« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

2007年11月30日 (金)

来年のトレンドは「ほっとこう大作戦」

(minoriさんより、「掲示されているイラストは他人の権利侵害に該当しないのでしょうか?」とのご指摘を受けました。そうですね、イラストであっても、あるキャラクターを連想させるものであることは明らかですので、明確な権利者の許諾を確認しなければ使用はできません。たいへん失礼しました。また、ご指摘いただいたminoriさん、どうもありがとうございました。ときどき、たいへん初歩的なミスを犯してしまいまして、赤面することがあります。これからもご不審な点がございましたら、どうかご指摘くださいませ。とりいそぎ、削除させていただきました。)今年は不二家事件、ミートホープ事件に始まり、赤福、船場吉兆など、いわゆる「食品表示偽装事件」がコンプライアンス関連記事における一番の話題となりました。また、食品だけにかぎらず、たとえば11月29日日経朝刊記事「外国人への(軍事転用可能な)重要技術提供については記録、報告義務」、同28日日経夕刊ほか「食品原材料の業者間取引においても表示義務設置(政府が骨子案)」、同28日読売ほか「ファミレス、コンビニにも省エネルギー規制の対象に。エネルギーの使用量報告、省エネ計画策定義務の明記」などなど、いわゆる一般企業に報告義務、届出義務、公表義務を課す規制が著しく増えているのが今年の傾向だと思われます。そしてこの傾向は、来年に向けて益々効果的な手法として、行政によって多用されていくのではないでしょうか。

1 行政による新たな規制手法「ほっとこう大作戦」

このブログで扱うコンプライアンス関連のテーマとしましては、来年のトレンドとして、この行政による報告・届出・公表義務の設定、つまり「ほっとこう大作戦」が大きな目玉になるであろうと(少なくとも私は)予想しております。行政による規制のあり方としましては、従来、細々(こまごま)とした事前の法規制の網をかけ、また法が足りない部分では行政指導をくりかえすことによって、一般消費者の生命身体財産を守るといった手法が多用されたのでありますが、最近はとりあえず企業の自律的行動へ期待しつつ、なにかあるまでは放置(ほっておいて)して、その間、報告、届出、公表をもって適正な行動を担保する方針に転換しつつあるようです。そして事後規制として、問題が発生した場面においては、これまでの報告、届出、公表内容を吟味したうえで、企業活動による違法状態を速やかに除去し、もし企業側に隠匿(非公表、無届け)や虚偽(虚偽報告)が認められる場合には厳罰を課す、といった対応をとることが予想されます。ここまでは、当然のこととしまして、問題は今年後半の食品表示偽装問題で明らかになりましたように、行政による調査を受けることがマスコミによる不祥事報道の嵐に拍車をかける要因となり、もはや現経営陣では立ち直ることができないような事態にまで至ることであります。(本日のマクドナルド社の追加報道をみましても、社内で把握している事実以外の事実が次々と発覚してしまうわけでありまして、経営者自身も「隠匿では」といった疑惑を向けられる結果となってしまいます)なにをすれば「法令遵守」といえるのか、基本的に規制当局は教えてくれないわけでして、自分で遵法経営の道を選択しなければならない・・・、まさに内部統制の整備の必要性が高まるわけであります。あるときは過小な対応をとることで更に非難を浴びることとなり、またあるときは過剰な反応をしてしまって、無駄に経営資源を費消してしまうリスクもあるわけです。これからの時代、行政とマスコミとのコラボによって、企業の社会的評価はあっけなく毀損されていくことが予想されます。

また、「ほっとこう大作戦」とは少し趣向が異なりますが、「刑罰なき規制」というものも行政手法としては効果的かもしれません。これはたとえばパソコンによる私的なダウンロードも、「とりあえず著作権侵害幇助として違法」としておいて、そのかわり平等な捕捉が困難なこともあって、ペナルティは課さない、とするものです。「刑罰がない規制なんて、結局はやったもん勝ちじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、本来ならば行政は、他人のパソコンの中身を無断で調査することなどプライバシー侵害をして許容されないはずですが、そもそも「違法行為」が行われている疑いがあるならば、不正調査としてプライバシー侵害にはなりませんよね。もし、大掛かりな組織を見つけ出すために、一般人のパソコンのサーバーを経由せざるをえないような捜査が必要な場合、こういった手法が効果を発揮するわけでして、知らず知らずのうちにパソコンの中身が調査されている・・・といったことも出てくるかもしれません。(なお、上記の事例は「たとえば」の話であります)

2 「ほっとこう大作戦」に向けた一般企業の対応策はあるのか?

「対応策」と書きますと、なにか悪いことでもたくらむようでありますが、けっしてそうではありません。コンプライアンス経営のためにできるだけ少ない経営資源を向けて、最大の効果を得るための手法について検討すべきだ、というものであります。今年6月、政府は一般企業向けに「反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表し、そこに反社会勢力との断絶のための内部統制システム構築の指針が盛り込まれております。とりわけ反社会勢力に関する情報収集については、「自助」→「共助」→「公助」の指針が盛り込まれており、情報収集が個人情報保護法違反にならない(例外規定の適用可能性)ためのヒントも含まれております。私は、反社会勢力断絶の場面だけでなく、この情報共有の精神がコンプライアンス経営全般にも及ぶものだと思っております。自社の不祥事や、その対応策といった情報は、どうしても外に出したくないものであります。しかしながら、そういった過去の情報を共有することで(とりわけ有事における対応策等)、「ベストの対応ではないかもしれないが、そこそこ最適解に近いところの対応」といったものも認識できるのではないでしょうか。先日、もし可能であればリスク管理の成功体験を共有しよう・・・と述べましたが、これも同様の趣旨からであります。情報の共有だけでなく、最終的には業者ルールのようなものまで出来上がれば、コンプライアンス経営への経営資源の投入はかなり少なく済むことになると思います。

また、今朝(11月29日)の日経朝刊「経済教室」におきまして、独占禁止法違反に関する手続は、現在の公取委による事後審判制から直接行政訴訟によるべきである、といった村上教授(一橋大学)のご意見が出ておりました。(まったく同感であります)行政による調査が不当である、行政による事実認定におかしい、と思えば異議を申し立てる、といった企業側の対応が、もうすこし頻繁になされるような環境作りが必要ではないかと思います。現状では、「おかしい」と思っていても、長時間争っているうちに、不祥事を犯した企業という社会的評価だけが残ってしまい、裁判で勝ったころには、あまりマスコミで取り扱ってくれない・・・といった事態が予想されるために、異議も述べないのが通常ではないでしょうか。一朝一夕に出来上がるような制度ではありませんが、そういった日が到来するときに備えて、企業としても報告、届出、公表に耐えうるような「事実認定能力」を自社で磨かれることを強くお勧めいたします。

3 今年のトレンド予想は当たったのか?

さて、私は昨年末、2007年は「課徴金」と「利益相反」がトレンドになる、と予想しておりました。課徴金につきましては、「うっかりインサイダー」はじめ、金融商品取引法上の課徴金制度については、かなり認知度も高くなりまして、また金融庁のWGより、12月には、今後の課徴金制度のあり方に大きな影響を与える報告書が出るようですので、ほぼ当たったかな・・・と思います。しかしながら「利益相反」のほうにつきましては、銀証の兼業緩和がまだ検討され始めたばかりであり、兼業問題(ファイアーウォール規制)、情報共有問題(チャイニーズウォール規制)、役員の兼職等(アームズレングスルール)などなど、またこれからというところでありまして、どうも予想は外れてしまったようであります。コンプライアンス問題というものは、その時々の発生した事件にも影響されますし、先の「ほっとこう大作戦」も、どこまで当たるのかはあまり自信のないところでありますが、法律家の視点から、これからも総括していきたいと思っております。

約1ヶ月前にアルファブロガーアワード2007にノミネートされまして、ふだんこちらのブログにお越しにならなかった方々にもたくさん閲覧していただいておりましたので、どちらかといいますと「内部統制」「企業価値」ネタよりも「コンプライアンス」ネタを多く採り上げましたが、投票締切日(12月2日)までのエントリーとしましては、これで最後であります。なんだか、「日本レコード大賞」とまでは申しませんが、「日本有線大賞」か「FNS歌謡祭」くらいに審査員推薦でノミネートされた演歌歌手のような気分になれて、楽しい1ヶ月でした(笑)(けっこう、ノミネートされていることで、ブログを書くインセンティブにもなりましたです・・・(^^;; もう来年ノミネートされなくても悔いはありませんよ。)また、私の拙いブログにご投票いただいた方に、厚くお礼申し上げます。m(_ _)m 普段、道でお会いしても、それほど話もしない同業者の方に「ブログがんばってるやん!一票、入れといたで!」とか、講演の後で参加企業の方から「ブログ見ております・・・、あれ、入れておきましたので」などと言われて、ホンマにうれしかったです。ちなみに、12月7日に栄えある2007アルファブロガーに選ばれる「ビジネス系ブロガー」としましては、葉○さんと、○っちーさんあたりではないかなぁ、と。。。(あくまでも私の予想ですけど・・・笑)

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年11月29日 (木)

GODIVA(ゴディバ)のアマい危機管理

(29日午後 追記あり)

本日報道されましたコンプライアンス関連のニュースでは日本板硝子社、旭硝子社の欧州カルテル事例がもっとも重大なものであることは承知しておりますが、私的にはGODIVA(ゴディバ)社の「線上金属片混入事件」に関する報道がとても気になった次第であります。(しかし、クリスマス商戦スタート直後のこのニュースは、企業収益としてみると大きなものですね)

それほど大きく採り上げられてはおりませんが、中日新聞ニュース読売新聞ニュースを総合して把握される事実によると、当該商品は11月16日に発売され、異物混入キャラメルは11月26日に社内の試食により「1個目」が判明、その後の社内調査で11月21日に宮崎市内の取扱店で販売されたものが、22日に異物混入の届出があった(2個目)ことが判明した、というものであります。現物はゴディバジャパン社のHPでご覧になれますが、こういった小さなキャラメルに15ミリのコイル状の針金片が含まれていたわけですから、これはかなり「ヤバイ」状態だったわけで、宮崎市内の取扱店が、この22日の届出を本社に連絡もせずに放置していたとなりますと、これはちょっと信じられないお話であります。(少なくとも、私の常識ではちょっと考えられない事態であります・・・)仮にこれが真実だとしますと、合計6万個以上もすでに販売されているわけですから、まだ全国において「届出はあったけれども本部が把握していない異物混入キャラメル」が存在する可能性を推認させるものでありまして、さらにそのままお客様の手元に存在するものもあるんじゃないでしょうか。

食品不正表示のように、行政法規違反の事実には該当しませんので、行政による立ち入り調査が開始されるわけでもなく、そのためにマスコミには詳細な情報が入らないと思いますので、このゴディバの件につきましては、今後大きな問題に発展する見込みは乏しいと思われます。ただ、ゴディバ社のHPに掲載されているお詫びとお知らせ に関する文書は、①トップページで小さく紹介されているだけであり、②文書内容も、当該商品を購入された方について返品を依頼するだけであり、どうもナットクできないように思えます。先に述べましたとおり、16日から発売されて、公表まですでに10日以上が経過しており、異物混入キャラメルの存在がある程度推認される状況にありますので、こういった場合の危機管理としましては、まずもってお客さまの生命身体の安全に向けられるべきではないでしょうか?まずHPのトップページにて、「この商品が手元にございましたら、お召し上がりになることをお控えください」と表示して、「お詫び」ページで、健康被害への対応と同時に商品回収のお願いを記載すべきだと思います。(しかも商品お問い合わせは、平日の9時半から夕方6時までって?? (^^;;)

もちろん健康被害がないことが一番の願いではありますが、健康被害への配慮をまったくされていない、このゴディバ社の対応では、かなり不誠実なものと受け止められる可能性があり、先の22日の届出放置の件を合わせ考えましても、ブランド商品販売企業としての「ブランド」そのものへの影響などが心配されるように思います。異物混入自体は日本企業のミスではないとしても、その事後対応を誤ることだけは回避すべきではないでしょうか。

(29日午後追記)11月17日に「適時開示は誰のためにあるのか?」のエントリーにて、オートバックスセブン社の転換社債型新株予約権付社債の発行中止にかかる開示上の問題点について詳しく記載いたしましたが、やはり28日、東証より再度の改善報告書提出を求められているようです。(といいますか、改善報告書を提出した当日に、内容が不十分として再度の提出を求められたそうです)この点は、今後の開示実務において参考となる書面がリリースされるかもしれませんので、備忘録としてとどめておきます。

