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2007年11月30日 (金)

来年のトレンドは「ほっとこう大作戦」

(minoriさんより、「掲示されているイラストは他人の権利侵害に該当しないのでしょうか?」とのご指摘を受けました。そうですね、イラストであっても、あるキャラクターを連想させるものであることは明らかですので、明確な権利者の許諾を確認しなければ使用はできません。たいへん失礼しました。また、ご指摘いただいたminoriさん、どうもありがとうございました。ときどき、たいへん初歩的なミスを犯してしまいまして、赤面することがあります。これからもご不審な点がございましたら、どうかご指摘くださいませ。とりいそぎ、削除させていただきました。)今年は不二家事件、ミートホープ事件に始まり、赤福、船場吉兆など、いわゆる「食品表示偽装事件」がコンプライアンス関連記事における一番の話題となりました。また、食品だけにかぎらず、たとえば11月29日日経朝刊記事「外国人への(軍事転用可能な)重要技術提供については記録、報告義務」、同28日日経夕刊ほか「食品原材料の業者間取引においても表示義務設置(政府が骨子案)」、同28日読売ほか「ファミレス、コンビニにも省エネルギー規制の対象に。エネルギーの使用量報告、省エネ計画策定義務の明記」などなど、いわゆる一般企業に報告義務、届出義務、公表義務を課す規制が著しく増えているのが今年の傾向だと思われます。そしてこの傾向は、来年に向けて益々効果的な手法として、行政によって多用されていくのではないでしょうか。

1 行政による新たな規制手法「ほっとこう大作戦」

このブログで扱うコンプライアンス関連のテーマとしましては、来年のトレンドとして、この行政による報告・届出・公表義務の設定、つまり「ほっとこう大作戦」が大きな目玉になるであろうと(少なくとも私は)予想しております。行政による規制のあり方としましては、従来、細々(こまごま)とした事前の法規制の網をかけ、また法が足りない部分では行政指導をくりかえすことによって、一般消費者の生命身体財産を守るといった手法が多用されたのでありますが、最近はとりあえず企業の自律的行動へ期待しつつ、なにかあるまでは放置(ほっておいて)して、その間、報告、届出、公表をもって適正な行動を担保する方針に転換しつつあるようです。そして事後規制として、問題が発生した場面においては、これまでの報告、届出、公表内容を吟味したうえで、企業活動による違法状態を速やかに除去し、もし企業側に隠匿(非公表、無届け)や虚偽(虚偽報告)が認められる場合には厳罰を課す、といった対応をとることが予想されます。ここまでは、当然のこととしまして、問題は今年後半の食品表示偽装問題で明らかになりましたように、行政による調査を受けることがマスコミによる不祥事報道の嵐に拍車をかける要因となり、もはや現経営陣では立ち直ることができないような事態にまで至ることであります。(本日のマクドナルド社の追加報道をみましても、社内で把握している事実以外の事実が次々と発覚してしまうわけでありまして、経営者自身も「隠匿では」といった疑惑を向けられる結果となってしまいます)なにをすれば「法令遵守」といえるのか、基本的に規制当局は教えてくれないわけでして、自分で遵法経営の道を選択しなければならない・・・、まさに内部統制の整備の必要性が高まるわけであります。あるときは過小な対応をとることで更に非難を浴びることとなり、またあるときは過剰な反応をしてしまって、無駄に経営資源を費消してしまうリスクもあるわけです。これからの時代、行政とマスコミとのコラボによって、企業の社会的評価はあっけなく毀損されていくことが予想されます。

