましょうか。

なお、金融庁Q&A問18の外部監査人による詳細の検証ですが、相矛盾するものの、問19ではサンプル(統計的試査の結果)に依拠する場合は妥当性を検証するとあります。インダイレクトリポートは企業側のリポートに依拠する(無駄・重複を省く意味でも)のが前提かと思いますので、サンプルに依拠する事となり、問19の検証に及ぶ事になり、ひいては詳細検証を監査として行なうと考えます。問18の詳細評価を(金融庁は)求めていないとする「詳細」が前述のサンプルとは異なるとなれば、両者は並立するのでしょうが、依拠が前提となるはずなのでサンプル等の妥当性検証(=調書と証拠を吟味)は行なわれると推測します。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 5日 (金) 13時03分

(toshi先生、ずっとunknownのままで失礼しました。とりあえずこの名前で投稿します)

>日下様

前段の、RCMにコンプライアンスを織り込むというのは理想形でして、正直言って当社もきちんと取り込めているわけではありません(一応、RCMには「法令等の遵守」という項目はあるのですが)
「内部統制報告書に対して外部監査人の監査が必要」ということがはずれればやる余裕も出てくると思うのですが・・・

後段については、SOX法評価(テスト)を経験した者として、禿げしく同意するものであります。当社も会計士から山のように「整備上の不備」「運用上の不備」の監査所見を出されたのですが、その9割がたは会計士側の誤解ないし過剰対応と言えるもので、不備からは落ちました。私も監査所見を読みながらあきれるやらおかしいやらでしたが、内心は会計士に同情しているところがあります。彼らは業務に関しては素人なんですから、toshi先生あてに書かれているように見当違いのことを業務プロセスに関しては言うことは当然予想されることです。(もっとも、従来の財務諸表監査でも内部統制の有効性については監査人が独自に確認していたはずなので、あまり見当違いなことを言われると従来の財務諸表監査も妥当だったのかという気もしますが)

上場会社全部に対して業務プロセスレベルの評価を監査人が行い、しかも事実上、会社側のサンプルは使えない(使ってもいいが新たにサンプリングするのと同じくらいの稼働がかかる)ことになったので、監査法人としては会計士だけでは到底リソースがないので色んな人が実査するのでしょうから、見当違い・まるっきりの誤解といったことが現場レベルでは相当数出ると考えられます。ので、内部統制監査では理不尽・誤解等があると確信できれば自信をもって反論することが肝要かと思います。

投稿: nightwalker | 2007年10月 5日 (金) 16時31分

>toshi先生

御質問の主旨ですが、これは例えば上場している企業の規模が小さく、内部監査部門を組織するようなリソースの余裕は逆立ちしてもなさそうなケースにおいて、外部監査人は今般の法制を踏まえてどのような接し方(例えば会計部門が監査をやる等に対して)をするのか、と言う事を仰っているのだと言う事に思い至りました。

具体的にはこのような企業の会計部門の各係が相互に(会計係は出納係を等)モニタリングを行なったものを扱うか否か──実施基準が暗黙に内部監査部門を当てにしているところとどう決着するか。(これこそ職業監査人である力と知恵の見せ所でありますが)
これは──監査と言うものを瑕疵なく実施する事を考えると、難しい問題かと思われます。うっかりすると矛盾をきたし、監査に非ずの態に陥るリスクがあります。しかし現実の問題です。今は有効な案を述べるに至りませんが、このような事態も含め鋭意施策のようなものを検討しています。

それにつけても今回の法令は──割り切れないものが多々あります。ただ今となっては、これをバネに企業が力をつけられれば……そのように進む事の出来るための何かに寄与出来ればと考えます。※後段は私見にもなりませんで失礼しました。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月 6日 (土) 07時58分

何度も同じような話の繰り返しになりますが(恐縮です)。

最大の問題は「インダイレクトレポートってどうやって監査するのか、
誰も知らない」ということなのだと思います。
正解があるかどうか甚だあやふやなのに設問を作っちゃったわけですから
それもむべなるかな、なんですけどね。

公認会計士は財務諸表監査のダイレクトレポートのエキスパートです。

「(監査人)自ら監査すること」と「監査を監査(評価・鑑定)する
こと」は似て全く非なるものです。監査を監査するために自ら監査しな
ければ鑑定できないのなら自ら監査すればいいわけで、
それは違うというのなら「監査の監査」のための簡便でかつ有効な
手法を開発しなければなりません。
公認会計士の責務、義務として。またそのプライドにかけて。

こういう極めて不十分な制度の成立に関与してしまった当事者としての
責任を感じてもらわねば困ります。

しかし、日本公認会計士協会の
監査・保証実務委員会報告「財務諸表に係る内部統制の監査に関する
実務上の取扱い」の公開草案を読む限り、
「我々は責任が必要以上にこちら側に及ぶことを全力で回避するぞー!」
と思っているように読み取れてしまって仕方がありませんが(情無涙)。

投稿: 機野 | 2007年10月10日 (水) 11時26分

日下さん、nightwalkerさん、機野さん、追加のコメントありがとうございます。とくに、いろいろな疑問に丁寧に回答いただき、感謝いたしております。(日下さんの二つ目の回答内容は、私の現在の業務にも関連するものでありまして、なんだか少しほっとしました)なかなか続編が書けずに申し訳ございません。ただ、このQ&A問題は、いろんなブログで盛り上がっておりますし、実際に金融庁に質問をされていらっしゃるブロガーの方もおられますので、そういった意見も含めて検討しておきたいと思っております。
また、私自身も、別エントリーで技術屋の内部監査人さんが提言されていらっしゃるように、個別の論点を具体的に掘り下げてみるのもおもしろいと思っております。