それともうひとつ追記ですが、崎陽軒さんのシューマイにつきまして、誤表示により回収措置をとったようですが、一般市民の感覚としては「とくに製品の中身に問題がなさそうだし、もったいないのでは・・・」との声が多く聞かれます。私も同感ですが、違法状態の改善のためには、法令に基づいて廃棄処分をとる必要があるということでしょうか、それとも後日の処分のためにすこしでも情状を良くしておきたい、といった会社側の判断に基づくものなのでしょうか。ちょっと仕事中ですので、こちらも備忘録程度にて失礼します。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2007年11月28日 (水)

株主優待券の会計処理(その2)

(28日午後 追記あります)

先週、株主優待券の会計処理というエントリーをアップしましたところ、ある会計士の方よりメールをいただきまして、懇切丁寧に概要を教えていただきました。以下、メールの内容をご紹介いたします。

そもそも、株主優待引当金に関する会計処理のルールが明確になっていなかったのがいけなかったのですが、会社法で規定される以前も、会計理論の考え方に則れば株主優待引当金は計上するのが原則です。 一般的に引当金の設定用件というのは、 ①将来の費用または損失 ②それが当期以前の事象に起因する ③その費用または損失の発生可能性が高い ④金額を合理的に見積もることができるという4用件がありこの全てを満たす場合は引当金の計上が要求されます。

私自身、会計に関する専門的知見に乏しいところでありますが、会計理論の考え方により、一般的な引当金の設定要件とされるところあたりにつきましては、私も理解できるところであります。

これを株主優待引当金にあてはめて考えると、 ①株主優待はそれが将来利用されることによって値引き等を通じて費用になるものであり ②当期の権利確定日に株主であったものに発行される ③費用発生が確実なものであるここまでは間違いなくあてはまることになります。 そこで、ポイントは④の金額を合理的に見積もることが可能か、という点に集約されます。ブログでもご指摘のように「使われ方」要は「将来の利用を見積もることが可能か」ということが問題になります。

ご指摘のとおりであります。将来の利用を見積もることが可能かどうか、といったところに素人的疑問がありまして、これがどの程度の確からしさをもっていれば会計上の引当金として計上してよいのか・・・といったところが疑問であります。

優待券発行から数年が経過している場合は、これまでの利用実績を何らかの方法で集計することが可能だと思われますので(従来利用時に費用計上していたならば、会計記録が残っているはずですので)、事業年度ごとの実績率の平均値を用いるなどして、将来の合理的な利用見込率が算定でき、値引きの場合はその商品の売上原価と利用見込率を掛け合わせるなどして、金額の合理的な見積もりが可能になります。 仮に何らかの理由でこれまでの利用実績を把握できない場合は、その時点では合理的な金額の見積もりが不可能であるとして引当金計上はできないことになりますが、今後利用実績をデータとして収集して、見積もりが可能になった段階で引当金計上することが必要になります。今後の監査実務の流れとして、引当金計上する方向であることは間違いないと私は考えています。

なるほど、たとえば株主優待券として、「当社直営レストランにおけるお食事券2万円分」ということでしたら、有効期間中にどの程度使われたかを、数年分ほど調査をして、そこから出てくる合理的な見込み率を算定することで将来的な債務は見積もることができる、ということになるのですね。

ブログでご指摘のあった、「個人株主の変動が大きい」というのは確かにそうかもしれませんが、権利確定日に優待券を渡す株主が決定する以上、引当金を計上しない理由にはならないと思います。また優待券の内容が変わったとしても、その変更後の優待券の内容に基づいて計上する必要があると考えられます。ただこの場合は利用率がそれまでとは変動する可能性がありますので、その点については議論の余地があるところです。

株主優待券の内容が、「お食事券2万円分」などといったものであれば、比較的過去の実績などから合理的な引当金の金額については見積もりやすいのかもしれませんね。しかし、サービス(役務)の提供が優待内容である場合などは、それを引当金計上する場合には、すこし問題がありそうな気もしますが、どうなんでしょうかね?この場合、サービス提供自体の価格を考えるのでしょうか。それとも原価部分だけが価格となるのでしょうか。

そういえば今年の夏に、少しだけ話題になっておりましたが、企業が発行するポイントカードやお買い物カードの「ポイント」については、発行時に売上に計上せずに負債として計上する方向とされているようでありますが、株主優待券の会計処理につきましても、この「ポイント」の会計処理と同様に考えてよいのでしょうか?このあたりも素人的疑問なのですが、ポイントを顧客に取得させるというのは、売上とそのための販売促進に向けてのものであって、なんとなく収益と費用との対応が認識できるのでありますが、この株式優待制度を「株主優待引当金」として計上する場合、企業が取得すべき収益という概念は登場してくるのでしょうか?このあたりが少し疑問を感じております。

(追記)「あかつき財務戦略研究所」ブログより、たいへん詳細かつわかりやすい内容の関連エントリーを立てていただいております。(右のTBをご活用ください)

たとえば「株主優待制度」「株主優待券」なる検索をかけましても、なかなか「引当金」に関連するWEBページに出会うことはありません。(私の過去ログが最初に出てきたりします・・・・(^^; )こういった解説がWEB上で検討させていただけるのがホント、ブログの長所ではないかと思います。日下さんのコメントや、あかつきさんのエントリーを拝読しまして、またまた更なる疑問点とか論点について頭に思い浮かんできましたので、また続編を書かせていただこうかと思っております。(とりいそぎ御礼まで)

| | コメント (9) | トラックバック (2)

2007年11月27日 (火)

リスク管理の成功体験は共有できるか?

著名ブロガーでいらっしゃる貞子さん(貞子ちゃんの連れ連れ日記)より、赤福関連のエントリーについてトラックバックをいただきました(どうもありがとうございます。)経済系のブログでは珍しく赤福問題を取り上げていらっしゃったようですが、決して赤福に同情していらっしゃるわけではなく、公正な論評のための素材を提供されているところは(いろいろとご意見はあるでしょうが)、たいへん素晴しいと思いますし、私も貞子さんのご意見に共感を覚えるものであります。こういったブログがたくさん出てくるのを待望しております。(さっそく貞子さんのブログに1票投じさせていただきました)なお、赤福とは事例が異なりますが、素人オヤジさんや酔狂さんのお勧めで石屋製菓の「コンプライアンス確立外部第三者委員会報告書」を読ませていただきましたが、私も内容は秀逸だと思いますし、(若干の希望事項はコメント欄に書かせていただきましたが)私もご一読をお勧めいたします。

さて、予想どおり(?)昨日のエントリーには諸々のコメントをいただきまして、ありがとうございました。いつものパターンではありますが、ちょっと立場上、コメントをお返しするのがむずかしいところであります。(^^;; (ある事情で、12月初めには、私、青学にも伺いますし・・・・)なお、しこたまさんがコメントされていらっしゃる、会社法務A2Zの12月号、私も読んでみました。コンプライアンス(ガバナンス)関連の特集として、監査役、会計監査人、内部監査人の監査における連携について考察されておりますね。昨日のエントリーとも関係しますが、こういった協調連携のためには、単に「用語」の統一だけでなく、判断基準の統一も必要だと思っております。もちろん、内部統制システムの整備については、それぞれ企業によって工夫が必要でしょうが、昨日申し上げたような「重要な欠陥と不備との区別をどこに求めるか」とか、業務プロセスの評価方法(日常的モニタリングのみで足りるか、独立的評価は必要か)など、実施基準の記述よりももう少し踏み込んだところで明確化されませんと、上記3者の間におきまして、金商法上の内部統制報告制度に期待されているような協調連携ははかれないのではないか、などと考えてしまいます。

そして内部統制報告制度が、単に外部監査人から適正意見をもらうためだけの制度ではなく、具体的に企業価値を向上したり、企業価値の毀損を防ぐための「有効性、効率性向上のための内部統制」を目指すのであれば、できるだけ内部統制の整備に関与する人たちの間で「成功体験」を共有することが必要だと思いますね。とかく内部統制に関するお話は、「こうしたほうがよい」とか「うちの会社ではこうしている」といったところがメインテーマとなっておりまして、どうもイメージが湧きにくいところが難点であります。(手段が目的化するきらいがあるのではないかと危惧しております。)営業行為とは異なり、管理行為というのは、なかなか数字で成績(良し悪し)が表せられないところがありますが、「こういったリスク管理を行ったことで、こういった事態を防ぐことができた」とか「監査役のこのような行動によって、会社の資産保全がこのように図ることができた」といった一種の「成功体験」を共有することも重要ではないかな・・・と思っております。

たとえば、ある会社では、食中毒事件の発生に備えて、会社法上の内部統制システム構築の一環として、リスク評価とその対応方法を検討していたところ、案の定、食中毒事件が発生し、県の衛生局より全面的な食品工場操業禁止処分を受ける可能性が高まったとします。しかしながら、その食中毒事件の発生する3ヶ月前に、食品のトレーサビリティに関する情報収集方法を「対応方法のひとつ」として事前に整理していたために、食中毒の発生した営業店舗が特定できたことによって、すみやかに対象の食材が判明し、これをもって衛生局と交渉したところ、工場操業禁止処分は受けずに済み、当該営業店舗のみの営業禁止処分で済んだ、といったあたりの話であります。もちろん、これはJ-SOX(財務報告に係る内部統制)とは異なるものではありますが、こういった事例を経験することによって、単に外部監査人から適正意見をもらうための制度ではないことを実感できるようになると思われます。

つい先日(11月11日)の朝日新聞ニュースにおきましても、大和ハウスグループの子会社(大和リゾート社)の監査役の方が、監査業務のなかで従業員の残業代の不払いの実態を知り、社長に直談判をされて、会社の残業代支払い方法が変更されるに至った、との報道がなされておりました。監査役の活躍が報道されためずらしいケースではありますが、こういった報道は、監査役の職務の理想に近いことが実際に行われていることを知ることができ、とても励みになります。管理行為がなんらかの企業価値向上に役立っているところを、今後は企業の枠を超えて、共感できるようになればいいですね。

| | コメント (9) | トラックバック (1)

2007年11月26日 (月)

J-SOX「重要な欠陥」リスクを考える

私のブログで八田進二教授の著書をご紹介いたしますと、またいろいろなご意見、コメントを頂戴することになると思いますが(^^;、昨年出ました「これだけは知っておきたい 内部統制の考え方と実務」の続編(いや、続編ではなく姉妹編でしょうか?)が出たようですので、お知らせいたします。

Hatta_naibutousei 「これだけは知っておきたい 内部統制の考え方と実務(評価・監査編)」 (八田進二著 日本経済新聞社 1700円税別) 帯広告では「よくある誤解をズバリ指摘! 誤解しやすい7つのポイントを企業会計審議会・内部統制部会長が徹底解説!」とあります。260頁ほどのうち、3分の1が「実施基準」の掲載となっておりますので、実質は180頁ほどの著書だとお考えになってもよろしいかと思います。多くの上場企業にとりましては、すでに第1フェーズから第2フェーズへと走りだしているところも多いと思いますが、今一度、金商法における原点に帰って、実施基準に基づく経営者評価、監査について問題点を整理するためにも、ご参考にされてはいかがでしょうか。(ただ、私のブログを閲覧されていらっしゃる方々は、すでに金融庁Q&Aや、7つの誤解の話題を含めまして、最近の八田先生の講演等もお聞きになっておられる方が多いかもしれませんので、そういった方々には内容的には少し繰り返しになるかもしれません。なお、すでに読まれた方がいらっしゃいましたら、上手な活用法などを含めまして、ご意見などいただけましたら幸いです)

ところで、八田教授もこの著書のなかで指摘していらっしゃいますが、今後の内部統制報告制度(財務報告に係る内部統制報告制度)の論点として、経営者による内部統制評価の基準として「どこまでは不備で、どこからが重要な欠陥なのか、明確な判断基準は形成されるのか」といったところが大きな関心事になってくるのではないでしょうか。八田教授も、上記著書のなかで(89頁以下)、「日本の場合、経営者と監査人の間で意見が食い違う場合が出るかもしれない」と述べておられますし、いったいどのような事情について、どのような基準で経営者は評価すべきであり、また監査人は監査すべきであるのかは、まだまだ議論が煮詰まっていないところだと思います。

この点につきましては、八田教授も上記新刊書のなかでも参考にされておりますが、「週間経営財務」の2841号(2007年10月22日号)におきまして、町田教授が「内部統制の重要な欠陥の検討(アメリカにおける事例の分析)」といった論稿を出されておりまして、アメリカSOX法が開始された2004年、2005年の「重要な欠陥」(重大な欠陥?)とされた事例から(日米ではいろいろな導入の前提が異なることは承知のうえで)、日本における導入後の実務を分析されています。たとえば、これを(どういった内容で重大な欠陥とされたか、という)種類ごとにグラフにまとめますと、以下のとおりとなります。