また、「ほっとこう大作戦」とは少し趣向が異なりますが、「刑罰なき規制」というものも行政手法としては効果的かもしれません。これはたとえばパソコンによる私的なダウンロードも、「とりあえず著作権侵害幇助として違法」としておいて、そのかわり平等な捕捉が困難なこともあって、ペナルティは課さない、とするものです。「刑罰がない規制なんて、結局はやったもん勝ちじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、本来ならば行政は、他人のパソコンの中身を無断で調査することなどプライバシー侵害をして許容されないはずですが、そもそも「違法行為」が行われている疑いがあるならば、不正調査としてプライバシー侵害にはなりませんよね。もし、大掛かりな組織を見つけ出すために、一般人のパソコンのサーバーを経由せざるをえないような捜査が必要な場合、こういった手法が効果を発揮するわけでして、知らず知らずのうちにパソコンの中身が調査されている・・・といったことも出てくるかもしれません。(なお、上記の事例は「たとえば」の話であります)

2 「ほっとこう大作戦」に向けた一般企業の対応策はあるのか?

「対応策」と書きますと、なにか悪いことでもたくらむようでありますが、けっしてそうではありません。コンプライアンス経営のためにできるだけ少ない経営資源を向けて、最大の効果を得るための手法について検討すべきだ、というものであります。今年6月、政府は一般企業向けに「反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、そこに反社会勢力との断絶のための内部統制システム構築の指針が盛り込まれております。とりわけ反社会勢力に関する情報収集については、「自助」→「共助」→「公助」の指針が盛り込まれており、情報収集が個人情報保護法違反にならない(例外規定の適用可能性)ためのヒントも含まれております。私は、反社会勢力断絶の場面だけでなく、この情報共有の精神がコンプライアンス経営全般にも及ぶものだと思っております。自社の不祥事や、その対応策といった情報は、どうしても外に出したくないものであります。しかしながら、そういった過去の情報を共有することで(とりわけ有事における対応策等)、「ベストの対応ではないかもしれないが、そこそこ最適解に近いところの対応」といったものも認識できるのではないでしょうか。先日、もし可能であればリスク管理の成功体験を共有しよう・・・と述べましたが、これも同様の趣旨からであります。情報の共有だけでなく、最終的には業者ルールのようなものまで出来上がれば、コンプライアンス経営への経営資源の投入はかなり少なく済むことになると思います。

また、今朝(11月29日)の日経朝刊「経済教室」におきまして、独占禁止法違反に関する手続は、現在の公取委による事後審判制から直接行政訴訟によるべきである、といった村上教授(一橋大学)のご意見が出ておりました。(まったく同感であります)行政による調査が不当である、行政による事実認定におかしい、と思えば異議を申し立てる、といった企業側の対応が、もうすこし頻繁になされるような環境作りが必要ではないかと思います。現状では、「おかしい」と思っていても、長時間争っているうちに、不祥事を犯した企業という社会的評価だけが残ってしまい、裁判で勝ったころには、あまりマスコミで取り扱ってくれない・・・といった事態が予想されるために、異議も述べないのが通常ではないでしょうか。一朝一夕に出来上がるような制度ではありませんが、そういった日が到来するときに備えて、企業としても報告、届出、公表に耐えうるような「事実認定能力」を自社で磨かれることを強くお勧めいたします。

3 今年のトレンド予想は当たったのか?

さて、私は昨年末、2007年は「課徴金」と「利益相反」がトレンドになる、と予想しておりました。課徴金につきましては、「うっかりインサイダー」はじめ、金融商品取引法上の課徴金制度については、かなり認知度も高くなりまして、また金融庁のWGより、12月には、今後の課徴金制度のあり方に大きな影響を与える報告書が出るようですので、ほぼ当たったかな・・・と思います。しかしながら「利益相反」のほうにつきましては、銀証の兼業緩和がまだ検討され始めたばかりであり、兼業問題(ファイアーウォール規制)、情報共有問題(チャイニーズウォール規制)、役員の兼職等(アームズレングスルール)などなど、またこれからというところでありまして、どうも予想は外れてしまったようであります。コンプライアンス問題というものは、その時々の発生した事件にも影響されますし、先の「ほっとこう大作戦」も、どこまで当たるのかはあまり自信のないところでありますが、法律家の視点から、これからも総括していきたいと思っております。