投稿: toshi | 2007年10月11日 (木) 02時15分

>toshi先生 御忙しい中にレスを頂き誠に恐縮です。

さて、今回の一連のやり取りの中で「監査(のやり方)」に関する捉え方が様々あると言う点に深く深く思い至りました。
ものの本には、例えば監査とは「相手の主張を独立した第三者が批判的にその適否・正否等を検証して意見を述べる」のような説明になっています。

1.(ある事実を)主張をする人がいる
2.その主張の適否・正否が問題になる
3.自己証明は証明に非ずの考えから──

 ① 独立した第三者が当該主張を検証する
 ② 批判的立場で当該主張を検証する
 ③ 合理的な裏づけ・証拠をもって当該主張に正否・適否等の意見を述べる
 ④ 上記①から③は後日、他の第三者が検証出来る形で記録する

このような要件の構成になると考えます。
3の③④から独立した第三者は必要な見識と技術が求められる事になります。
また、④は他の監査人による当初監査の再検証等です。例えば監査法人は内部で監査人が適正な監査を行なっているか、監査の監査をします。もっともこれは監査法人内の綱紀堅持のために行なわれるものですが、監査結果自体が記録されている裏づけ・証拠等から再検証可能でなければ、単なる主観的意見に過ぎません。

初期の探偵的監査、摘発監査から近代(会計)監査は適正性監査に移行し、重要事項に関する経営者の主張(この場合は決算書の勘定残高や注記等々)に対して適正性を合理的裏づけによって意見を述べる事になっており、上述箇条書きのようになると言うのが昨今私が確信するところであります。蛇足ながら締め括りに際し申し述べておきたいと思います。

また、監査人に対して厳しい批判の目がある事は薄々知っていましたが、敵対感すら抱かれている(かも知れない)事が分かりました。批判的立場を旨とする職業監査人としては望むところなのか──も知れません。制度の番人はあまり好かれないので仕方のないことかも知れません。
大変参考になる議論の場をお借り出来た事について御礼を申し上げます。

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月11日 (木) 11時05分

フォローさせてください(笑)。

少なくとも公認会計士のかたがたに私は敵意を持ち合わせていません。
今回の件では
(こういう言い方をするのも法の趣旨を理解してないように捉えられ
 かねず問題なんでしょうが、あえて感情を込めて表現してしまいます)
彼らもまた「被害者」なのだと思っております。

いわゆるJ-SOX自体の内部統制システムの整備上の不備によって
皆んな振り回されているわけですが、
それぞれの立場で出来ることをするしかありません。

皆さま、お互いに頑張りましょう!

投稿: 機野 | 2007年10月11日 (木) 16時59分

機野さんに同じです(笑)

おそらく、私の書き込みは強く「敵意」を感じさせたかと思いますが
私も公認会計士の皆様方には(こう言っては生意気ですが)「同情」
しております。所見でしか接点のない人はともかく、直接テストや
ウォークスルーでご一緒した人々とは何といいますか、「戦友」の
ような感覚を持っております。

前向きに考えれば、監査人との「協議」がカギなのですから、実際の
やり方についても「協議」によって範囲や実査方法を絞り込めばよい
んですよね。「社会的損失」を少なくするように互いに努力したい
と思います。

投稿: nightwalker | 2007年10月11日 (木) 18時18分

私もフォローさせてください(笑)

>また、監査人に対して厳しい批判の目がある事は薄々知っていましたが、敵対感すら抱かれている(かも知れない)事が分かりました。批判的立場を旨とする職業監査人としては望むところなのか──も知れません。制度の番人はあまり好かれないので仕方のないことかも知れません。<

時代はまさに「監査」であります。COSO内部統制のモニタリング指針におきましても、効率的な内部統制システム運用のために、監査人の重要性が説かれております。
厳しい批判は「注目の裏腹」といって間違いないと思います。外部監査しかり、内部監査しかり、監査役しかりです。監査役などは、本格的に会計監査人の報酬決定権や選任権が会社法改正の対象となった場合には、いまよりももっと注目されるかわりに、現実への批判は強まることは必至です。(だからこそ、妥当性監査への機運が一部で高まりつつあるわけです)

むしろ今こそ、理論と実務における監査に関する議論を発展させるべきであると思います。以前日下さんにはご自身でブログを作られてはいかがでしょうか・・・と申し上げましたが、日下さんクラスの方が、こういったところを突っ込んでいただけたらといったあたりの意見からであります。
(フォローになってるのかどうかわかりませんが・・・(^^;))

投稿: toshi | 2007年10月11日 (木) 18時45分

>TOSHI先生
>機野さん
>NightWalkerさん

ほんとですかあ?
それは良かったです、希望持ちました。

実は私自身「いい加減にしろ、知らないならそう言え!」みたいな念を打ち合わせの間中、職業監査人の方に送り込んでいた事がありました。
職業監査人にはいろんな方が居ます。一番哀れなのは立場に負けて、負いきれなくて前言を翻さない人です。
しかし、それでも何でもこの制度に企業がきちんと対応出来る人材力と実力をつけるために建設的に振舞いたいと思います。

本エントリの終盤で皆さんの本音の御意見の聞かせて頂けて誠に幸甚に思います。

日下雅貴拝

投稿: 日下 雅貴 | 2007年10月11日 (木) 20時24分

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