Naibutousei003

こうやってアメリカのこれまでの「重要な欠陥」(重大な欠陥)と評価された事例の集計をみておりますと、「人材」「経理手続」「会計処理」の面において「重要な欠陥あり」と判断されるケースが圧倒的であり、それ以外の統制環境や、内部統制の有効性を評価する範囲やその評価方法が適切でないこと、モニタリングや文書化が適切でないことが「重要な欠陥」とされているケースがかなり少ないことが認識できます。

この結果につきましては、米国の内部統制評価報告制度が、財務報告終了後に、その運用状況が評価、監査されることとなるので(会計処理上のミスが発見されますと、それをもとに重大な欠陥とみなされるケースが多くなり)、四半期決算における内部統制の検証によって、前倒しで評価されるであろう日本におきましては、上記の結果がそのまま妥当するわけではないと考えられております。(先の町田先生のご意見)たしかに、この当時の米国制度におきましては、トップダウン型のリスクアプローチが採用されていなかったり、ダイレクトレポーティングが採用されていたりしておりますので、このまま米国の運用結果が今後の日本の運用にそのまま参考になるわけではないと思われますが、それでもある意味、今後の日本における運用の方向性は示しているのではないかと思っております。

まずひとつめとして、「人材」「経理手続」「会計処理」といった点に関する評価の是非については、会計専門職たる監査人は自信をもって判断結果を述べることができる、といった点であります。上記グラフの他の項目と比較しますと、会計士さん方にとってみれば、内部統制が有効であるかどうか、の経営者の評価について、監査人自身の意見を述べやすいことは当然だと思われます。それと比較して、「統制環境」や「職務分掌」「モニタリング」「文書化」あたりにつきましては、それ自体を会計士さんが評価をして、経営者の考え方と食い違う場合であっても、「重要な欠陥」とまでは自信をもって判断できるだけの判断材料を持ち合わせていらっしゃらないのかもしれません。(なお、すでにこのブログでも何度か取り上げましたが、経営者が、自社の「人材」について「うちの人材では、財務報告の信頼性を確保できるほどの人間はいない」と公言されることはほとんど考えられませんので、ここは監査人によるご意見について問題となろうかと思われます)

つぎに各事例の中身を調べてみますと、整備状況と比較して、運用状況のほうが重要な欠陥と結びつきやすい・・ということであります。このことは、内部統制の整備につきましては、概ね企業に(どのようなシステムを整備するか、について)かなり広い裁量が認められているのでありまして、その裁量のもとで整備されている内部統制システムそのものへの評価はなかなか重要な不備とまでは言えないのかもしれません。ただ、運用状況となりますと、具体的に発見されたミス(四半期報告書の訂正や、決算財務報告プロセスにおける見積もり方法が適正でないことなど)との関係を明確に示すことが可能であったり、整備(構築)の改善よりも、運用の改善のほうが可視性が高かったりしますので、要するにいったん整備されたシステムの改善を放置しているような企業については、その有効性を否定しやすい、といった事情があるのかもしれません。

最後に、上記2点の結果として、「重要な欠陥」に該当するかどうかは、目に見える形での結果責任として問われる可能性が高いのではないか、ということであります。サンプリングの結果として、不備が発見されることはあるでしょうが、それが重要な欠陥であり、内部統制の有効性を否定するに至るものであるかどうかは、(実施基準による判断を行うとしても)かなりムズカシイところになるのではないでしょうか。

さて、こうやって推測してみたところと、実際に実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)のなかで「重要な欠陥」の判断例として掲示されているところを比較いたしますと、そこに大きな乖離があることに気が付きます。おそらくリスクアプローチの手法を用いて経営者の評価、監査人の監査がなされることを前提としているころから由来する乖離だとは思いますが、さて、現実には経営者と監査人とが意見において食い違うことが予想されますのは、どちらかといいますと、先に掲げたような場面においてではないかと(私は)思っておりますので、私的には、各企業における「重要な欠陥」と評価、監査されるリスクの中身を、上記のような比較におきまして考察してみたいと考えております。

| | コメント (12) | トラックバック (1)

2007年11月24日 (土)

情報管理と内部者取引(インサイダー)リスク

JTと日清食品、加ト吉との事業再編は、来年のMAを予想させるようなニュースであります。11月23日、24日の日経特集記事「食・再編(加ト吉買収の衝撃)」を非常に興味深く読みました。この両日の記事を読んだ後で、22日の三社(JT、日清、加ト吉)の公式発表の前に報道されました11月20日の日経1面の記事を読み返しますと、日経新聞による憶測記事というものではなく、再編内容の骨子につきましては、ほぼ間違いのない(取材に基づく)報道が20日の時点でなされていることが理解できます。(ただ、最初は何ゆえに日清食品さんが49%なんだろうか?と疑問に思いましたが、やはり日清さんも過半数取得にはこだわっておられたことを、後の報道で知りました。)こういった報道が日経記者さん方の熱意によるものであることは当然とは思いますが、しかしこういった関係当事会社にとって「トップシークレット」に属するような情報が、なぜかくも(詳細に)事前に漏れてしまうのでしょうか?私自身、昨年末から今年初めにかけて、(社外役員として)こういったトップシークレット事項を抱えていた当事者としましては、どうも理解不能であります。

11月20日の時点でスキームの詳細や今後の日程など知りえる立場にあるのは、三社の経営トップ(おそらく取締役でも知らない方はいらっしゃるはず)、関係部署責任者、財務、法務アドバイザー、そして公正取引委員会や経済産業省など、事前相談が必要な場合には、関係官庁の担当者くらいではないでしょうか。おそらく、こういった当事者のなかで、漏れる可能性というものはほとんどないですよね(と、信じたいです)。日経の20日の報道では、公表時期は11月末ころ、とされておりましたので、三社ともこの20日の報道を受けて、慌てて前倒しで22日に合同記者会見を行うことになったのでしょうね。(あくまでも私の推測でありますが)

厳格な情報管理のもとで、ごく少数の関係者のなかで再編計画を進めていても、やはり情報は漏れる・・・・・。たとえば今回の事例で申しますと、日清の冷凍食品部門に従事されていらっしゃる社員の方々にとってみれば、まさに「青天の霹靂」であり、経営者側への不信感というものは事後説明で払拭されるのでしょうか?おそらく経営者側にとりましては、関係部門への説明の「段取り」があったと思いますので、そういった段取りが狂ったことによる信頼関係の破壊が心配されます。そして、なによりも、どんなに厳格な情報管理を行っていたとしましても、社内に犯罪者を作ってしまう可能性(インサイダーリスク)は残っている、ということを改めて認識せざるをえないように思います。

Kigyou_ikinokori りそなホールディングスの社外取締役、箭内昇(やない のぼる)氏がお書きになっている「企業生き残りの条件(りそな社外役員の現場報告)」(ビジネス社 税別1600円)のなかに、コラムとして「りそな対マスコミ」といったテーマのものが挿入されておりまして、過去の苦い経験から、厳格な情報管理体制を敷いていたにもかかわらず、「経営健全化計画」の中身が発表前に報道されてしまった事実が紹介されております。この情報の漏れによって、(嫌な意味での)社内での文書取扱い方法に変更が生じ、行内に不信感が広がってしまった様子が描かれており、情報管理の難しさは公的資金を投入したような厳格な金融機関においてさえ直面するようです。(なお、この新刊書は内部統制、コンプライアンスに関心のある方にはお勧めです。委員会設置会社ではありますが、りそなの社外取締役兼監査委員会委員長として、りそな銀行のガバナンス改革にどう立ち向かっていかれたのか、実行と思考においてたいへん参考になります。とりわけ連載されたものを時系列的にまとめた本でありますので、後に実際に発生した事実を、それ以前にどう考えていらっしゃったのか、そのあたりが非常におもしろいところです。内部統制やガバナンスに関するご見解など、また別の機会に改めてご紹介したいと思います)

三連休の谷間である本日も、三洋電機社の配当金原資不足の件につき報道がなされ、さきほど、(午後1時前)三洋電機社から適時開示情報が出ておりましたが、これもなかなか関心のある話題であります。旧商法→会社法、証券取引法→金融商品取引法、会計基準の変更など、多岐にわたる論点が問題になりそうなところであり、これもまた別の機会に改めて検討したいと思っております。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年11月22日 (木)

「他社をかばうこと」とコンプライアンス経営

民事介入暴力に詳しい弁護士の方々のお話を聞いておりますと、世間で「不当表示」が騒がれるようになったためか、最近は「消費期限切れ」とか「原産地偽装」といった疑惑をネタに示談交渉を持ちかける反社会勢力(もしくはそういった疑いある団体)の活動が急増しているそうであります。その際、そういった団体の方は、もし示談が成立しないのであれば、行政に申告するとか、商品を陳列している百貨店やスーパー、コンビニに調査依頼をかける、といった告知を行うようであります。

もちろん、疑惑がないのであれば、事実確認のうえで、堂々としていればいいのでありますが、もし不当表示の疑惑があった場合、なかなかやっかいな話が持ち上がってきます。自社だけの問題であれば、「こうなった以上は、不祥事は自ら申告して、商品を回収し、謝罪しよう」ということで筋が通るわけでありますが、ここに商品の小売業者(百貨店、スーパー等)もからんでくるケースがあります。小売業者自身のブランドをいたく傷つけてしまう可能性があるわけですから、「こういったことで不祥事を公表するので、申し訳ありません」と事前に連絡をしましても、「うちが陳列している商品に偽装表示があった、ということはなんとか隠したい、公表は差し控えてもらいたい。もし公表した場合は即刻、取引は解消させてもらいますよ」と脅された場合、どうしたものでしょうか。先の反社会勢力も、こういった取引先との関係維持のために、なかなか公表できないような企業があることを知って、狙いをさだめてくるわけであります。

そういえば、某著名な株主代表訴訟の事例につきまして、株主側代理人をされていた弁護士の方より直接伺ったことがあるのですが、企業不祥事の事例においては、この「取引先をかばう」ことが、結果的に自社の社会的信用毀損の程度を拡大させてしまったような事案というものがけっこうあるそうであります。その某著名な事例におきましても、反社会勢力の者たちから、商品の欠陥を指摘されてしまったのでありますが、もしその商品の欠陥を公表した場合、その商品の技術指導担当は大口取引先である超有名な食品会社の完全子会社でしたので、(その大手食品会社のブランドに傷をつけてはいけない、とのことで)結局公表できずに内々に示談で済ませてしまい、それが後の大きな事件に発展してしまう、といった経過をたどっております。

「そのうち発覚するものだから、堂々と公表せよ」と言うのは簡単ですが、内部告発のおそれが高いとか、現に反社会勢力にゆすられているといった状況であればまだしも、社内の内部調査で発覚したような不祥事につきましては、「これ、自社で勝手に公表しちゃうと、大口取引先にも迷惑かけちゃうし、どうしようかな」と迷うのが普通の感覚ではないでしょうか。おそらく、こういったことで悩むのは、経営トップというよりも、その大口取引先を失うことによって社内の評価が落ちてしまうおそれのある担当責任者の方々の場合が多いかもしれません。実はこの「自社完結型」ではないコンプライアンス問題につきましては、私も「こうすればいいのではないか」といった方策を持ち合わせておりませんし、悩むところであります。「情報と伝達」経路を充実させて、経営トップ(および取締役会)に不祥事の発生事実が適正に伝達されるシステムを構築することや、企業行動規範に、そういった場面を想定した規定を置くべきことはわかっているつもりではありますが、それだけで、取引先を失うリスクを抱えつつ公表措置を講じるためのインセンティブになるのかどうか、心もとないかぎりであります。

船場吉兆社の一連の不祥事のなかで、岩田屋さんの対応をみておりますと、最初は一緒に謝罪をして、その後、船場吉兆さんの不祥事隠匿に関する行動をみて、店舗閉鎖勧告や、関係解消の検討へと進んでいきましたが、やはり取引先に迷惑をかけるといいましても、「不祥事は起こりうるもの、問題はその後にどう対応したか」といったところを評価していただける時代になりつつあるのではないでしょうか。結局のところ、経営トップの判断を仰ぎつつも、経営トップとしては、取引先に迷惑をかけるかもしれませんが、不祥事公表、再発防止への真摯な対応に協力してほしい、と真正面からぶつかっていくしか方法がないのでありまして、取引先としましても、真正面から相談を受けて「いやいや、うちのブランドが」と言っていては、かりに不祥事が発覚してしまった場合には、もはや共犯的イメージをもたれてしまう時代になってしまったことをハッキリとご認識いただくしか方法はないように思います。なかなかうまい答えが見出せませんが、今後もこういった問題につきましては、最善策を検討していきたいと思っております。

| | コメント (7) | トラックバック (0)