約1ヶ月前にアルファブロガーアワード2007にノミネートされまして、ふだんこちらのブログにお越しにならなかった方々にもたくさん閲覧していただいておりましたので、どちらかといいますと「内部統制」「企業価値」ネタよりも「コンプライアンス」ネタを多く採り上げましたが、投票締切日(12月2日)までのエントリーとしましては、これで最後であります。なんだか、「日本レコード大賞」とまでは申しませんが、「日本有線大賞」か「FNS歌謡祭」くらいに審査員推薦でノミネートされた演歌歌手のような気分になれて、楽しい1ヶ月でした(笑)(けっこう、ノミネートされていることで、ブログを書くインセンティブにもなりましたです・・・(^^;; もう来年ノミネートされなくても悔いはありませんよ。)また、私の拙いブログにご投票いただいた方に、厚くお礼申し上げます。m(_ _)m 普段、道でお会いしても、それほど話もしない同業者の方に「ブログがんばってるやん!一票、入れといたで!」とか、講演の後で参加企業の方から「ブログ見ております・・・、あれ、入れておきましたので」などと言われて、ホンマにうれしかったです。ちなみに、12月7日に栄えある2007アルファブロガーに選ばれる「ビジネス系ブロガー」としましては、葉○さんと、○っちーさんあたりではないかなぁ、と。。。(あくまでも私の予想ですけど・・・笑)

11月 30, 2007 コンプライアンス経営はむずかしい | | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年11月29日 (木)

GODIVA(ゴディバ)のアマい危機管理

(29日午後 追記あり)

本日報道されましたコンプライアンス関連のニュースでは日本板硝子社、旭硝子社の欧州カルテル事例がもっとも重大なものであることは承知しておりますが、私的にはGODIVA(ゴディバ)社の「線上金属片混入事件」に関する報道がとても気になった次第であります。(しかし、クリスマス商戦スタート直後のこのニュースは、企業収益としてみると大きなものですね)

それほど大きく採り上げられてはおりませんが、中日新聞ニュース読売新聞ニュースを総合して把握される事実によると、当該商品は11月16日に発売され、異物混入キャラメルは11月26日に社内の試食により「1個目」が判明、その後の社内調査で11月21日に宮崎市内の取扱店で販売されたものが、22日に異物混入の届出があった(2個目)ことが判明した、というものであります。現物はゴディバジャパン社のHPでご覧になれますが、こういった小さなキャラメルに15ミリのコイル状の針金片が含まれていたわけですから、これはかなり「ヤバイ」状態だったわけで、宮崎市内の取扱店が、この22日の届出を本社に連絡もせずに放置していたとなりますと、これはちょっと信じられないお話であります。(少なくとも、私の常識ではちょっと考えられない事態であります・・・)仮にこれが真実だとしますと、合計6万個以上もすでに販売されているわけですから、まだ全国において「届出はあったけれども本部が把握していない異物混入キャラメル」が存在する可能性を推認させるものでありまして、さらにそのままお客様の手元に存在するものもあるんじゃないでしょうか。

食品不正表示のように、行政法規違反の事実には該当しませんので、行政による立ち入り調査が開始されるわけでもなく、そのためにマスコミには詳細な情報が入らないと思いますので、このゴディバの件につきましては、今後大きな問題に発展する見込みは乏しいと思われます。ただ、ゴディバ社のHPに掲載されているお詫びとお知らせ に関する文書は、①トップページで小さく紹介されているだけであり、②文書内容も、当該商品を購入された方について返品を依頼するだけであり、どうもナットクできないように思えます。先に述べましたとおり、16日から発売されて、公表まですでに10日以上が経過しており、異物混入キャラメルの存在がある程度推認される状況にありますので、こういった場合の危機管理としましては、まずもってお客さまの生命身体の安全に向けられるべきではないでしょうか?まずHPのトップページにて、「この商品が手元にございましたら、お召し上がりになることをお控えください」と表示して、「お詫び」ページで、健康被害への対応と同時に商品回収のお願いを記載すべきだと思います。(しかも商品お問い合わせは、平日の9時半から夕方6時までって?? (^^;;)

もちろん健康被害がないことが一番の願いではありますが、健康被害への配慮をまったくされていない、このゴディバ社の対応では、かなり不誠実なものと受け止められる可能性があり、先の22日の届出放置の件を合わせ考えましても、ブランド商品販売企業としての「ブランド」そのものへの影響などが心配されるように思います。異物混入自体は日本企業のミスではないとしても、その事後対応を誤ることだけは回避すべきではないでしょうか。

(29日午後追記)11月17日に「適時開示は誰のためにあるのか?」のエントリーにて、オートバックスセブン社の転換社債型新株予約権付社債の発行中止にかかる開示上の問題点について詳しく記載いたしましたが、やはり28日、東証より再度の改善報告書提出を求められているようです。(といいますか、改善報告書を提出した当日に、内容が不十分として再度の提出を求められたそうです)この点は、今後の開示実務において参考となる書面がリリースされるかもしれませんので、備忘録としてとどめておきます。

それともうひとつ追記ですが、崎陽軒さんのシューマイにつきまして、誤表示により回収措置をとったようですが、一般市民の感覚としては「とくに製品の中身に問題がなさそうだし、もったいないのでは・・・」との声が多く聞かれます。私も同感ですが、違法状態の改善のためには、法令に基づいて廃棄処分をとる必要があるということでしょうか、それとも後日の処分のためにすこしでも情状を良くしておきたい、といった会社側の判断に基づくものなのでしょうか。ちょっと仕事中ですので、こちらも備忘録程度にて失礼します。

11月 29, 2007 コンプライアンス委員会からの提案 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年11月28日 (水)

株主優待券の会計処理(その2)

(28日午後 追記あります)

先週、株主優待券の会計処理というエントリーをアップしましたところ、ある会計士の方よりメールをいただきまして、懇切丁寧に概要を教えていただきました。以下、メールの内容をご紹介いたします。

そもそも、株主優待引当金に関する会計処理のルールが明確になっていなかったのがいけなかったのですが、会社法で規定される以前も、会計理論の考え方に則れば株主優待引当金は計上するのが原則です。 一般的に引当金の設定用件というのは、 ①将来の費用または損失 ②それが当期以前の事象に起因する ③その費用または損失の発生可能性が高い ④金額を合理的に見積もることができるという4用件がありこの全てを満たす場合は引当金の計上が要求されます。

私自身、会計に関する専門的知見に乏しいところでありますが、会計理論の考え方により、一般的な引当金の設定要件とされるところあたりにつきましては、私も理解できるところであります。

これを株主優待引当金にあてはめて考えると、 ①株主優待はそれが将来利用されることによって値引き等を通じて費用になるものであり ②当期の権利確定日に株主であったものに発行される ③費用発生が確実なものであるここまでは間違いなくあてはまることになります。 そこで、ポイントは④の金額を合理的に見積もることが可能か、という点に集約されます。ブログでもご指摘のように「使われ方」要は「将来の利用を見積もることが可能か」ということが問題になります。

ご指摘のとおりであります。将来の利用を見積もることが可能かどうか、といったところに素人的疑問がありまして、これがどの程度の確からしさをもっていれば会計上の引当金として計上してよいのか・・・といったところが疑問であります。

優待券発行から数年が経過している場合は、これまでの利用実績を何らかの方法で集計することが可能だと思われますので(従来利用時に費用計上していたならば、会計記録が残っているはずですので)、事業年度ごとの実績率の平均値を用いるなどして、将来の合理的な利用見込率が算定でき、値引きの場合はその商品の売上原価と利用見込率を掛け合わせるなどして、金額の合理的な見積もりが可能になります。 仮に何らかの理由でこれまでの利用実績を把握できない場合は、その時点では合理的な金額の見積もりが不可能であるとして引当金計上はできないことになりますが、今後利用実績をデータとして収集して、見積もりが可能になった段階で引当金計上することが必要になります。今後の監査実務の流れとして、引当金計上する方向であることは間違いないと私は考えています。