2007年11月21日 (水)

万能細胞への熱き思い(山中教授講演会)

21日未明に日経ニュース朝日新聞ニュース読売新聞ニュースで早速、山中伸弥教授(京大再生医科学研究所)の画期的な研究成果がリリースされておりまして、おそらく全世界で同時にニュースが飛び交っているものと思います。あの韓国の黄(ファン)教授の捏造事件や、米国ブッシュ大統領の研究費予算に対する拒否権発動以来、世界的に注目されている万能細胞研究でありますが、再生医療の実用化に向けて、山中教授のIPS細胞の成果が遂に発表されることとなりました。おそらく21日の各紙でも、報道されているものと思います。

Cimg0290_320 なぜニュース報道が真夜中になってしまったかといいますと、実はこの山中教授、つい先ほどまで、私たちと一緒に大阪の西天満にあります小料理屋で二次会にお付き合いいただいていたからであります。本日、大阪弁護士会館におきまして、山中教授による「万能細胞への熱き情熱」といったテーマでご講演をいただき、その後(お疲れのところ誠に恐縮だったのですが)11時すぎまで二次会にご参加いただいておりました。(報道時間が遅くなりましたのは、おそらく)ご講演の途中から、ひっきりなしに山中教授の携帯がバイブ鳴動していたのでありますが、「ちょっと気になりますので、切っちゃいましょうね」と、そのまま二次会終了時まで携帯の電源をお切りになっていたからであります。しかし生命医学の素人軍団である弁護士を相手に、たいへんわかりやすく最先端の再生医療の現場を解説いただき、また医療と生命倫理の関係にまで深くつっこんだお話を拝聴したことはたいへん貴重な経験でありました。

Cimg0294_320 受精卵を使用するES細胞とは異なり、山中教授の研究しているIPS細胞はわずか数ミリの皮膚片から採取するものでありまして、生命倫理の観点からも抵抗がないわけで、皮膚片から採取した細胞から、バクバクと動く心臓が出来上がり、その動画を見た瞬間、弁護士一同、ビックリ仰天でした。(私の心臓や脳が、近い将来、そっくりそのまま目の前で作れちゃうんですよね。)

ただ私が一番ビックリしたのは、(たいへん失礼ながら)この天王寺(大阪)のコテコテの関西人の先生が、今年7月にバチカン市国から呼ばれ、「万能細胞の研究成果に期待をしております」と励まされ、ローマ法王と握手をしている写真でした。(うーーん、ローマ法王にバチカンに招待されて握手できる弁護士はおらんよなぁ・・・・)

ブッシュ大統領も、このIPS細胞研究には非常に関心を寄せておりますし、当然アメリカの大学からたくさんのお話が来ているようですので、私は、研究費に不自由しないアメリカで研究を続けてはどうか、と質問したところ、山中教授曰く

「やっぱり僕は日本が好きなんで。研究医として、人体への応用が可能となったことを見定めたら、また形成外科の臨床医に戻って、若年糖尿病で苦しむ日本の子供たちや、脊髄損傷や白血病で苦しむ日本人のために働きたいんですよ」

山中先生、きょうはお忙しいところ、本当にありがとうございました。たぶん、先生のスゴサについて理解していた人は、私を含めて、ほとんどいなかったと思います(笑)ノーベル賞を受賞したら、また大阪弁護士会で記念講演してくださいね。

※写真につきましては包括的な一次使用についてご承認を得ておりますが、二次使用につきましてはお控えいただきますよう、お願いいたします。

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2007年11月20日 (火)

赤福、ついに正念場(組織ぐるみ認定)

三重県の食品衛生法違反による調査で、大阪地域での売れ残り全品が再利用されていたことが認定されてしまったようです。これまで、このブログでは「組織ぐるみ」とはいえない、としてきましたが、ここまできますと、私の主張を撤回せざるをえないようです。(県も、赤福は組織ぐるみだった、と発表したようですね。)

組織ぐるみであると三重県が判断した理由は、過去2年間の商品廃棄率が2%から3%ときわめて低く(これはハイテク企業が環境ビジネスプランを導入している場合の廃棄物廃棄とほぼ同じレベルですね・・・・(^^;; )、これは企業として再利用する体制がなければ達成できない割合だから、とのことです。なお、これに対して赤福社は12月14日までに報告書を提出する必要があるそうで、いよいよ赤福社にとっての正念場となりそうであります。

さて、「組織ぐるみ」と認定された今、赤福はどうやって現経営陣が立て直していけるのでしょうか。「地域の雇用」「三重県発展のための事業会社の継続」「赤福そろそろ食べたい症候群」「300年の歴史」「百五銀行(メインバンク)の支援条件」などなど・・・

業務中にて、とりいそぎ備忘録程度で失礼します。

| | コメント (6) | トラックバック (1)

株主優待券の会計処理

公認会計士試験に合格された皆様方、まことにおめでとうございます。合格者倍増(4041名)とはいえ、合格率19%の難関を突破された喜びはひとしおではないでしょうか。いまはどこの監査法人さんも、内部統制、四半期開示などで猫の手も借りたいほどの忙しさのようですので、新人弁護士とは異なり(失礼・・)、就職に困ることはないのでしょうね。

さて、本日は私が社外監査役を務めております企業の「中間決算報告会」でして、監査役3名と監査法人さんとの1時間ばかりのミーティングが行われました。こういった監査役と会計士さんとの連携協調の場というのは、私のような財務会計的知見に乏しい監査役には非常に貴重な機会であります。ともかく会計監査人と経営者トップとの間で、今後に予想される「摩擦の種」みたいなものが、いったいどこにあるのか、監査役が知りうるためのいいチャンスであります。したがいまして、ミーティングの雰囲気がどうなろうと、自分がわからないところはどんどん質問するほうがいいですね。とくに、会計基準に変更があった場合に、なぜ今回当社の基準を変更したのか、いくつかの会計方針に選択の余地がある場合に、なぜ担当責任者である会計士さんが、その選択肢を採用したのか、といったあたりをしつこくお聞きしますと、会計士さん方の発想、モノの考え方のようなものが認識できまして、別の論点においても参考になります。 ※1ただ、あんまり突っ込んだ質問を現場責任者の会計士さんにぶつけますと、「ご指摘の考え方もあろうかとは思うのですが・・・・、ただ、うちのヒンカン(品質管理)の見解では、こちらが正しいと・・・、つまり○○監査法人の公式見解と考えていただければけっこうかと・・・」といった返答でした。。。うーーん、この「ヒンカン」は最後の切り札ですね。品質管理部の見解というものも、きちんと理由から説明をしていただけるとありがたいと思います。

※1 なお、正式な「会計方針の変更」の場合、会社計算規則129条1項2号等により、会計監査人による注記表への記載が要求されますが、監査役も監査報告において、その変更の相当性判断とその理由を開示する必要があります。

いくつか会計士さんのほうから問題点の指摘がありましたが、(ブログで紹介できる範囲で申し訳ありませんが)そのひとつとして株主優待券の会計処理に関する提言がありました。よくありますのは、優待券が使用された場合に(会計上は)売上値引きとして処理する方法ではないかと思います。会計士さんのお話では会社計算規則6条2項1号の関係からみて、そろそろ株主優待引当金として債務として扱うべきではないか・・・といった指摘でありました。たしかに他社のBSの流動負債に「株主優待引当金」なる項目が散見されるようでして、おそらくこれは株主優待券が一定程度使用されることを見込んで、引当金として積んでおく処理がなされているところもあるようです。

しかし引当計上するにあたって、株主優待券の「使われ方」を見積もるのはなかなかムズカシイ作業ではないでしょうかね?企業側が「長期保有を目標とする一般株主獲得の目的」があったとしましても、昨今の株主優待券ブームの中では、個人株主の変動は大きいでしょうし、また株主優待券の内容につきましても企業の業績によって優待券の中身が変動する可能性があるからであります。いろいろな企業の開示情報をみましても、急激に個人株主が増えた場合などにはメリットもあるようですが、今後もそういった個人株主が急増することが予想されないような企業の場合、はたして会計基準の選択方法を変更してまで、株式優待引当金を積まなければならないのでしょうか?なんだか見積もりを行うにあたって、合理的な優待券行使状況に関する数値を抽出することは、社内的にも非常にしんどい作業になるような気もいたします。

<>

 (参考 会社計算規則6条)

(負債の評価)第六条  

負債については、この省令又は法以外の法令に別段の定めがある場合を除き、会計帳簿に債務額を付さなければならない。

2  次に掲げる負債については、事業年度の末日においてその時の時価又は適正な価格を付すことができる。

一  次に掲げるもののほか将来の費用又は損失(収益の控除を含む。以下この号において同じ。)の発生に備えて、その合理的な見積額のうち当該事業年度の負担に属する金額を費用又は損失として繰り入れることにより計上すべき引当金(株主に対して役務を提供する場合において計上すべき引当金を含む。)

イ 退職給付引当金(使用人が退職した後に当該使用人に退職一時金、退職年金その他これらに類する財産の支給をする場合における事業年度の末日において繰り入れるべき引当金をいう。)

ロ 返品調整引当金(常時、販売する棚卸資産につき、当該販売の際の価額による買戻しに係る特約を結んでいる場合における事業年度の末日において繰り入れるべき引当金をいう。)二  払込みを受けた金額が債務額と異なる社債 三  前二号に掲げる負債のほか、事業年度の末日においてその時の時価又は適正な価格を付すことが適当な負債

| | コメント (5) | トラックバック (1)

2007年11月19日 (月)

公取委の不当表示警告への疑問

11月16日、公正取引委員会はNTTドコモとKDDI(AU)に対しまして、「料金割引サービスに関するチラシの表示方法が、景品表示法4条1項2号(有利誤認)に違反する」ものとして、厳重注意処分を下したそうであります。(公取委の公表内容はこちら。)本日(11月18日)、自宅近くのAUショップに出かけまして、現在通用中である「フルサポート割引チラシ」の現物を眺めてきましたが、やはり公取委の処分対象となっております「誰でも割」と同様、チラシの一番下のところに細かい文字で解約料の発生する場合に関する条件の記載がありました。(現実にこうやってチラシを見たところ、たしかにこれは説明を受けなければ誰も読む気にはなりませんね・・・)NTTもKDDIも、公取委に対して当初反論をされたようですが、最終的には厳重注意を真摯に受け止める、ということになり、おそらく業界の自主ルールも改訂されることになるんじゃないでしょうか。

今回の公取委の処分につきましては、一般消費者にとっては意味のあるところだとは思いますが、すこし気になりましたのが、そもそも公取委は上記2社に対して広告の訂正を求める排除勧告でのぞむはずでありましたが、(1)判読しづらいとはいえ、いちおう解約料発生条件に関する記述があること、(2)契約時において、口頭での条件説明がなされていることから、(排除勧告までは出さずに)厳重なる注意、という処分ということにした ようであります。(これは公取委の公式意見ではありませんが、こちらの西日本新聞ニュースの記事や、11月17日土曜日の日経新聞3面解説記事にも掲載されているところなので、ある程度たしかなものと思われます)

以前、金融機関における「金利表示」について、公取委が不当表示を問題にしたときにも疑問に感じたところでありますが、なぜチラシの表示自体の違法性(景表法違反)を問題としているにもかかわらず、「店頭における口頭説明の良し悪し」を持ち出すのでしょうか?そもそも景表法違反はチラシの表示自体から悪性判断をすべきであり、説明義務を尽くしたかどうかは、なんら公取委が問題とすべき判断基準にはなりえないはずだと思われます。こういった他事考慮(チラシの違法性を判断するにあたり、販売方法の是非を考慮すること)につきましては、行政処分の恣意性を高めることになってしまって、業界の自主ルールを改訂したり、社内における行動基準を定めるにあたって、違反行為の予測可能性を低減させることになるのではないかと思います。また、説明義務を尽くしたかどうかは、契約法の法理に関わる問題であって(たとえば金融商品の場合であれば、金融商品販売法の問題)、これに公取委が軽々に踏み込むことにつきましては民々の紛争解決にも影響を与えてしまうおそれがあり、妥当な対応とはいえないものと思われます。逆にいえば、公取委が不当表示について排除勧告を出そうとしているときに、対象企業側としては、各店舗において有利誤認を防止するための説明義務を尽くしていることや、別のチラシ等において、誤認防止のための表示をしていることなどを持ち出して、排除勧告を免れることは検討されてもいいのでしょうかね?こうなりますと、もはや「不当表示」と「説明義務違反」との区別が曖昧になってしまうような気がいたします。

商品表示の適正を求めるといいましても、スーパー等の小売店で販売している商品のように、表示そのものしか問題にできない場合と、金融商品や携帯電話、不動産のように、商品表示はあくまでも購入のための誘引にすぎず、その先の商品説明によって購入されるような場合とでは、その意味が少し異なるのかもしれませんが、ただいずれにしましても、「表示」そのものが一般の人からどのように受け止められるか、といった観点から適正性は判断されるべきであり、商品販売方法の是非につきましては、これと峻別して検討すべきではないでしょうか。

(参考 不当景品類及び不当表示防止法 関連条文)

(目的)第1条 この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)の特例を定めることにより、公正な競争を確保し、もつて一般消費者の利益を保護することを目的とする。

(定義)第2条 2 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行なう広告その他の表示であつて、公正取引委員会が指定するものをいう。

(不当な表示の禁止)第4条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。 2.商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示

(お知らせ)ところで「アルファブロガー2007ノミネート」の件ですが、たくさんの応援メッセージを頂戴しております。(こちらでご覧になれます)また、初めて知りましたが、ノミネートされております60ブログのなかで、中間集計ではありますが、当ブログがベスト20に含まれている、とのこと。驚きです・・・・・・。これもひとえに皆様方のご支援の賜物以外にありません。本当にどうもありがとうございます。これを励みに、これからもマニアックなブログとして頑張ってまいります。

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2007年11月17日 (土)

「適時開示」は誰のためにあるのか?