なるほど、たとえば株主優待券として、「当社直営レストランにおけるお食事券2万円分」ということでしたら、有効期間中にどの程度使われたかを、数年分ほど調査をして、そこから出てくる合理的な見込み率を算定することで将来的な債務は見積もることができる、ということになるのですね。

ブログでご指摘のあった、「個人株主の変動が大きい」というのは確かにそうかもしれませんが、権利確定日に優待券を渡す株主が決定する以上、引当金を計上しない理由にはならないと思います。また優待券の内容が変わったとしても、その変更後の優待券の内容に基づいて計上する必要があると考えられます。ただこの場合は利用率がそれまでとは変動する可能性がありますので、その点については議論の余地があるところです。

株主優待券の内容が、「お食事券2万円分」などといったものであれば、比較的過去の実績などから合理的な引当金の金額については見積もりやすいのかもしれませんね。しかし、サービス(役務)の提供が優待内容である場合などは、それを引当金計上する場合には、すこし問題がありそうな気もしますが、どうなんでしょうかね?この場合、サービス提供自体の価格を考えるのでしょうか。それとも原価部分だけが価格となるのでしょうか。

そういえば今年の夏に、少しだけ話題になっておりましたが、企業が発行するポイントカードやお買い物カードの「ポイント」については、発行時に売上に計上せずに負債として計上する方向とされているようでありますが、株主優待券の会計処理につきましても、この「ポイント」の会計処理と同様に考えてよいのでしょうか?このあたりも素人的疑問なのですが、ポイントを顧客に取得させるというのは、売上とそのための販売促進に向けてのものであって、なんとなく収益と費用との対応が認識できるのでありますが、この株式優待制度を「株主優待引当金」として計上する場合、企業が取得すべき収益という概念は登場してくるのでしょうか?このあたりが少し疑問を感じております。

(追記)「あかつき財務戦略研究所」ブログより、たいへん詳細かつわかりやすい内容の関連エントリーを立てていただいております。(右のTBをご活用ください)

たとえば「株主優待制度」「株主優待券」なる検索をかけましても、なかなか「引当金」に関連するWEBページに出会うことはありません。(私の過去ログが最初に出てきたりします・・・・(^^; )こういった解説がWEB上で検討させていただけるのがホント、ブログの長所ではないかと思います。日下さんのコメントや、あかつきさんのエントリーを拝読しまして、またまた更なる疑問点とか論点について頭に思い浮かんできましたので、また続編を書かせていただこうかと思っております。(とりいそぎ御礼まで)

11月 28, 2007 商事系 | | コメント (9) | トラックバック (2)

2007年11月27日 (火)

リスク管理の成功体験は共有できるか?

著名ブロガーでいらっしゃる貞子さん(貞子ちゃんの連れ連れ日記)より、赤福関連のエントリーについてトラックバックをいただきました(どうもありがとうございます。)経済系のブログでは珍しく赤福問題を取り上げていらっしゃったようですが、決して赤福に同情していらっしゃるわけではなく、公正な論評のための素材を提供されているところは(いろいろとご意見はあるでしょうが)、たいへん素晴しいと思いますし、私も貞子さんのご意見に共感を覚えるものであります。こういったブログがたくさん出てくるのを待望しております。(さっそく貞子さんのブログに1票投じさせていただきました)なお、赤福とは事例が異なりますが、素人オヤジさんや酔狂さんのお勧めで石屋製菓の「コンプライアンス確立外部第三者委員会報告書」を読ませていただきましたが、私も内容は秀逸だと思いますし、(若干の希望事項はコメント欄に書かせていただきましたが)私もご一読をお勧めいたします。