一昨日のエントリーの最後にチョロっとだけ触れておりましたが、11月14日の夜、オートバックスセブン社が無担保転換社債型新株予約権付社債(以下、「当該CB」といいます)の発行を中止する旨、情報を開示しております。オートバックスセブン社による当該CB発行とその中止に至る経緯としましては、以下のとおりであります。(ほんの概略にすぎませんが・・・)

Auto001 このような流れのなかで、オートバックスセブン社が当該CBの発行を中止したことは、「不適切な開示」ではないか、として東証が調査を検討している、といったニュースがリリースされております。(毎日新聞ニュースはこちら)また、ロイター通信によれば、当該CB発行を中止した経緯について、会社側に説明を求めたところ、発言した部署によって理由がくいちがっていたそうであります。(ロイター通信はこちら)なお、オートバックスセブン社が資金調達に走る一連の経緯につきましては、katsuさんのブログで詳細に解説されておりますので、ご参照ください。

こういった一連の適時開示をみておりまして、「当該CB発行のお話は架空のものではなかったのか」といった推測までは至りませんが、下記のようなこの一週間の株価と出来高の推移をみると、当該CB発行を投資家がどのように見ているかは別として、株価形成には大きな影響が出ていることは明らかであります。

Autobackspng

当該CB発行中止に至った経緯については非常に関心のあるところですが、おそらくオートバックス社側において、エスクロー口座への入金の確認にトラブルがあったのではないかと思いますが、どうなんでしょうか(でも、オートバックス社の説明ではファンド2社とともに協議をして中止した、とありますので、単純な金銭処理上のトラブルでもなさそうですし、私自身も未だよくわからないところであります。)ただ、東証や大証に提出すべき改善報告書のなかには、(改善案策定の前提として)なぜ、このように当該CBを発行決議をして、払込確認をした旨開示しておきながら、払込が未了であると訂正し、そして最後には当該CB発行を(ファンド2社とオートバックスセブン社の3名で協議をして)中止するに至ったのかを十分説明しなければなりません。したがいまして、11月末までには明らかになるとは思いますが、こういった適時開示情報というものが、いったい誰のためにリリースされるのか、あたりまえのようでありますが、今後問題となるケースも出てくるように思います。

ひとつは短期売買のための情報提供ということでありますが、その場合には、たとえば当該CBの中身がどうであるのか、社債買受人はいったいどのような法人(個人)なのか、どの程度の株式の希薄化が生じるのか、など、情報内容を理解する能力が必要になろうかと思われます。しかし、たとえばMSCBとか、当該CB発行のように、普通の投資家には、新株の内容が既存株主にどのような影響を与えるのか、その情報内容から理解できる人はごく限られてくることになります。(私自身も、この観点からみるファイナンスは勉強中であります)しかし、長期保有を目的とした一般投資家にとりましても、こういった適時開示情報というものは結構役に立つものだと思うようになりました。「性格の良い企業」「投資家に優しい企業」というのが、どういった企業であるかを知るためのひとつの材料が、この適時開示をきちんと行う企業である、といっても過言ではないと思います。こういった観点からみれば、(たとえMSCBや当該CBのように、発行要領の細かいところまで理解できなくても)開示が遅延したり、すぐに修正、訂正が入ったり、その遅延や訂正になんらの説明もなかったり、といった対応そのものが判断材料になるからであります。(以下、つづく)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年11月16日 (金)

船場吉兆、強制捜査へ

お気楽なエントリーを用意しておりましたが、各紙で報道されておりますように船場吉兆社が強制捜査の対象となったようでありますので、急遽抹消いたしました。連日の不当表示に関するエントリーになってしまいました。

不正競争防止法違反(主として、原産地表示、品質表示などについて、消費者に誤認させてしまうような表示を故意で行った、ということ)ということなんで、基本的には警察主導の捜査になりますが、これまでに農水省のJAS法違反の調査が先行しておりますので、農水省と警察の連携といったことになるものと思われます。ミートホープ社の不正競争防止法違反事件の際には、加工原材料の販売ということで農水省がJAS法では対応困難だったので、また違った流れになるかもしれません。とりいそぎ、今後の動向を見守りたいと思います。

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2007年11月15日 (木)

「うっかり表示」と「悪意の表示」

定量分析実践講座につきましては、続々とコメントをいただき、またそのコメントがけっこう「熱いもの」なんで、ぜひ続編を書かせていただきます。私も、もうすこし先まで読み進めてみたいと思います。(リスク、という言葉ひとつとりましても、この本を読んでいろいろな発見があって、ホントおもしろいですよね。)そして、もうひとつの話題であります「赤福再生」につきましても話題が尽きまないところですが、監査役サポーターさんがおっしゃるように、あまりにも「船場吉兆」さんの対応がフォローできないほどに支離滅裂なため、マスコミの矛先がそっちに向いてしまいましたね。不当表示発覚当初、一緒に謝罪会見を行っていた岩田屋さんにまで「もう、あんたとはやってられまへんわ」とそっぽを向かれてしまったようで、どうにもフォローできない状況になってまいりました。(しかし、資本関係にない、別の吉兆グループの会社も相当のダメージを受けているんではないでしょうか)船場吉兆さんの「沈み具合」を見ておりまして、ますます「組織ぐるみ」であることの印象が強くなるのでありますが、それに引き換え、いろいろと不当表示の事例が明るみになるわりには赤福さんの「組織ぐるみ」といった印象を強くする報道は出てこなくなりましたよね。これ、皆様は、どこに違いがある・・・とお思いになるでしょうか?

不二家に始まる今年一年の偽装(不当)表示問題でありますが、赤福再生プログラムに関するエントリーを書き、また皆様方からのコメントを拝見しておりまして、インサイダー取引と同様、不当表示問題にも「うっかり不当表示」と「悪意に満ちた不当表示(偽装表示)」があるように思いますし、区別して考えることに、それなりの意義がありそうです。「うっかり不当表示」というのは、たとえば現場担当者のミスもしくは現場担当者の故意による不当表示事案であり、偽装表示といいますのは、ミートホープ社に代表されるような、いわゆる「組織ぐるみ」の不当表示と区別するものであります。現時点では違法とは評価されませんが、消費期限切れの加工原材料を(それと知らずに)使用して食品を製造した場合も、この「うっかり不当表示」に含まれるかもしれません。悪意の不当表示ということであれば、まさに経営トップが積極的に関与しているようなケースであり、その修正はガバナンスの問題に発展するであろうと容易に想像がつきます。皆様ご指摘のとおり、ここまでくると、もはや内部監査あたりでは有効に機能しないのかもしれません。しかし、うっかり不当表示というものが(もし一般的に)区別できるものであるならば、やはりガバナンスの問題というよりも、内部統制の問題として検討されてしかるべきではないでしょうか。

最近の読売ニュースによりますと、競争法分野(景表法)におきましても、不当表示(他社製品よりも性能、品質等において優っていると誤信させるような)には課徴金が課されることになるようでして、売上の3~5%(!)という高額なものとなるそうであります。これは経営トップの関与には関係なく当該企業に課されることになるでしょうから、現場担当者の判断に基づくような場面でも大きな損失を企業が負担することになりそうであります。こういったことから考えられることは、今後は「表示」だけでなく、企業情報の開示などの全てを含めて「不当表示防止」のプログラムを社内で検討すべき時期に来ていると思いますね。景表法、不正競争防止法、JAS法、その他諸々の行政取締法規など、企業が開示する情報の正確性を担保することが、企業の社会的信用を維持するために重要な施策になってきたことは否めないところであります。ひとつの基準としましては、社内における事実認定→情報管理→開示、非開示判定作業→開示手続き、といった一連の開示統制システムの整備が、コンプライアンス経営のきわめて有力な手法であると考えております。

ひとつの考え方としては、不当表示を防止するために、食品の安全を保証する民間機関を設けまして、「JASマーク」の付いていない食品はスーパーには置かない・・・といった手法も考えられるところではあります。しかし昨今の改正建築基準法に由来するところの建築業界の不況問題のように、消費者の安全に大きく重心が置かれますと、過度の経済萎縮効果を生み出すことにもなりかねませんので、消費者の安全を確保しつつ、消費者の選択の期待に沿うように、機動的に経済活動が活性化していくこととの間での調和を求めるためには、やはり現状のように企業自身による表示の適正確保に期待をかけるしか方法がないと思います。そして、企業自身における「品質表示システム」のようなものを企業自身がPRすることで、はじめて消費者の自己責任に頼ることができるのではないかな・・・と思います。ということで、赤福再生プログラムではありますが、私は元従業員や取引先の証言のように、赤福社が「組織ぐるみ」「トップ関与」といった明らかな認定材料でも飛び出してこない限り、たとえ長年にわたる「まき直し」「先付け」が存在しましても、なんとか内部統制問題で検討してみたいと思っているところであります。(こんなこと言っているうちに、「経営トップ関与」が判明するような証言が飛び出してきたりして・・・(^^;  )

※ 今日は(今年の株主総会のなかで一番盛り上がったと思えます)パトライト社の創業者TOBや、夜になってオートバックスセブン社の新株予約権発行の中止など、きわめて興味深い開示情報が出ておりまして、そっちの話題にも触れたかったのでありますが、時間切れとなってしまいました。。。しかしこういった興味ある情報が開示されるのは、早朝か深夜が多いですね。

| | コメント (10) | トラックバック (1)

2007年11月13日 (火)

ココログのメンテナンスのお知らせ

私のブログはコメント、トラックバックとも管理者によるスクリーンが入る仕様となっております。ところで、本日(13日)午後8時より明日(14日)午前10時まで、ココログのメンテナンスのため、管理操作ができなくなります。また、コメント、トラックバック自体も機能しないようです。

せっかく力作のコメントをいただいても、どこにも反映されませんので、どうか明日までお待ちくださいませ。。。

(追記)

磯崎さんのブログで初めて知りましたが、東京の大手法律事務所(元所属)の方が逮捕されたということで、たいへんビックリしております。ある団体の内部統制部会へ私が入会を希望したときも、推薦状を快く書いてくださいましたし、(途中入会のために)右も左もわからずに緊張しておりました私に「大阪からですよね?勉強熱心ですね」といろいろとお声をかけてくださったのも、この方でした。ご経歴とは裏腹に、とても話しやすい気さくな方でしたので、事件の概要と、なんとも結びつかず困惑しております。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

赤福再生プログラム(私案)

昨日(11月12日)、赤福社より農水省に対して改善報告書が提出されたようでありまして、赤福社HPにはその概要(改善報告書概要)がリリースされております。(なお、ニュース写真を見ますと、ずいぶんと分厚い「改善報告書」のようでありますが、おそらく概要のなかで紹介されております「コンプライアンス・プログラム」「衛生マニュアル」「生産マニュアル」等の添付書類が多くを占めるのではないかと推察されます)最初はJAS法関連だけの改善内容かと思っておりましたが、中身は再生プログラムといっていいような内容と理解できそうですので、すこしとり上げてみたいと思います。

もちろん改善報告書の概要からの印象(つまり報告書そのものは読んでおりません)でありますが、原因究明におきましても、また改善策の概要におきましてもたいへん寂しい内容であり、これで本当に農水省は「改善策としては満足」と判断できるかは疑わしいように思います。もしこの内容で農水省が了解する、ということですと、今後同じようにJAS法違反を問われる企業はずいぶんと楽になるなぁと思いますね。といいますか、健康被害が出ていない場面における「食の安全、安心」を守ること(もしくは消費者の信頼を裏切ること)は、こういった内容でいちおう急場はしのげる・・・と考えてよいものなんでしょうか。(一時期は経営者トップの交代もあるのでは・・・と囁かれておりましたが)