さて、予想どおり(?)昨日のエントリーには諸々のコメントをいただきまして、ありがとうございました。いつものパターンではありますが、ちょっと立場上、コメントをお返しするのがむずかしいところであります。(^^;; (ある事情で、12月初めには、私、青学にも伺いますし・・・・)なお、しこたまさんがコメントされていらっしゃる、会社法務A2Zの12月号、私も読んでみました。コンプライアンス(ガバナンス)関連の特集として、監査役、会計監査人、内部監査人の監査における連携について考察されておりますね。昨日のエントリーとも関係しますが、こういった協調連携のためには、単に「用語」の統一だけでなく、判断基準の統一も必要だと思っております。もちろん、内部統制システムの整備については、それぞれ企業によって工夫が必要でしょうが、昨日申し上げたような「重要な欠陥と不備との区別をどこに求めるか」とか、業務プロセスの評価方法(日常的モニタリングのみで足りるか、独立的評価は必要か)など、実施基準の記述よりももう少し踏み込んだところで明確化されませんと、上記3者の間におきまして、金商法上の内部統制報告制度に期待されているような協調連携ははかれないのではないか、などと考えてしまいます。

そして内部統制報告制度が、単に外部監査人から適正意見をもらうためだけの制度ではなく、具体的に企業価値を向上したり、企業価値の毀損を防ぐための「有効性、効率性向上のための内部統制」を目指すのであれば、できるだけ内部統制の整備に関与する人たちの間で「成功体験」を共有することが必要だと思いますね。とかく内部統制に関するお話は、「こうしたほうがよい」とか「うちの会社ではこうしている」といったところがメインテーマとなっておりまして、どうもイメージが湧きにくいところが難点であります。(手段が目的化するきらいがあるのではないかと危惧しております。)営業行為とは異なり、管理行為というのは、なかなか数字で成績(良し悪し)が表せられないところがありますが、「こういったリスク管理を行ったことで、こういった事態を防ぐことができた」とか「監査役のこのような行動によって、会社の資産保全がこのように図ることができた」といった一種の「成功体験」を共有することも重要ではないかな・・・と思っております。

たとえば、ある会社では、食中毒事件の発生に備えて、会社法上の内部統制システム構築の一環として、リスク評価とその対応方法を検討していたところ、案の定、食中毒事件が発生し、県の衛生局より全面的な食品工場操業禁止処分を受ける可能性が高まったとします。しかしながら、その食中毒事件の発生する3ヶ月前に、食品のトレーサビリティに関する情報収集方法を「対応方法のひとつ」として事前に整理していたために、食中毒の発生した営業店舗が特定できたことによって、すみやかに対象の食材が判明し、これをもって衛生局と交渉したところ、工場操業禁止処分は受けずに済み、当該営業店舗のみの営業禁止処分で済んだ、といったあたりの話であります。もちろん、これはJ-SOX(財務報告に係る内部統制)とは異なるものではありますが、こういった事例を経験することによって、単に外部監査人から適正意見をもらうための制度ではないことを実感できるようになると思われます。

つい先日(11月11日)の朝日新聞ニュースにおきましても、大和ハウスグループの子会社(大和リゾート社)の監査役の方が、監査業務のなかで従業員の残業代の不払いの実態を知り、社長に直談判をされて、会社の残業代支払い方法が変更されるに至った、との報道がなされておりました。監査役の活躍が報道されためずらしいケースではありますが、こういった報道は、監査役の職務の理想に近いことが実際に行われていることを知ることができ、とても励みになります。管理行為がなんらかの企業価値向上に役立っているところを、今後は企業の枠を超えて、共感できるようになればいいですね。

11月 27, 2007 リスクマネジメント委員会 | | コメント (9) | トラックバック (1)

2007年11月26日 (月)