この改善報告書から読み取れる「改善策」といったものは、事業規模の縮小を赤福社は本気で考えている、といったことぐらいであり、そのほかは単に「今回の事件への反省」に過ぎないと思います。もし現経営トップの方が、そのまま代表者として残ることを前提とするのであれば、本当に不祥事の再犯を防止するための施策を織り交ぜる必要があると思いますし、それではじめて行政も一般市民も納得するのではないでしょうか。本日提出されました「改善報告書」はどちらかといいますと、「今後二度と不祥事は発生させない」といった観点からの法令遵守態勢確保のための施策であります。しかし金融機関ならともかく、一般事業会社である赤福社が「二度と不祥事を起こさない」ことはありえないわけでして、「不祥事はかならず起こしてしまいます」といったリスク管理態勢構築の視点から出発すべきであります。そうでなければ、現実の再発防止策検討など、本当に不祥事を防止するための思考が「美辞麗句」を前にして停止してしまいます。

ということで、赤福社の不祥事再生プログラムというものを私案として検討してみましたが、私は最低でも以下の点について明確な宣誓が必要だと認識をしております。つまり、これからも不祥事を起こしてしまう可能性はあるけれども、その発生頻度を下げて、早期に発見して、不祥事による損害をできるだけ縮小するために努力します・・・といった観点からの誓約であります。

1 赤福製造過程を「見える化」する(工場見学のススメ)

先日、(日弁連人権大会の折)浜松にて、うなぎパイの工場見学をしてきましたが、見事なほど、2階から製造、包装、検品作業まで見学できます。(ただし従業員の方々の人格権保護のため、工場内の撮影は禁止)予約をすれば係員の方の説明までお願いできます。そして、見学ができない製造工程の特定、なぜ見学ができないのか、という点についても説明があります。とりわけ(映像ビデオにて)ロボットと人間の共同作業による製造工程は、たいへん美しいものでありました。もちろん、見学ができるからといいましても、素人をごまかすような不正をはたらくことは容易かもしれません。しかしながら、「誰でも工場を見てください」といった会社の姿勢自体がとても重要なことだと思いますし、こういった不祥事で信用を毀損してしまった赤福社こそ、こういったパフォーマンスが必要ではないかと思います。(観光バスを誘致するなど)そこに商業的な意味が含まれていてもかまわないと思います。「説明義務を尽くすこと」を体現するには、もっともいい方法ではないでしょうか。

2 内部通報制度の実施、外部からの「内部監査人」の登用

(不祥事発生頻度を下げるための)「ヒヤリ、ハット」事例の集積、(不祥事早期発見目的のための)内部通報制度の充実、そして(不祥事による発生損害の極力低減化のための)クライシスマネジメント態勢の構築など、いわゆるリスク管理としての不祥事防止策は赤福社には不可欠だと思います。そういった内部統制システムの構築(整備運用)は、圧倒的な力を持つ創業者トップの前では機能しないことも考えられますので、運用の客観的な検証と、その検証結果に基づく適切な提案が可能な内部監査人を外部から登用するべきだと思います。(こういった事態のために、公認内部監査人の方などに活躍の場が付与されるべきであります)なお、「改善案の概要」のなかにも、「内部監査室の設置」というものがありますので、ひょっとしますと、実際の改善報告書には、このあたりのことが詳細に記述されているのかもしれません。

3 社長の専心義務の明記、もしくは社外取締役の招聘

先の改善報告書を読む限り、今回のJAS法違反は現場担当者に責任があり、経営トップは何も悪いことはしていない・・・といった趣旨に読み取れるのですが、いかがでしょうか。つまり、改善にあたって、経営トップが何をすべきか・・・という点がまったく見えてこないのであります。(たとえば「不適切な表示の禁止」を改善策として掲げるのであれば、改めて表示に関する責任者はトップにあって、そのことを明記するのが当然であると思いますが、そういった責任者の選定等についてはなんら触れられておりません)たとえこのたびの件について、経営トップが知らないところで発生していたにせよ、(本当にそうだったのかどうかは疑問がありそうですが)長年放置されていたことへの最終責任は経営トップにあるわけですから、社風をどのように変えていくべきなのか、経営トップがどう考えているのか、わかりやすい施策が必要であります。そのためには、地元の名士として忙しい赤福社の社長さんが、一定期間は赤福社の仕事だけに没頭することを宣誓したり、それが無理であるならばせめて社外から取締役を登用して、「会社は変わった」というイメージを社内にも、社外にも宣誓する必要があるのではないでしょうか。

2,3日前にコメントをいただいた「地元」さんがおっしゃるように、とてつもなく力をお持ちの創業者一族の方々のようですので、いろいろと再生にあたりましては障碍も多いかもしれません。また、すいぶんと偉そうに勝手なことを書き連ねましたが、私の周囲にはそろそろ赤福再開を希望する声も聞かれるところも事実であります。しかしながら、先にあげたような施策について、経営トップが受け入れ困難である・・・といった状況であるならば、それはもう「何も変わらない」ことの証左でありまして、今後の信用回復も覚束ないものだと思います。

| | コメント (9) | トラックバック (0)

2007年11月11日 (日)

「定量分析実践講座」、いきなり挫折。。。

(皆様方のコメントを受けて、早々に追記あります)51c3xix0ril_ss500__2 

すでにどこの書店におきましても、ビジネス本ランキングのベストテンに入っております「定量分析実践講座~ケースで学ぶ意思決定の手法~」(福澤英弘著 ファーストプレス \2400税別)を休日に読み始めたのでありますが、いきなりケース1でつまづいてしまいました。ちなみに、いろいろなブログを巡回しておりますが、読まれた方はみなさん定量分析の手法が素人にもわかりやすく書かれている!と絶賛されておりますので、ひょっとすると私だけが合理的な定量分析の考え方さえ理解できない頭になっているのかもしれません。ひとりくらい、同じような疑問でつまづいている人がいるんじゃないかと思っていたのですが・・・(かなりショックであります)

この本で紹介されている「ケースその1」でありますが、ある人が会社に向かうのに、バス通勤をします。会社までバスで向かうのに、自宅付近の同じ場所に二つの民間バス会社のバス停がありまして、どっちで会社に行っても同じ時間に会社に到着するとします。そこで、一週間の両社のバスの運行状況を調査して、「時刻表記載の時刻からどれだけ実際のバス停到着時刻がずれているか」を集計します。調査してみると、どちらのバスも早く来たり、遅く来たりします。この「ズレ」を「平均値」で求めた場合には、ほぼ同じだったことから、つぎに平均的な「ズレ」からどれだけ「ばらつき」があるかを標準偏差によって判定します。もちろんバス停到着時刻に「ばらつき」が少ないバスのほうが安心して乗車できるということで、標準偏差が値が小さいほうのバスの通勤定期を購入する、といった意思決定プロセスが紹介されております。これが定量分析に基づく合理的意思決定の第一歩のようであります。

ホンマですかぁ~?ヘ(゜◇、゜)ノ~ 

私が基本的に疑問に思いますのは、いくら標準偏差の値が小さいとしましても、バスが早くきちゃったら意味ないのでは???と思うのですが、これはアホの考え方なんでしょうかね?たとえわずかのズレでありましても、バスが停留所に到着予定時刻よりも早く来てしまえば、そのバスには乗り遅れてしまうわけでありまして、その次のバスを待っていたら、とんでもない「ずれ」になってしまうんじゃないのでしょうか?どんなに標準偏差が小さくても、一週間のうち、(ズレの平均値が同じであると仮定して)4日間は若干早く到着して、1日だけかなり遅くやってくるバスと、標準偏差の値が大きくても、毎日3分遅れのバスとでは、どう考えても後者のバスを選択するのが合理的だと思うのですが。。。「早く来るバスのためになるべく到着時刻よりも早くバス停にいる」といった前提だと、標準偏差を計算する基礎も変わってくるんで、これはないと思いますし。

平均値からのズレが大きいといった「情報」は、たまたまこの1週間のデータからはわからない将来予測可能性(つまり、ズレが大きいとされた民間バス会社のほうが、この1週間は遅い時間に来る回数が多かったけれども、今後早く来る可能性も高いということ)を映し出している・・・・・とも考えてみたのですが、でもやっぱり、早く来ることのリスクと、遅く来ることのリスクとでは、そのリスクの大きさは異なるものであって、単純なバラツキの問題に純化させる前提そのものがおかしいように思うのですが。。。つまり、標準偏差の問題ではなく、力と方向性をもったベクトルの問題(三角関数のお話)になるのではないかと思うのですが。

ベストセラー本ですし、私のブログにお越しの方々は、こういったジャンルをお仕事であたりまえのように使っていらっしゃる方も多いと思いますので、もしよろしければ、私のどこがアホか、ご教示いただけましたら幸いです。。。

(追記)早速にたくさんのコメント、ありがとうございました。なるほど「不確実なもの」を「不確実なもの」のまま受け入れて、それでもバスの正確な運行への努力を数値化するために「標準偏差」を用いる方法、たいへんよく理解できたように思います。

ところで、そうであるならば、また次なる疑問が湧いてまいります。このケースその1では、まず1週間の調査結果というデータを用いて「正確な到着時刻と、実際の到着時刻とのズレの平均値」を比較して、それで比較困難な場合に標準偏差を用いることになっております。それではなぜ、標準偏差よりも平均値のほうを優先するのでしょうか? 「正規分布」を想定したうえで、不確実ななかでも、なんとか正確な運行努力を数値化しようとしているのですから、そっちを優先したらいいのではないでしょうか?「平均値」というものは、そもそも不確実性を数値化することをあきらめて、はじめから何の仮定も与えずに、場当たり的に平均を出しているにすぎないわけで、データの扱いとしては極端にラフな考え方ではないかと思います。(標準偏差が確率変数に属するものを扱うとしたら、平均値の算定はそうではないわけですよね。)標準偏差を用いて、統計的手法で意思決定をしようとする態度と、平均値を優先しようとする態度には矛盾があるように思えるのですが、いかがでしょうかね。

| | コメント (35) | トラックバック (0)

2007年11月10日 (土)

ジャッジ(島の裁判官)最終回、泣けました。。。

昨日(金曜日)、KPなんとか、という某監査法人のシニアマネージャーの方と夕食をご一緒させていただいたときに、「先生のブログ、あの『行間』なんとかなりません? あれ、読む気なくしちゃうんですよぉ・・・」とご指摘を受けましたので、すこし行間を空けてみました。なるほど、なんとなく文章自体も、やさしい感じに思えてきますね。。(ご挨拶ここまで)

いやいや、ひさびさに連ドラ最終回まで全部視ました。(ジャッジ~島の裁判官 NHK)第4話もよかったですが、最終回も文句なくオモシロかったです。島のリゾートパーク建設が環境を破壊するということで、島の女性が「リゾート建設差止訴訟」を提起しようとします。ところがこの女性は「大美の白うさぎ」(絶滅に瀕した動物)を原告として裁判を提起するものですから、裁判所の人たちに笑われて、あらためて代理人(弁護士)の支援で、近隣住民を原告として訴状を提出しなおすシーンがありました。

Amaminousagi_2 でも、法曹関係者ならご承知のとおり、これ「奄美の黒ウサギ訴訟」(鹿児島地裁で1995年から2001年まで、奄美の黒ウサギを原告として争われた環境訴訟。ゴルフ場建設計画の取消を求めた行政訴訟です。判決では、動物には原告適格がないとして却下されました)が元になっているはずですから、単なる笑い話ではなかったりします。

そもそも法人だって原告適格があるわけですから、動物に原告適格を認めても、なんらおかしいところはありません。法人が原告適格を認められるのは、単なる人間の都合で取引主体(法人格)にしようと考えての結論ですから、また動物に権利主体性を認めたほうが都合がいいといった理由があれば、動物にも裁判の原告適格を認めることはなんら矛盾するものではないように思います。法人には、対外的な代表者がいますので、動物にも同じように代弁する人間がいればいいだけのことではないでしょうか。自然と人間の「共生」が世界的規模で検討される風潮はおそらく今後も強まるでしょうし、最近は消費者契約法が改正されて、消費者被害を受けていない第三者(認定消費者団体)が他人の権利侵害の差止めのために訴えを提起できる時代となりましたので、動物に対する権利侵害を第三者である人間が差止めることも、あながち「へんな考え」とはいえないようにも思います。

(話をもどしますが・・・)最終回で意外だったのは企業コンプライアンスに光があたったことであります。いや、これは感動モノでした。企業の長期的な利益のために、あえて本裁判において自らに不利益な証拠を提出する(先に提出している虚偽の証拠を撤回して、真正な証拠を提出する、という意味です。もちろん、不利益証拠を提出しつつも、なんとか和解によって解決しようと努力するわけですが)そのことを経営トップに力説する畑弁護士(浅野温子さん)の姿に泣けてきました。異論はあろうかと思いますが、社会正義の実現のために、解任覚悟で進言する弁護士の姿をよくぞ描ききってくれました。(泣)

なんか最後はNHKドラマらしく、なにもかもハッピーみたいな終わり方でしたが、5話全編を通じて、裁判官の苦悩や喜びなど、いままでにない「見せ方」でとても新鮮だったと思います。あっ、でも皆様、裁判員制度のなかで、裁判員に選任されましても、西島さんのような裁判官ばかりではありませんので、そのあたり誤解されませんように・・・・(^^;; (写真は奄美の黒ウサギ 出典はこちらです。ご迷惑であれば抹消いたします)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年11月 9日 (金)

金商法上の課徴金に加算・減免制度導入か?