J-SOX「重要な欠陥」リスクを考える

私のブログで八田進二教授の著書をご紹介いたしますと、またいろいろなご意見、コメントを頂戴することになると思いますが(^^;、昨年出ました「これだけは知っておきたい 内部統制の考え方と実務」の続編(いや、続編ではなく姉妹編でしょうか?)が出たようですので、お知らせいたします。

Hatta_naibutousei 「これだけは知っておきたい 内部統制の考え方と実務(評価・監査編)」 (八田進二著 日本経済新聞社 1700円税別) 帯広告では「よくある誤解をズバリ指摘! 誤解しやすい7つのポイントを企業会計審議会・内部統制部会長が徹底解説!」とあります。260頁ほどのうち、3分の1が「実施基準」の掲載となっておりますので、実質は180頁ほどの著書だとお考えになってもよろしいかと思います。多くの上場企業にとりましては、すでに第1フェーズから第2フェーズへと走りだしているところも多いと思いますが、今一度、金商法における原点に帰って、実施基準に基づく経営者評価、監査について問題点を整理するためにも、ご参考にされてはいかがでしょうか。(ただ、私のブログを閲覧されていらっしゃる方々は、すでに金融庁Q&Aや、7つの誤解の話題を含めまして、最近の八田先生の講演等もお聞きになっておられる方が多いかもしれませんので、そういった方々には内容的には少し繰り返しになるかもしれません。なお、すでに読まれた方がいらっしゃいましたら、上手な活用法などを含めまして、ご意見などいただけましたら幸いです)

ところで、八田教授もこの著書のなかで指摘していらっしゃいますが、今後の内部統制報告制度(財務報告に係る内部統制報告制度)の論点として、経営者による内部統制評価の基準として「どこまでは不備で、どこからが重要な欠陥なのか、明確な判断基準は形成されるのか」といったところが大きな関心事になってくるのではないでしょうか。八田教授も、上記著書のなかで(89頁以下)、「日本の場合、経営者と監査人の間で意見が食い違う場合が出るかもしれない」と述べておられますし、いったいどのような事情について、どのような基準で経営者は評価すべきであり、また監査人は監査すべきであるのかは、まだまだ議論が煮詰まっていないところだと思います。

この点につきましては、八田教授も上記新刊書のなかでも参考にされておりますが、「週間経営財務」の2841号(2007年10月22日号)におきまして、町田教授が「内部統制の重要な欠陥の検討(アメリカにおける事例の分析)」といった論稿を出されておりまして、アメリカSOX法が開始された2004年、2005年の「重要な欠陥」(重大な欠陥?)とされた事例から(日米ではいろいろな導入の前提が異なることは承知のうえで)、日本における導入後の実務を分析されています。たとえば、これを(どういった内容で重大な欠陥とされたか、という)種類ごとにグラフにまとめますと、以下のとおりとなります。

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こうやってアメリカのこれまでの「重要な欠陥」(重大な欠陥)と評価された事例の集計をみておりますと、「人材」「経理手続」「会計処理」の面において「重要な欠陥あり」と判断されるケースが圧倒的であり、それ以外の統制環境や、内部統制の有効性を評価する範囲やその評価方法が適切でないこと、モニタリングや文書化が適切でないことが「重要な欠陥」とされているケースがかなり少ないことが認識できます。

この結果につきましては、米国の内部統制評価報告制度が、財務報告終了後に、その運用状況が評価、監査されることとなるので(会計処理上のミスが発見されますと、それをもとに重大な欠陥とみなされるケースが多くなり)、四半期決算における内部統制の検証によって、前倒しで評価されるであろう日本におきましては、上記の結果がそのまま妥当するわけではないと考えられております。(先の町田先生のご意見)たしかに、この当時の米国制度におきましては、トップダウン型のリスクアプローチが採用されていなかったり、ダイレクトレポーティングが採用されていたりしておりますので、このまま米国の運用結果が今後の日本の運用にそのまま参考になるわけではないと思われますが、それでもある意味、今後の日本における運用の方向性は示しているのではないかと思っております。