(せっかくアワードにノミネートされているにもかかわらず、またマニアックなお話で恐縮です。。。)今年の6月に金融商品取引法上の課徴金引き上げに関するエントリー(課徴金引き上げにより法廷闘争勃発? )を記述しておりますが、8日深夜の日経ニュースによりますと、いよいよ金融庁が金商法上の課徴金制度について加算・減免制の導入を検討するようであります。(課徴金に加算・減免制 金融庁検討) 

そもそも金融商品取引法上の課徴金制度とはどういうことかと申しますと、インサイダー取引や、相場操縦、有価証券虚偽記載などの不正な行為が個人もしくは法人に認められる場合、もちろん金商法には刑事罰も用意されているわけでありますが、刑事罰を課すよりも柔軟かつ迅速に行政処分で対応することで監督官庁の限りある資源を有効に活用し、「資本市場の安心、信頼」を確保していこう、といった制度であります。(ちなみに独占禁止法上の課徴金は昭和52年から適用されておりますので、金商法上のものよりも歴史はかなり古いですし、審判手続きによる救済の歴史もあります)ところでこの課徴金は、そもそも刑事罰ではありませんので、「制裁的な意味」で課してしまいますと憲法39条(二重起訴禁止)に反するおそれがある、ということで、①ペナルティというよりも不当な利得分の返還ということで対応する、②行政機関は、要件該当事例には、裁量の幅がない(つまり法で算定根拠を示して、その法律どおりの金額を徴収する)、③だからこそ、虚偽記載やインサイダーについては対象者の故意過失にこだわらない(うっかりミスでインサイダーやっちゃった、とか、まちがって有価証券報告書に虚偽の数字を書いちゃった、のような場合でも課徴金処分の対象となる)ということだったわけであります。平成16年の証券取引法改正によって課徴金制度が導入されて以来、先日のカッパクリエイト社の社員に対する課徴金納付命令勧告で27件目となりましたが、これまで一件も課徴金納付命令に対する反論の答弁書が提出されたことはなく、実質的な審判手続で納付命令が争われる事案というものは見当たりません。(著名なのは、あの日興コーディアルに対する5億円の課徴金納付命令ですよね)証券取引等監視委員会には、専門の部署(課徴金調査・開示課)がありますので、そちらで非常に多数の案件が調査の対象になっております。刑事手続きのように調査に厳格なデュープロセスが要求されませんし、独禁法上の課徴金制度のような実質的証拠法則も適用されませんので、金融庁としては争われても、自主規制機関や証券会社の協力をバンバン促して、証拠はそろえ放題・・・ということにもなりそうであります。

こういった運用がそろそろ見直しの時期に来ておりまして(衆参両議院における改正証券取引法附帯決議)、資本市場の信頼確保のためには課徴金をもっと制裁としての意味で使っていこう、という意見が多数を占めているようであります。したがいまして、こういった「加算・減免」制度の導入も時代の流れではあろうかと思います。(最近のニュースはこちらです。東大や明治大学の著名な刑事法学者の先生方も、憲法39条違反にはあたらない、行政比例原則さえきちんと適合していれば問題はない)とのお考えのようですので、おそらくこのまま加算・減免制度は導入されていくのではないかと思います。また、証券取引関連に詳しい著名な学者の先生方も、市場の公正性、透明性確保のためには、課徴金制度はドンドン使うべし・・・との意見が多いわけですから、こういったユルユルの運用への流れは止められないのが現実ではないかと思います。(そういえば、改正公認会計士法の31条の2におきましても、課徴金は会計士報酬相当額の1.5倍を徴収できるとされておりますので、すでに行政制裁的な発想は金融庁にはあるようです)

しかしこの加算・減免制度といったものが、これまでのように課徴金納付命令の勧告に文句も言わずにしたがうということになりますと、上で述べましたように「ユルユル」の手続きであるがゆえに、運用面において法の支配に背反するおそれを孕んでしまう可能性が出てくるのではないでしょうか。(世間ではあまり心配されていませんけど・・・)行政制裁的な適用がなされるにもかかわらず、対象者の故意過失も厳格に審査されないままにペナルティを課されてしまう・・・というのはいかがなものでしょうか。ましてや、裁判所の判断を仰ぐことなく、行政が情状を酌量して重くしたり、軽くしたり、といった運用は果たして妥当なものと言えるのかどうか、少なくとも加算・減免制導入にあたって、現行の課徴金制度の骨格部分を変えていかなければ不当な行政裁量行為がまかりとおるように思います。また一方におきましては、「減免制」も導入されるということは、審判手続きのなかで、対象者側から減免事由を主張することも可能になってきますので、いままで使われてこなかった審判制度が利用されるインセンティブになるのかもしれません。ホントいままでは、「利益の吐き出し」といった運用であり、かつ行政裁量が否定されるところでの課徴金処分ということでしたので、それほど問題が表面化しなかったわけですが、課徴金納付命令を金融庁に勧告されること自体が、上場企業の社会的評価に大きな影響をもたらすのが日本の現状であるだけに、今後は法律家、自主規制機関、証券会社を含めて、独禁法上の課徴金制度の改革なども検証しながら十分協議していく必要があると考えております。(なお、日本公認会計士協会が、改正公認会計士法で制度化された課徴金制度の算定基準について、その具体化を定めた会計士法施行令のパブコメでおもしろい法解釈を展開しております。財務諸表監査と内部統制監査の報酬金額の合算分を課徴金算定の基礎とすることはけしからん、とのことでありますが、また時間のあるときにでもエントリーのなかで検討してみたいと思います)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2007年11月 8日 (木)

断熱材性能偽装に怯える企業

金商法関連の法律雑誌の原稿(締め切り間近)やら、ロースクールの準備やらで、新聞も読む暇がなくバタバタしておりまして、内部統制ネタやうなぎパイネタも書けないままになっております。ただ、ひとつ気になるニュースについてコメントさせていただきます。ニチアス社、東洋ゴム社と、立て続けに断熱材の耐火性能偽装が話題になっておりますが、どうも建材を扱っていらっしゃる方々のお話をお聞きしますと「ニチアスさんはかわいそう。」といった印象をもたれているようでして、私自身はおそらく今後も耐火性能偽装に関する企業不祥事はまだ続くのではないかと予想しております。

私のブログは企業サイドに立ってコンプライアンスを語ることが多いために、「あんたは不祥事企業に甘いのではないか」と批判をいただくこともありますが、そもそも1%の経常利益をアップさせるために必死に売上を向上させ、また経費を削減しようとしている企業にとりまして、不祥事など、けっしてなくなるわけはないのでありまして、すこしでも不祥事発生頻度を減少させたり、すこしでも早期に不祥事を発見したり、すこしでも発生した不祥事による損害を低減させることこそリスク管理としてのコンプライアンス経営の要諦であります。そのためには、やはり不祥事発生の動機をできるかぎり掘り下げて検討しなければ、ありきたりな解決方法の採用で終始してしまい、思考停止に陥ってしまいますので、ある程度、企業側の論理というものも検討してみる必要はあろうかと思われます。(企業不祥事が発生したときに、もっともらしい原因を見つけ出すのは比較的簡単でありますが、その原因を除去する対策が立てられていたとしても、やはり不祥事が発生した可能性が高いのではないか、という検証をすることも同じように重要であります)

ということで、ニチアス社の件でありますが、この企業不祥事の特徴といいますと、性能評価機関へ断熱材を持ち込み、そこで審査を受けるというものでありますが、この審査というのが一回500万円ほど要するものであり、もし審査がパスしない場合には、その後何ヶ月も審査手続きの順番を待たなくてはならないというもののようであります。(なお、ドアノブの部分がふっとんで、小さな穴から火が通ってしまっただけでも審査はアウトのようであります。)簡単に断熱材を持ち込んで審査が受けられるわけではなく、たいへん大掛かりなセットを組んで実施されるようですので、審査料以外にも、企業自身の金銭的負担を大きく、担当社員からすれば、もしパスしなければ社内における自身の地位にも影響するとのこと。そんななかで、各社とも一回でパスできるように、(詳細は書けませんが)いろいろと工夫(裏ワザ)がなされているようなんですね。(ということで、「ニチアスさんはかわいそう」といった表現が使われているのかもしれません)これが実態ということでしたら、ニチアス社も東洋ゴム社も内部告発によって具体的な報道に至ったことからしましても、別の企業において同様に断熱材性能偽装が発覚する可能性もやや高いのではないか・・・と予想をしております。

もちろんニチアス社や東洋ゴム社の性能偽装は「勝手な企業の論理」であり、許されるものではなく、厳しく糾弾されるべきものではありますが、そのまえに少し明らかにしておいたほうがいい問題もあるんじゃないでしょうか。ひとつは、性能評価機関というところは、これまで他社含めて、どれだけの偽装を発見してきたか?という問題であります。目の前で審査に通らないような性能であることが判明すれば問題ありませんが、審査を通るような工夫(裏ワザ)を解明して、アウトと宣告できたケースはどれほどあるのか、という点は今後の再発防止策の検討にとってはきわめて重要な点ではないかと思います。よくいわれるところの「性弱説」に立つならば、違法行為を犯したくても犯せないのか、違法行為は容易に犯すことができるけれども、ばれたときのことを考えて自律的に慎まなければならないのか、これは防止策検討にとって大きな差であります。

それと、もうひとつは(先にも述べたところと関連しておりますが)、こういった大掛かりな偽装については「組織ぐるみ」なのか「担当者判断」なのか、という点であります。私が本日、お聞きしたところでは、十分に担当者レベルだけの偽装動機が成り立つようであります。もちろん、社内で何度も保湿成分チェックなどを繰り返すようでありますので、偽装グループのような集団があるのかもしれませんが、それでも「担当者判断」であればリスク管理の一環(内部統制システムの構築問題)として捉えるべきものであり、経営トップが関与していたような事例でありましたら、もはや内部統制の限界であり、企業の社会的評価は大きく毀損されてしまうはずであります。(その意味で、ニチアス社の場合は、発覚後に社内で性能偽装の問題を隠匿していた事実が判明しておりますので、不公表という事実がもっとも非難の対象になってくるものと思われます)東洋ゴム社の場合、早々とトップの辞任意向が伝えられておりますが、性能偽装に至る動機がどこにあるのか、まず調査解明することが第一順位ではないかと思われます。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2007年11月 6日 (火)

行政調査の拡大と内部統制システムの構築

きょうも東洋ゴム社や伊勢丹社など、大手企業の商品不正表示問題が新たに発覚しておりますが、連日の不正表示事例から思いますところは(刑事事件か行政事件かは別として)、もし企業による商品不正表示を問題とするのであれば、その不正表示が企業の故意に基づくものか、それとも過失によるものなのかは、明確に分けて考えるべきではないか、ということであります。ここで「故意」といいますのは「組織ぐるみ」の場合や従業員が上司に黙って不正表示を繰り返し行っていた場合を含むものでありまして、一方「過失」といいますのは、表示シールを単純に間違って貼ってしまっていたような「誤表示」の場合とか、取引先から送られてくる原材料(加工品である場合)が消費期限切れであったり、原材料の成分が虚偽であることを知らずに、これを用いて自社製品を製造販売したような場合であります。もちろん、あとで原材料の消費期限切れが判明した場合には、一般消費者向けに原材料の不具合を告知して、商品を回収する努力は当然でありますが、昨今問題となっております赤福社や船場吉兆社のように、自社で消費期限を偽装していたような事例と比較しますと、その違法性にはかなり大きな差が認められるように思います。