まずひとつめとして、「人材」「経理手続」「会計処理」といった点に関する評価の是非については、会計専門職たる監査人は自信をもって判断結果を述べることができる、といった点であります。上記グラフの他の項目と比較しますと、会計士さん方にとってみれば、内部統制が有効であるかどうか、の経営者の評価について、監査人自身の意見を述べやすいことは当然だと思われます。それと比較して、「統制環境」や「職務分掌」「モニタリング」「文書化」あたりにつきましては、それ自体を会計士さんが評価をして、経営者の考え方と食い違う場合であっても、「重要な欠陥」とまでは自信をもって判断できるだけの判断材料を持ち合わせていらっしゃらないのかもしれません。(なお、すでにこのブログでも何度か取り上げましたが、経営者が、自社の「人材」について「うちの人材では、財務報告の信頼性を確保できるほどの人間はいない」と公言されることはほとんど考えられませんので、ここは監査人によるご意見について問題となろうかと思われます)

つぎに各事例の中身を調べてみますと、整備状況と比較して、運用状況のほうが重要な欠陥と結びつきやすい・・ということであります。このことは、内部統制の整備につきましては、概ね企業に(どのようなシステムを整備するか、について)かなり広い裁量が認められているのでありまして、その裁量のもとで整備されている内部統制システムそのものへの評価はなかなか重要な不備とまでは言えないのかもしれません。ただ、運用状況となりますと、具体的に発見されたミス(四半期報告書の訂正や、決算財務報告プロセスにおける見積もり方法が適正でないことなど)との関係を明確に示すことが可能であったり、整備(構築)の改善よりも、運用の改善のほうが可視性が高かったりしますので、要するにいったん整備されたシステムの改善を放置しているような企業については、その有効性を否定しやすい、といった事情があるのかもしれません。

最後に、上記2点の結果として、「重要な欠陥」に該当するかどうかは、目に見える形での結果責任として問われる可能性が高いのではないか、ということであります。サンプリングの結果として、不備が発見されることはあるでしょうが、それが重要な欠陥であり、内部統制の有効性を否定するに至るものであるかどうかは、(実施基準による判断を行うとしても)かなりムズカシイところになるのではないでしょうか。

さて、こうやって推測してみたところと、実際に実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)のなかで「重要な欠陥」の判断例として掲示されているところを比較いたしますと、そこに大きな乖離があることに気が付きます。おそらくリスクアプローチの手法を用いて経営者の評価、監査人の監査がなされることを前提としているころから由来する乖離だとは思いますが、さて、現実には経営者と監査人とが意見において食い違うことが予想されますのは、どちらかといいますと、先に掲げたような場面においてではないかと(私は)思っておりますので、私的には、各企業における「重要な欠陥」と評価、監査されるリスクの中身を、上記のような比較におきまして考察してみたいと考えております。

11月 26, 2007 内部統制と「重要な欠陥」 | | コメント (12) | トラックバック (1)

2007年11月24日 (土)

情報管理と内部者取引(インサイダー)リスク

JTと日清食品、加ト吉との事業再編は、来年のMAを予想させるようなニュースであります。11月23日、24日の日経特集記事「食・再編(加ト吉買収の衝撃)」を非常に興味深く読みました。この両日の記事を読んだ後で、22日の三社(JT、日清、加ト吉)の公式発表の前に報道されました11月20日の日経1面の記事を読み返しますと、日経新聞による憶測記事というものではなく、再編内容の骨子につきましては、ほぼ間違いのない(取材に基づく)報道が20日の時点でなされていることが理解できます。(ただ、最初は何ゆえに日清食品さんが49%なんだろうか?と疑問に思いましたが、やはり日清さんも過半数取得にはこだわっておられたことを、後の報道で知りました。)こういった報道が日経記者さん方の熱意によるもの