ただ、よくよく考えてみますと、原材料の表示が偽装されていたとしても、その加工品の原材料を仕入れた加工食品の製造会社が、全くの被害者的存在であるかといいますと、かなり怪しい場面もあるのではないでしょうか。実は私が社外監査役を務める企業(外食チェーン店産業)にも、事件発覚の前にミートホープ社の担当者がやってこられまして、加工食材の営業をされておられましたが、それがずいぶんと安いんですね。当社の担当者は長年の経験から、当然に相場を知っておりますので、あまりの怪しさに「これはちょっとおかしいんじゃないの」と思って取引をお断りした経緯がございました。こういった「やましい可能性のある商品」というものは、競業他社の加工品と比較すると著しく安価な場合が多いかもしれませんし、これを十分な検査もせずに購入する側において、まったく落ち度がないものかと言えば、多少の疑問を感じるところであります。また、ひょっとすると、仕入れ担当者と営業社員との間でリベートが発生しているケースもありますので、そうなってくると、いくら自社で偽装しているものでないとしましても、共犯関係として原材料の加工業者とは連帯責任を問われる可能性も出てまいります。

結局のところ、加工食品の製造過程に携わる企業には、消費者に開示すべき品質に関する情報の真正については共同で責任を負担してほしい・・・といった思想から、このたび農水省では食の安心に対する消費者の信頼確保に向けて、食品の業者間取引における表示義務の拡大のための法改正(正確には加工食品品質基準の改訂)に踏み切るようでありまして、その結果、JAS法に基づく行政調査の範囲が「業者間取引」にまで及ぶようになりそうであります。(JAS法の品質表示の適用範囲の拡大について)ただ、私のブログをよくお読みいただいている方はおわかりのとおり、これまでも、この「行政調査」の結果、食品不正表示に関する問題点が次から次へと明るみになるわけでして、企業の社会的評価が毀損されるかどうかは、この(問題発覚時における)行政調査の範囲がどこまで及ぶのかによって決まるといっても過言ではありません。そして、行政調査自体は、本来的には加工品を納品する側の原材料表示の適正性を担保するためのものでありますが、加工品から食品を製造販売する企業が果たして不正表示による加工品原材料を、知ってて使っていたのか、それとも知らずに(つまり騙されて)使っていたのか、といった製造販売会社側の事情までも判明する可能性が高くなるのではないでしょうか。これは加工食品製造会社にとっては大問題であります。行政調査は行政処分を発動する前提としての行政活動でありますが、そもそも刑事手続ではありませんので、加工食品製造会社に故意過失がどうであれ、また動機がどうであれ、違法と疑われる状況さえあれば、国民の生命身体の安全を確保するために、とりあえず行政措置を発動する可能性があります。そういったケースでは、おそらくマスコミにも報道され、加工食品製造会社自身が刑事罰を受けたのと同等の社会的な評価低減に至る可能性も出てくるかもしれません。手続的には行政手続きであり、要件該当性判断においては甘いものであるにもかかわらず、その行政処分の持つイメージは、社会的には企業自身が刑事手続きによって罰則を受けたのと同じほどに社会的信用を毀損する・・・という現実は、なんともコンプライアンス経営のおそろしい側面であり、企業経営者にとっても留意すべき点のひとつではないかと考えております。

ところで、こういった行政調査の拡大場面におきまして、やはり企業価値を防衛するものは「内部統制システムの構築」にあると思います。加工品納入業者(取引先)への食品安全調査の実施(つまり食品会社自身が、取引先の食品の安全を確認すること)や、納品時の表示された内容の確認方法のマニュアル化、マニュアルによる実行へのモニタリング、ヘルプライン(内部通報制度)の充実など、さまざまな工夫が考えられます。そしてそういった内部統制システム整備の目的は、なんといいましても「組織ぐるみ」と疑われるような間接事実を否認できるようにすること、そして業者間取引に関与していた自社担当者において、加工原材料納品業者との間で、やましい流通慣行の事実が存在しないことを明確にしておくためであります。今回はたまたま食の分野における行政処分と内部統制との関係に触れておりますが、これはJAS法だけの問題点ではなくて、広く行政処分によって不利益を課される場面にも通じるものであります。機動的かつ迅速に法目的を達成することが可能なところが行政処分の長所でありますが、その分あいまいな要件で企業側が不利益を課されるリスクもあります。そういった企業の重大なリスクマネジメントの一環として、自助努力は欠かせないところではないかと思いますし、「事後規制社会」における企業に必須の防衛策は、まさに内部統制システムの構築にあると考えます。

5日の夕刻、昨年に引き続き、今年も食中毒事件を発生させてしまった外食企業による適時開示情報が出ております。多くのお客さまに繰り返し現実の健康被害を発生させた企業の不祥事にはなんらマスコミは関心を示さず、いっぽう健康被害は一切出ていないにもかかわらず、表示に瑕疵があった企業については、国民を欺いた責任は重いと言わんばかりの連日の報道であります。どちらの企業のほうが悪いのかは(いろいろな視点があるでしょうから)別として、これが現実の「世間一般常識」であるならば、その一般常識への配慮もまた十分な吟味が必要な世の中になってきたのでありまして、ここにもコンプライアンス経営のむずかしさが潜んでいるようであります。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2007年11月 5日 (月)

経営者コメントと企業不祥事リスク

赤福社の商品表示偽装問題につきましては、私もある程度の危機予測はしておりましたが、船場吉兆社の件では、見事に外れてしまったようであります。まさか、船場吉兆さんがここまで大事(オオゴト)になるとは、(当初のマスコミ対応がよかったと思いましたので)予想もしておりませんでした。日曜日のニュースでは、赤福、船場吉兆それぞれの社員の方のインタビュー記事が報道されておりましたが(船場吉兆はこちら  赤福はこちら)、どちらの現場責任者の方にとりましても、「まさかここまで大事になるとは」といったコメントを出さざるをえない状況に至っているようです。残念ながら一般的には、両社ともに、すでに経営者トップが表示偽装の事実を知っていた(つまり組織ぐるみだった)といった社会的評価を受けているに等しいようでありますので、たとえ経営トップが「知らなかった」「現場の判断だった」と申し開きをしましても、「食の安心、安全」への背信行為の代償はたいそう大きなものになってしまったようであります。(そういえば、赤福社のメインバンクの頭取さん も、早急に第三者委員会等の設置を望む、とインタビューで述べておられましたが、県や農水省の調査のほうも一段落したのであれば、私も赤福社の再生のためには不可欠ではないかと思っております)

ところで、このところの一連の食品表示不正事例では、先の例のごとく、経営者が「偽装の事実を知らなかった」「現場の判断でやったと思う」とコメントするケースが多いように思われます。後で「組織ぐるみ」と判断されるような証拠が飛び出す可能性もありますが、かりに赤福社や船場吉兆社の経営者の方々がおっしゃっていることが真実だといたしますと、一般企業の経営者にとりましては、これほどおそろしいことはないわけでして、自分の知らないところで不祥事が拡大していき、自分の知らないところで内部告発が起こり、なにがなんだかわからないうちに謝罪会見で頭を下げなければならないことになってしまう・・・、といった信じられない流れになってしまうわけであります。経営トップが不祥事を主導していた・・・といった事実であれば「俺はそんなことしないぞ!」と安心もできますが、どうもそこまで真相が追及されずに済んでしまいそうな雰囲気もありますので、「不祥事リスク」のおそろしさだけが残ってしまうような感じがいたします。行政による事前規制が重宝される時代にように、いっそのこと加工食品すべてに「JASマーク」の取得を義務付けてしまえば、経営者もこういった不祥事リスクから逃れて安心できるわけでありますが、事後規制の世の中では、こういったリスクは自ら管理していかざるをえないんでしょうね。

使用される原材料や、商品の表示方法、販売地域などが、細かく法令で決まってしまえば、企業はその法令にしたがい、事前に届出手続きをすればいいわけですから、そもそも形式的な法令違反の可能性は低くなるはずであります。いっぽう、品質管理は企業の自主性に任せるのであれば、当然のことながら効率経営を重視するといいますか、ルールを無視して販売するところも出てくるわけですから、いままで聞いたこともないような罰則規定違反が多発することも必然なわけであります。したがいまして、当然に今後はますます行政処分、刑事処分を受ける企業の数は増えていくものと思われます。また、現在農水省が検討中であります原材料卸業者さんの加工食品製造販売会社への流通段階における原材料表示義務が新設されることとなりますと(正確にはJAS法における基準の改訂がなされますと)、JAS法による行政調査の範囲が飛躍的に拡大することとなりますし、また製造企業の取引先に対する確認調査も当然に増えますので、不祥事発覚の可能性も高まることが予想されます。

よく企業不祥事は経営トップの姿勢次第である・・・と言われます。たしかに一番大切なのはそういった経営者のコンプライアンス経営への取り組みにあるとは思うのですが、上記のとおり、今回の一連の食品不正事件におきましては、(ひょっとすると)経営者不在のもとで、不祥事が発生して、それが企業経営の根幹に重大な影響を与えかねない、といった問題を提起しております。こういった企業不正から企業を守るためには、たとえばCOSOの内部統制ガイダンス(簡易版)によりますと、COSOフレームの構成要素のひとつである「情報と伝達」を重視すること が示されております。たとえば、一般消費者へ食品を販売する会社の場合、CEO(最高経営責任者)は、従業員、取引先、一般消費者の三方へ情報を発信します。これは通常の(業務プロセスにおける)情報伝達経路以外に代替的伝達経路をもうけて、商品の異常に関する情報があれば、すぐに企業へ連絡してほしい、との情報発信の重視であります。それと、吸い上げた情報が一部の執行役員のもとへ滞留することを防止するために、情報を役員会に提供するためのプログラムを策定することも重要のようであります。もちろん、不祥事リスクはゼロにすることは不可能でありますので、これで万全というものではありませんが、すくなくとも不祥事リスクのマネジメント方法としては有効ではないでしょうか。そういえば、先週金曜日に工場見学に行きました「うなぎパイ」は、賞味期限と消費期限の差こそあれ、ひとつひとつが包装されておりまして、その包装紙には全て「おきゃくさま相談室」の電話番号が記載されております。その電話番号が「210481」(日本一おいしいパイ)なんですね。パイ生地の製造工程(これは秘密)以外はすべてガラス張りにして、上から工場全ての見学ができるということは、そのこと自体が先の「情報発信」かもしれませんね。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

2007年11月 3日 (土)

アルファブロガー2007ノミネートを受けて

浜松の人権大会に参加したり、うなぎパイの工場見学をして、大阪へ帰ってまいりました。2日ぶりにメールをチェックしてみますと、なんと当ブログが「アルファブロガーアワード2007」にノミネートをされた、との連絡を頂戴しておりました。(ご推薦いただいた昨年度のアルファブロガーの渡辺聡さん、どうもありがとうございます。)私自身、ブログランキング的なものがあまり好きではない・・・と公言しておりましたが、いやいや、アルファブロガーということでしたら、素直に嬉しいです。(^^;; ノミネートされているブログの顔ぶれ(55ブログ)から考えますと、到底このなかでアルファブロガー2007に選出される見込みは乏しいようでありますが、正直、候補ブログとして投票対象に選定していただいただけでも2年8ヶ月ほどブログを続けてきて良かったと思います。また、たくさんの方の有益なコメントで支えられてきたことも事実でありまして、私自身のためにも、またたくさんの閲覧されていらっしゃる方のためにも、今後とも参考となります意見、よろしくお願いいたします。

もちろん、このブログをご覧の方々に当ブログを推薦していただきたく、投票していただけますとありがたいのですが(投票方法は、左バナーをクリックしてください)、この年1回のお祭りの趣旨が「ブログを書きたい」と思っていらっしゃる方々へ参考になるようなブログを紹介したり、本当に社会的影響力を持つブログを情報として効率よく探し出したりするものである、といったところのようですので、私もその趣旨に共感して、左記のようなバナーを期間限定で設置させていただきました。皆様ご存知のあのブログも候補ブログに選定されておりますが、ほかにもビジネス系で、いろいろな有力ブログがございますので、お仕事の参考にされてはいかがでしょうか。ホント盛り上がったらおもしろそうですね。(なお、うなぎパイ工場見学に関するエントリーは、また後日とさせていただきます)

| | コメント (10) | トラックバック (1)

2007年11月 1日 (木)

日弁連第50回人権擁護大会

11月1日と2日、記念すべき第50回の人権擁護大会(日弁連主催)が浜松で開催されます。私も、同志社での講義が終了後、浜松に向かいます。たとえ企業法務を中心とした業務に従事しておりましても、社会正義実現のための人権擁護活動は弁護士の職務の基本であります。ということで二日ほどブログの更新ならびに、コメント、トラバのアップが止まりますのでご容赦願います。なお、人権擁護大会の合間をぬって、浜松の「うなぎバイ」工場の見学にいく予定です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »